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2004年の遊園地【うたすと2】

1995年に販売されたオペレーティングシステム(OS)がインターネットに革命を起こした。これまでパソコンは業務用として活用されていたが、この新OSの登場によって、一般家庭にもパソコンが急速に普及したのだ。

それまでの通信手段は固定電話だった。その後、携帯電話へと進化を遂げたがいずれにせよ通信手段は『音声』によるものだった。それが、パソコンが普及するとメールやパソコン通信などの『文字』へと移行して、インターネットという海へと広がっていた。

2004年、とある掲示板に何気ない書き込みが投稿された。

遊園地で酔っ払いに絡まれた女性を助けてお礼を言われた。

さらに数日後、助けた女性からお礼に『ブーケ・ドュ・ミュゲ』というオルゴールが届けられたという書き込みをしたため、「創作だ」というアンチコメントや嫉妬するコメント、逆に応援するコメントなど、スレッド内で一気に盛り上がった。

女性と付き合ったことがない彼は掲示板で服装やデートの誘い方などの相談ごとを次々と書き込んだ。すると掲示板の住民たちから様々なアドバイスが寄せられ、めでたく二人は付き合うようになった。

掲示板には住人たちから祝福のメッセージや、それと同じくらいの妬みのメッセージが投稿された。

その後、彼女からプレゼントされた幸福のオルゴールとして、あるいは出会った遊園地にあるメリーゴーランドの譲渡に尽力した方への弔いの曲が、いつの間にか変化して呪いのオルゴールとして、『ブーケ・ドュ・ミュゲ』という単語がインターネットの海で一人歩きするようになり、度々ゾンビのように現れることになった。

(おわり)


(『2024年の遊園地』の話はこちら)

(『1969年の遊園地』の話はこちら)

(『2011年の遊園地』の話はこちら)



PJさんの企画に参加させていただきました。6人による楽曲を元に『小説』『俳句』『短歌』『詩』を応募する企画です。

今回は八神夜宵さんと大橋ちよさんの楽曲『風雷』を元にしました。


#うたすと2


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