レザークラフト初心者の話

 いつだったか、書店でレザークラフトの本を見かけた。以来レザークラフトに興味を持つも手を出さぬまま生きていた。
 そうやってレザークラフトを横目でにらむだけだった人生が、先月になってようやくレザークラフトに挑戦する人生へと変わった。無駄に大袈裟な導入部。

 まずクラフト社の「レザーハンドソーイングセット スタンダード」と、事前に視聴したYouTubeの動画で勧められたからという理由で菱ギリ、それからディバイダは見当たらなかったので先送りし、圧着用のローラーを購入。それと前後して書店で教本を数冊。
 最初に作った(?)のはセットに含まれていたカードケース製作キット。ここでわかったのは、たとえフェルトを敷いても木槌でぶっ叩けば当然音と振動が発生する。音はどうあれ振動が厳しいので、これはアパートやマンションでは難しい。買ってよかった菱ギリ君。菱目打ちを押し付けて出来た跡にズブズブぶっ刺す。
 こうして一列に並んだ縫い穴がありませんできません。注意しないと菱ギリが斜めに刺さります。すると反対側にはフラフラ千鳥足の縫い穴が並びます。真っ直ぐ刺す意識を持っていて損はないので、字面が少々物騒だけど常備すべき。
 それから縫う。縫う時の注意点は教本や動画を見るべし。とはいえ、注意点などと言うほどの事でもないので簡単。実に簡単。問題は縫い終わりの始末で、これはまだ上手くできないので課題継続。コバ処理やったらカードケース完成。使う予定ないけど。

 さて、こうして入門セットに付属したカードケースキットは完成したのだけれども、もちろんこれが欲しくてレザークラフトを始めたわけではない。使う予定もないし。
 しかしだからといって、いきなり大物製作に入れるような技術も知識も根性もない。つまりレザークラフターレベルを上げるために、何か簡単に作れるアイテムと向き合わなければならない。それは実用性とは無縁かも知れないし、それ以前にかなりの確率で失敗作になるはずだ。そんな物のためにお高い革を買えるわけがない。
 そんな自分が出会ったのは、ユザワヤの牛革100%ハギレパック。500グラムほど入っていて価格はおおよそ1000円。100グラムあたり200円。革の原料は主に食肉処理された家畜の皮だと聞いたのだが、副産物としての革の方が自分が喰ってる肉よりも高いという悲しい現実。肉より高い牛革で、満足度では牛丼にはるか及ばぬ謎アイテムを作るのだ。
 買い足すのは材料だけではない。”何か”を作ろうと思った時に高確率で必要になりそうで、それでいて入門セットには含まれていない道具……カシメ打ち具とバネホック打ち具だ。両方とも、アレコレ入ったセットを購入。

 肉より高級な牛革でまず作ったのが、面白味の欠片もない小物入れ。長方形に切った革を三つ折りにし、両サイドを縫い付けてバネホック(つまりはスナップボタン)を取り付ければ完成。型紙も思慮深さも必要のない一品。ついでにカシメを使ってベルト通しを付けてみたが、位置のせいで少々見栄えが悪い。おまけにヘリ落としを忘れていたり、そもそもまっすぐ革を切れてないといった問題点もあったが、それ以上に使い道がないのが一番の問題だろう。どうすんの、これ?

 次に作ったのは、キーケースというかキーホルダーというか、とにかくそんな感じのシロモノ。それっぽい金具と、強制引退させたキーホルダーから外した金具を使い、方眼紙を切って試行錯誤しながら形やサイズを決めていく。出来上がったのはダサくてかさばる酷いヤツ。それでも初めて”使うため”に作ったので、一応使っている。

 こうして始まったレザークラフト。いったいどのくらい続くかは不透明ではあるけれど、作ってみると何かしら改善すべきポイントが見つかるので、まだもう少しは続けたい。それにもう一点、すでに作っているのでその話もしておきたい。
 気が向いたら、だけど。

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