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ラジオNIKKEIに出演しました(日銀追加利上げのポイント解説)

本日、ラジオNIKKEIのマーケットプレス(9:15~9:30)に出演しました。日銀の利上げについてもコメントしましたので、簡単なメモを出します。


マーケットプレス 前場 ラジオNIKKEI第1 2024/7/31(水) 09:00-11:35


日銀の追加利上げに関して

今日は日銀金融政策決定会合とFOMCの結果待ちです。
日銀が利上げするかどうかは見方が割れているようですね?今朝の日経新聞では利上げの見通しが出ています。

これだけ見方が割れているのも久しぶりです。海外投資家は6割が利上げ、国内投資家は25-30%が利上げで見ていたと思います。

市場によっても見方が割れており、債券市場は無風で利上げがないとの見方で、為替は利上げを見込んでいる人が多かったという印象です。株に関しては今回か次回かという事が企業価値に与える影響はほとんどない訳ですが、展望レポートの内容なども含めて長めの影響を評価することになりそうです。

なぜ見方が分かれていたのでしょうか?

消費や弱い・実質賃金もまだマイナスなので、まだ利上げできる状況にはないと日本人は見ていました。また、国内投資家の間で、中期的な利上げ期待が高まらなかったのは、2月の内田副総裁の「どんどん利上げしていくようなパスは考えにくい」との発言の影響が大きかったかもしれません。

外国人は実質金利がマイナスである事が円安の原因となっていることや、政府の姿勢が変化してきているところを重視していたと思います。

ただ、政府も円安のデメリットから利上げ容認が増えていましたし、三村財務官も円安のデメリットが多くなっていると発言していたことを考えると利上げ機運は上昇していました。

日銀関係者の間でも、マイナス金利解除後、メガバンクや地銀は17年ぶりに普通預金の金利を引き上げ、住宅ローン金利上昇があったとしても預金が借入金を上回るので、追加利上げは家計全体では差し引きでプラスになるとの見方が醸成されていたと思います。

米国の景気・物価


FOMCについては、今後の利下げの方針が焦点ですが、現在の米国の景気と物価の状況をどう見ていらっしゃいますか?

景気は小売りなどで弱いものが散見され、減速してきていますが、深刻な状態ではありません。景気は失業率をどう見るかという事が中心になっています。

このまま、失業率が上がって来るとSahmルール(失業率の3カ月移動平均が、過去12カ月の最低値から0.5ポイント余り上昇した時にリセッションが始まりとする)に引っかかるので、何かしなければならなくなるかもしれないということです。

ただし、失業率の上昇は心配しなくても良いという議論もあります。

1. レイオフを伴っていない≒失業率の上昇は移民の増加によるところが大きい
2. 労働市場が弱まったとしても、Fedには利下げ余地が非常に大きく残っている。
3. 失業率の上昇の一部は移民などによる構造要因だと考えられる。※移民は最初の数年は失業率が高くなる傾向(つまり失業率の平均的な水準自体が上がっている)

ISMとかセンチメントは弱いのですが、ハードデータはしっかりしています。(2018年に利下げした時も結果的にはセンチメントが悪かっただけで不要な利下げだった可能性もあります)

物価は住宅などで一部雲行きが怪しいものもありますが、落ち着いてきています。輸入物価は少し想定よりも上。コンテナ価格なども上がっている。家賃などが上がるという話もあり、夏場は物価がやや不透明要素もある。

市場では利下げはタイミングの問題だけで、利下げは確定的と見られていますが、景気はそれほど悪くないので、指標を見る限り慌てて利下げしなければならないという感じもないわけです。(9月利下げ見通しが多いですが、11月まで待ってもいいのかもしれない)つまり、方向性はだいたい決まっていますが年内何回かなどは分からないという状態です。

マーケットの反応について

日米の金融政策の結果が発表された後、マーケットは短期的に反応する可能性があります。
 短期的な動きに翻弄されないためにはどうしたら良いのでしょうか?

大切なのは、必ずしも初動が正しい訳ではないかもしれないという事です。今回も利上げはサプライズですが、そもそも今年いつか利上げはあると見られていたわけです。

株式に関して言えば企業価値に与える影響が大きい訳ではありません。利上げをすることで出尽くし感が出る可能性もあります。ただ、債券などは利上げをあまり見込んでいなかったので、織り込みが足りないと考えられ、中期ゾーンの金利が上昇したり、為替が円高に振れる可能性はあります。これは、今後の植田総裁のコミュニケーション次第で展開が変わってくる可能性があるわけです。

短期的な動きについていくよりも、状況をしっかりと分析して、様々なシナリオを検討しておくことが大事です。当てようとするのではなく、幅広に意見を聞いてリスクの範囲を確認しておくと良いと考えます。

ポートフォリオの管理

7月は米CPI発表後に、ドル高円安と日本株上昇が反転し、その1週間後にNYダウが最高値から反転しました。
 「短期的な反転だと思っていたら、思いのほか調整の幅と期間が長く、ポートフォリオが傷ついてしまった」という場合、どうしたら良いのでしょうか?

これは私もよくやってしまいますが、以下の4つを意識すると良いと思います。

1. 相場見通しが当たることを前提にポートフォリオを管理しない。最悪シナリオでもゲームオーバーとならないポジションを取っておく。
2. 想定外のシナリオになった時の投資行動を決めておく
3. ニュートラルポジションを理解しておく(資産配分のルールを決めておく)
4. 戦略的追加投資資金を準備しておく

相場の先行指標


前回(7月17日)のご出演時、「相場の兆しを掴めるような自分なりの指標をもっておくことが大切」とおっしゃっていましたが、
 差し支えなければどのようなものか、ヒントを伺えますか?

今では当たり前の事ですが、30年前は日本株を見ている人は日本だけを見ていて米国の個別株を見ている人は稀でした。ただいまは誰もが見ています。

市場よりも少し前を見てみることが大事です。これには正解はありませんが、先行指標となる企業の決算とかは重視しています。

日本企業の中でも常に他社よりも先に行動を取るような会社。例えばオリックスの決算などは決算自体よりも彼らの投資行動を見ると面白いですね。

コモディティとか海運市況なども見ておくと参考になります。

他にもその会社自体ではなく、その会社から出て来るコメントが面白いという会社はあります。幅広に、説明会などを聞いてみるとよいと思います。

相場見通し

8月相場のポイントと、相場の方向性を伺えますか?

今回の金融政策決定後の動きを除けば、それほど大きな動きは出にくいと考えています。

米株は季節性強く、9月は5年連続で下落しています。そのため、夏場は動きにくく9月以降になって大統領選挙の不透明要素が小さくなってきてから、米株も上昇する可能性が出て来るかなと思っています。ただし、FRBは利下げの方向性は打ち出しているので大幅な下落の可能性は小さいと考えます。

日本株に関しては、需給的にはあまり大きなものは期待していません。国内外の機関投資家もある程度の買い余地はあるでしょうが、円高によって同一通貨建てのパフォーマンスは、他国の株との対比でそこまで悪くなく、押し目買い余地もそこまで極端に大きくないと考えられ、需給的な側面からの支えは限定的かと思います。

そもそも、1Q決算は会社業績予想の上方修正や株主還元発表が多い時期ではありません。10月以降、中間決算での業績予想の上方修正と株主還元の増加などを待つ必要があると考えています。

ただ、目先的には今回の追加利上げの影響を見る必要はあります。先々の追加利上げについてもあり得るとの見方が強まると、為替の円高と金利上昇が進行する可能性はあり、輸出企業や金融株には影響が大きく出る可能性があります。


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河北博光 ファンドマネージャー
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