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日常の雑記

盛岡には通称、「映画館通り」と呼ばれる地名がある。
その名の通り、その「通り」には
(ややこしい日本語表現だ!)
映画館が複数存在しているのだ。昔は5~6軒はあった気もする。

ずっと盛岡で生まれ育っているので、日常の一部と化しているので。
何も気にしたことがなかったが全国的に見ても結構珍しい、らしい。
「らしい」というのは、「映画の街・盛岡」と大々的にアピールしているからだ。

実際、岩手県内に映画館は数多くあるが、盛岡市内に偏っている。
昔、奥州市に出張に行った際。ふとスーパーの掲示板に貼ってあった映画のポスターを見て、「映画を見るのに、わざわざ北上市か一関市まで行かなきゃないの!?」と驚愕した。


以前は、時々映画を見に行っていた。
当時勤めていた会社の仕事が終わるのが20時前後で
20:30頃のレイトショーのタイミングにバッチリだった。
映画が始まる前の予告は、アクションやサスペンス、ラブロマンスにSF超大作とバラエティに富んでおり、次はアレを見に行こう、来月はコレを見ようとワクワクしていた。

「月に1回くらい、映画館で映画を見よう」
こんなフレーズのCMも流れていた気がする。当時はレイトショーなら1000円だったのだ。
月に一回、大画面で映画を見るという些細な幸せ。
1000円で出来る、とても良い趣味だと思った。

「午前十時の映画祭」というのもある。往年の名作映画を大画面で見られるのだ。
例えば「ローマの休日」や「007シリーズ」、白黒の時代劇や特撮映画なんかもやっている。

昔々、「こないだ『七人の侍』を見ました」って言ったら親より歳の離れた上司がものすごくニコニコしていたっけ。そのままの流れで仕事終わりに居酒屋でご馳走になった気がする。


ただ、最近は映画を見ていない。
正確には、映画館で映画を見ていない。どうしてもマナーの悪さが目に付く。

「映画の街・盛岡」と公表しているが、来客人数はさほど多くないのが現状だ。当時、レイトショーを頻繁に見に行っていた時は、多くて30人程度。

館内では冒頭のCMで携帯電話(あ、今はスマホか)の電源を切るようにアナウンスをしているが、切っていない人が何人かいる。
上映中にLINEを開いていたり、何かネットで検索していたり、喋りだしたりする。

席に明かりが、見えるのだ。
良いシーンでLINEのチャイム音が聞こえたり、スマホの明かりが見えるとなんとも世界観に没頭できない。

離れた席からも会話が聞こえる。

終わったらどこか飲みに行く?いいねー!
どこかいいお店ある?ちょっと待って。今検索するよ!

いやいや。勘弁してくれ。上映中だぞ。

そんな事が何回か続いたので、結局映画館に行かなくなった。
関係者の方には非常に申し訳ないのだが、「映画館で映画を見る」という事にもう魅力を感じなくなっている。
映画そのものが悪いのではなく、環境が悪いのだ。
お金を出している以上、一定水準のサービスを楽しみたいのが本音だ。


最近、映画館で見た映画で、一番インパクトが強かったのは
岩手を舞台にした「終わった人」(2018年)である。

両親を連れて見に行った。
「大人三名で」と窓口に告げると、「三名ですか?少々お待ちを」と言われ、係員がどこかに行ってしまった。

支配人のような方が出てきて、汗だくで息を切らしながら「三名ですと、席が分かれるようですがよろしいですか?」と聞かれた。

別に親子三人で仲良く手を繋いで映画を見るわけではないが、映画館=それほど客がいないという事に慣れていたので、理解するのに時間がかかった。

「席が分かれるのは?仕方ない事ですね?」と曖昧な返事をした。
支払いを済ませ重い扉を開けると、席が9割がた埋まっていた。

しかも、一番後ろの席の更に後ろにパイプ椅子を並べて臨時に席を作っている。すごい光景だ。パイプ椅子でも料金は一緒なのだろうか。
支配人が汗だくだったのは、どこからかパイプ椅子を運んできたからだったのかもしれない。

両親の席を確保し、自分の分は。一番前が空いていた。
一番前の席なんて初めて座る。
私は背が高いので、迷惑がかかるかもしれない。

悩んだ末に、足を延ばし腰を滑らせ、後ろの人に確認を取る。

オッケーが出た。オッケーが出てもな。
とても映画を見るとは思えない体勢で楽しむことにした。

映画の内容に関しては、ロケ地が盛岡ということもあり見慣れた光景がたびたび出てきた。俳優の行動に館内は笑いに包まれ、ため息も聞こえ、なんだか全員で感情を共有している気もしてきた。
さらには、隣に座ったオジイサンが聞いてもいないのに丁寧に解説してくれるのだ。
「あれは大通の〇〇前だ」とか「中央通の△△だ」など。

ここまで大っぴらに賑やかにされると、前述のマナー云々は関係なくなってくる。単純に楽しいのだ。こんな映画館の状況は、生まれて初めてだった。
たまになら、こういう映画の楽しみ方もいいのかも。


現在、「映画館通り」には盛岡ピカデリー・中央映画劇場・盛岡ルミエールの3軒がある。

アートフォーラムがあったビルはいつの間にかなくなっていた。友人の結婚式の二次会をやったレストランとか、1Fにあったバーだとか、映画以外にも思い出があったのにな。
新しく建設するビルには、何が入るのだろう。
どうせならまた映画館が入ってくれると嬉しいかも。

と、そんなことを考えていたらご当地情報でモスビルの向かいに新しく映画館ができる事を知った。嬉しいニュースだ。

映画館がもっと増えればいいなぁ。せっかくの「映画の街・盛岡」なのだから。

閲覧、ありがとうございました。

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