昔の自分を見ているようで
10月6日。本職は公休日だが、午前中は恒例のタイミーバイト。通算21回目のコンビニレジ業務であるが、ほぼ毎回異なる店舗で勤務し、店長やスタッフとは初めて顔を合わせる。この日も初めて訪れる店舗で、外国人女子学生と男子学生の若造2人と共に店を回す。ちなみに私はアラフォーのおっさんである。
女子学生は正式に所属するアルバイトだが、男子学生は私と同じくタイミーから派遣で来たのだという。第一印象は少なくとも陽キャには見えなかったとだけ書いておく。どうやら私と同じタイプのようだ。
この日は8時から13時までの5時間シフトだった。毎週金曜にシフトインしている女子学生は慣れた動きでセンター便の品出しやウォークインの飲料補充をしていたが、スポット派遣の男子学生と私はレジで突っ立っているだけの時間が長かった。12時までは客足も鈍い。早い話が暇だったのである。
「タイミーは頻繁にやられるんですか?」
私は暇つぶしも兼ねて男子学生に話しかけた。
「いや、滅多にやらないですね……」
「じゃあ、どこかのコンビニ店舗に所属しているんですか?」
「していないです……」
「てことは昔コンビニで働いていたとか?」
「そうですね……」
「私も昔社員として働いていたんですけど、うんぬんかんぬん」
「はい……」
ここまでで会話は一旦終了。程なくして私はコムドットの一番くじを販売していることに気付き、注意点があるので教えようとした。
「コムドットのくじ、注意して下さいね。トラップがありますから。
くじ券にはA賞やB賞の記載だけじゃなくて、よく見るとその下にメンバーの名前も書いてあって、必ずそのメンバーのやつを渡さなきゃいけないんですよ。B賞なら誰でも良いとかじゃないんで。
私は前回行った店でそのトラップに引っかかって、お客様に自由に選ばせて記載と違うメンバーのやつを渡しちゃったら店長に怒られたんで、気を付けて下さい」
「はい……」
申し訳ないが、察してしまった。彼は人と話すのが苦手なタイプだ。私は私でしゃべり過ぎたとは思うが、年齢が大きく離れているとはいえ立場は全く同じなのだから、欲を言えばもう少し何かコメントが欲しかったし、質問をしてくれても良かった。
「いやあ、Amazonの返品なんて初めてやったからお客様に教えるの大変でしたよ」
「はい……」
「あったあった、レジロールありました! 地下に倉庫があって、そこに大量にありました。ああ良かった」
「はい……」
………
………
………
私も暗くてコミュ障なのだが、男子学生は更に輪をかけていた。業務上の会話ですら反応が薄いのだから、プライベートの雑談なんかは絶対にしないほうが良いと悟った。話すのが苦手な人は、必要以上にベラベラ話されたり質問されるとウザイと感じる可能性が高い。私には分かる。何故なら昔の私がそうだったから。
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社会人一年目の冬、上司と二人きりの出張は実に2週間近くにも及ぶ泊まり込みだった。夜は旅館の客室でコンビニで購入したビールや酎ハイ、ポテチにカルパスで晩酌をするのが日課だった。
会話は少なかった。私は上司の話にただ相槌を打つか、質問に答えるだけで話が広がらなかったのである。昔の私はそんな感じだった。そんなことを思い出していたら、今私が男子学生に感じていることが、当時の上司が私に感じていたことなのだなと今更気付いた。
今では仕事中、自分から上司に話しかけることはほぼ無いが、上司が雑談を始めたら相槌に終始せず何か一言感想などを述べるようになったし、質問されたら答えを言うだけでは無く一言添えたり質問で返したりも出来るようになった。
男子学生は、せめてこれくらいのコミュ力を身に付けないと社会に出てから色々と苦労することだろう。何故なら私がめちゃめちゃ苦労したから。だがそれをアドバイスとして伝えることはしなかった。たぶん「こいつ初対面の癖にウザい」としか思わないだろうから。私がそうだったから。
ただ、男子学生はまだ若い。時間はまだまだたっぷりある。この先も色々な経験をしながら少しずつ気付き、人格から変わってくれることを切に願う。
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※この日の夜、とあるサークルのオフ会があり、そこで上がった話題である友人の婚活事情についても執筆するつもりでしたが、長くなったので次回にします。