忘年怪異【毎週ショートショートnote】

「あった、ここだ」

記憶とは違う気がしたが、なんとなくこの店であっていると思ったのだ。店に入ると既に忘年会が始まっていた。

毎年開催している恒例行事だ。卒業してから20年以上経っているがみんな学生時代と変わらない。

「いやー、迷っちゃってさ」
「毎年同じ場所だろ」

「ん？再開発の工事が始まって店の場所が変わっただろ」
「再開発？まあいいや。とりあえず飲もう！」

「おお、改めてかんぱーい！で、何の話してたんだ」
「今年の漢字だよ」

「確か『金』だったな」
「オリンピックの年は『金』ばっかだ」

「でも東京で開催できてよかったな」
「東京？今年はパリだぞ」

違和感を感じた。今年は2021年だぞ。パリは2024年じゃないか。からかってるのか？

「遅くなってごめん」
「こっちこっち」

「再開発で店の場所が変わったんだな」
「お前もか…」

「何の話だ？」
「オリンピックの話だけど」

「オリンピックって言えば、東洋の魔女がすごかったな」
「お前、生まれてないだろ」

（410文字）

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