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ラオスに行きました。(宗教/政治/国民性/経済)

ラオスの首都ヴィエンチャンに行きました。
宗教の全容から説明します。

世界宗教の中で信者が多いとされる
唯一絶対の神を信仰する「一神教」
(ユダヤ教/キリスト教/イスラム教)は
聖地エルサレム(イスラエル)で創始されています。

※ユダヤ教/キリスト教/イスラム教の「神」は
 あくまで同一の存在。預言者が異なります。

【ユダヤ教】

紀元前に創始(神の呼び方=ヤハウェ)
モーゼが預言者(神の言葉を預かり人々に伝える者)

【キリスト教】
紀元後に創始(神の呼び方=ゴッド)
モーゼを預言者とし、
イエス・キリストを救世主(神の子)としています。

キリスト教は、主に3つに分かれています。
・「東方正教会(正教会)」
 聖母マリア(イエス・キリストの母)が信仰対象。
 例)ギリシャ、ロシア

・「西方教会(ローマ・カトリック)」
 聖母マリアを信仰対象とし、
 ローマ教皇(法王)を神の代弁者とする。

 教会内の序列(ヒエラルキー)は教皇に次いで
 枢機卿、大司教、司教、司祭、助祭、信徒となり
 神父は司祭の尊称として呼ばれています。
 例)イタリア、フランス、カナダ

・「プロテスタント」
 聖書に書いていない聖母マリアや教皇、
 ヒエラルキーを生む序列に抗議し、
 あくまでも聖書を信仰の基本とする。
 指導者の牧師(教職者)は一般人と対等な立場。
 例)アメリカ、イギリス、ドイツ、オランダ

【イスラム教】
7世紀頃に創始(神の呼び方=アッラー)
モーゼ/イエスが預言者で、
ムハンマドを最後の預言者としています。

※アジア/中東における宗教分布※
・300年以上スペインの植民地だったフィリピンは
 キリスト教(ローマ・カトリック)が多い

・2002年インドネシアから独立する前、
 300年以上ポルトガルの植民地だった
 東ティモールは
 キリスト教(ローマ・カトリック)が多い

・エルサレムがあるイスラエルはユダヤ教が多い

・「イスラムの指導者(カリフ)は
  ムハンマドの血統を重視する」派閥
 シーア派が多いのはイラン/イラクです。

・「イスラムの指導者(カリフ)は
  ムハンマドの慣行を重視する」派閥
 スンニ派が多いのはサウジアラビア/トルコ
 シリア/レバノンなどその他中東。
 イスラム教の90%はスンニ派です。

 ※パレスチナ問題
  1948年にユダヤ人がパレスチナ人(アラブ人)を
  追い出して建国したイスラエルを認めていない
  シーア派のイランは、イスラエル北部に隣接する
  レバノンの武装勢力「ヒズボラ」(シーア派)に
  軍事支援を行いイスラエルを攻撃。

  パレスチナ「ガザ地区」で支持を得ている
  武装勢力「ハマス」(イスラム抵抗運動)は
  スンニ派ですが、
  イランが軍事支援を行いイスラエルを攻撃。

  解釈の注意点としては、
  パレスチナ問題は、宗教の争いではなく
  宗教派閥の垣根を越えた民族の争いです。

 ※国際テロ組織「アルカイダ」はスンニ派。
  シーア派のイラクと、ユダヤ人のイスラエル、
  イスラエルを支援するアメリカの
  打倒を目標としています。

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また、世界にあるその他宗教の中で
神や信仰の対象が多数存在する「多神教」
(ヒンドゥー教/仏教/その他宗教)は
民族宗教として存在しています。

【ヒンドゥー教】
紀元前5-4世紀から創始。
紀元前13世紀頃インドの先住民が支配される
過程で生まれたバラモン教を基盤としており
カースト制度はバラモン教から受け継いでいます。

【仏教】
紀元前6-5世紀から創始。
バラモン教の教えをもとに修行していた
インドの釈迦が開祖(創始)し
35歳で悟りを開き(如来となり※修行中は菩薩)
仏陀(ブッタ)と呼ばれ、ガンジス川で説法した。

仏教は主に3つに分かれています。
・「上座部仏教」
 出家して悟りを開いた者だけ救われる(=小乗仏教)
 例)スリランカ、ミャンマー、ラオス
   タイ(国教)、カンボジア(国教)、シンガポール
   (インド/パキスタン/バングラデシュ/
   マレーシア/インドネシア/ブルネイ)

・「大乗仏教」
 誰でも悟りを開くことができる
 例)中国、韓国、日本、ベトナム、(北朝鮮)

・「チベット仏教」
 大乗仏教と呪術的なボン教が融合した(=ラマ教)
 例)ブータン(国教)、ネパール、モンゴル

※アジアおける宗教分布※
・インドは約80%がヒンドゥー教とされている中、
 約10%がイスラム教を信仰し、
 カースト制度に違和感を持つ人が
 密かに仏教へ信仰を変更しているようです。

・インドからイスラム教のエリアを分離独立させた
 パキスタン/バングラデシュにも仏教徒はいます。

・マレーシア/インドネシア/ブルネイは
 50%以上がイスラム教徒ですが、
 ヒンドゥー教や仏教の考えが融合しているようです。

・日本では6世紀頃に百済(現・韓国)から伝来し
 のちに聖徳太子が広めたとされており、
 現代では日本特有の神道が融合(共存)しています。

・その他、中国/韓国/ベトナム/北朝鮮には
 道教/儒教/カオダイ教/天道教などがあります。

宗教は国ごとではなく地域や個人により異なり
大乗仏教のエリアは無宗教とされる人が多いなど
世界地図を綺麗に線引くことはできません。

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そもそも仏教は、
「一切皆苦(人生は思い通りにならない)」
と知ることから始まり、

苦しみが生まれる原因は、
「諸行無常(全ては移り変わるもの)」
「諸法無我(全ては繋がりの中で変化している)」
という真理にあると考えられています。

これらを正しく理解して
世の中を捉えることができれば、

あらゆる現象に一喜一憂することなく
心が安定した状態になり、
苦しみから解放されると説かれています。

また、魂(霊魂)は「六道」と呼ばれる
6つの世界(天上/人間/修羅/畜生/餓鬼/地獄)を
生まれ変わりながら何度も行き来(輪廻転生)すると
言われており、私たちが今生きている
「人間道」は仏教の教えを学べる唯一の世界です。

人間が亡くなってから49日目までは、
魂が辿り着く先が決まっていないとされ、
六道のどれか、または極楽浄土が選ばれます。

六道の先にある世界こそが極楽浄土であり、
仏教の目標は苦しみの六道から抜け出すこと。

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ラオスでは、
出家して悟りを開いた者だけが救われる
「上座部仏教」の信仰があります。


ラオス人は信仰心が深く、男性は一生に一度、
3ヶ月出家して、寺院で僧侶(修行者)となります。

ほぼ全ての家庭が僧侶に食べ物を施し、
満月の日には寺院を参拝する風習です。

ラオスにおける仏教は、独立・建国してから
次第に厳しい弾圧対象となりましたが
1990年代以降に再興しています。

ラオスの起源は、
ナンチャオ王国が滅亡した1353年、

ファー・グム王により建国された
ラーオ族によるラーンサーン王国です。
(ラーンサーンは「100万のゾウ」の意)

18世紀には、
ヴィエンチャン王国、ルアンパバーン王国、
チャンパーサック王国の3国に分裂し、

それぞれタイやカンボジアの影響下に置かれ、
両国の争いに巻き込まれる「戦場」でした。

1953年にフランスから独立した後の
冷戦期の内戦(1960-1975)では、

パテート・ラーオ(左派/共産主義)が、
ラオス王国(右派/王政)に軍事介入する
フランス、アメリカなどの外国軍を追い、
1975年にラオス人民民主共和国を設立しました。

ラオス人民民主共和国の経済体制は、
共同体の経済的公平を保つ「社会主義」で、

政治体制は、
ラオス憲法第3条「ラオス人民革命党を
主軸とする政治制度」の規定をもとにした、
国内唯一の政党による「一党独裁体制」


2020年、民主化を求めるラオス人が投稿した
「#もしもラオスの政治が良かったら」は
タイや香港のTwitterを席巻しました。

※人民民主共和国は民主主義国家ではありません。
 漢語の「民主」は「民」の「主(あるじ)」
 すなわち「君主」を指す言葉なので、
 「デモクラシー」とは直接関係がありません。

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訪れてみると非常にゆったりと時間が流れる
「癒しの国」「アジア最後の楽園」
と言われているラオスの国民性について、

僧侶に食べ物を施す仏教国の慣習が根付き、
「お互いを助け合う精神」が強くあります。


困っている人を助けたり人に親切にする
素朴で優しい心があり、
「ラオスでは人は飢えない」と言われています。

また、山岳地帯で水が多いこともあり、
清潔で綺麗好きな人が多く、

街中や施設内は禁煙で、ごみはごみ箱に。
トイレも掃除が行き届いています。
ウォッシュレットはありませんが、
トイレ横には小型シャワーが付いています。

ラオス人が良く使う言葉に、
大丈夫だよ ボーペンニャン ບໍ່ເປັນຫຍັງ があります。

自分が失敗した時やケンカになりそうな時などに
使われることが多く、細かいことは気にせず
ゆったりと気さく(おおらか)な性格。
責任の所在を曖昧にする気楽な人が親しまれます。

お金や時間に関してもマイペースで、
たくさん働いてお金を稼ぐという考えはあまりなく

仕事は無理せずのんびり、自由な時間を過ごし、
持っている物だけで豊かに暮らせるという考えです。

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首都ヴィエンチャンにおける業界別の事業について、

【不動産】
2006年、首都ヴィエンチャンに開発された最大級の
ショッピングモール「タラート・サオ・モール」が
ラオス近代化の象徴とされていましたが

中国不動産企業の「ヴィエンチャンセンター」
マレーシアの不動産企業の「パークサン」
など次々と新しいショッピングモールが開発。

国内産業が未発達で外資の参入規制があり
テナントが入らず、中身が伴っていない状況です。

【製造】
刺繍のような浮織りなどの手織り布(織物)が有名。

【飲食】
東南アジアは日中農業で生計立ててる国が多くて、
ナイトマーケットが収入源の一つ。
飲食店(揚げ物、スムージー)を中心に
織物や衣料品、スマホケース屋が立ち並んでいます。

街中の道端には、
フルーツを販売するミニ屋台や、

コンビニくらいの敷地で飲み物などを販売する
小さいサービスエリアのようなお店もあり、

車、バイクでの移動が主流のラオスにおいて
自販機の役割を果たしているように見えます。

また、
日本からは撤退したドイツのフードデリバリー
「フードパンダ」がラオスに進出しています。

【サービス】
ショッピングモール「ヴィエンチャンセンター」と
合わせて中国企業が開発したホテル
「ヴィエンチャンライフセンター」など
外資の高層ホテルが次々と建設されています。

ナイトマーケットが開かれている
チャオ・アヌウォン公園では、
メコン川沿いに小さい遊園地が作られており、

1回2万キープ(132円)でトランポリンや
ジャンボ滑り台、ミニ観覧車などを楽しめる。

また、チャオ・アヌウォン公園では
アップテンポの音楽に合わせて
夜に集団で踊るエクササイズが行われていて
自由に参加できる雰囲気です。

【小売】

バンコクにあるタイ最大のショッピングモール
「セントラルワールド」を所有する
タイ企業セントラル・グループが展開する
スーパーマーケット「Big C」に加えて、
コンビニ「mini Big C」が点在しています。

首都ヴィエンチャンでは
タイバーツとアメリカUSドルが使えました。

細かいことは気にしないラオス人の性格なのか、
為替レートは2016年時点が使用されているため

コンビニでは、
・2300キープ 1タイバーツ
・8000キープ 1アメリカUSドル でした。

2024年8月時点の為替レートで換算すると、
・1ラオスキープ   0.0066円
 (150ラオスキープ 1円)
・1タイバーツ    4.1円
・1アメリカUSドル 147円

つまり、
2300キープ=15.33円=3.74タイバーツ
8000キープ=52.8円=0.35アメリカUSドル

2024年、1タイバーツの支払いでは、
615キープの買い物しかできないはずなので
1タイバーツで2300キープの買い物は
円から両替した買い手が得をする構造です。

2024年、1アメリカUSドルを支払えば
2万2857キープの買い物ができるはずなので
1アメリカUSドルで8000円キープの買い物は
円から両替した買い手が損をする構造です。

【金融サービス】
ラオス外商銀行(BCEL)が提供する決済サービス
「LAPNet QR pay」は小規模商店の決済も推奨し
利用店舗を増やす普及活動を行っています。

BCEL以外の銀行も次々とQRコード決済サービスの
提供を始めた結果、店頭には各銀行の
QRコードが乱立するようになりました。

【運輸】

トゥクトゥク市内一律5万キープ
(1キロ1万5000キープ(99円))

ガソリン1リットル2万キープ(66円)

バイク駐輪代5000キープ(33円)

右側通行で信号がない交差点多数。
交通違反の罰金は10万キープ(666円)

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日本と比べると、
ラオスの物価は3分の1くらいの体感ですが、
所得差は10分の1あります。

日本の平均月収2000ドル(約30万円)
ラオスの平均月収は200ドル(約3万円)。

物価に対して所得が追いついておらず
外資のショッピングモールで
充分に遊べない要因の一つかもしれません。

一般消費者や零細/中小事業者の
救済を目的とした税率の軽減など
政府が何もしていないわけではありませんが

政治的なアプローチや国内経済に合う外資参入、
農業以外で稼ぐ国民の工夫による産業発展や雇用創出、
所得増加による物価上昇の循環を生み出すなど、

都市開発の「ハコ」はできているので
きっかけがあればいつでも、さらなる、
急速な発展ができる国として注目されています。

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