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ラジオNIKKEI出演メモ(10/2)

本日(10/2)、ラジオNIKKEIのマーケットプレス(9:15~9:30)に出演しました。
若干補足を加えた、簡単なメモを作成しました。



中東情勢


中東情勢を巡る地政学リスクが昨日かなり高まりました。ここまではあまり市場には影響してこなかったんですが、昨日はヨーロッパアメリカでかなり意識されたようですね

そうですね。中東問題はこれまで驚くほどマーケットに影響を与えて来ませんでした。ただ、やはりさすがにここまでやられたい放題なってくるとイランも反撃に出てくるということで、これはしっかりリスクが高まってきてるっていう風に捉えられたと思います。

これはいつも同じですが、初動ではリスクオフで安全資産が変われるという事です。金・国債などです。かつてだと、円高も進んだわけですが、今回はそれほど進んでいません。円は既に安全資産ではないかもしれません。

昨日のNYマーケットも経済指標よりも中東問題やそれを受けた原油価格の上昇、安全資産と見られている米国債や金が変われ株をいったん売ったという形です。ただ、物価上昇懸念が出てきたので、金利の低下以上に株が下げたという感じです。


イランが関わってくるというと、これはやはり原油にも影響してくるということですので、その意味でもマーケットへのインパクトがありますね。

そうですね。

ただ金利が株の下げほどは低下しなかったっていうのは、原油価格の上昇や港湾ストなどで物価の上昇が意識されてると思います。

株に関しては、もともと、ダウ平均は9月まで月間では5カ月連続で上昇し、この間に4500ドルあまり水準を切り上げているので、どこで利益確定売りなどが出ても不思議ではなかったという事もあります。

今後は、雇用だけでなく、中東情勢に加えて、港湾やボーイングのストなどもあり再び物価の高止まり懸念も注目されるかもしれません。

米国経済


昨日アメリカ債券買われたことは買われましたが、10年債、利回りは 0.05 ポイントの低下ということで取引を終えておりました。昨日はアメリカで月初ということで、 ISM 製造業を提供指数、それからジョルス雇用導体調査などの発表されておりました。

第 1 週というのは雇用関連の統計が集中するということで、8 月、 9 月はISM が悪化し、雇用もあまり良くないということで、マーケットにマイナスのインパクトが大きかったんですが、昨日出た指標についてはどう見てらっしゃいますか?
 

米国はISM製造業指数は、予想47.5,結果47.2、前月比横ばいですが、中身を見ると雇用は弱かったと言えます。一方、8月の米求人件数は804万件とブルームバーグ集計の市場予想(769.3万件)を上回り、前月から増加しておりマチマチです。

ここから出て来る雇用統計待ちです。

 
ナイキが決算を発表いたしました。こちらがあまり良くないということでNIKEの株価は時間外取引で 5.9% の下落、少し大きめの下落となりました。9四半期ぶりの減収減益ということですけれども、あのどちらかというとこうした。ビジネスに携わっているところの悪材料というのは気になりますね。
 

NIKEに関しては、売上▲10.4%、純利益▲27.5%、北米▲11%、中国▲4%という数字が良くないという事もありますが、経営再建中っていうことなので、新CEOがどのように立て直すかが注目です。

今回は業績予想の取り下げですとか、投資家説明会の延期ということもあったので、大きく下げてるんじゃないかなと思います。

アメリカの小売に関しては業績まちまちな状態になっており、全体像が掴みにくい状況が続いてると思います。

さて、アメリカは利下げ局面に入ったわけですが、前回 0.5% という FOMC の発表幅はどちらかというと予防的な効果があったという受け止め方がされているようですけれど、アメリカの景気が、それほど減速しないで済む場合、この後アメリカの金利やドルはどう動くとご覧になりますか?

そうですね。ソフトランディングが進むということを前提としますと、アメリカの金利は少し上昇傾向になってくると考えています。

実際に10年債と2年債を比べて見ますと、10年債の方が上昇基調になってきてますので。そういうことが今、織り込まれつつあると考えています。

株も基本的にはプラスになってくるという風に思いますし、ドルに関してはこれまで少し売られていたわけですけども、これ以上売られてこない可能性も出てくるんじゃないかと考えています。

米利下げと新興国経済への影響


これ以上あまりドルが売られないということですが、河北さんはnoteというツールで色々と今のマーケットの見方をお書きになってらっしゃるんですが、アメリカの利下げによる世界的なマネーフローの変化に注目していると書かれていらっしゃって、特にアメリカの利下げが新興国にどう影響が出るか、この辺りに関心があるということですね。
 

そうですね。マーケットはそのアメリカの金利の低下幅ですとか、そのスピードに関する議論が多いんですけども、日本にとって見ると、それだけではなくて、新興国への影響が、かなり大きいんじゃないかと考えています。
 
新興国はこれまで、アメリカ金利が高かったために、なかなか金利を下げることができませんでした。彼らの景気はあまり良くなかったのですが、金利を引き下げて景気を刺激する事が出来なかったわけです。

それがアメリカより利下げに転じたということで、新興国も金融を緩和する余地が出てきます。米国が利下げに転換した影響は、東南アジア等の新興国の金利の方向性に与える影響が大きい訳です。
 
その結果、MXSO(MSCI東南アジア指数)は年初から 6 月くらいまではほぼ横ばいでしたが、7月以降、顕著に上昇基調になっています。先進国の株価が調整する局面でもあんまり影響を受けず、ほぼ一貫して上昇してます。

彼らの景気が良くなるということは日本や中国にとってメリットが大きいんと考えています。


これまでは利下げしたくてもできなかったような、新興国がアメリカが利下げしたことによって、今後は利下げすることができる、そしてアメリカだけでなく、新興国の方も景気がよく回復してくるということがこれ、やはり世界経済にも良くなるということですから、そういう意味での、マネーフローの変化が考えられるということですね。
 

はい、特にやはり東南アジアの景気が回復してくると、日本の消費財企業などにとってメリットが大きいと考えます。

中国景気支援策

そして、世界経済への影響というところで、中国についてもかなり関心が高まっていて、ここまでは中国かなり厳しい状況だと、特に不動産不況をから起きる様々な負のインパクトが大きいということで、株価もだいぶ下がっていたんですが、 9 月下旬に相次いで発表されました。

経済支援策、金融緩和それから株式市場の支援策これが矢継ぎ早と言っていい状況ですけれど。株価対策は結構効果があったようですね。
 

そうですね、この株価対策がかなり強烈だなっていう風に思っています。
日本や先進国でこれをやろうとすると、かなり議論を呼ぶような政策じゃないかなっていう風に思います。

これまでの中国の経済対策は、不動産市場ですとか、消費刺激策を通じて株式市場にポジティブな与えるっていうものだったわけですけども、今回はとにかく株を上げるっていう施策になっています。
 
その1つはスワッププログラムと言いまして、ETFとかCSI300の構成銘柄を担保にして、株を買って入れてくださいっていうもの、

2つ目は自社株買いに対して低利融資をするっていうものですね。

あと、PBR 1 倍割れの企業に対して、まるで日本みたいですけども、対策のプランを要求するということをやっています。

スワッププログラムと自社株買い資金の提供っていうのは、 資金使途を株式購入に限定したものなので、レバレッジをかけてどんどん株式市場に資金を投入するということを鮮明にしてるわけですね。

非常に株価対策の色彩が強いという風に思います。

スワッププログラムも5000億元ということなのですが、債券とかETFですとか、こう言ったものを担保に株を購入する資金を提供するということなんですね。

レバレッジもかけられるということですし、この自社株買いのための資金に低利融資する資金も3000億元からということですけれど、自社株買いをやろうとする企業にとってはかなり魅力的ということなんですね。
 

そうですね。 6% の金利のところを 2.25% で貸すということなので、これであればその株主資本コストを考えてもどんどん借りて自社株買いするいうインセンティブがわくと思います。

あと日本みたいだとおっしゃった。その PBR 1 倍の企業に対して改善プランのページを要求しているということなんですね。
 

はい、まるで日本の政策をコピーしたんじゃないかなと思いましたが、中国はPBR 1 倍割れだけではなく、株が継続して下がってる場合にも改善プログラムを出すということです。

株が上がらなかったら改善プラン出さなきゃいけないっていうことですから、もっと厳しいかもしれないんですね。

とにかく株を上げるというこの施策ですが、結構中国の投資家の方々は株式投資をされてる方が多いとされていますので、資産効果という意味で内需に巡って押し上げる効果が期待できると言えるんでしょうか?

もう少し様子を見てみなければ分かりませんが、そういう効果も期待できるかもしれません。

中国では国慶節の長いお休みが始まったのですけれども、やはり節約思考が強そうだというふうには言われていますよね?

そうですね。消費は現時点ではそれほど大きく回復してきてません。そのため、そこを刺激したい部分があるという風に思います。経済政策の効果を見るにはまだ早すぎます。

少なくとも株価対策は効果があったという中国ですが、本当に景気が底入れできるかどうかっていうのは、もうちょっと時間がかかり、見極めに時間がかかるということですね。
 

そうですね。不動産とかは構造的な問題があるので、それが一気に改善できるかっていうと、それはなかなか難しいと考えています。

不安定な日本株市場

日本株は相変わらず不安定な展開が続いています。アメリカ以上に変動率が大きい日も結構多いんですが。そもそも、日本株は、なぜこんなにボラティリティが高いんでしょうか?
 

これは難しいんですけども、マクロトレードが中心になっていまして、ボトムアップで売買をしている人が極端に少なくなっていることは原因なんじゃないかなと思います。

ここ数年、まあ4-5 年、日本のアクティブファンドのパフォーマンスの不振が続いていますので、ファンダメンタルズで売り買いする人からマネーの流出が続いていると思います。

つまり本来だったら買うべき人が買いませんし、銘柄の入れ替えも起こりにくいということです。ヘッドラインニュースだけで動いてると感じます。

様々なスタンスの投資家が参加している市場であれば、様々な思惑から売買が発生しますが、今の日本株はそれが起こらない。一方通行になってしまいます。市場の厚みがなくなっています。

石破政権誕生の影響

石破総理が誕生したわけですが、その警戒感も日本株を買いづらくしているという指摘があります。新しく誕生したこの石破政権に対する見方はいかがでしょうか?
 

金融所得課税や法人増税などの話もありますが、どれも短期間で実現するものでもなく、基本的には岸田政権の経済政策を引き継いでいるので、石破首相の経済政策のここが不安というものがあるわけではないと思います。

初日の下げは石破ショックという言葉で言われていますが、むしろ高市ロスという感じです。

ただ、政権基盤が脆弱である事への不安もありますし、今回の衆議院議員選挙、来年の参議院議員選挙とある中で、日本の政局がどう変わっていくのかという漠然とした心配はあると思います。

アベノミクスの継承を掲げる高市氏や構造改革を掲げる小泉氏に比べると、財政再建路線が市場から人気がないのも事実です。

石破総理となったことで、日銀の政策への影響はどうご覧になりますか?
 

高市氏であれば日銀の利上げが難しくなるとの見方が広がっていましたが、石破氏が首相となった事で、日銀は自然体での政策運営となると考えられます。

衆議院議員選挙が今月末まで終わるということで、その後の日銀政策決定会で利上げがテールリスクとしてはありえると考えていました。

けれども、昨日に出てき日銀の「主な意見」を見ていますと、かなりハト派の内容になってるので、そういった心配は少ないのかもしれません。

石破さんが勝ったということが伝わった直後、大きく円高になりました。考えてみると、円高になるということは、インフレ圧力は緩和されるということにはなりますよね。

為替が円高に振れることで物価上昇圧力が弱まれば、金利引き上げの理由は低下します。

ということは、ますます、日銀は利上げをする必要性は低下するということにもなりますね。

そうなりますし、この日銀の議事要旨を見ていますと、ハト派の人たちの意見は、かなり慎重と言いますか、ここまで慎重な意見だと、本当に利上げできないんじゃないかなと思うぐらい。慎重な意見が目立ちます。

米国経済に関して、「ソフトランディングを想定しているが、雇用を中心に底入れが確認できるまで注意深く見極める必要がある」とか「米国経済はソフトランディングする可能性が高いが、そのための利下げの幅によっては、ドル安・円高、株安となるリスクがある。この点の見極めには、なお時間を要する」などという意見がありましたが、これらを見極めようとすると米国の利下げ局面終盤まで待つことになりますので、当面利上げしない方が良いと言っているようにも聞こえます。

7月会合後に“一定のペースの利上げ”との見方が広がったので、それを否定するために「時間的余裕」を強調し慎重なスタンスを示しているのかもしれませんが、私はかなりハト派の意見があるのだと感じました。

昨日発表されたこの議事要旨を見て今月の利上げは心配しなくてよいと思いました。

世界の富裕層の運用は?

河北さんは ご著書「世界標準の資産の増やし方」などで世界標準となっている資産運用、海外富裕層の資産運用というのは、インフレや地政学リスクから資産を護ることを目的しているということをおっしゃっていらっしゃいます。
その観点で考えると、今はどのような運用方法が考えられますでしょうか?
 

本の中でも書いていますが、基本方針に変化はないと考えています。

彼らの運用方針は、そもそもインフレですとか地政学リスクに備えた運用を行っているわけです。

海外では期待リターンの見直し。海外では期待リターンに見合った運用の定義が、1990年代からは明らかにインフレを入れたものに変わってきたわけです。

その結果、インカムゲイン中心つまり現金や債券中心の運用からエクィティを中心とするトータルリターン重視の運用に変わってきたわけです。さらにその資産も債券・不動産中心から、オルタナティブを含む様々な資産に分散投資しているわけです。

運用資産も高流動性のものから低流動性のものへにシフトを進めているので、この程度の動きでドラスティックに運用方針は変えません。

さらにその地政学リスクに関しては、スイスのプライベートバンクの運用のことを書いてますが、欧州は徹底した国産分散投資をしてますので、彼らは儲けるためにお金を動かすというよりも護るための分散投資で、すでに分散させていますので、大きな変化がないと思います。あるとすれと、ボランティリティが変化してますので、リスクウェイトを調整する程度ではないでしょうか。

その辺り資産運用に対する考え方、日本と少し違うところがありますよね。
 

日本はやはりずっとデフレだったので、そのインフレを考慮した運用の方針の変化に少し遅れたということはあると思います。

河北さんのそうしたお考えですとか、日々のマーケットの見方などはnoteというツールの方で公開されていらっしゃいます。けれど、8 月に出されたご著書の方ではその辺りを含めてお話があるということですね。

本では基本的なことを書いています。それを踏まえて、実際のマーケットの動きに合わせて、補足する形でnotedでは記事を出してるイメージです。


マーケットプレス 前場 ラジオNIKKEI第1 2024/9/4(水)9:15-9:30の15分間で話しています。1週間は、ご視聴いただけます♪

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河北博光 ファンドマネージャー
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