フリー台本「ピーターパン」 作:書木持 沙羅
NA「ここは、ネバーランド
なりたいものになれる場所
やりたいことができる場所
さぁ、何から始めますか?」
女子大学生、大学でぼんやりと席に座っている。
少女「就職かぁ…
したいことなんてないし、何したら良いんだろう…
何これ、えっと、ネバーランド?あーいいな
私も大人になりたくなーい」
スマホの画面が光り、少女はスマホに取り込まれる。
ピーター「やぁ!」
少女「えっ!!」
ピーター「大丈夫かい?」
少女「ここどこ?」
ピーター「ここは、ネバーランド
君は選ばれたんだ」
少女「は?私、さっきまで大学に…」
ピーター「大人になりたくないって言うから、招待してあげたんだ
さぁ、何する?」
少女「何するって、うちに帰してよ」
ピーター「なんでさ、まだきたばっかりだろ?」
少女「こんなよく分からない場所に、居られないわ」
ピーター「まぁまぁ、良いじゃないか、あ、そうだ
君、やりたいことは?夢とか」
少女「絶賛、悩み中なの!」
ピーター「そう怒るなよ、ほら、小さいときにやりたかったこととかさ」
少女「えー、スポーツ選手とか、絵を描くとか?」
ピーター「うん!いいね、じゃあ、それぞれ見に行こう」
少女「いいって、家に帰してよ」
ピーター「いいじゃん、いいじゃん
まずは、スポーツ選手だね」
少女「そうだけど」
ピーター「ほらほら、そろそろ試合が始まるよ」
少女「え!は?!」
ピーター「(サッカー実況みたいな)」
少女「こんなの無理だよ」
ピーター「いいや、君はできるよ
それに今、君がゴールをしたんだよ」
少女「え?」
ピーター「言ったろ、ここでは君の、そして僕の
思い通りになるんだ」
少女「…サッカー小さい頃、憧れてたんだ
でも、やっているのは男の子ばっかだし、女の子はみんなやめていっちゃってさ
私も流れに沿って辞めたの」
ピーター「あっちの世界は、いつだってそうだ
夢を諦めなきゃいけない
ここはいいだろう?ね?」
少女「…そうね、いいかも!」
ピーター「よーしじゃ、動いてお腹減ったろ?」
少女「うん」
ピーター「何が食べたい?なーんでもあるよ」
少女「じゃあ、3時間並ばないと食べられないパンケーキは?」
ピーター「もちろん、君が望めば、食べられるよ」
少女「パンケーキを食べたい!」
目の前にパンケーキが広がる
少女「わぁ!すごい!おいしそう
いただきます!うわっ…めっちゃおいしい」
ピーター「だろ?」
少女「食べないの?」
ピーター「僕は良いよ、さぁ次は何をする?」
少女「えー」
ピーター「絵を描くんだっけ?」
少女「絵は良いよ、下手だし」
ピーター「いったろ、望めば叶うんだよ」
少女「うーんでも、いいよ」
ピーター「なんでさ!君の夢だろ?ほら」
少女「絵は下手なの、だから辞めたの」
ピーター「まぁ、書いてみなよ」
少女「えぇ…」
そこには、とても綺麗な風景画が
しかし、少女の顔は晴れない
ピーター「素敵な絵じゃないか」
少女「これ、私の絵じゃないもん」
ピーター「これを書いたのは君だよ?」
少女「違うよ、私はこんなに絵がうまくない」
ピーター「そうなの?すごく上手なのに」
少女「これ、昔、憧れた人の絵なの」
ピーター「え?」
少女「うまくなりたくて、なんども模写したけど、
おんなじようには、かけなかった絵」
ピーター「なら、良かったじゃん!今はかけてる」
少女「だから!これは、同じすぎる
私が書いたものじゃないよ」
ピーター「それの何がいけないの?」
少女「望んでできたって、それが、自分の力じゃないなら
意味がないじゃない?」
ピーター「そうかな?ネバーランドに居れば、その絵は君の絵になる」
少女「そうかもしれない、でも、それは嫌だな」
ピーター「なんで?好きなことができるのは、楽しいだろ?」
少女「うん、でも、それだけじゃダメなんだよ
楽しむためには、自分が納得しないと」
ピーター「納得?そんなものはいらないよ
ここに居れば、なーんでもできるんだよ
夢も食べたいものも、大人だっていない」
少女「ずっとここに居たくなるかもしれない」
ピーター「だろ?だから、ここに居ようよ」
少女「でも、できないよ
人はいつか、大人になるんだから」
ピーター「大人になりたいの?」
少女「まだ、なりたくはないかな、いつかはならなきゃ」
ピーター「ここに居れば、ならなくて良いんだよ?
それに、あっちの世界は、夢を諦めなきゃいけないんだろ?」
少女「そうなる人も居るかもしれない」
ピーター「辛いってみんな言うんだ、だったら、ここに居た方が
楽しいよ」
少女「寂しくない?ここにずっと居るのは」
ピーター「寂しくなんてないよ、みんな来てくれるからね」
少女「ずっと居てくれる人は居た?」
ピーター「みんな、大人になっちゃたんだ」
少女「みんないつかは、大人になるから」
ピーター「ここに居れば良かったのに」
少女「みんな、自分が納得する方に向かったんだよ
あなたは、きっとその手助けをしたんじゃない?」
ピーター「僕は、みんなと楽しく過ごしたかった」
少女「そう思ってくれて、楽しい思いを経験したら、
次に踏み切ろうって思えたのかもね?」
ピーター「そうかな」
少女「そう、きっとそう!
一緒に、帰ろう」
ピーター「僕は、ここに居るよ
大人になりたくないし、君が言ってくれた
僕も誰かに必要とされてるみたいだ」
少女「わかった」
ピーター「帰り方は、分かる?」
少女「ううん」
ピーター「あの、星に向かって、帰りたいと願えば、帰れるよ」
少女「ありがとう」
ピーター「また、来てくれる?」
少女「…大人になったら。また来るね」
ピーター「大人は来れないんだよ?」
少女「子供心を宿して、また来るよ」
ピーター「じゃあ、信じて、待ってるよ」
少女「うん、またね」
NA「そこはネバーランド
なりたいものになれる場所
やりたいことを見つける場所
さぁ、次は何をしますか?」