見出し画像

EP.57【台湾発】新たなアイデア、startupsへ

ネットワーク効果: Andrew Chenの「コールドスタート理論」part-4

着火点:ユーザー数のウイルス的成長戦略

冷起動の段階を乗り越え、ある程度の単一の原子的ネットワークができた。次はスピードを上げ、規模を拡大する段階です。

招待制:LinkedIn、Gmail、Clubhouseは立ち上げ当初、こうした戦略を採用していました。最初のFacebookもハーバード大学のメールアドレスを持つ人しか登録できず、後にキャンパス外へと広がっていきました。

招待制には、話題性や希少性を生む以外にも、ユーザーに製品の拡散を手伝ってもらえるというメリットがあります。自分とよく知る人を優先的に招待するため、冷起動問題の解決に一役買います。

知り合いが1、2人以上いる新しい場所では、新規ユーザーが残る可能性も高くなります。しかし、招待制にはユーザー成長スピードが制限されるというリスクもあります。  

「ツールのために来て、ネットワークのために留まる」:これはa16zのパートナー、クリス・ディクソンが提唱した概念です。初めはツール的な側面に惹かれて製品を使い始めるが、最終的にはネットワーク効果のために留まるということです。

Instagramを例に挙げると、最初はインタフェースでフィルター加工ができるツール的な面に惹かれて利用が始まりましたが、後にSNS的なネットワーク効果が働き、写真や動画を簡単に共有できるようになりました。  

ただし、すべての製品が「ツールのために来て、ネットワークのために留まる」という成長戦略を取れるわけではありません。ツールからネットワークへの移行は、個人モードから複数人モードへの転換を意味します。そのため、2人以上で原子的ネットワークを形成する通信ソフトではこの戦略は適さません。

コンテンツ制作、編集、ホスティングなどのツール的サービスを提供するものは、ツールからネットワークへの移行が可能です。Instagram、YouTube、Substack、Githubなどがその例です。コンテンツ(ツール)があり、多くの人が利用(ネットワーク)し、ユーザー間の交流の場も設けられています。

聞こえは良いですが、うまくいかない可能性もあります。ポイントは、この2つをうまく融合させることにあり、それは難しいことです。

例えばSubstackはニュースレターのプラットフォームですが、最近ではSNS的な機能(Noteなどのツイート風の投稿)を追加しています。これは本来のメール配信というツール的な側面とやや矛盾します。メールで情報を受け取る人は、必ずしもSNSに時間を費やしたくないため、コンテンツを直接受信したいと考えているからです。

割引クーポン:ネットワークの成長にはもちろんお金を使ってユーザーを呼び込む方法もあります。紹介プログラム、キャッシュバック、利益保証などの施策が考えられ、これらは主に困難な需要側のユーザーを呼び込むためのものです。初期のUberがドライバー確保のために補助金を出したのはその一例です。

離脱速度:獲得、参加、経済の3つのネットワーク効果の力が乗数効果を生む

冷起動問題を乗り越え、招待制、「ツールのため来て、ネットワークのために留まる」、割引クーポンなどの戦略で数億人のユーザーを獲得し着火点に到達した。「離脱速度」のこの段階では、引き続きユーザー基盤を拡大し、実際に収益を生み出せるビジネスを構築する必要があります。

一度離脱速度に達すると、ネットワーク効果の3つの力がより強くなり、同時に作用するようになります。アンドリューはネットワーク効果の3つの力について検討しています。

獲得の力:製品がその既存のネットワークを活用して新規ユーザーを引き付ける能力のこと。ネットワーク効果が発揮され始めると、ウイルス的な速度で新規ユーザーが取り込まれていきます。ここでは主にネットワーク型の製品、つまり既に一定数のユーザーがいる製品について論じられています。

ユーザーが製品やサービスを使っていく中で気に入れば、友人、同僚、他の人々にシェアするでしょう。口コミに加え、紹介プログラムや友人リストの提案などを通じて獲得力を高め、新規ユーザー獲得コストを下げることができます。  

もちろん、製品に獲得力だけあっては成功したネットワーク効果とはいえません。参加とマネタイズの力も必要不可欠です。

参加の力:参加力とは製品のスティッキー性(粘着性)に関係します。ユーザーが増えれば増えるほど、製品の粘着性と魅力が高まり、価値も上がっていきます。参加力に関する指標としては、月間平均アクティブデー数や留存率などがあげられます。  

離脱速度の段階では、この参加の循環をさらに加速させる必要があります。例えば、クリエイターがSNSにコンテンツを投稿すれば、より多くのコメントやフィードバックが得られます。あるいは、売り手が商品を掲載すれば、より多くの購買意欲のある買い手が集まり、双方がより長くプラットフォームに参加(つながり)続けることになります。この力は離れていったユーザーを呼び戻す可能性もあり、理想を言えばアクティブユーザー数がさらに増加するはずです。

マネタイズの力:製品が広く採用されれば、より良い値付け力が得られます。機能をコピーするのは簡単でも、ネットワーク自体をコピーするのはほぼ不可能です。  

このため、ネットワーク効果のリーディングポジションを確保した製品は、より高い転換率を実現できます。同僚の多くがDropboxを使っていれば、自然と有料版に切り替えたくなるでしょう。同種の他の製品があったとしても、同僚たちのネットワークがDropboxにあるため、原子的ネットワークを持たない類似製品に乗り換えるのは難しくなります。


いいなと思ったら応援しよう!