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【ブルネイ】に行きました。(政治/経済/国民性/生活)

ブルネイ・ダルサラーム
(Brunei・Darussalam)の首都
バンダル・スリ・ブガワンに行きました。

ブルネイ1番の観光地「オールドモスク」
(オマール アリ サイフディン モスク)は、

第28代スルターン(イスラム世界の君主)である
オマール・アリ・サイフディン3世(1914-1986)の
指示により、1958年に建設された礼拝堂。

もう一つの有名な観光地「ニューモスク」
(ジャメ アスル ハサナル ボルキア モスク)は、


子の第29代スルターンのハサナル・ボルキア(1946-)
(ハサナル ボルキア ムイザディン ワッダラー)の
即位25周年記念で1994年に建設された礼拝堂です。


ブルネイの王族はあまり馴染みがないですが、
2019年、徳仁 天皇陛下(126代天皇)の即位時に
来日した、第10子のマティーン王子が
イケメンすぎると日本で話題になりました。

※ブルネイは一夫多妻制で、次期国王(皇太子)は
 第1子(長男)のアルムフタディヴィラです。

国王や天皇など
世界の君主制国家は30ヶ国ありますが、

第29代スルターンのハサナル・ボルキアは
現在世界で一番長く(57年間)在位している
国王(君主)として知られています。


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1967年、ハサナル・ボルキアが即位した当時、
左翼勢力の反発やマレーシアとの合併問題で
国は混乱状態でした。

21歳のハサナル・ボルキア国王は
権限を発揮できずにいましたが、

1984年、イギリスの植民地支配から独立し
1986年、父オマールの死後、全ての権力を掌握。

国王でありながら宗教上の君主スルターンであり、
国務総理(首相)、各種長官、大学総長などを
兼任する絶対権力者(絶対王政)になりました。

1991年、「マレー主義に立つ、イスラム的王政」
(Melayu Islam Beraja, MIB)とする
マレーイスラム王政をブルネイの公式理念に制定。

マレー民族(M)、イスラム教(I)、王政(B)を
国家のアイデンティティの中核として
特権的に扱い、政治上の権限を強化しました。


一方で、1962年から停止していた国会(立法)の
機能を復活させるなど緩和措置を取っています。

ゆえに、ブルネイの政治体制は
立憲君主制(立法が君主と対等)としていますが、

行政は各長官を兼任する国王が全て握っており、
立法における法律の最終制定は国王が行い、
司法における裁判官の任命も国王が行うため
絶対君主制(独裁体制)とも言われています。

※ちなみに、日本は議院内閣制ですが
 天皇を置く象徴君主制でもあります。
 君主制でも法が機能すれば
 民主主義になり得るため
 君主制が必ずしも悪いわけはありません。

※君主不在で国民が代表を選ぶのは共和制。
 共和制でも法が機能しなければ
 独裁体制になり得るため
 共和制が必ずしも良いわけではありません。

メディアで報道される良い面としては、
石油や天然ガスで稼いだ莫大な資金で
国を支える様々な制度を確立しています。

中でも福祉制度は他国から賞賛を受けており
世界的な福祉国家スウェーデンを超えるレベル。


子供と警察官は病院費が無料、
政府の病院や軍の病院は治療費が無料。

(他の場合だとしても少額負担程度)

平均寿命は男性74.2歳、女性77.3歳。
高齢者と障害者のための各種施設を設け、
特に引退した高齢者のための年金も充実。
(2023年に全国退職年金制度を発令)


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ブルネイ・ダルサラームの経済体制は、
共同体の経済的公平を保つ社会主義(共産主義)


産油国として築き上げた富や権力を守るには
資本主義経済よりも、社会主義経済かつ
独裁主義の方が国王にとって都合が良いからです。

※1917年のロシア革命の後、
 貧富の差が生まれる資本主義経済を否定し、
 ソ連が確立したのが社会主義経済。

※社会主義のデメリットは、
 労働者がいくら頑張って働いても給料は増えず
 労働意欲もなくなり経済が停滞する点。
 1991年のソ連崩壊は、一部の共産党幹部が
 富を独占する事態が発覚し以降、資本主義経済。

また、ブルネイは社会主義の理想的な思想である
社会主義の進化版、共産主義に近い社会とも言えます。

社会主義では、企業が得た利益を国が管理し、
国民の給料も国が管理して分配しますが、

共産主義では、そもそも全ての利益は皆で共有する
という考えから、国が管理する制度はありません。
(管理はしませんが、所有は国がしています)

既に国が潤っているブルネイ国王にとって、
君主制の見直しや資本主義経済への移行などは
権力を失うリスクでしかありません。

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世界一裕福な国と呼ばれるブルネイは
心に余裕がある優しい国民性です。

フロントがないホテルを予約してしまいましたが
タクシーの運転手が部屋の暗証コードが分かるまで
ホテルとやり取りをしてくれました。

タクシーの探し方が分からない時に、
ショッピングセンターの警備員に話しかけたら
快く友人のタクシーを呼んでくれました。

空港まで歩いていると、
職員の方が自家用車で通りかかり
空港まで乗せてくれました。

また治安が良く、盗難事件が目立たないのか、
カフェの場所取りでパソコンを置く人がいました。

タクシーやバス、観光ボート、お店やマーケットで
ぼったくりを感じることはありませんでした。

2024年12月現在の
ブルネイドル1ドル=116円。
物価は日本とほぼ同じくらい。

また日本の平均年収443万円に対して
ブルネイの平均年収は940万円と2倍以上。

国民のほとんどが自家用車を持っていますし
政府が1世帯に1軒の家を持たせる政策を掲げ、

申請が通れば格安で手に入りますので、
犯罪が起こりづらい生活水準と言えます。

犯罪が起こらない理由は、
「裕福だから」と言いきりたいところですが
2014年に施行されたシャリア(イスラム法)が
犯罪が起こらない大きな理由だと思います。


「レイプ、不倫、肛門性交、強盗、
 預言者ムハンマドを侮辱・中傷する行為は
 最も重い場合で死刑となる」

「女性同士の性行為については杖打ち40回と
 最大10年の禁錮刑が科される」

「窃盗罪を犯した場合、
 手足を切断する刑罰が科される」

「18歳以下のムスリムに、イスラム以外の宗教の
 教えを受け入れるよう説得、命令、推奨
 した場合、罰金か禁錮刑となる」

窃盗すると手足が切断されると聞くと、
心に余裕がある優しい国民性というより、
優しくしていないと
刑罰が下る社会だという解釈もできます。

それでも、
一般的な生活をしていれば、裕福でいられるので
刑罰に怯えて生活をしているわけではなさそうです。

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天然資源により裕福な国で暮らしているので
車や家があるのが当たり前の生活環境。

タクシーは観光客しか乗りませんが、
ブルネイ空港から市街地の間で
タクシーに乗る場合は5〜12ブルネイドル

空港からのタクシーは高めですが、
市街地にいる自家用車タクシーの場合は
5ドル支払えは空港まで乗せてくれます。

空港と市街地の中間にあるガドンでは
ガドンナイトマーケットが有名です。
B級グルメを安く食べられる場所で、


マクドナルドのLサイズくらいの量がある
各種ジュースは1ブルネイドル。

ブルネイの国民食と言われる
ナシ・カトックは、ご飯とフライドチキン、
ピリ辛のサンバルソース付き。3ブルネイドル

インドネシアやマレーシアなどで
食べられているサテは、鶏や羊肉を串に刺して
味付けした料理で日本の焼き鳥。1ブルネイドル

インドネシアやマレーシアで親しまれている
ルンダンは、牛肉をココナッツミルクと
スパイスで煮込んだ伝統的な料理で、
世界一美味しい料理と認定されたことがあります。


ルンダンはマーケットにはなく、
ロイヤルブルネイ航空が運営するレストラン
「アンジュン サウジャナ」が
ブルネイ空港の出発ロビー内にあります。

牛肉の生産については、
オーストラリア北部にブルネイ国土より広い
政府所有の牧場があるようで、
ブルネイにある牛肉の大半を生産しています。

ハサナル・ボルキア国王の個人資産は
約200億ドル(3兆円)あると言われており、

部屋数1788室を誇る世界最大級の宮殿で暮らし、
高級車を約7000台所有しているようですので、
海外に土地があることに違和感はありません。

一方、
資本主義などで経済を回して得た資金ではなく
たまたま天然資源(石油・天然ガス)に恵まれたため
国を支えることが出来ているのが実態です。

ブルネイの10年後、50年後の未来に
どのような変化が起きるのか、注目です。

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