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九九暗唱の落とし穴:数字だけでは見えない学習の本質 #152

文章題であっても問題文を熟読せずに、数値を見てなんとなく計算してしまい、
答えさえあってりゃいいでしょ思考
という人がいます。
このように思考する脳を、

九九暗唱脳

と名付けました。

よくいえば、暗算が得意で問題の処理が速い子どもと捉えることができます。

ですが、悪くいえば、何も考えていないと言えます。
計算処理=問題解決と捉えてしまうため、問題を見直したり、学んだことを振り返ることができません。

計算の自動化自体は悪いことではなく、むしろ、計算力のベースになるもので大切な技能です。

しかし、もしも、算数の授業中に、考えることをせず、どんな問題でも自動化し続けたらどうなるでしょう?

計算処理マシーンになります。
このAIの時代にです。
しかも、
うっかりミスの多い計算マシーン
にもなりかねません。

子ども達の中には、算数障害ではなくても、
文章題が苦手という子どもはかなりいるかと思います。

なぜか?

それは、
2年生の2学期、
九九暗唱をかなり長期間に渡り、
学校でも家でも強いられるからです。

暗唱が得意な子にとっては、
楽しくて仕方ありませんが、
苦手な子にとっては地獄の日々です。

誤解なくいっておくと、九九暗唱は必要です。
ですが、九九暗唱に偏った指導はいけません。
考える習慣が身に付きません。

例えば、こんな問題があったとします。

太郎君は家族で回転寿司屋「すしタロー」に行き、大好きなサーモンのお寿司を8皿たべました。
1皿にサーモンの寿司は2貫のってました。
太郎くんは全部で何個食べたでしょうか?

九九暗唱脳になってる子の多くは、
「これかけ算の問題だよね。簡単、簡単!」
と問題文をざっと読み、
8×2=16
答え16こ
とすぐ即答してしまいます。

でもこれは❌です。
食べた合計個数はあっていますが、場面の理解ができていません。
文章題で、答えがあってるのに、式が✖の子は九九暗唱脳の可能性が高いです。
8×2という式は、8が2こ分という意味です。
8+8と同じ意味です。
つまり、一皿に8貫のサーモン寿司が、のっていて、それが2皿となります。
こんな感じです。

図①

こんな風に出てきたら👀‼️ですね。

1皿に2貫のサーモンの寿司8皿分はこうです!

図②

どうして図①のようになるかというと、問題文をよく読まずに数値だけ見て解いてるからです。

ではなぜ数値だけ見るようになってしまったのか?

答えさえ、あってりゃいいでしょ思考
が原因です。

それは小学校ででてくる問題の多くは、問題文の順番通りに立式したら大体正解になるからです。
また、かけ算ならかけ算の問題しか出てこないからでもあります。

そのうちに問題文などほとんど読まなくてもできるという刷り込みができ、数値だけで判断するようになります。
こうして知らず知らずのうちに、
九九暗唱脳
になってしまうんです。
いうなれば、算数の病気です。

さらにこのような子どもは、
計算したら完結するので単位を書き忘れたり、
単位間違いが多く、
しかもそれをうっかりミスと捉え、
このミスが致命的なミスと捉えて自分と向き合わなくなります。

これでは、いつになっても九九暗唱脳から脱却できません。

さらに九九暗唱脳は、計算自動化マシーンと化すので、
自分さえわかれば問題ありません。

ですが、そういう子が問題の解き方や自分の考えを説明をすると、
自分にしかわからない言葉で伝えるため、
算数が苦手な子どもには全く伝わらない説明になるのです。

このような説明をしてしまうことを、
「わかったつもり症候群」と呼んでます。

では、九九暗唱脳を脱却するためにはどうすればよいのか?

それは文章題をとく思考過程にヒントがあります。

①問題文を読み、内容を理解する
②理解したことを図・表にし視覚的に捉える
③式を立てる
④計算する

文章題を解く思考過程

九九暗唱脳の子は、①②をとばし、数値を見るだけで、いきなり③をはじめます。
ということは、①②をしっかりと定着させていけば、九九暗唱脳は脱却できることを意味します。

特に②の「理解したことを図・表にして視覚的に捉える」ことが重要です。

小学校の低学年の算数において、
この図が重要であるにもかかわらず、
図をかかせる指導を徹底していないため、
図にあらわすことが苦手になってしまっているのです。

1年生からでも図の指導はできます。
1年生から、計算領域における文章題と出会ったら、
問題文を理解し、
理解したことを図に表す習慣を身に付けさせていくのです。

そうすると、
6年生になって分数のわり算などの、
理解の難しい文章題に出会ったときでも、
図で表そうと考える子が育ちます。

ですが、実際には、分数のわり算の計算の仕方を考える際、
図を使って説明できる子はほとんどいません。

なぜか?
機械的に計算を自動化した方が楽だからです。

その原因はどこにあるか遡っていくと、
3年生で学習する分数の指導にぶちあたります。
分子同士を足せば答えがでるという自動化です。

そのため、分数の本質的理解をせずに、問題を解く習慣が身に付いてしまったのです。

分数は奥が深く、
「分数ができない大学生」
といった本まで出版されていたくらい、
難しい内容であるにもかかわらず、
本質的理解をしないまま、自動化してしまったのです。

この計算問題では自動化に成功したら困ることはないかもしれませんが、
自動化できない文章問題に直面すると、もう手の施しようがなくなり、
算数嫌い・数学嫌いに陥ります。

九九が暗唱できることは、後の計算学習において大切ではありますが、
絶対的存在ではありません。

仮に、九九を忘れてしまったとしても、それを視覚的に理解していれば、
暗記してなくても、答えにたどり着けます。

そして、

この九九暗唱脳で一番危惧することは、

計算を自動化できない問題に出会った時に
問題と向き合うことができなくなることです。


そうならないために、
1年生のうちから、
問題場面を視覚的に捉えるトレーニングを積み上げていくことが大切です。
そうすれば、九九暗唱脳は脱却できます。

以上、九九暗唱脳とは何?
でした。

参考になる方がいたら幸いです。


























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