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1. Everyone is happyな話ー父と娘、二人で旅に出たー

ちょうど、1年前のことです。
定年を2年後に控えた父と、20歳を1ヶ月だけ残した私の二人きりで、パリとスイスに旅をしました。

大学2年生まで続けていた部活を辞め、大学3年目にして初めてのゆったりとした長い休みを迎えていた私に、「ヨーロッパに一緒に行こう」と、父が提案してくれたことが始まりです。当時の私は、部活を辞めるという選択をしたことに、まだ囚われていたように思います。辞めてよかったと心から思うために、必死でした。(この経験を通して多くの学びがあったので、いつかnoteに綴れたらなと思っています。)そんな私を想って、父は旅行を計画してくれたのでしょう。

大学生の夏休みというのは、想像以上に時間がたっぷりあります。それでも、うだるような暑さの八月は過ぎ去り、あっという間に旅行に出発する日が来ました。持っていくものなんて決まっているはずなのに、パッキングに時間がかかるのは何故でしょうか。AM5:00。眠い目を擦りながら、母に「行ってきます」を告げ、父と娘の二人旅が幕を開けたのでした。

チェックインを済ませた後は、ファーストフードの帝王”マック”からの甘い誘惑に、すんなりと白旗をあげてしまいます。13時間のフライトにエネルギー補給は欠かせないものです。
「うまし」
と、言いながら顔を綻ばせる父と、そんな父の姿を撮影する娘。大した会話をすることはなく、ただ朝マックの美味しさを再確認したのでした。


いよいよ搭乗の時刻となりました。指定された席に着いたところで、4人家族に英語で声をかけられました。なんとも、小さい子供二人と両親の席が離れているということで、私たちに席を交換して欲しいとのことです。
「Sure!!!!!」
父がすかさず答え、私達は飛行機の最後列へと移動しました。
少し前(遠い昔ですが笑)までは、席を譲ってもらう側だったのに、席を譲る側になったことに時の流れを感じました。父の隣にいると、ついつい子供の気分になりますが、世間から見たら立派な大人です。シャキッとしないとな。

座席の入れ替わりのため移動する途中、客室乗務員のマダムが、不思議そうな顔で私たちを見ましたが、状況を理解した彼女は一言、
「Everybody is happy!」
と、真っ白な歯を見せてくれました。
私はその時、思わず笑ってしまいました。無意識のうちに、感謝の言葉をかけられると踏んでいたからです。
でも、よく考えればそうだよな。みんなが気持ちの良い選択ができたなら、それが一番じゃないか。
ありがとうと言われるより満たされた気持ちになって、楽しい空の旅になることを確信したのでした。

パリへと向かう飛行機






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