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HIRF(高強度放射電磁界)とAC20-158Bのopen comment

1.背景

過去記事の「型式証明とHIRF(高強度放射電磁界)」を記載したところで、これからもう少し具体的な適合性証明の内容について記載しようと思っていたところですが、2022年6月9日を期限としてFAAは、HIRFに関する解釈アドバイザリー、AC20-158をRevision-AからRevision-Bに改訂するためのオープンコメントを募集していることに気づきました。

今回の記事では、確定している適合性証明の全体像を記載するのではなく、ドラフトであるAC20-158Bを題材に、HIRFの適合性証明に関する最新内容の一端についてご紹介したいと思います。具体的な変更内容に言及する記事となりますので、若干、細かな内容になってしまうのですが、ご容赦ください。

2.AC20-158AからAC20-158Bへ

はじめに、FAAがオープンコメントを募集しているURLですが、下記がソースとなります。

Aircraft Certification Service (AIR)
Draft Advisory Circulars (ACs) Open for Comment
https://www.faa.gov/aircraft/draft_docs/ac/

このドラフトが提案された背景には、PART23が改訂されて久しいこともあり、これに関するPolicy statementを取り込む必要性があったことや、CATAと呼ばれる4大航空当局、FAA,EASA,TCCA,ANACの間で長らく調整されていたHIRF規則の解釈の違いから生じる問題点について、一定の結論を得たということが考えられます。

補足:PART23は、米国において数年前に大規模な変更がなされています。HIRFの要件の内容だけでなく セクション番号も変更されました。64改正以降は、新PART23となります。セクション番号の変更については下記をご覧下さい。本記事では、PART23の補足は最小限とさせていただいています。

補足:14CFR part23/25/27/29におけるHIRF規則の該当セクション

ドラフトACから引用されている米国規則を参考として掲載します。

○section 23.2520(amdt 23-64以降)
○section 23.1308(旧PART23)
○section 25.1317
○section 27.1317
○section 29.1317

3.PS-ACE 23-10の反映

ドラフトのアドバイザリーサーキュラーであるAC20-158Bにおいて、AC20-158Aには記載されていなかったPS ACE 23-10の内容を取り込む必要があります。

具体的な変更点を紹介させて頂く前に、Policy statement自体に軽く触れておきます。PS,policy statementは、advisory circularと似たような性質の文書ですが、PSが、より局所的な範囲に対する指針を示す場合に使用される文書であるのに対し、ACは、規則全体の指針を示す場合に用いられます。誤解を恐れずに言えば、PSは暫定的に使用される文書です。事実、PS-ACE 23-10は、PART23の飛行機に関するHIRF等の証明に関するInternal HIRF environentに関する指針を示したものでしたが、これは適合性全体と言うより局所的な指針と言えるものでした。これが今回AC20-158Bに取り込まれる意義は、HIRF規則全体に対する適合性証明手法の一部にPSが完全に組み込まれることを意味します。

さて、ここから具体的な話をしますが、AC20-158Bのドラフトを読んだ当初、形式的にPS-ACE 23-10を取り込むのだろうと思っていました。しかし、よく見ると3点の違いがあることに気付きました。以下はPS ACE 23-10とは異なる内容で、AC20-158Bに記載されたものを列記しています。もちろん、下記に記した内容以外は、PS ACE 23-10を反映した内容となっています。

相違1
安全性ー解析でレベルAシステムに分類されたシステムに対して、一定の条件を満たすシステムの場合には統合システム試験をせずに証明ができることを示唆するような記述が追加されました。事実なら、極めて証明の負担は軽減されます。

相違2
level-2 aircraftに対するinternal HIRF environmentをDO160 sec20のCAT.RRで良いとした点が変更点になります。PS-ACE 23-10では、この条件が適用されるにはCLASS-1 aircraftだけとなっていました。今回の変更提案では、level 2 aircraftに分類される航空機のinternal HIRF environmentにもCAT.RRが適用できることになっています。事実なら大きく要件が緩和されたことになります。Positiveにこのことを考えた場合、従来までのCLASS 1/2/3/4からLEVEL 1/2/3/4に変更された新PART23において、performanced basedな要求に対応するための新解釈が示されたと言えそうですが、Negativeに捉えた場合、単純なミスという可能性もありそうです。ミスなら修正されるはずです。

相違3
level 3 aircraftに適用されるinternal HIRF envir onmentがDO 160 section 20(CS)のCAT.AからCAT.Mに変更されています。技術的な観点からはCAT.Aのままでもよさそうなのですが、若干厳しいCAT.Mへと変更する提案がなされています。理由があるとすれば、技術的な理由以外が考えらAC21-16GにおいてレベルAシステムに適用されるDO160のリビジョンがRevF以降とされていることに起因している可能性がありますが、現時点では理由は分かりません。


下に示すグラフは、機内に誘導されるInternal HIRF environmentを示したものです。両軸とも対数表記で、縦軸がミリアンペアで、横軸が周波数でメガヘルツです。このグラフから、CAT.Aこそが最小要求であることがわかりますが、ドラフトでは、CAT.Mと記載されています。

参考:

上記に記載したClassやlevelの違いをより正確に把握する必要がある場合、PART23のsection 23.2000や23.2005のを参照してみて下さい。またAC23.1309-1Eと比較すると違いが分かると思います。

4.規則解釈の統一

このドラフトACでは、米国、欧州、カナダ、ブラジルの航空当局間で、規則の解釈に大きな相違があった点を認めた上で、レベルAシステムの証明範囲で特に議論を呼んでいたバックアップシステムについて、幾つかの事例を交えた上でドラフトACのAPPENDIX-Bに詳述されています。この内容を紹介するには紙面が足りないので割愛しますが、安全性解析に関連する内容になります。

5.まとめ

今回の記事は、確定的な内容ではなく、現在進行中の題材をテーマにしてみました。今回は、AC20-158Bのドラフトの内容について、過去からの変更点を中心に記載してみました。いずれAC20-158Bの内容そのものについてもご紹介していきたいと思っています。また記事に対するご要望やご質問がある場合は、コメント欄に記載頂ければ、今後の記事に反映させていきたいと考えています。

免責
記事の内容は、細心の注意を払って記載をしていますが、絶対的なものではありません。本記事の内容により生じるいかなる損害、不利益等についても責任を負うものではありませんので、あくまで参考としてご使用頂ければ幸いです。



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