【病気】遺伝しない。
ウバといいます。
訪ねていただきありがとうございます。
半年ぶりに検査を受けた。私が罹患した病気は、とても珍しい病気だった。経過を見ることが重要になる。
結果、経過は良かった。手術によって腫瘍を完全に取り除くことは出来なかったし、後遺症は一生消えない。だが、経過は良かった。
手術して以降、はじめて「経過は良いですね」と医者から言われた。その場で泣きそうになった。
最近の不調も、全部が後遺症だと思い悩んでいた。このまま死ぬまで悪くなるのか。私はもう駄目なのか。そんな気持ちで日々を過ごしていた。
「経過は良いですね」
この一言にどれほど救われたか。医者は続けてこう言った。
「今の痺れや痛みが無くなることはないでしょう。ですが、間違いなく良くなっています。」
この苦しみは死ぬまでなくならない。知っていたことだが、改めて言われるとキツイ。
それでも間違いなく良くはなっている。その一言に私の心は救われた。久しぶりに心が晴れていた。
検査から帰宅後、私は嫁さんの実家でお酒を飲んだ。ここ最近の不調も忘れて飲みたかった。晴れた心で飲むお酒は美味い。
お義父さんが私に尋ねる。
「おまえの病気は遺伝するのか?」
一気に心が沈むのを感じた。もちろん表情には出さない。たぶん、相手に悪気はないのだ。悪気がないからこそ、その刃は深く刺さる。
「お前のお父さんは結局なんの病気で死んだんだ?」
やめてくれ。親父と病気は関係ない。表情を作るのに私は精一杯だった。お前も親父の病気が遺伝したのか?とでも聞きたいのだろう。
私の父は自ら死んだ。ある意味では病気なのだろう。だが、その病気は遺伝しない。そして、私の病気とは関係ない。
私の病気は稀な病気だ。遺伝しない。遠い未来、我が子が同じ病気に罹患しても、それは遺伝ではない。
表情は崩さず、遺伝の心配はないことを伝える。あなたの孫たちは、この病気とは無縁の人生を送れる。
「でもな、病気ってのは隔世遺伝もあるって言うから。」
もう、本当にやめてくれ。
どうしてほしいのだ?お義父さんの曾孫、つまり私の孫に頭を下げてればいいのか?私のせいで、あるいは父のせいで、お前らを奇病に罹患させてしまった。と、頭を下げればいいのだろうか。
私が入院する日、義姉の旦那さんからお守りをもらった。のちに嫁から聞くと、そのお守りは【自称】明日が見える人から買ったらしいとのこと。
その時、明日見え子(仮名)さんが言ったらしい。子に遺伝するだのなんだのと。それをお義父さん達は信じたのだろう。
明日が見える能力は正直どうでもいい。信じはしないが否定もしない。好きに明日の天気でも当ててたらいいと思う。
多くの犠牲の上に立つ医学。その医学が遺伝しないと言っているのだ。明日が見えるからなんだというのだろうか。
私は、我が子らにしっかりと伝えた。この病気は遺伝しない。お前たちは大丈夫だ。お父さんに明日を見る能力はないが、お前たちの明るい未来は見える。全部を伝えた。
言葉ひとつで、ひとは明るくも暗くもなる。癒しもするし、傷つけることだってできる。どうせなら明るく癒したい。
大切に使っていきたいものだ。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
お前に何が見える、明日見え子(仮名)さんよ。
それでは、佐世保の隅っこからウバでした。