見出し画像

恋花粉/濃い古墳【毎週ショートショートnote】

あっという間の3年だった。

受験は全滅で4月から予備校生だ。高校生活最後の思い出作りに卒業旅行へ行こうと誘われた。男4人、女4人のいつものメンバーで話しあった結果、3泊4日でUSJへ行くことに決めた。

「あした、朝一で付き合ってくれない?」

3日目の夜に花菜から突然誘われた。

「どこに?」
「もず」

聞きなれない土地の名前だった。『百舌鳥』は漢字で3文字なのに読みは2文字で変なの、と思った。百舌鳥にはたくさんの古墳があり、それを見に行きたいとのことだった。女友達は誘いづらく、歴史が得意でしょという理由で俺に白羽の矢が立ったようだ。

そしていま、黄色に輝く古墳を一緒に眺めている。

「きれいでしょ」
「うん」

古墳に埋葬された人を恋い慕う女性が後を追い、一緒に埋葬された。女性は花粉を香水のように身に着けていて古墳には蜂などの昆虫が集まり、いつしか濃密な菜の花で覆いつくされるようになったとも言われている。

「春が…来ちゃったね」
「うん」

(410文字)



たらはかにさんの企画に参加しています。
毎週ありがとうございます。

#毎週ショートショートnote
#ショートショート
#恋花粉
#濃い古墳

いいなと思ったら応援しよう!

ひろいてん
サポートして頂いたら有料記事を購入します!