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韓国・中国との競争激化。国内外の再編加速『造船』*日本経済68業界
日経平均株価(225銘柄)で登場する
合計68業界の動向を紹介します。
輸送機器の『造船』
各種船舶の製造を行う造船業界において
日本はかつて世界シェア50%超でしたが
現在は韓国・中国に次ぐ3位。
日本企業の受注は回復傾向にありますが、
再編などで体力を回復した韓国・中国企業が
受注攻勢に出て競争が激化しているため、
国内外の再編はさらに加速しています。
▼業界動向
2014年→2023年 微減
▼業界平均
・売上高 :1兆6217億円
・営業利益率 :6.46%
・自己資本比率:42.55%
・ROE :9.79%
・ROA :5.29%
※用語の詳しい説明は文章下段の
【経営の基礎知識】から確認できます。
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1位 本田技研工業株式会社
増収増益:売上20兆4288億200万円/24年3月期
1948年に設立した世界的な輸送機器メーカー。
想定為替レートは
前期よりも5円円高の1ドル=140円に設定。
円換算の海外売上高が目減りし減速。
主力市場の北米では、
ハイブリッド車(HV)をはじめとした
好採算車種が伸びて営業最高益が続いています。
中国では、
四輪車の年間生産能力を削減し、
現地メーカーとの競争激化に伴う
販売の落ち込みに対応しています。
イギリスの会社Hypermotiveとの共同開発で
船舶向け水素燃料電池発電システム「X-M1」を発表。
クルーズ船やフェリー、作業船、モーターヨット等、
様々な船で使用できるクリーンエネルギーへの
移行をサポートするシステムです。
2位 スズキ株式会社
増収増益:売上5兆3742億5500万円/24年3月期
1920年に設立した
静岡県浜松市の輸送機器メーカー。
四輪車の販売台数は世界第10位、国内第2位、
二輪車の販売台数は世界第8位、国内第2位、
船外機(船の駆動装置)では販売台数世界第3位。
日本やインドを含むアジアの販売が伸びて増収。
値上げ、高単価車の比率上昇で改善傾向でしたが
25年3月期は、
主要のインドで販売が足踏みしています。
ハイブリッド車(HV)、電気自動車(EV)や
開発費負担が重くコスト増加傾向でしたが、
25年3月期は
国内で新型軽ワゴン「スペーシア」の上位グレード、
新型多目的スポーツ車(SUV)の「フロンクス」など
高単価の車種が伸びて増収。
小型車に対応したHV新型エンジンを開発し
エンジンの小型化と燃費性能の向上を両立。
EV駆動装置も内製化する方針です。
2019年に、
トヨタ自動車株式会社と資本提携しています。
インドのバイオガス精製工場の増設に向けて、
現地の乳業組合と基本合意し、
牛のふん尿から自動車燃料用のバイオガスを精製。
3位 JFEホールディングス株式会社
増収増益:売上5兆1746億3200万円/24年3月期
日本鋼管株式会社(NKK)と
川崎製鉄株式会社(川鉄)の
株式移転により設立した持株会社。
大手鉄鋼メーカーである
JFEスチール株式会社(旧・川鉄)を中心に、
JFEエンジニアリング株式会社(NKK)、
JFE商事株式会社などを傘下に持っています。
高炉製鉄を主力事業として
特殊鋼/合金鋼/ステンレスの製造、
圧延加工(管/板/棒)加工など鉄を中心とした
金属製品を取り扱っています。
国内外で粗鋼生産が伸び悩んでいますが、
鋼材の「値上げ」で利益率が改善しています。
また、電気自動車(EV)のモーターに使われる
電磁鋼板などが売上をけん引しています。
高付加価値製品の販売比率は、
25年3月期に50%に達する見込みで
一部高炉の休止など構造改革も寄与して増収増益。
在庫価値が下がる在庫評価損などを除く
実力ベースの事業利益を倍増させる計画があり、
成長が見込めるインドや北米などの海外で
攻めの投資・融資を進めています。
人的リソースへの投資を進めると同時に、
人工知能(AI)や自動化技術の活用により、
労働生産性を高めていく方針です。
JFEホールディングス株式会社35%、
株式会社IHI35%の持分法適用会社(関連会社)の
ジャパンマリンユナイテッド株式会社(JMU)は、
タンカー、コンテナ船、バラ積み船などの一般商船、
護衛艦、掃海艇などの各種艦艇・砕氷艦を建造。
4位 三菱重工業株式会社(MHI)
増収増益:売上4兆6571億4700万円/24年3月期
総合電機メーカーの三菱電機株式会社に対して
三菱重工業株式会社は重工業を主力としています。
三菱重工(MHI)・川崎重工(KHI)・IHIは
日本三大重工業メーカーと言われています。
エネルギー、航空、宇宙開発、船舶・海洋、
物流・運搬、交通システム、環境装置、
自動車関連、産業機械、インフラ設備、防衛、
生活・レジャー、エンジニアリング関連の
製造、裾付(設置)、卸売などを行っています。
1950年から近代日本産業のパイオニアとして、
幅広い分野で「ものづくり」を行なっています。
5位 株式会社小松製作所
増収増益:売上3兆8651億2200万円/24年3月期
1921年に設立した
建設機械・鉱山機械の大手グローバルメーカー。
ブルドーザ等の建設機械は国内外シェアが高く、
フォークリフトや産業用エンジンも手掛けています。
風車型指示風向風速計は、
船舶用に開発されたプロペラ型風向風速計で
海外でも使用されています。
欧米を中心に建機販売が鈍っており、
アメリカでは金利の高止まり背景に
販売先となるレンタル会社で建機の買い控えが発生。
建機や部品・サービスの値上げ効果や
円安による輸出増加の効果を見込んでいましたが
人件費や材料費の増加がマイナス影響。
アメリカン・バッテリー・ソリューションズ(ABS)を
2023年に買収。蓄電池の生産能力を4倍に引き上げ。
鉱山機械の電動化を進めるなど
鉄鉱石、ウラン、ボーキサイト(アルミニウムの原料)
など資源採掘・精製における脱炭素需要を取り込む。
6位 ヤマハ発動機株式会社
増収減益:売上2兆4147億5900万円/23年12月期
1955年に設立した
静岡県磐田市の輸送機器メーカー。
二輪車の売上規模は世界第4位、
船外機(船の駆動装置)や、マリンレジャー等で
使用されるウォータービークルの
販売台数は世界第1位。
2024年12月期は、船外機の需要低迷、
自転車産業の在庫削減コストにより
下方修正しておりますが、
ブラジルやインドなどの新興国で
二輪車の高価格モデルの販売が伸び、
増収増益の見通しです。
イギリスのスポーツ車メーカー「ケータハム」に
電気自動車(EV)向けの基幹部品イーアクスルを供給。
2025年までの試作車完成に向けて、
小型軽量化した高出力部品の生産技術を磨く。
7位 川崎重工業(KHI)
増収減益:売上1兆8492億8700万円/24年3月期
三菱重工(MHI)・川崎重工(KHI)・IHIは
日本三大重工業メーカーと言われています。
1878年、川崎築地造船所として設立。
オートバイ、鉄道車両、航空機、船舶、
軍事ヘリコプターなど輸送機器、機械装置の製造。
航空宇宙システムは、
機体・エンジン共に需要が伸びて増収。
保守ビジネスの拡大も寄与して
純利益は過去最高で、年間配当は
2024年3月50円から2025年3月140円に増配予定。
防衛省向けエンジン整備の経験を活かして、
民間向け航空機エンジンのMRO(整備修理)事業参入。
2026年度までに70億円を投資して、
2031年度までに売上500億円を目指します。
8位 株式会社IHI
増収減益:売上1兆3225億9100万円/24年3月期
三菱重工(MHI)・川崎重工(KHI)・IHIは
日本三大重工業メーカーと言われています。
1853年、ペリー来航の際に、
江戸幕府から造船所を作るよう指示を受けて
石川島造船所が設立されたことが始まりです。
日本資本主義の父、渋沢栄一が会長に就任。
1960年、石川島重工業株式会社と
株式会社播磨造船所の合併して
石川島播磨重工業株式会社に変更(略称・IHI)。
2007年、株式会社IHIに社名変更。
JFEホールディングス株式会社35%、
株式会社IHI35%の持分法適用会社(関連会社)の
ジャパンマリンユナイテッド株式会社(JMU)は、
タンカー、コンテナ船、バラ積み船などの一般商船、
護衛艦、掃海艇などの各種艦艇・砕氷艦を建造。
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【経営の基礎知識】これさえ分かれば大丈夫!
[ 損益計算書(PL) ]
売上高(客数 × 客単価)
−原価 :仕入など製造原価、人件費など売上原価
−販売管理費:営業活動費、物流、広告、水光熱など
=営業利益
−営業外損益:銀行利息、為替損益、株式損益など
=経常利益
−特別損益 :突発的な損益、固定資産の売却など
−税金 :法人税、法人住民税、消費税など
=当期純利益
営業利益率(=営業利益 ÷ 売上)
5%〜10%で優良な経営状況といえます。
年間の経営活動で得た当期純利益を
利益余剰金として自己資本(純資産)に加える。
ちなみに、自己資本(純資産)と、
銀行などから借りた他人資本を合わせた
「総資産」が会社のお財布になります。
自己資本比率(=自己資本 ÷ 総資産)
少なくても30%、50%以上で優良な経営状況。
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[ 貸借対照表(BS) ]
ROE(=当期純利益 ÷ 自己資本)
自己資本(純資産)は、返済不要な資産、
ROEは、自己資本利益率の略になります。
10%以上で投資価値があると判断されます。
ROA(=当期純利益 ÷ 総資産)
総資産は、自己資本(純資産)+他人資本(負債)、
ROAは、総資産利益率の略になります。
5%以上で投資価値があると判断されます。