海の日を_01🍁【春ラジオ秋】【シロクマ文芸部】
『海の日を祝日に決めたなら、山の日の祝日があってもいいんじゃね』
毎年、海の日が近づくと、篠岡さんがいつかのラジオでそう言っていたことを思い出す。ほんとに山の日が祝日になったからだ。冗談で言っていたことが現実になるなんて傑作だ。
秋浩は通勤電車に揺られながら、ワイヤレスイヤホンを装着して、スマホアプリの『ラジコ』でラジオを聴きながら、今年の海の日は7月15日の月曜日だなと思いふけっていた。
『時刻は１時になりました。こんばんは、篠崎光です』
『ラジコ』は偉大だ。好きな時間に篠崎さんの深夜ラジオを聴けるなんて。社会人になって５年目の秋浩は何度もそう思っては感謝していた。
小さい頃からラジオは身近な存在だった。実家ではいつもラジオが流れていた。母親いわく「テレビだと見たくなっちゃうでしょ。ラジオなら家事をしながら聴けるから」だそうだ。
学生時代の通学のときも、受験勉強のときも、いつもラジオを聴いていた。社会人になってからも通勤時に愛用の携帯ラジオで聴いていた。スマホアプリの『ラジコ』でラジオを聴けることは知っていたが、ギガを消費するのが嫌だったのだ。
そんなある日『ラジコ』にはタイムフリー機能がついていて、放送日から一週間以内ならいつでもラジオ番組を聴けることを知った。放送を聴き始めてから24時間以内に合計３時間までという制限があるが、放送は１回しか聴かないし、番組もだいたい２時間なので問題ない。なによりも、深夜放送を通勤時間に聴けるということがありがたかった。もっと、早く知っておけばよかった。
一番の推しは毎週月曜日、ジャパン放送の深夜番組オールナイトジャパン、通称『ＡＮＪ』の25時から27時までの１部を担当している篠崎光だ。30年近く続いている長寿番組だ。
毎回、下品でくだらないことばかり話してるし、ハガキ職人はおかしい人たちばかりだ（もちろん褒めている）。でも、ときには芯を突いたことを話したりして、飽きることはない。
たまに電車の中でラジオを聴きながらニヤニヤしているときがあり、周りの視線を集めることがあった。コロナ禍で日常的にマスクを着用するようになってから、ついニヤニヤしてしまっても周りに気づかれないことがわかり、コロナ禍が明けた今でも、電車の中でラジオを聴くときはマスクをするようになっていた。
ショートショート？をつなげて連載中です。毎週金曜日に投稿予定です。
目次に各話のリンクを貼っていますので振り返りにどうぞ。
小牧幸助さんの企画に参加しています。
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