家族で乗り越えた雪山での大ピンチ。
雪の急斜面の頂上に
へっぴり腰&半泣きで佇む次男。
私でもゾクッとするほどの高くて急なコースの始まりに私たちは来ていた。
「だいちー、大丈夫ー?」
少し先からそう次男に声をかける私の精神が大丈夫じゃない。
しまった……
とんでもないところに連れてきてしまった……。
後悔先に立たず。
夫は次男を励ましつつ、ゆっくり下るように声をかけていた。
***
初めての北海道家族旅行。
初めてのニセコ。
初めてのパウダースノー!
前日、ニセコの近くに住む妹の家に泊めてもらい、車を借りて「花園」というスキー場にやってきた。
ニセコのスキー場は噂通り外国人ばかりだった。スキー場の店員さんまで外国人。まるでこっちが海外に来たかのように、ドキドキしながらスキーやスノボのグッズをレンタルした。
準備完了!
いよいよ待ちに待ったゲレンデへ!
さすがニセコ。ゴンドラもかなり立派でコースも広い。人もあまり多くなくて、どんどん滑ることができた。
「午後は、ヒラフに行ってみよっか」
3時間みっちり滑ってお昼ご飯を食べたあと、夫が言った。
ヒラフは花園の隣のスキー場だ。上の方まで行けば、リフトでつながっていてヒラフまで行けるらしい。しかも、花園のリフト券がヒラフでも使えるとのこと。
「一つのリフト券で二つのスキー場を使えるなんてラッキー!」
そんな軽いノリで、私たちは息子たちを連れてヒラフへ移動することにした。
さっそく花園のリフトに乗り、ぐんぐん上へ上へと登っていく。だんだんと降り注ぐ雪の粒が大きくなってきたぞ。
リフトを乗り継ぎ、乗り継ぎ、ヒラフに行くコースがこの先にあるというところまで来た。
(ん?なんか最初から急だな。まぁここだけが急で、後からは緩やかになるのかな?)
最初の急な場所をなんとか四人で下り、次に降りる坂の上に立った。
そこで私は初めて、とんでもないところに来てしまったことを悟り知ったのだった。
急坂は1箇所だけじゃなかった。
先を見てみると、急な坂が延々と続いている。しかも、曲がりくねっていて、結構細い。滑り落ちたら救助が必要になりそうな場所もあった。
(まずい……次男は下まで降りれないかも知れない……)
そんな私の不安が伝わったのか、夫がすぐに言った。
「先に長男と一緒に降りてて。こっちはなんとかするから」
「でも……」
心配で降りれない。でも、長男はどんどん自力で先に滑っていっている。私も自分自身が無事に滑り降りれるか自信がない。
そんな状況で次男を心配している場合じゃなかった。とにかく長男と一緒に無事に下山しなくては。
夫を信じて私と長男は滑り始めた。行けども行けども急坂は続く。次男への心配を振り切り、携帯を見ると充電が33%しかなかった。
(もしも夫から救助の連絡が来たら救助を呼べるように、充電が切れないように早く下山しよう!)
そう自分に言い聞かせて、二人で集中して滑っていく。
どのくらい滑っただろうか。
(もう、無理……)
何度もコケては立ち上がってきたから、もう全身に力が入らなかった。
そのとき、前に小さくヒラフのリフトが見えてきた!ようやく下の方のコースに来たことがわかって心底ほっとした。
ほっとしたら、その場でヘナヘナと腰に力が入らなくなり、しゃがみ込んでしまった。
長男と二人、しばらくぼーっとしていると………
なんと!!
後ろの方に夫と次男らしき人が滑ってくるではありませんか!!!
「おーーーーい!!こっちだよーーー!!!がんばれーーー!!!」
大きな声でエールを送る。
すると夫と次男が少しずつ近づいてきて、目の前にやってきた。
「すごい!!!だいち、よく滑ってこれたね!!頑張ったねーーー!!!」
安心して次男に話しかけると、それまできゅっと緊張した表情だった次男がポロポロ涙を流して泣き始めた。
(怖かったね。よく頑張ったね。怖い思いさせてしまってごめんね。)
色んな想いがよぎって泣きそうになりながら、
でも安心してなんだか急に笑ってしまって、泣き笑いみたいになった。
あとで夫に聞いてみた。
「もしかして、あの時私の心配が次男に伝わったら最後まで滑れなかったかもしれないね。それがわかってたから、すぐに長男と降りるように言ったの?」
すると夫は、
「まさにそう。二人が滑ってからは、冷静な声掛けをただただ繰り返して励まして、淡々と降りてきたわ〜」
と苦笑い。それを聞いて夫の判断は間違ってなかったな〜と思った。心配というエネルギーは時に厄介なものになるのだ。
気持ちを張ってやっと下山して、私に声をかけられた瞬間に涙が溢れた次男は、そのあとケロッとして長男と一緒にヒラフのコースを楽しく滑っていった。
ヒラフのコースを降り切った頃には、もうすっかり4時近くになっていた。
私と次男は「もう滑りたくない」と言って、花園までバスで帰ることに。
夫と長男は「滑り足りない」と言って、ヒラフのリフトを上がって、また上から滑りながら花園まで帰ることに。
その時その時でペアを変えながら、助け合いながら楽しんだゲレンデ1日目。近くの温泉でゆっくり身体を癒して宿へと向かった。
家族ってほんと一つのチームなんだな。
人知れず、自らピンチを作って(笑)、それを乗り越えて感動したこの日を私はきっとずっと忘れないだろうなと思う。