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『M-1グランプリ2022』全ネタ感想

 おはようございます、当方128です。
 無謀にもM-1決勝で披露された全てのネタの感想を書きます。
 初めての試みなので過度な期待はしないで下さい。

0.個人的な分類方法

 ネタを分類したほうが感想を書きやすいので、まずは分類について説明します。

0-1.単発ネタ乱射系

 文字通りネタを乱発しているのですが、それぞれが独立しており、単体でボケになっているのが特徴です。ボケ同士の繋がりが無く、ストーリー性が薄いのが弱点です。

0-2.物語(フリとオチ)系

 1ネタを通して物語の構成になっており、前半のフリがあるからこそ後半のオチが活きて大きな笑いになるパターンです。前半の笑いが薄くなりがちなので、後半で巻き返せるかがポイントになります。4分という短時間では難しい手法です。

0-3.狂気系

 今回のキーワード「狂気系」。個人的に一番好きなパターンです。説明が難しいので高橋維新氏の文章をお借りします。

「水曜日のダウンタウン」という番組(と、藤井健太郎という作り手)は、笑いを提供することを第一目標とはしておらず、人間の弱さ・汚さ・醜さを画面上に析出させることを第一目標にしている節がある。(中略)笑いは、あくまでその中で副次的に生み出されるものに過ぎない。

こちらの記事より引用

0-4.喧嘩系

 こちらも好きです。古くは極楽とんぼ、近年では見取り図の漫才でしょうか。特に後半で喧嘩を入れてくると盛り上がると思います。

1.ファーストラウンド感想

1-1.カベポスター

 物語(フリとオチ)系でした。ユリアへの愛を叫ぶ参加者(Aとする)が真の主人公だったというのは物語として非常に面白いです。叫びやすい言葉のはずのAが最下位というのはボケとしては弱く感じましたが実はフリで、それがあるからこそ最後に優勝するというオチが活きていました。

1-2.真空ジェシカ

 単発ネタ乱射系でしたが、打率が高すぎて全体的にも面白かったです。コントに入る前フリで既に「共演者の信頼」と「高齢者の人材」というダジャレをぶっ込んだのは掴みとしては最高だったと思います。前半はハッキングとマウス操作が特に面白く、後半はAIに仕事を奪われた人たち、六法全書の同人誌、かいみょん、グリム童話と畳みかけが凄かったです。

1-3.オズワルド

 私の好きな狂気系。夢の中だと信じてやまない畠中さんが本当に狂気に満ちた人に見えました。漫才という前提を無くせばホラーですらある状況です。前述の通り、狂気から副次的に生み出される笑いというのが深みがあって良きなのです。それでいて伊藤さんの叫びツッコミもちゃんと的を射ており、完璧なコンビネーションだと思います。

1-4.ロングコートダディ

 単発ネタ乱射系(というか“笑い飯”系)でありながら、「一緒に走ろう」の外国人選手に関しては物語(フリとオチ)系というか伏線回収系になっていた構成は良きです。単発ネタは計10人以上も登場させ、それをたった2人で兼役するというのは新しさを感じました。「太った人」=最初の日本人選手、ということで良いんですよね?

1-5.さや香

「34歳で免許返納した石井さん」は個人的には狂気系でした。よって副次的に深みのある笑いが生み出されていました。加えて後半で喧嘩系になっており、狂気系と喧嘩系の相性は良く、最後は声をそろえて「出られるけど入られへん」で落とすところまで含め、1本のネタとしては完璧でした。

1-6.男性ブランコ

「大きい音符を運ぶ」という行為は本来なら狂気系ですが、「ああそういう世界なんだ」と、何故か自然に受け入れてしまいました。よって、オズワルド・さや香のように「狂気から生み出される笑い」ではなく、ボケは王道なボケだったように思います。それが悪いと言いたいのではなく、むしろ独特な良い雰囲気になっていました。浦井さんが倒れる天丼は演技含め面白かったです。

1-7.ダイヤモンド

 個人的には狂気系に分類します。「狂気から生み出される笑い」は右肩上がりで来ました。ツッコミは「もねってやめて!」を数回経ての「ああああ!!」と怖がり出すのが面白かったです。ローソンいじりは、まあ、逆に宣伝になったと思うので……。

1-8.ヨネダ2000

 ハイ優勝(違)。前回(2021)の敗者復活戦で「YMCA寿司」を見た時からいずれ化けると思っていましたが、こんなに早くとは……。YMCAは開始34秒ほどで早くも曲が始まりましたが、今回の「餅つき」は前半が単発ネタ乱射系となっており、1分50秒でようやく「ぺったんこ」が始まり狂気系に変わるという二部構成なのは良い工夫だったと思います。爪痕はしっかり残せたはずなのでテレビに出まくって欲しいです。

(参考動画:YMCA寿司)

1-9.キュウ

 ツッコミのほうが狂気系に見えました。ボケ・ぴろさんが途中からボケになっておらず、ツッコミ・清水さんの喋り方が事実上のボケになっているというのがギミックとしては面白かったです。

1-10.ウエストランド

 毒舌の単発ネタ乱射系と見せかけて、途中から毒が強すぎて狂気系と化していました。河本さんをあえて抑えることで井口さんを引き立てているのでしょうが、河本さんも怒りまくり喧嘩に発展するパターンも是非見てみたいです。というか河本さんがボケなのかよ。

2.ファイナルラウンド感想

2-1.ウエストランド

 1stと同じネタを持ってきたのには驚かされましたが、『R-1ぐらんぷり』をdisってきたので更に驚かされました。関テレやフジテレビを敵に回してまで毒を吐く覚悟は賞賛に値します。ただ、まあ、そうねえ……いや、いいや。優勝おめでとうございます。

2-2.ロングコートダディ

 面白いコンビは「原監督→HARA」と掴みからピークレベルで面白いんですよね。単発ネタ乱射系で、真空ジェシカ並みに打率も高かったです。

2-3.さや香

 狂気系(途中から新山さんも狂気に)でありながら物語(フリとオチ)系にもなっており、喧嘩系でもある。個人的には一番好きでした。優勝でも良かったと思います。

3.毒舌ネタが優勝して良いのか

 もう夜も遅いのでこれで終わろうと思いましたが、「傷つけない笑い」が主流になった令和4年に毒舌ネタが優勝してしまって良いのかという疑問について、自分なりの答えを出さねばなりません。

 そもそも毒舌ネタは『エンタの神様』時代、当然のように横行していました。長井秀和さんやだいたひかるさん、波田陽区さんと、いずれも実名を出してdisっていたのですから今では考えられないことです。その頃に比べればウエストランドはアイドルや芸人の実名を伏せている分、まだ良心的であるとも言えます。

 ただそれ以上に思ったのは、昭和を生きてきた審査員の皆様にとって、毒舌ネタが再び流行って欲しいという願いもあったのではないかということです(特に立川志らくさんは)。その期待も込めて高めに点数をつけたのかもしれませんし、その勢いがファイナルでの投票にも繋がったと考えれば納得は出来ます。

 ただ、良い子は(大人もですが)絶対に真似をしないで下さいね。確実に好感度は下がりますよ。

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