フリー台本?「私を消して」(モノローグ用)作:書木持沙羅
よく見る夢がある。 小さな少年が、にこにこ笑って、私にしゃべりかけている。
暖かくて、目を覚ましたくない。けど、その少年がなんて言っているのか、何者なのか、私 はわからなかった。
目を覚ますと、私は、私だった。
私の中には私以外の私がいる。
私はその人たちと共存している。
攻撃的な私、寂しがり屋の私、性格の悪い私、どれが本当の私なのか
私にはわからない
今話している私が本当の私かもわからない
命の椅子は一つで、私は本当の私になりたかった ただそれだけ
私は私に困ったことがある。
私の知らぬ間に、バイトをはじめたり、新しい友達ができたり、
それは困った。
時には、けんかに巻き込まれることもあった。
だから私は、私を殺すことにした。
極論かもしれない、でも、それ以外選択肢がないと思った。
私達は、一日に一回話し合う時間がある。
その時間は、明日誰が私になるか、遊びから私以 外は出てこないでとか、
仕事や恋愛など友達のように話すこともある。
その場で、私以外の私を殺す 物理的に 私以外を消せば、
私は一人だ。
私が勝ち取るんだ命の椅子を。
会議が始まった。 私は、一呼吸し、
「ね、みんな、私みんなに・・・消えてほしいの」
と言ってみた。
和解できるなら、暴力的なことをしないに越したことはない。
だから、そう いってみた。
でも、みんなは、そんな私を笑い飛ばして、会議を始めた。
消えるためには、
私が「消えたい」と思うまたは、
「死んだ」と認識する二通りがある
誰も聞く耳を持たないなら、仕方ない、私は後者のほうで、
私を消すことにした。
寂しがり屋の私の首をつかみ、絞める。
私の体は一つ、一人の苦しみはみんなの苦しみである。
首を絞めるとみんなが苦しむ。もち ろん私も。
苦しいけど、ここで引いてしまえば、私は私でなくなってしまう。
その一心で首を絞める力を強くする。
周りの私が私を止め、私から私を引きはがす。 呼吸が荒くなって、
全員が空気を貪るように呼吸している。
「どうしたの?」っと、
首を絞められたのに、優しく笑ってくれる寂しがり屋の私
「なんでもない」
私は冷たく返した。
私は私が嫌いだ。嫌いな私を挙げればきりがないほど、たくさんある。
私は私。
ありふれたこの言葉、私には似合わない。
だって、私にはたくさんの私がいるから。
私は私 でも、みんなも私
誰かひとり掛けたら、それは私といえるのだろうか?
私は私を押し殺して生きる。
決意して、押し殺して、苦しくって、暴走してる。
押し殺した感情が私のことを責め立てる。
泣きつかれた私は、そのまま眠りにつく。
「自分を認めてあげること以上に難しいことはないよね 僕は嫌いな自分を表に出してあげるんだ」
夢に見る少年は、そういった。
はじめて、彼の声をちゃんと聞いた。
「君は誰なの?」 そう聞くと少年はニコッと笑い、
「君ならわかるよ」っといたずらっぽく言い、消えてしま った。
目が覚めた私は、私だった。
私の中には私以外の私がたくさんいる。
夢に見た少年は、かつて私の中にいた一人。
戦隊もののベルトが欲しかったのに、女の子だからって拒否されて、
生まれた子だった。
それを思い出した時、私は嫌いだった私を、
ちゃんと表に出してあげることにした。
攻撃的な私
寂しがり屋の私
性格の悪い私
少年の私
みんながうれしそうに笑った。
「ごめんね、好きだよ」と、私は一人ずつ抱きしめてあげた。
その言葉を聞きたかったというように、
『私を忘れないで』 と言って、消えていった。
目が覚めたら、私は私だけだった。