日本流ステークホルダー資本主義になぜ投資家は違和感を持つのか
法と経営研究2024年7月号で、Astonering Advisor LLC代表の三瓶裕喜氏と早稲田大学名誉教授上村達男氏の対談が掲載されていました。
気付きがとても多い対談でしたが、その中で、私たち投資家が日本流ステークホルダー資本主義に対して持つ違和感の原因ついて、なるほど、これではないかと思う事があったのでまとめてみました。
ステークホルダー資本主義とは
ステークホルダー理論とは企業は、株主だけでなく、すべてのステークホルダーに利益をもたらすべきというという考え方です。
世界経済フォーラムいわゆるダボス会議は1971年に創設され、ステークホルダー理論を基本理念としていますが、2020年1月のダボス会議では、公平な課税、反汚職、役員報酬、人権の尊重を含め、現代における重要な問題に言及するステークホルダー資本主義のビジョンを示す「ダボス・マニフェスト2020」を指針として議論が行われました。
2020年9月、世界経済フォーラムは非財務情報の開示のあり方に関する提言をまとめた報告書を公表しました。また、企業が開示すべき非財務情報について、「ガバナンス」「地球環境」「従業員」「持続的成長」の4項目に分け、合計21個の指標を示しています。
思考や態度を短期的なものから長期的なものに変え、株主中心の資本主義からステークホルダー責任主義に移行する事が必要であり、環境、社会、強いガバナンスが、企業そして政府の責任の一部として評価されなければならないとしています。
また、ブラックロックCEOのフィンク氏が2018年に投資先企業のCEOに宛てた書簡でも、長期的な利益を達成するために広い範囲のステークホルダーの利益を追求すべきとしています。
ステークホルダー資本主義に対する日本人の捉え方
「ステークホルダー資本主義」等の考えは、例えば近江商人の「三方良し」の思想のように、古くから我が国に根付いていた経営思想と共通するものがある。
ステークホルダー資本主義は決して欧米発の取り組みではなく、我が国の伝統的な経営思想の再評価と受け止めることができる。
「日本的経営・資本主義思想の良さを積極的に訴え、世界をリードしていくことが望ましい」
などという意見があります。
しかし、特に外国人投資家からはこの様な意見は冷ややかに見られているように感じます。それはなぜなのでしょうか?
実はステークホルダーの概念が異なる
Astonering Advisor LLC代表の三瓶裕喜氏と早稲田大学名誉教授上村達男氏の対談を読んで、なるほどそうなのかと感じたのは、ステークホルダーの概念が日本と欧米で異なるという事です。
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