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ミュージカル モーツァルト 観劇記録

ミュージカル『モーツァルト』11月29日、30日の2公演を配信で観劇したので感想をまとめたいと思います。

『モーツァルト』はミヒャエル・クンツェ(脚本・歌詞)、シルヴェスター・リーヴァイ(音楽・編曲)による、「才能が宿るのは肉体なのか?魂なのか?」という深遠なテーマをベースに、その高い音楽性と重層的な作劇で“人間モーツァルト”35年の生涯に迫った作品です。

「僕こそ音楽」「星から降る金」の有名ナンバーは知っていたのですが、本作を見るのはこれが初めてで結末の救いようのなさには衝撃を受けました。

今回は配信で2公演でダブルキャスト両方を見ることができたので、その違いみたいなところを中心に記録に残したいと思います。

キャスト

ヴォルフガング・モーツァルト...古川雄大/京本大我
コンスタンツェ(モーツァルトの妻)…真彩希帆
ナンネール(モーツァルトの姉)…大塚千弘
ヴァルトシュテッテン男爵夫人…涼風真世/香寿たつき
コロレド大司教…山口祐一郎
レオポルト(モーツァルトの父)…市村正親
セシリア・ウェーバー(コンスタンツェの⺟)…未来優希
エマヌエル・シカネーダー(劇場⽀配⼈)…遠山祐介
アントン・メスマー(医師)…松井工
アルコ伯爵(コロレドの部下)…中西勝之

アンサンブル…朝隈濯朗/安部誠司/荒木啓佑/
奥山 寛/後藤晋彦/木暮真一郎/田中秀哉
西尾郁海/廣瀬孝輔/港 幸樹/山名孝幸/脇 卓史/
彩花まり/池谷祐子/伊宮理恵/樺島麻美/
久信田敦子/鈴木サアヤ/原 広実/松田未莉亜/
安岡千夏/柳本奈都子

アマデ…白石ひまり/星 駿成/若杉葉奈

ダブルキャストの方については後述するので、シングルキャストの方から…

コンスタンツェ⋯真彩希帆さん
ヴォルフガングの妻で、ヴォルフの才能を認めつつも彼の心を理解できず苦しむ。
ヴォルフにインスピレーションを与えなければならないと思い、支えているけど、そんなコンスタンツェをよそ目に夜は遊び耽るヴォルフに対する思いをぶつける「ダンスはやめられない」のナンバーは圧巻でした。ヴォルフと結婚するまでのキャピキャピしたキャラクターとは打って変わって、ヴォルフを愛してるけども、自分には愛を向けられていない苦しさが感じられました。

ナンネール⋯大塚千弘さん
自信にも音楽の才能はありながらも、女という理由で自由は与えられず苦しむ一方で、弟ヴォルフの活躍を願い続ける優しさを持つ。
父が亡くなったと伝えに来たシーンでの目には、それまでヴォルフに期待していた姉の優しさは無く、家族を裏切ったヴォルフへの怒りが浮かんでいて怖かった(笑)。

コロレド大司教⋯山口祐一郎さん
モーツァルトの音楽の才能に囚われてしまった1人。モーツァルトの音楽を自分のものにしようと試みるも、それが叶わなず、ヴォルフの活躍を阻止しようとする。
山口さんのコロレド圧巻ですよ。力強く威厳のある大司教を演じられるのは山口さんしかいないんじゃないですか?『モーツァルト』は「苦悩」の作品だと思ってるんですけど、コロレドもまた、モーツァルトの音楽を自分のものにしたいのにできず、神の摂理について学んできた自分にも理解できない「天才・モーツァルトの存在」に苦しめられている1人なのかなと感じました。

レオポルト⋯市村正親さん
ヴォルフガングとナンネールの父。天才を作り上げたという矜恃があり、コロレド大司教に仕えるようヴォルフガングに訴え続ける。
市村さんというレジェンド俳優が演じるレオポルトという父親からはいろいろ感じるものがありました。ヴォルフガングの才能はどこでも生かすことができるのだから、コロレド大司教に仕えることで安泰な暮らしをすることができる。だから、ヴォルフに自由を与えることに葛藤する。ヴォルフには才能はあるが、その他の部分は欠けているから傍に置いておきたい父親心の苦しみが「心を鉄に閉じ込めて」や「私ほどお前を愛するものはいない」でひしひしと感じられました。大千穐楽の30日の公演は大暴れしてて、おでこペチンでは「いい音だった」と小言言ってみたり、足踏み多めだったり愉快なお父さんでした(笑)。

山口さん、市村さんというレジェンド俳優の存在がこの物語に深みを与えていることは間違いないですね。


ここからダブルキャストの役柄の感想に入ります。

ヴォルフガング⋯京本大我さん
京本ヴォルフは生まれながらの天才で、家族からの寵愛を受けていたお坊ちゃまタイプで、すっごく子供っぽいヴォルフガング(笑)。遊び人なんだろうなというチャラチャラさが随所にありました。
全編通して見た時に、「ヴォルフガング」という役にピッタリの俳優さんだなと感じました。正直に言うと、「アイドルが本業でしょ?どんなもんだ」と思っていたのですが、いい意味で裏切られました。歌もお上手ですし、表情がコロコロ変わるところは非常に魅力的でした。市村さんもカーテンコールで仰ってましたが、切なく繊細で儚いヴォルフガングでしたね。特に死ぬ前最後の「僕こそ音楽」は儚さを象徴していたと思います。

ヴォルフガング⋯古川雄大さん
古川さんのヴォルフは京本さんとまた全然違って、努力家の天才タイプに感じました(上手く表現できないけど、生まれながらの天才だが、努力してきたからここまでの才能を身につけれた感じ)。だからこそ、「天才」と呼ばれることに誇りやプライドを持っていて、他人が自分を利用することをそのプライドが許さない。ヤンチャだけど繊細なヴォルフとしては完璧な表現でした。
歌も上手いというか画面割れるじゃないかってくらいの心からの叫びのような歌声には痺れました。

京本さんは高音が、古川さんは低音が美しく響く俳優さんだから、こういうイメージの違いがあるのかもしれませんが…

ヴァルトシュテッテン男爵夫人⋯香寿たつきさん
男爵夫人の印象は香寿さんと涼風さんで全然違って驚きました。本当に別人。
香寿さんは母親のような、聖母男爵夫人。ヴォルフに必要な言葉を「その時」が来たら伝えるタイプ。ヴォルフを導くような優しい男爵夫人でした。でも、決してヴォルフにとって「救い」となる存在ではなく、どんなに苦しんでいても笑顔でいる男爵夫人には残酷で無慈悲な印象を受けました。

ヴァルトシュテッテン男爵夫人⋯涼風真世さん
涼風さんは『エリザベート』で冷酷な皇太后ゾフィー役で拝見したのですが、その時に余りにもどハマりしてしまって、今回も涼風さんがいるから大千穐楽公演の配信を見ることにしました(笑)。
香寿さんとは全く違って、聖母ではなく守護神のような男爵夫人だと感じました。凛として力強さのある歌声、佇まいで「さあ行ってこい」と言わんばかりの「星から降る金」が好きでした。「道は険しいと(王様は言った)」の部分は王様のセリフ(?)ということで低く力強く歌ってみたりと曲中でも多彩な表現をされているのが印象的でした。
カーテンコールでは力強い男爵夫人とは真逆で可愛らしい一面も見れました(笑)。

まとめ

キャストごとの感想はここまで。

物語の結末としては、ヴォルフガングが自分の才能を突き詰めたが為に、家族そしてコンスタンツェとは上手くいかないまま彼の命は尽きてしまう。ヴォルフガングは最期の時まで自身の才能に苦しめられて生きることになる。

あれ、誰も救われてないじゃん?

素直に思った感想はこれです(笑)。

けれど、「モーツァルト」という人物の一生をミュージカルとしてとても上手く描いていて見応えがありました。耳に残るナンバーも多数あり、人気ミュージカル作品に位置づけられているのも納得でした。

キャストが違うと見え方も全然違ってミュージカルの面白さを再認識させられました。

P.S. 考えに考えていたら、ここまで書くのに1ヶ月かかってしまいました…  そのくせ駄文になってしまったのは反省です💦


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