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市場動向の確認と経済ニュースの注目点(12/15~12/21)

割引あり

今年も残りわずかとなりました。今週もマーケットの動きと注目したニュースを確認していきますが、この時期は来年に向けた相場のテーマを考えたり、1年間を振り返ったりしたいですね。
少し時間を見つけてその様な記事も書いていきたいと思っています。




<マーケットチェック>

クリスマス前は相場参加者も減るため落ち着いた動きになることも多いのですが、今週は日銀・FOMCと金融政策のイベント週だったこともあり、比較的大きな動きとなりました。

マーケットでは米国は来年4回の利下げが2回となり、日銀は来年はじめに利上げという解説が多いと思いますが、私はもう少し見方が変化してきていると考えた方が良いのではないかと考えています。今回は少しそのあたりを解説してみたいと思います。


<株式>

米国株もこれまで堅調過ぎたことの反動から軟調な動きとなっていますが、日本株も勢いに欠ける動きが継続しています。

NYダウは12月18日まで50年ぶりに10日連続安となりましたが、上昇相場が変調したとは考えている投資家は少なそうです。

日米の差は企業業績・金融政策・政府の政策ともに差があり、構造変化への動きがなければ、割安感だけで日本株を選択するとしても残念ながら短期的な動きに留まると考えられます。

<日米の定性的な差は歴然としている>

企業業績
12月日銀短観でも、大企業の2024年度下期業績見通しは下方修正されたましたが、S&P500の2025年予想増益率は+10%台半ばが維持されています。

金融政策
今週のFOMCと日銀決定会合で若干修正はされましたが、FRBが利下げ、日銀が利上げという方向性の中での修正です。

政府の政策
トランプ次期政権が法人減税を計画している一方、石破政権は2026年4月から防衛増税として法人税率を引き上げるとしています。

トランプ次期政権が大規模な規制緩和を打ち出している一方、石破政権で構造改革策は期待されていません。

金曜日にはNYダウも一時大幅に反発しましたが、株価が下落してくると過ぎに市場をサポートする発言が出てくるあたりが、米国らしいと思います。


<金利>

FOMCは予想通り0.25%の利下げでしたが、マーケットではタカ派と捉えられました。ドットチャート25年利下げ見通しは4回→2回に下方修正されていますが、これ自体はある程度予想通りだったと思います。

金融政策の解釈はかなり専門的で細かな文言の解釈もあるため難しいと思いますので、今回のFOMCがタカ派的な利下げと解釈された理由を少し解説してみました。

<今回のFOMCがタカ派と捉えられた理由>
0.25%利下げ、ドットチャート25年利下げ見通しは4回→2回に下方修正というのは概ね事前予想通りだったと思います。
しかしながら、マーケットはネガティブサプライズと判断しました。これは記者会見からわかった2つのサプライズにあります。

1.FOMCの参加者には投票権のある人とない人がいますが、投票権のある人に関してはパウエル議長が上手くまとめたこともあり、12名の参加者の内で反対は1名でした。しかし、投票権の無い人は7名中3名が反対しました。つまり、利下げが必要かどうかということ自体が非常に微妙だったということです。(ちなみに、来年になるとFOMCで投票権のあるメンバーが一部入れ替わります。そうなると賛成票を投じた人が減り、反対票を投じたい人が増えることも予想できるわけです)
2.トランプ新政権の影響を織り込み切れていないFOMC参加者もいるため、ドットはまだ修正の可能性があるとしています。つまり見かけのドットチャート25年利下げ見通しは2回となっていますが、これは後ずれする可能性が示唆されているいるわけです。

これを受けて、FF金利先物が織り込む25年度の利下げ見通しは1回になっています(つまり報道ではドットチャートを利下げがあと2回とされていますが、マーケットはすでに1回あるいは利下げ終了を織り込みだしたのです)。

パウエル議長の発言からは、積極的な利下げサイクルは利下げサイクルは既に終了したと見ることが出来ます。

また、パウエル議長の発言内容に関わらず、 FF 金利の誘導目標レンジを 4.50~4.75%から 4.25~4.50%へ引き下げることなどを決定した段階で、米 10 年金利は4.5%前後であったわけですから、今回の利下げ決定により、2022 年 11 月以来約 2 年ぶりに実効FF 金利と 10 年金利の逆イールドが解消することになったわけです。

また、ドル・ヘッジコストの低下により「ヘッジ付き米 10 年債」の
利回りも約 2 年ぶりにプラスに転じています。

これは過度な金融引き締め状態は既に解消されたことを意味していると考えてよいでしょう。

もちろん、実効 FF 金利と米 10 年金利の水準が概ね一致しているという状態は、引き続き中立金利との対比ではFF 金利自体はまだ高いとも言え、インフレの状況を確認しながら利下げ判断は行われていくという事でもあります。

ただ、米景気は実際に極めて好調であり、また中立金利自体も水準は不安定であることから、この先の利下げについては、慎重なペースとなる可能性が高いわけです。

少し今回と類似性がしてきされている1995~96年の調整利下げについて確認しておきます。

1995~96 年の調整利下げの振り返り

1995 年にも今回同様の予防的利下げが行われました。その時は累計 75bp の調整利下げの完了後に長期金利は大きく上昇しています。

95年のケースでは、IT 革命による生産性の上昇によってインフレ圧力は低下しているものの、「景気が好調」でインフレも粘り強いため、「次の一手」は利上げになるという思惑が高まったことが要因であったとされています。

今回についても、調整利下げが終了する場合には長期金利は上昇に転じる可能性も考えられます。

パウエル議長は打ち止めまでは示唆していないものの、 9 月以降累計 1%の調整利下げで一連の利下げが終了となり、市場で「次の一手」は利上げとの思惑が台頭する場合には、米長期金利は再度 5%程度まで上昇する可能性もあるでしょう。

日銀の金融政策も大方の予想通り、現状維持となりましたが、マーケットは想定以上にハト派と捉えたようです。特に植田総裁の会見中に円安が進行しました。

<日銀の政策がハト派と見られた理由>
「消費者物価の上昇に加速感が見られず、追加利上げを急ぐ状況にはないと認識している」とブルームバーグ等での事前報道がありましたが、実際に日本のインフレ率は減速しており、追加利上げは不要と判断したと考えられます。

物価の基調の弱さは、来年も継続する可能性があり、特に物価の構造には注意が必要です。

つまり、企業収益は過去最高水準にありますが、収益改善のドライバーは原材料コスト等の上昇を上回る価格転嫁となっており、ここで得た収益を、労働生産性上昇率を上回る賃上げに使っているという構造です。

結果として賃金も物価も上昇しているわけですが、賃金上昇を価格に転嫁するという形にはなっておらず、やや歪な構造となっています。これは、日銀が望む「賃金と物価の好循環」とは言い難いわけです。

過剰な価格転嫁や労働生産性上昇率を上回る賃上げは、持続的になり難いと考えると、日銀は利上げには慎重にならざる得ないわけです。

市場では、来年1月の利上げ確率を6割、そうでなくても3月の春闘第1回目集計の結果が好調であれば3月での利上げを見ています。

ただ、インフレ構造の脆弱性を見ると、円安が気になるので利上げの弾は用意しておきたいが、まだ利上げという弾を撃てるにしてもその弾が尽きてきていることを現していると市場は捉えたと考えられます。

このように現在長期金利は1.0%を超えているわけですが、政策金利が0.25%に過ぎない段階で早くもこの様な議論になってきたことに関して、市場はハト派というよりも日本の物価構造の弱さを再確認したのだと思います。

日本の物価構造に関してはもう少し慎重に見極めていく必要がありそうです。


<為替>

為替は円安が進行しました。日米の金融政策は概ね予想通りだったわけですが、将来予想という点で思った以上に米国がタカ派、日本がハト派と見た向きが多かったと思います。両者ともやや構造的な話でもあったので、単なるタイミングの話とは捉えられなかった面があると思います。

特に、日銀は円安が進行していたとしても、利上げという弾はあと1回と見られだしたのは厳しいといえます。

日本のみ金融引き締め、米国が緩和という流れは終了が近づいていると述べていましたが、そのメッセージが想定よりもやや早く、そしてやや強く出てきたという印象です。

ただ、問題は引き続き緩和を行いたい、欧州や新興国のほうが大きいと考えられ、日米の枠組みだけで捉えないほうが良いというのは従前から説明しているとおりです。


<注目したニュース>


12/15日経 キオクシアホールディングス上場

<要約>
半導体メモリー大手キオクシアホールディングスが、2023年12月18日に東証プライム市場へ上場する。想定時価総額は約7,800億円と当初目標の半分に留まったが、上場資金277億円をAI向けNAND型フラッシュメモリーの増産に投資する予定。市場では2025年以降のAI需要拡大が期待されている。

主なポイント:
上場の背景と資金活用
上場資金は三重県と岩手県の工場増設に投じ、経済産業省から最大2,430億円の補助金も得る。
調達規模が小さい理由は、株式価値の希薄化を懸念する既存株主への配慮。

業績と市場環境
NAND型フラッシュメモリー市況が低迷し、2024年1~3月期の営業利益率は低下。
NAND市場は2025年に前年比50%成長が見込まれるが、市況次第で業績が不安定。

主要株主の動向
上場後、米ベインキャピタルが出資比率52%、東芝が32%に。
韓国SKハイニックスは転換社債を保有し、将来的に出資比率を引き上げ経営関与を強める可能性がある。

競争環境
NAND市場で世界3位(韓国サムスン、SKハイニックスに次ぐ)。
DRAMを手掛ける競合と異なり、NAND専業のため市況変動に弱い

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