【この世の中はクレイジー】⑥
備忘録 〜従姉妹編 その6〜
亡くなった従姉妹とその母親について考えていた
「悲しくて、ただ悲しくて」の巻
備忘録的に書き始めた従姉妹編もその6まで来てしまった。
私の中にある整理していきたい一つ一つの出来事はレポート用紙1枚で済む話ではないんだなとしみじみ思う。
こうして十数年前を思い出しながら改めて従姉妹のことを思えば、今、ただただ悲しい。悲しい、それしかない。
私は何度も自分を責めたし、R子の選んだ道筋を憎いと思ったし、R子の夫も心底憎いと思った。でも責めても憎んでも、事実は変わらないし、時間は進んで行く。
私には私のしなくてはならない生活があって、立ち止まることも、R子の死を心から悼む落ち着いた時間さえも取ることが難しかった。今、こうして文章にできていることが奇跡にさえ思う。
私にとってR子は嫌味でない時は、かわいい妹分で、私を頼ることもよくあったし私もいろんな場所に連れて行ったし二人で馬鹿笑いしたり二人にしかわからない言葉や場所や秘密の話がたくさんあった。
もう号泣したい。胸がいっぱいだ。どうしてR子は突然そんなことになったんだろう。私があの時感じた危うさはやっぱり当たっていたのだろうか。
亡くなる半年前、私に突然電話して来たんだ。
その時何かを言いたげで、でも的を得ず、私もあまり親切には対応しなかった。
それまでR子にされて来たこと言われて来たこと、結婚に反対したものの、裕福になった途端にまた高慢なものの言い方に翻ってしまったこと、それらが、まともに相手するのも馬鹿馬鹿しく思えてしまっていたから。
でもその後R子は亡くなった。
あの時何かを抱えていたから、私を頼りたかったのではないか。
母親でも父親でもなく、私でなければ話せないことがあったのではないか。
人の生きることに手を貸すことは、自分の人生を削ることだと思っている。
あの時、R子の話を聞いて、何か行動を起こしていたら、R子はもしかしたら
今も生きていたかもしれない。そうなるためには私は人生を削らなくてはならなかっただろうが、私には守るべき家庭があって、本能的に話を聞かなかったのかもしれない。
病室で意識の戻らないR子に寄り添っていると、R子の夫が来た。
その時初めて会った。
「R子は小さい頃から体が弱くて、私が一緒に住んでいる時も気をつけていました。家事も私がやるようにして、R子にはなるべく休ませていました。家事は得意な子だから、やれる時は好きにやってもらっていました。」と、
なんとなく話したら、その夫の表情が俄かに曇ったのを見逃さなかった。
この人、何かやったんだ、と信じるのに難くない瞬間だった。
何があったのか真相はわからない。亡くなった理由は脳内出血だけれど。
その夫は元妻のことをとても悪く言っていたそうだ。でも、その子供に会うと
そんな人が育てたように思えない愛らしくもしっかりした子なのだそうだ。反面教師ということもあるかもしれないが、話を鵜呑みにしないほうが良いのではとも思えた。
その夫は今はまた歳下の女性と再婚をし、R子との間の2人の子を引き取り、再婚相手にも娘が産まれ5人家族で暮らしているそうだ。
R子の長男が厳しい以上に教育されているようだと、虐待ではないか、心配だと、おじは危惧していた。おじは写真を見せてくれた。成長したR子の長男はR子に似てよく整った顔立ちだが、その目には深い悲しみを感じた。
R子についてよく知っている人間がおじとおば以外にいるとすれば私以上の者はいないだろう。R子の長男に何かを話せる日は来るのだろうか。彼は私の存在など教えてもらっていないだろうし、私も彼らはずっと遠くの縁のない存在に思える。
会って話して心を温められるチャンスは作ればあるのに、それができない私たちは
なんの力に阻まれているのだろうか。
人生は簡単にできそうなことほどわざわざ複雑で絡みあっていたりする。
そうしてるのは全て人の意識なのだ。
あの子の目はずっと悲しそうなままなのだろうか。
その7に続く。そろそろ完結しよう。