Autechre〈オウテカ〉全アルバム感想とティア作成
うわっ。じゃあやってくぞ!
autechreの全アルバムの感想を書いてくぞ!
対象は15枚のオリジナルアルバム。じゃあやってくぞ!
最後に個人的な好みでtierを作ってみます。じゃあやってくぞ!
epは書きません。じゃあやってくぞ!
じゃあやってくぞ!!!
1. Incunabula (1993)
IDMの最大公約数を体現しているかのような1stアルバム。AphexのSAWの影響を強く感じる、アンビエント風味な作品。2曲目のBikeのような美しい曲だけでなく、5曲目のBasscadetのような後の作品にも通ずるインダストリアルな曲もある。やはり、どの曲もわかりやすいメロディがあるためかなり聴きやすい。リズムものりやすく、ダンサンブルが曲も多い。複雑怪奇な最近のautechreに比べると物足りなさも感じるが、もっと評価されるべき優れたアルバムだと思う。
[好きな曲]
Kalpol Introl、Bike、Basscadet、Eggshell、Windwind、Lowride、444
2. Amber (1994)
1stアルバムから続くアンビエント路線のアルバム。前作よりもダンスミュージックの要素は薄れており、かわりにアンビエント味が濃くなっている。このアルバムもかなり聴きやすい。のほほんとしたアルバムジャケットからは牧歌的な曲を連想したが、1曲目のFoilを筆頭にダークな曲が多い。AphexのSAW2に近いものを感じる。ラストのTeartearがとてもかっこいい。
[好きな曲]
Foil、Slip、Teartear
3. Tri Repetae (1995)
ここらへんから"autechreらしさ"が少しずつ出てくる。インダストリアルな音楽が前面に押し出され無機質な金属音を堪能でき、グリッチも取り入れている。そこに美しいメロディが組み合わさったりして、バランスの良い逸品となっている。そして情緒的な曲が多い。つまり、エモい。万人受けしそうなので、個人的にはこのアルバムが入門に最適だと思う。autechreを聴いたことがない人は、とりあえずこのアルバムのEutowだけでも聴いてほしい。Eutowはautechreで一番わかりやすくかっこいい曲なので。
いや、むしろ聴かない方がいいかも。autechreがこういう普通にかっこいい曲ばかりだと勘違いしてしまうかもしれないから。
[好きな曲]
Dael、Clipper、Rotar、Stud、Eutow、C/Pach、Overand
4. Chiastic Slide (1996)
4枚目。工場のようにループする金属音のビートと流麗なメロディの融合。実験的な要素が増え始める。しかし、まだ聴きやすい。1曲目のCipaterと4曲目のCichliは、金属音の反復する曲が気づかぬうちに重厚なメロディが支配する曲に様変わりしていて、震える。2曲目のRettic Acは雪を踏む音をサンプリングしたのだろうか? 全体的に3枚目よりもさらにメタリックな音になっているが、なんとなく温かみがある。(後のアルバムが冷ややかすぎるから相対的にそう感じるのかも)
間違いなく傑作ですよ。
[好きな曲]
Cipater、Tewe、Cichli、Nuane
5. LP5 (1998)
前作よりも電子音楽らしく、そしてよりポップになったアルバム。かなりリズミカル。思わず気持ちが昂ってしまうような小気味良いビートが特徴的で、さらにそこに穏やかなメロディを被せた曲が多い。1曲目Acroyear2から高速ビートと口ずさめるようなわかりやすいメロディでとても聴きやすい。なんといっても3曲目のRaeが超名曲。心に沁みる。沁みわたる。ラストのDrane2でのボールが跳ねるような音が次のアルバムの1曲目と共通しているのは意図的だろうか?キャッチーでとても楽しく聴けるアルバムだよ。
[好きな曲]
Acroyear2、777、Rae、Arch Carrier、Drane2
6. Confield (2001)
autechreのターニングポイントといえる21世紀最初の作品。私はこのアルバムが最高傑作だと思う。私がautechreにハマった要因であり、初めて聴いた作品なので思い入れも強い。このアルバムを境に、より複雑で攻撃的なサウンドへと変化していく。とても冷たく、完璧に洗練されている。初めは崩壊気味のリズムや、耳に突き刺さるような音に困惑するかもしれないが注意深く聴いてみてほしい。徐々に心地よくなっていき、音に陶酔することができるようになる。特に最初の3曲は神がかっている。金属球がバウンドする中で不安定な音色が静かに響く1曲目から私はもう虜。2曲目からはビートが攻撃的に。3曲目のPen Expersは音の洪水の中にエモーショナルなメロディが垣間見られて魂を揺さぶられる。最高。日本版CDのボーナストラックも結構良い。アルバムの冷ややかで静閑な雰囲気には合わないが、単体ではよく聴く曲。
[好きな曲]
VI Scose Poise、Cfern、Pen Expers、Sim Gishel、Eidetic Casein、Uviol、Lentic Catachresis
7. Draft 7.30 (2003)
Confieldの流れを汲み、さらにリズミカルにしたアルバム。複雑なビートだがとてもダンサンブル。前作ほどの革新性はないが、親しみやすいアルバムだと思う。聴きやすい。かなり好きなアルバム。このアルバムは何といっても、5曲目のSurripereが素晴らしい。おそらく私が最も多く聴いているautechreの曲はこれ。規則的な音が破滅的に崩壊していく様は圧巻。これ以外にも、このアルバムは1曲の中で大きな変貌を遂げる曲が多い。曲の変容を楽しんで。
[好きな曲]
Xylin Room、61E.CR、Surripere、P.:NTIL、V-Proc、Reniform Puls
8. Untilted (2005)
気を付けて。UntitledじゃなくてUntilted。間違えないように。
妙に明るいアルバム。軽くて、せわしなく跳ね続ける歯切れのよいビートが原因だろうか。今までと同様に変容を楽しめる曲が多い。例えば4曲目のAugmatic Disportは、超複雑に始まったかと思ったら最後は4つ打ち(疑似)になることで驚かされる。だけど複雑すぎてかなりとっつきにくいアルバムだと思った。テンポが速くて目が回る。聴覚しか使ってないのに?
はっきり言って私は好きじゃない。
[好きな曲]
LCC、Pro Radii
9. Quaristice (2008)
前作同様70分程度のアルバムだが、曲数に大きな違いがある。前作は8曲だったが、今作は20曲もある。つまり短い曲がたくさんある。これがなかなか面白い。今までは曲が変容していくことにより1曲が長くなりがちだったが、今作では1つの曲に対し1つのアイディアを使っているようで、短くぽんぽん進んでいく。そして聴きやすい。ノリやすい曲が多い気がする。変化が少ないことで繰り返しが多いからだろうか。前作が陽気だった反動によるものか暗晦な曲が多いが、1つ1つ短いことも相まって軽く聴けるあっさりとした仕上がり。だがアルバム全体として散漫になっている感も否めない。ちょくちょくアンビエントが挟まることで失速する。良い曲は多いが微妙な曲も多い。良いと思った曲でも、すぐに終わってしまい物足りなく感じるものがある。
[好きな曲]
Altibzz、IO、plyPhon、Simmm、Tankakern、rale、90101-5l-l、WNSN、chenc9
10. Oversteps (2010)
1曲目から厳かな雰囲気で、今までと異なることを感じ取れる。ビートレスでメロディアスなアルバム。2つ前のUntiltedが陽気でハイテンポだったのに対して今作は陰気でスローテンポ。そして美しい。とても穏やかな世界が広がっていますね。宇宙って感じ。アルバム全体にしっかり統一感がある。2000年代に入ってから複雑な曲ばかりやっていた2人にどんな心境の変化があったのかわからないが、意外過ぎるほど聴きやすい。ただ、統一しすぎて後半飽きる。
[好きな曲]
r ess、ilanders、known(1)、see on see、Treale、
d-sho qub、Yuop
11. Exai (2013)
2時間。今までは大抵60~70分だったけど、長くなってきたわね。さすがにこれ以上は長くならないと思うけど。
11枚目だからXI→エックスアイ→エクサイ。もしくは「aeのXI」をアナグラムでexaiか。
ずいぶん遠いところまで来た。新たな領域へと足を踏み入れたアルバム。超メタリック。インダストリアルの最終形態か。意表をつくような破壊的なビートが盛りだくさん。改造されて感情がなくなりひたすら攻撃するサイボーグ。この容赦のない雰囲気が本当にカッコいい。しかし時折、感情を取り戻してメロウな美しい音が鳴る。じっくり聴くことでこの複雑な構成を解き明かすことが面白い。最初に聴いたときは訳が分からず駄作かと思ったが、繰り返し聴くごとにどんどん面白くなっていく。このアルバムは長いので、初見の時はCDの1枚目と2枚目の間に時間を空けるといいと思う。1~3時間くらい昼寝とかして。一気に聴くと、疲れて脳の処理が追い付かないと思う。この聴き方は邪道か?
[好きな曲]
FLeure、irlite (get 0)、T ess xi、Flep、bladelores、1 1 is、nodezsh、spl9、cloudline、YJY UX
12. elseq 1–5 (2016)
5部構成で4時間。長すぎ。唯一フィジカルリリースがされてないアルバム。私は物理的に所有していないと気がすまないタイプなのだが、仕方なくiTunesで購入した。5部構成なので1部ごとに分けて感想を書いていく。
○elseq 1
1曲目のfeed1から吹き飛ばされる。初見は威圧されて為す術もなく振り回されるがよくよく聴くとかなりかっこいい。次の曲に進むに連れてメロディがかなり充実しているものが多いことに気づく。4曲目のpendulu hv modaはcloudlineをよりメロディアスにしたような印象でよかった。Pen Expersにも似ている気がした。(penがタイトルに付いているし)
○elseq 2
初っ端から30分近い大作。立体的な音響は面白いが展開が地味で飽きる。実験的というか音で遊んでいる。そして俺たちも弄ばれている。
○elseq 3
20分越えの曲が2つもある。そのうち、3曲目のmesh cinereaLは展開がスリリング(16分前後の箇所など)でかなり楽しめた。
○elseq 4
これが一番好きなセクション。特にacdwn2とlatentcallの2曲がかっこよすぎる。acdwn2の硬質な音はガツンと来て最高。latentcallは、今のautechreがEutowの後継作を作ったらこうなった、という感覚なんですがどうでしょうか。Overstepsのような方向性の穏やかな曲もある。
○elseq 5
アンビエント調なセクション。初めの2曲は繰り返しが多くて冗長に感じたが、3曲目のspaces how Vはかなり良い。静寂の利用が巧み。そして4曲目のfreulaeuxで覚醒する。珍しく4つ打ち。静と動が同居している不思議な曲だ。静かだけど疾走感があってアガる。この2曲は連続で聴くべきかもしれない。
総評としては、所々冗長ではあるが琴線に触れる曲がとても多く、素晴らしいアルバム。ランク付けすると、4>5>1>3>2。
[好きな曲]
feed1、c16 deep tread、pendulu hv moda、chimer 1-5-1、mesh cinereaL、acdwn2、latentcall、7th Slip、spaces how V、freulaeux
13. NTS Sessions 1-4 (2018)
4部構成で8時間。頭イッてんの。なぜ5部から4部に減っているのに時間は2倍になるんだ。今回も1部ごとに書いていく。
○Session1
序盤はかなり単調。8時間もあるため、たっぷり時間を取ってアルバムの世界観を形成しているように感じた。3曲目のdebris funkから本領発揮する。荒々しい金属音による無秩序な音楽に呑まれましょう。8曲目のfour of sevenは純粋なテクノミュージックで普通にかっこいい。
○Session 2
さらに混乱が場を支配していく。1曲目のelyc9 7hresは思わずうろたえてしまうような混沌具合で最高だった。そして、全セッションを通して一番好きだった曲が3曲目のxlood。最初はYMOのラップ現象みたいな音だなと思ったら、どんどん薄気味悪い音が膨らんでいく。後半にかけて果てしなく広がる壮大な音が素晴らしい。9曲目のe0も静謐なアンビエントでとても良い曲だと思ったが、長さの割に変化が少ないのが残念だった。
○Session3
緊張感と重厚感が交錯する。重たい音がかっこいい。このセクションのハイライトは3曲目のtt1pdだろう。Untiltedの頃のような軽いビートに重たいシンセを乗せることで、エキサイティングでハラハラする攻撃的な音楽が出来上がっている。特に7分半からの所や、12分くらいの所が最高。6曲目glos ceramicもとても好きな曲だった。前半の耳に残るメロディパートと後半の金属質なパーカッションパートという2つの味が楽しめる。終盤はSession4へ繋がるアンビエントでしめる。g 1 e 1、nineFly、icariの3曲は、静けさを基調としたおとなしい曲だが、破壊力満点。
○Session4
広大な空間を感じさせるアンビエント。前半3曲は全て高い完成度で、魅了される。3曲目のcolumn thirteenがとりわけ好き。幽玄な雰囲気がおわりを意識させられる。そして、ラストが5曲目のall end。まさか1時間もドローンミュージックをやるとは。(ショーンブースいわくドローンではないらしいけど) 聴くと言うより、音の波に身を任せる。この曲は、この位置にあるからこそ価値が生まれている。この曲単体であれば、そこまで面白くない。少なくとも1時間もかける曲ではない。しかし8時間に及ぶ旅のフィナーレであれば、この1時間は我々に感動を与えるだろう。
そういうことだよね?
長かった。elseqと比べると、部ごとにそれぞれの色が出ていた。4時間で1つの作品になっているelseqに対して、2時間の作品が4つ組合わさってるNTS Sessionsという感じ。しかし、全体的に繰り返しが多く変化に乏しい曲が多い。良い曲だけど半分くらいの長さで良くないかと思う場面が何度かあった(ラジオでのセッションだから仕方ないが)。とはいえ、満足度は高い。楽しかった。このような音楽体験はなかなかできるものではない。今まで聴いたアルバムの最長記録を大幅に更新してしまったし。(前最長記録はThe CaretakerのEverywhere at the End of Timeの6時間)
ランク付けすると、3>2=4>1。
是非皆さんも挑戦して。
[好きな曲]
debris funk、four of seven、gonk steady one、elyc9 7hres、six of eight (midst)、xflood、e0、clustro casual、tt1pd、glos ceramic、g 1 e 1、nineFly、icari、column thirteen
14. SIGN (2020)
えっ、1時間?そんなに短くていいの?
メロディックで温かみのある音が広がり、胸を打たれる。
アルバムの長さも曲の雰囲気も優しい。
変則的なビートはそのままに、余韻が残るような浮遊感のあるメロディがどの曲にも存在している。眼鏡をはずした状態で見る景色のような、ぼんやりとしているメロディが美しい。特に、2曲目のF7の煌びやかな音色には驚かされた。エモい。感傷的になるアルバム。
[好きな曲]
M4 Lema、F7、esc desc、si00、Metaz form8
15. PLUS (2020)
SIGNと対になるアルバム。リズミカルでパーカッションに重きを置いた音楽。autechreらしい。むしろ前作が異質だったのだろうな。6曲目のX4が非常に素晴らしい。メタリックなビートで始まり、速いテンポで軽快。最後は穏やかなピアノで静かに終わる。長尺で変容していく曲はやっぱり良い。6 modや7曲目のii.pre escなどSIGNに入っていてもおかしくない美しい曲もある。
[好きな曲]
DekDre Scap B、ecol4、X4、ii.pre esc、TM1 open
主観でtierを作る
せっかく全部聴いたのでティアを作りたいと思いました。ティアはランキングの層のことです。最近若者の間で流行っているらしいです。
現在はこんな感じです。時間がたって気が変わったら、勝手に画像を変えます。下の層のアルバムも良い作品なので、もし聴いたことがないのであれば聴いてみてください。autechreは新しい音楽を模索し続けていることによりアルバムごとに作風が異なるので、人によって評価が一変しがち。
おしまい
終わりです。アルバム名も曲名も造語ばかりなので、至る所に赤い波線(文章校正チェック)が引かれて煩わしかったです。オウテカのアルバムレビューを見ると難しいことを言っている人が多かったので、私はできるだけ率直な気持ちを書いてみました。本当に思ったことを書いただけなので、見当違いな事を書いていると思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。
うるせーーー!!!!!!!!
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