モじゃなくてコ
この前ふと思ったんですけど、「理系」は賢そうに聞こえるけど「工業高校」だとあまり賢そうに聞こえないような気がしませんか?それは多分わたしのようなOBが工業高校のイメージを低下させているからですね、実に申し訳ない限りです。今回はそんな話。
古の工業高校生は恐らくかなりの確率で世話になったと思われるアイテムに、ポケットコンピュータという物があります。略してポケコン。念のため、あれとは違いますからね。
そのポケコンがどのような物かというと、電卓売り場の片隅で見かける関数電卓にプログラム機能を付けて、ついでに入力しやすいようにキーボード一体型にしちゃいました、というような感じです。これを入学直後に買わされるわけです、教材として。
学校教材なら世話になったのも当然、と言いたいところですが、この場合の「世話になった」は真面目な意味ではありません。むしろ真面目な意味で世話になった記憶がほとんどありません。
じゃあ何をしていたのか。プログラム機能があるということはゲームが作れる!というわけで、もっぱら授業中のゲーム機として世話になっていました。教材だから没収のリスクもありませんし!さらに言うと学校の図書室にはポケコン専門誌が所蔵されており、そこにはかなり高度なゲームプログラムも掲載されていました。
念のために補足すると、「プログラムを掲載」というのはプログラムリストが誌面にみっちりと印刷されている状況です。授業中の暇つぶし手段に飢えている高校生はその誌面を睨みつつ、一文字一文字をミスなく自分のポケコンに入力していたのでした。授業時間を使ったりしながら。
そうこうするうちに、誰かがどこからか情報を入手してきます。「どうやらポケコン同士をリード線などで繋ぐとプログラムのコピーが出来るらしい」。人気のゲームがクラスの大半のポケコンにコピーされるようになるのも当然の流れです。
また、定期試験にはポケコンの使用を許可された教科も存在していました。そうなると皆、考える事は一緒です。誰かがカンニング用のデータを入力し、そのコピーを求める連中がテスト前に列を作ったものでした。
こうして三年間を共に生きたポケコンに対して愛着がわくのも当然の事なのですが、そんなポケコンも今では生産を終了してしまっているそうです。まあスマホやグラフ電卓の方が明らかに優秀ですからね。
しかし個人的にはポケコンが復活してほしいところです。手ごろなサイズに乾電池で数十時間駆動するスタミナ。そしてなにより、リアルモードだのプロテクトモードだのといったややこしい話をしてこない(比較的)単純なつくり。コンピュータの基本的な構造を理解したり、試行錯誤でプログラミングに親しんでいくにはちょうどいい環境ではないでしょうか。