
情報は咀嚼しながらとる
最近、投資情報の取り方について話をしていて気になったことがあります。
日本人の多くの人たちは優等生だからかもしれませんが、言われていることをそのまま受け止めているようなのです。
これは、学校で先生がおっしゃったことを、そのまま信じることに慣れているからかもしれません。今でも数学の問題などで先生が教えたやり方と異なるやり方で解くと不正解とする先生もいるようなので、そのようなことが影響しているのかもしれません。
私は、夏に出した著書「世界標準の資産の増やし方(東洋経済)」の中で、価値に対する情報と価格に対する情報ということを書いていますが、資産運用の世界では、価格に対する情報があふれており、専門家と言われている人たちによる価格に対する情報の解釈をそのまま受け取るのは大変危険です。
「価値に関する情報」と「価格に関する情報」
経済情報の中でも、特に日々値動きがある株式など資本市場の情報には、
「価値に関する情報」と「価格に関する情報」があります。
「価値に関する情報」とは、その会社の本質的な価値が増加するか減少するかのヒントとなるような必須の情報です。
一方、「価格に関する情報」とは、その日の株価がなぜ上がったのか下がったのか、あるいは株価が上がりそうか下がりそうかといった情報です。
株式市場を投機的な場と考えて、リターンを得ようとするのであれば、「価格に関する情報」も大事です。しかし、長期で資産形成をするための場と考えるのであれば、重要なのは「価値に関する情報」で、「価格に関する情報」はほとんど意味がありません。
ところが、日々ニュースで報道される情報は、大半が「価格に関する情報」で、「価値に関する情報」は限られています。
日々大量の「価格に関する情報」に接していると、どうしても価格を追うようになってしまい、自分たちが本当に求めているものが分からなくなることが懸念されます。
プロの長期投資家は、様々な情報の中から「価値に関する情報」を抽出していきます。また、「価格に関する情報」の中からも「価値」に影響を与える情報に読み替えられるものがないか探していくのです。それでもプロの投資家も多くの場合は、価格に関する情報に振り回されます。それは顧客も社内の関係者も日々の動きに敏感で説明を求められるからです。
また、月次や四半期ごとのパフォーマンス評価も気になります。そのため、価格に関する情報を無視できず、長期投資のマインドセットを維持することができなくなるのです。
それに比べ、個人投資家は誰に説明する必要もありません。日々相場を見る
必要がないという特権を最大限活かして長期投資を行ってください。
もちろん、資本市場の動きを理解するということは、とても面白いことです。それを理解することで、長期の資産形成ができると考えると、資本市場
を学ぶことはとても楽しいことです。
ただ、どっぷりとつかり過ぎると、逆に見えなくなるものもたくさんあることを意識しましょう。情報には「価格に関する情報」と「価値に関する情報」があると思って情報を収集してください。そのような習慣がつくと、徐々に情報の採り方が分かってきます。そして市場の動きの大局観を理解するためには、毎日相場に貼り付いている必要があるわけではないことが理解できるはずです。
「世界標準の資産の増やし方(東洋経済)」より
投資を始めると、何でも知っていたいと思うのは自然ですが、深く考えずに情報を100得るよりも、しっかりと考え自分なりに咀嚼した情報を1つ得たほうが成果につながりやすいということはよくあることです。
分かった気になっても役に立たない情報はあっても意味がないのです。
毎日1つ注目するニュースを見つけてみる
おそらく、投資を行っている多くの人たちが日経新聞を購読しているでしょう。毎朝モーニングサテライトなどを見ている人もいるかもしれません。
でも、多くの人が、ただ新聞に目を通すだけだったり、テレビのニュースを聞き流しているだけなのではないでしょうか。これでは、内容の外面を1つの角度から見つめているにすぎません。また、その解釈がよく考えずに頭の中に刷り込まれてしまいます。
私は投資で役立つ情報というのは、自分自身で咀嚼し納得して得た情報だけだと考えています。自分で行った解釈というのはそれが正しければもちろんよいですが、仮に間違っていたとしても、咀嚼することなく得た知識よりはましであるというのが投資の世界での情報です。
私がお勧めしたいのは、例えば日経新聞であれば、毎日1つの記事を選んで、その記事を多角的に考えてみるということです。その記事が書かれた背景は何か、別の角度から考えてみるとどのように見えるか、それに関連する記事はないか、関連する記事からその記事を深堀出来ないかということです。
このようなことを続けていくと、物事を関連付けて考える習慣や、投資戦略のリスク、相場急変時の対応などをする力が身についていきます。
最初から、そのような読み方をするのは難しいという人は、記事を1つ選んで要約してみるだけでも良いでしょう。要約できるくらいしっかりした読み方ができると記事をしっかりと理解できるようになります。
また、モーニングサテライトなどを見ている人は、見る前に、相場を軽くチェックして自分なりの解釈を考えてみてください。その上で、専門家といわれている人たちの話を聞いてみるようにするとよいでしょう。
毎日行うのがきつかったら、たまにでも良いと思います。投資の情報というのは、結果を見るのはほぼ意味がなく、仮説を立てて検証していくということが経験になっていきますので、仮説なしに結果を見ても得られる効果は限定的なのです。
考えることなく得た100の情報よりもしっかり考えた1つの情報の方が役に立つと私は考えています。
しっかり考える時間をとるために、情報を思い切って捨ててみるということも大切なのです。
以前にもこのテーマで記事を書いているので、改めて掲載しておきます。
<メンバーシップ募集中です>
掲載されている記事は、個人の見解であり、執筆者が所属する企業の見解などを示すものではなく、証券投資や商品申込み等の勧誘目的で作成したものではありません。
記事の情報は信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その確実性を保証したものではありません。最終的な投資決定は、読者ご自身の判断でなさるようにお願いいたします。
当コラムの閲覧は、読者の自己責任でなされるものであり、本情報に基づいて被ったいかなる損害についても一切責任を負いません。
なお、記事の内容は、予告なしに変更することがあります。
いいなと思ったら応援しよう!
