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あなたの脳の働き...物語 - ジョン・ホップフィールド

13,680 文字

ちょっと待ってくださいな。こんばんは。わたしの名前はジョン・ヘインズです。エグゼクティブコミッティーと研究所の友人会を代表して、このフォーラムへみなさんをお迎えし、今日の講演者であるジョン・J・ホップフィールド氏をご紹介できることを光栄に思います。
ジョン・ホップフィールド氏は、スワースモア大学で学士号を、コーネル大学で物理学の博士号を取得されました。ベル研究所の理論グループで2年間過ごした後、カリフォルニア大学バークレー校の物理学部、プリンストン大学の物理学部、カリフォルニア工科大学の化学・生物学部で教鞭を取られ、その後プリンストン大学に戻られ、ハワード・A・プライア分子生物学教授を務められました。2010年には、当研究所のマーティン・A・ヘレン・ジュリアン客員生物学教授に就任されました。
ホップフィールド教授は数多くの論文を発表されており、生物学を物理的プロセスとして理解することへの学際的貢献に対するディアック・メダル、マッカーサー・フェローシップ、固体物理学のオリバー・バックリー賞、そして2012年には神経科学学会からシュワルツ賞を受賞されています。アメリカ科学アカデミー、アメリカ哲学協会、アメリカ芸術科学アカデミーの会員でもあります。
ホップフィールド教授の現在の研究は、思考や知覚についての問題を、2つの考え方の交差点で検討しています。1つは、多数の単純な相互作用をする部分からなる物理システムが、通常、堅牢な集団的ダイナミクスを示すということ。もう1つは、脳が大規模なシステムであり、その細胞の特性と相互作用が、生存に関連する計算問題を解決するような活動ダイナミクスを生み出すように進化してきたということです。
今晩の講演のタイトルは「あなたの脳の働き - 事実、理論、そしてちょうどいい物語」です。ホップフィールド教授をお迎えしましょう。
[拍手]
ホップフィールド: ありがとう、ジョン。さて、彼が言うたことを全部やらなあかんわけやけど、それはちょっと難しいかもしれへんな。
まあ、人間を見たら顔で判断するもんやけど、実際のところ、人間として、個人として、わたしたちを決めとるんは脳の働きなんや。機能的な観点から見たら、脳はまだまだ人間の生物学システムの中で一番分かってへんもんやと言えるわ。
心臓外科医に心臓の仕組みを聞いたら、かなりええ工学的な説明をしてくれるやろ。筋肉で動く弁のついた部屋があって、ポンプみたいなもんやって。エンジニアが聞いても、ああ、なるほど、ポンプの説明やなって分かるわ。
でも、脳外科医に「どうやって考えるんや?」とか「言語はどうやってコンピューターに載せられるんや?」って聞いたら、キプリングの「ちょうどいい物語」みたいな答えしか返ってけえへんで。象はどうやって鼻を手に入れたかとか、キリンはどうやって首が長くなったかみたいな。脳の働きの背景にある科学とはほとんど関係のない説明しか返ってこーへんのや。
これは脳外科医を批判してるわけやないで。結局のところ、脳外科医の仕事は、どんな方法であれ、傷ついた脳を修復することやからな。脳の仕組みを理解することやない。もちろん、理解できたらええに決まっとるけど、コミュニティ全体で理解が足りん中で、経験的な知識だけでよう頑張っとるわ。
年取るにつれて、少なくともわたしは年取るにつれて、わたしたちは脳がどう働いとるんかをもっと考えるようになるわ。机から立ち上がって台所に行って、着いたら「なんで来たんやっけ?」って考える。こんな経験、みんなあるやろ?
わたしたちの脳が、体や意識の目的のある活動を生み出して、10秒後にはその目的を完全に忘れてしまうなんて、ほんまに驚くべきことやわ。「ああ、メガネを取りに来たんやった」って気づいて、メガネを取って書斎に戻るんやけど、台所に行く活動を制御しとる脳の一部と、「なんで来たんやろ」って考えとる脳の別の部分の間に、完全な断絶があるんや。
記憶のことも面白いわ。わたしはいつも名前を覚えるのが苦手で、いろんな工夫をしてきたんや。映画俳優の写真を見て、「この女優はクレオパトラに出てたな。名前なんやったっけ?リズ...リズ・ベイラー?ベイラーちゃうな。ベイラーに似た音...ネイラー?ペイラー?セイラー?テイラー!ああ、テイラーや」って。一度当たったら、それが正解やって分かるんやけど、似たような音の言葉を当てずっぽうで言うてみんと見つからへんのや。
あるいは、ここでトークの前にワイン飲んどって、近所の人と話し始めたら、急に「あの人の名前なんやったっけ?」って思うことがあるやろ。そんな時、頭の中で検索かけるんや。で、会話を続けてても、続けへんかっても、10分後くらいに「スーザンや!」ってポンと出てくる。あの近所の人の名前が分かるんや。
じゃあ、脳はどう働いとるんやろか?どう進めていけばええんやろ?
まあ、1つの方法は内省やな。もちろん、それしかないんやけどな。わたしたちは詳しい神経科学者やないし。内省がどこまで有効か、どんな問題が残るか、見てみるのも面白いやろ。
ここにチェス盤があるとしよう。なんで升目の1つが黒くて、もう1つが白いんやろ?黒い升目は目に返す光が少なくて、白い升目は多いからやろ?簡単やな。
でも、これはアデルマンがコンピューターで描いたチェス盤や。典型的な黒い升目と白い升目があるやろ。黒い升目は光を返してへんから暗く見えて、白い升目は光をようけ返してるから明るく見える...そう思うやろ?
じゃあ、こうやって少しずつ隠していくで。ほら、ここに小さな部分が残ったやろ。1つは白い升目から来て、もう1つは黒い升目から来たんやけど、実は同じ明るさなんや。
つまり、元の絵で1つが黒く見えて、もう1つが白く見えたのは、1つがもう1つより明るかったからやない。もっと複雑な説明が必要なんや。
内省で考えるのに面白い例がもう1つあるわ。これは小さな錯覚やけど、考えるのに役立つで。「バ」か「ファ」って言うてる人の映像を見て、音声を聞くんや。「バババ、ファファファ」って聞こえるはずや。簡単な動画やから、見ながら聞いてみて。
見てるものが聞こえるものを上書きしてしまうんや。顔を見ながら口の動きを見ると、実際に聞こえる音が変わってしまうんや。目を閉じたら、本当の音が聞こえる。目を開けたら、口の動きで聞こえ方が変わってしまう。不思議な効果やな。
面白いのは、この錯覚の仕組みを知っててもあんまり変わらへんことや。
この錯覚で驚くべきなのは、音の変化が視覚から来とるって全然気づかへんことや。音が変わったって聞こえるけど、見たから変わったって思わへん。もちろん、見て変わったんやけどな。でも、聞こえ方が変わったって感じるんや。
だから、言葉の音が耳から入ってくるってのは基本的にはええ考えやけど、本当のシステムはもっと複雑なんや。
じゃあ、脳はどう働いとるんやろ?どう進めていけばええんやろ?
例えば、奥さんや旦那さんをどうやって認識するか聞いてみるのもええかもしれん。わたしに「奥さんをどうやって認識するんや?」って聞かれたら、「身長160cm、体重57kg、茶色い目...」なんて答えるかもしれん。でも、これはわたしが奥さんを認識する方法やない。奥さんをあんたに説明する方法や。
わたしが奥さんを認識する方法は、笑顔やったり、歩き方やったり、スーパーの通路の端にある横顔やったり。こういうことの組み合わせなんやけど、あんたにそれを説明して、あんたが使えるようには全然できへんのや。
計算の観点から見て簡単なことを、わたしたちはよう誇りに思うもんや。難しいことをやってるって言うんや。
3年生の子どもが「長い数字の掛け算を習ってんねん。何週間もかかったけど、10桁の数字2つを掛け算して、たぶん正解が出せるようになったで」って言うてくる。
でも、その子は部屋を見回して物を分けるのを学んだとは言わへん。部屋を見回しても、強度の地図は見えへんやろ。人が見えて、テーブルが見えて、椅子が見えて、スライドスクリーンが見えて、ドアが見えるんや。物が見えるんや。
写真を撮って、それを物に分けるのは、めちゃくちゃ難しい計算なんや。でも、わたしたちはそれを軽く見る。「簡単や」って言うんや。だって、どうやってるか説明できへんからや。実際、どうやってるか全然分かってへんのや。
コンピューター科学者は、こういうことをするプログラムを書くのに文字通り何十万時間もかけてきた。今ではある程度できるようになったけど、わたしたちが実際にやってる方法とは全然違う。わたしたちがどうやって世界を物に分けてるかは、まだ謎なんや。でも、これはわたしたちが最も強力にやってる計算の1つやねん。
ここからは、神経科学のちょっと簡単な側面を取り上げて、何か手がかりを得られへんか考えてみるわ。でも、これはわたしたちが実際に経験する記憶の種類に関する問題やねん。
生物学には2種類のハードウェア記憶があるんや。全てのコンピューターにはアドレス指定の記憶がある。ハードウェアの一部があって、情報の各部分がそのハードウェアの特定の場所、アドレスに保存されとる。
これは空っぽの本に特定のページに情報を書くようなもんや。そしたら、情報を取り出すには、561ページに書いたら561ページに行って読むだけや。アドレスで記憶を取り出すんや。561ページに欲しい記憶があるって分かっとったら、そこに行って読むだけや。
基本的に、これがコンピューターハードウェアの作り方や。全てのコンピューターハードウェアがそうや。他の種類のハードウェアはない。索引があって助けになるかもしれんけど、基本的にはアドレスによる記憶や。場所に何かを保存して、その場所から読み出すんや。
対照的に、わたしたちの記憶は全然違う種類のもんや。わたしたちには連想記憶があるんや。
先週の土曜日にパーティーに行ったとしよう。パーティーの場所、誰と話したか、何を食べたか、どんな会話をしたか、全部がリンクしとるんや。
誰かが「去年の夏からパットに会うてへん?」って聞いてきたら、あんたは「先週の土曜日の素晴らしいパーティーにおったで。そこで聞いたんやけど...」って答えるかもしれん。
記憶の項目が全部リンクしとって、パーティーに関することなら何でも、パーティーにアクセスする手がかりになるんや。パーティーで起こったどんなことでも、「ああ、そうや、あのパーティーや」って思い出すのに十分なんや。
連想によってアクセスできる記憶なんや。場所による記憶の感覚はないし、神経ハードウェアの特定の場所に記憶があるって神経生物学的な証拠もないんや。全部が連想による記憶なんや。
この連想記憶のもう1つの特徴は、特定の場所に1つの記憶があって、別の場所に別の記憶があるんやなくて、記憶が全部絡み合って相互作用しとるってことや。書き込まれる時からそうなんや。
もちろん、これは連想記憶を作る上では強みになるわ。空間的に近いものの間につながりを作るのは簡単やからな。
でも、一方で物事を混ぜ合わせてしまうリスクもあるんや。
じゃあ、連想記憶はどんな感じなんやろ?これについて何か言うには、神経生物学の仕組みについて少し説明せなあかんな。これから10分くらいで、みんなが初歩的な神経生物学のクイズに合格できるようにしたいと思うわ。
人間の脳は大体こんな感じや。皆同じような場所に溝があるから、脳のどこを見とるかは溝の位置で分かるんや。
この脳には約8000億個の細胞があるんやけど、もちろんこの全体図では細かいところは全然見えへんわ。
アーティストが描いた顕微鏡的な細胞の図やと、こんな感じになるやろな。細胞には細胞体があって、これはバクテリアよりちょっと大きいくらいや。細胞体には基本的な生化学プロセスを行う部分があるんやけど、ニューロンの面白いところは、ここから伸びとる長いもんなんや。これを軸索って言うんや。
ニューロンの軸索は伸びて行って、シナプスって呼ばれるところで他の細胞と接触するんや。実際、1つの細胞が約1000個の他の細胞と接触しとるんや。だから、神経細胞の間にはめちゃくちゃ豊かなネットワークがあるんや。
このネットワークがどんな感じかは、こんなスライドでざっと分かるやろ。これはゴルジが描いたもんや。脳の薄い切片を取って、細胞の約1%だけ染色したんや。染色された細胞は全体が染まるから、ここに細胞体があって、そこから軸索や樹状突起が伸びとるのが見えるやろ。他の細胞とのつながりがどこにあるかも分かるわ。
全部の細胞を染めたら真っ黒になってしまうけど、1%だけ染めたから、細胞間のつながりの豊かさが見えるんや。
さて、つながりのパターンは重要やけど、それだけやない。例えば、ニューヨーク市の政府がどう機能するか考えてみよう。
全ての連絡が電話でやりとりされる政府があるとしよう。政府の各人が約1000個の他の人の電話番号を持っとって、主にその人たちと話すんや。人のリストと、各人が持つ1000個の電話番号のリストをもらったとしたら、通信のネットワークは分かるやろ。
でも、統治については何も分からへんのや。統治を理解するには、この人たちの間でやりとりされるメッセージを理解せなあかん。ネットワークの構造を理解するだけやったらアカンのや。
同じように、神経解剖学者はネットワークの構造についてはようけ教えてくれるけど、ニューロン間でやりとりされるメッセージについては何も教えてくれへんのや。
神経生物学がどう計算を行うかを理解しようと思うたら、ニューロン間でやりとりされるメッセージに焦点を当てなあかんのや。
幸い、最新の実験技術を使えば、この会話を盗み聞きできるんや。
細胞の内側と外側の電位差を時間の関数として見ると、ただのノイズみたいな信号やけど、時々スパイクが出るんや。このスパイクが、1つの細胞から別の細胞へ情報を伝える基本的なもんなんや。
1秒間に最大でも数百回のスパイクしかないし、普通はもっと少ないんや。だから、1つの細胞が別の細胞に何を言うとるか、実際に聞くこともできるんや。
うまくいけば、カーソルを見つけて...助けてもらえるかな、カーソルを見つけて...マイクをクリックして再生したいんやけど。
はい、これが1つの細胞が別の1000個の細胞に話しかけとる様子や。1つの細胞が1000個の他の細胞とつながっとるから、1000個の細胞に話しかけとるんやけどな。
こういう会話が細胞間で行われとるんや。時には、この会話が何を意味しとるか実際に理解できることもあるんや。
次のスライドを見せる前に、何が聞こえるか説明しとこう。マウスの脳の中の細胞が作り出す活動電位が聞こえるはずや。マウスのシルエットが見えるやろ。マウスが囲いの中をうろうろするんや。その細胞が何を言うとるか聞いてみよう。
これを何回か見たり聞いたりしたら、最終的にこの細胞は、マウスがある特定の方向を向いとる時にめっちゃ活発になって、他の方向を向いとる時はあんまり活発やないって分かるはずや。
マウスの脳の中に、頭の方向を示す細胞がある非常に小さな領域があるんや。どの頭方向細胞も、頭のある特定の向きで活発になるんや。
だから、細胞の活動は何か特定のことを意味する可能性があるんや。これは、細胞の集まりに記憶をさせるにはどうしたらええかを理解するのに必要なことやな。
細胞は何かを意味する可能性がある。細胞の活動は何かを意味する可能性がある。
知ってる友達全員のこと考えてみて。どうやって説明できるやろか?
1つの単純な方法は、名前、身長、国籍、卒業した大学、住んでる町、年齢なんかの特徴のリストを作ることやな。いろんな特徴があって、各特徴にはいろんな値がある。
例えば、名前やったら、ジョン、メアリー、カルロス、デイビッド、ジェシカなんかがあるやろ。
これらの可能性それぞれに対して、脳細胞があるって考えられるんや。例えば、デイビッドという名前が記憶に関係あるときに活性化して、他の状況では活性化せえへん細胞があるかもしれん。
あるいは、アメリカ人が記憶に関係あるときに活性化して、他の状況では活性化せえへん細胞があるかもしれん。
そしたら、細胞の活動には意味があるけど、それは1人の個人と結びついとるわけやない。どの個人にも関係する可能性があるんや。
特定の個人はパターンなんや。このパターンやと、この細胞が活性化して、この列の残りの細胞は活性化してへん。これは、その人の名前がデイビッドやってことを意味するんや。
この細胞が活性化して、この列の他の細胞は活性化してへん。これは、その人が中くらいの身長やってことを意味するんや。
この細胞が活性化して、他は活性化してへん。これは、その人がケース・ウェスタン・リザーブ大学に行ったってことを意味するんや。
分かるやろ?特定の記憶の中でどの細胞が活性化しとるかってパターンが、その記憶の中の情報を表現しとるんや。
特徴の数が多ければ、多くの人を描写できるんや。それぞれが、どのニューロンが記憶の中で活性化しとるかって独自のパターンで表現されるんや。
さて、記憶がどう働くかを説明するには、ある細胞の活動が他の細胞の活動をどう生み出すかを説明せなあかん。システムがどう時間とともに変化するか、動的なシステムを説明せなあかんのや。
数式を書き下したいんやけど...実際、スライドもあるんやけど、数学は同意した大人が個人的にやるもんやからな。その代わりに、みんなが望めば数学を書き下せるくらいには理解してもらえるよう説明してみるわ。
連想記憶の基本的な仕組みは、サッカー場みたいなもんや。
最初は、サッカー場は平らや。芝生をめっちゃ短く刈ってあるから、ボールはすいすい転がる。でも、サッカーボールをどこに置いても、そこにとどまるんや。
そこから、サッカー場を彫刻し始めるんや。ここに牛の形をした窪みを作る。ここが一番深くて、そこからだんだん浅くなって、最後は地面と同じ高さになる。
こんな窪みを1つ作ったら、ボールをどこに置いても、最終的にはこの窪みの底に転がり落ちるやろ。
いろんな深さの窪みをいろんな場所に作ったら、サッカー場はもう平らやない。ボールを置いたらどうなるか、いろんな可能性が出てくるんや。
ここに置いたらこの谷に転がり落ちる。ここに置いたらこの谷に転がり落ちる。ここやったらこの谷や。
サッカーボールをどこに置いたかに応じて、どの谷に転がり落ちるか、小さな地図を作れるんや。この矢印は、ここに置いたボールがこの谷に転がり落ちるってことを示しとる。ここに置いたらこの谷、ってな具合やな。
だから、サッカーボールをどこに置いても、最初に置いた場所に一番近い谷に転がり落ちるんや。
さて、友達の記憶があるとしよう。その友達には2つの特徴しかない。身長と年齢や。そしたら、各友達は特定の身長と特定の年齢で識別されるわけや。
この人は20歳くらいで身長190cmくらい。この人は10歳で身長120cmくらいやな。
連想記憶ってのは何かっていうと、誰かについての大体の情報から始めて、しばらくすると正しい情報になるってことや。完全な情報が得られるんや。
わたしの友達の空間を2次元で表現したとして、前のスライドとまったく同じような流れの地図が必要なんや。こういう動きが、部分的な情報からスタートして、完全な情報に到達するまでのシステムの動きを表現するんや。
これが基本的に連想記憶のやることや。唯一の違いは、2次元やなくて何千次元もの絵を描かなあかんってことやけど、アイデアは同じや。
2次元でどう動くか直感的に理解できたら、連想記憶がどう動くかも直感的に理解できるんや。
システムをある値でスタートさせて、数学的な意味で「下り坂」を進んで、近くの谷を見つけて止まるってことや。その谷の位置が、初期条件に最も近い友達の記述になるんや。
次の数枚のスライドで、これがどう動くか見せるで...あかん、これやない。これや。
ここでは、10×10の細胞の配列を使うとるんや。100個の細胞全部や。各細胞は友達の何かの特徴を表すんや。特定の友達は、特定のパターンの活性化した細胞で表現されるんや。
ここで、各白い四角は、この細胞が活性化しとるってことや。この細胞は活性化しとる。この細胞も活性化しとる。ここの細胞は活性化してへん。ここも活性化してへん。
だから、この時点で約85個の細胞が活性化してへんで、約15個が活性化しとるんや。活性化しとる15個がこの記憶に対応するんや。
これらのニューロンをつなげて、サッカー場の異なる窪みみたいに、個別に安定したいろんなパターンを持つようにできるんや。
連想記憶のアイデア、記憶のアイデアは、特定の記憶について部分的な知識からシステムをスタートできるってことや。
これは実際、Xのような形の記憶についての部分的な知識からスタートしとるんや。この記憶からはこれとこれとこれが来とる。これとこれは他のものから来とるんや。
正しい情報から始める必要はない。記憶が何かを見つけられるだけの十分な正しい情報と、いくらかの間違った情報から始められればええんや。そして、間違った情報を抑えて、正しい情報を増幅するんや。
もう一回この動画を再生してみたいんやけど、この動画が示すのは、短時間のうちに、ニューロン間のつながりのおかげで、いくつかのニューロンがオンになって明るい四角になり、いくつかがオフになって黒い四角になるってことや。
結果として、特定の記憶が再構成されるんや。
はい、記憶が再構成されとるのが見えるやろ。この特定の記憶が再構成されとるのは、初期の手がかりが他の記憶よりもこの特定の記憶に似とったからや。
もし、これに似た初期の手がかりを選んどったら、これらの特定の記憶を再構成しとったやろな。
数学は見せてへんけど、数学をシミュレーションしたんや。でも、こういうことを書き下せるはずやって理解するためのツールは渡したつもりや。これは高次元の流れの地図の1つやからな。
科学で正しい道筋を辿っとるってのが分かる1つの方法は、予想外の振る舞いが見つかって、それが理論や数学の振る舞いと一致する時や。現実世界の振る舞いとも一致するんや。
その例を1つ見せたるわ。
わたしはもっと大きな記憶で作業しとったんやけど、やっぱり友達の記憶やった。この大きな記憶の中の典型的な友達は、こんなパターンで表現されるんや。ここで黒いのがその特定の友達の特徴を表しとる。
こういう記憶を作るには、ニューロン間のつながりのパターンがどうあるべきかを理解せなあかんのや。谷が適切な場所にあって、記憶したい状況が安定するように。持ちたい連想が、ニューロン間のつながりで表現されるようにな。
これをやったら、同じ記憶の中にたくさんの友達を書き込めるんや。これらのパターンの1つ1つが友達を表しとる。各友達は異なるパターンや。
ここでも、特定の友達が一番左の絵のようやったとしたら、その友達の一部分だけの記憶の手がかりがあって、そこから右の絵のパターンを再構成できるんや。2番目のパネルにある記憶の手がかりから始めて。これが典型的な連想記憶や。
さて、記憶を書き込む時、つながりの間で変化が起こるんや。特定のつながり、特定のシナプスは特定の記憶専用やないんや。多くの記憶の影響を受けとる。
結果として、記憶を書き込むたびに、このサッカー場の地形をちょっとずつ変えてしまうんや。その特定の記憶だけやなくて、あらゆる場所をちょっとずつ変えてしまうんや。
だから、記憶を書き込むと、サッカー場に深い窪みを作るだけやなくて、他の記憶も作ってしまうんや。でも、それらはもっと浅くて、かなり違う感じになるんや。
わたしがこの記憶を多くの記憶で書いた時、つまりこの連想記憶に多くの友達を入れた時、入れたかった記憶に加えて、たくさんの小さな記憶、副次的な記憶ができたんや。
これらの記憶は見つけるのがめっちゃ難しいけど、たくさんあって、全部がでたらめなんや。友達に対応してへんのや。
一目見ただけで、これらがでたらめやって分かるんや。だって、本物の記憶はこんな感じやのに、でたらめの記憶はこんな感じやからな。
目で見ても違うし、簡単な神経系のプロセスでも違いが分かるはずや。
だから、本物の記憶を再構成しようとしてでたらめの記憶に当たっても、問題ないんや。見た目が違うから、無視できるんや。
そこで、記憶の手がかりが小さすぎて何も得られへんようなシステムをスタートさせてみたんや。典型的にはでたらめな記憶しか得られへんような記憶の手がかりからスタートしたんや。
特定の記憶にほとんど近いけど、ちょっと足りへんくらいの情報や。
そこからもう1つ要素を推測してみたんや。で、見てみ。記憶を取り出すのにほとんど十分やけど、ちょっと足りへん情報でシステムを準備して、もう1つ情報を加えてみるんや。
でたらめが出る。でたらめが出る。でたらめが出る。でたらめが出る。おっと、今度は本物の記憶が出た。見てみ、本物の記憶みたいやろ。このでたらめな記憶とは違うやろ。
エリザベス・テイラーの名前をアルファベット順に当てていくのと、まったく同じことがこの種の連想記憶でも起こるんや。これが、わたしがこの連想記憶についてめっちゃ励まされる点の1つなんや。
さて、わたしたちの記憶はどんなもんやろか...まあ、海馬から始めよう。
これは人間の脳の図式や。両側に海馬がある。海馬は記憶の保存に不可欠なんや。海馬は古い脳の一部や。わたしたちには大きな新皮質、大きな新しい脳もあるけど、古い脳の海馬が新しい記憶を作るのに不可欠なんや。
これは、てんかん患者に行われた実験的な手術で最も劇的に発見されたんや。
海馬は脳の中でも不安定な部分で、てんかんの発作が起こりやすい場所なんや。このてんかん患者は難治性のてんかんやった。脳外科医が手術をして、両側の海馬を取り除いたんや。
てんかんはほぼ治ったんやけど、患者は新しい宣言的記憶、新しい陳述的記憶を作れなくなってしまったんや。
例えば、あんたが入って行って患者と話したとする。患者に「わたしを知っとる?」って聞いたら、「いいえ」って言うやろ。
部屋を出て、10分後に戻って来て同じ会話をしたら、患者はまたあんたを知らんって言うんや。患者には新しい宣言的記憶を作る能力がなくなってしまったんや。
人生の新しいエピソード、新しい出来事が、ただ消えてしまうんや。
一方で、患者は古い記憶や言語は全部無傷やった。でも、患者は現在と過去にしか生きられへんようになって、経験の連続性の理解がなくなってしまったんや。
もちろん、人間の脳に電極を刺すわけにはいかへんから...でも、海馬は記憶に不可欠なんや。
海馬が最もよく研究されとる場所の1つがラットなんや。ラットは素晴らしい実験動物や。哺乳類の中では下の方にいるから、何が起こるか気にせんでいいし、でも十分高等やから、わたしたちの脳の特徴の多くを持っとるんや。
特に、ラットは記憶に関することで海馬を大いに使うとるんや。ラットの記憶は、主にどこに行ったか、そこに何があったかについてや。
最後のこの動画を...もう一回助けてもらえるかな。次のスライドに進む前に説明させてな。
ラットの脳に電極が刺さっとるんや。このトラックに沿って動くんやけど、動きながら6つの細胞の活動電位が聞こえるはずや。6つの異なる細胞や。
各細胞でスパイク、活動電位が起こると、ここにその細胞に対応する色のドットが現れるんや。だから、この6つの細胞のスパイク活動が見えて聞こえるはずや。
はい。
実験を繰り返したら、非常によく似たパターンの活動が見られるはずや。
これは、わたしが記憶について説明したことに似とるやろ。暗い青の細胞の活動は何を意味するんやろか?ラットがここにいるか、ここにいるか、あそこにいるか、あっちにいるかもしれん。
赤で色付けされた細胞の活動は何を意味するんやろか?ここにいるか、上にいるかもしれん。
でも、同じ場所で赤と青の活動が同時に起こるのは狭い領域だけやってのが分かるやろ。どの細胞が活性化しとるかってパターンが、トラックのどこにいるかを教えてくれるんや。
場所が違えば、パターンも違う。ある意味、場所の表現になっとるんや。
これはMITのマット・ウィルソン研究室の素晴らしい実験や。
さて、これが海馬のほんの数個の細胞の様子や。
図式的に...あかん、動画がもう2つあるわ。
ラットが物理的な空間を動き回るとしよう。これがラットの位置や。ラットがこの動画の中を動き回る。
これらは海馬の細胞や。ラットが動き回ると、海馬の細胞がスパイクを打つんや。これがマット・ウィルソンたちが見たような様子や。
はい、あと2つ動画があるな。
海馬の活動が変化してるのが見えるやろ。細胞の活動を記録しとるんやけど、その細胞が海馬のどこにあるかは関係ない。ラットが動くと、海馬の中で異なるパターンの活動が起こるんや。
このパターンからはあんまり分からへんかもしれんけど、前の動画を見たら、細胞がどこで主に反応するかを別の方法で表現できるって分かるやろ。
細胞が海馬のどこにあるかを示すんやなくて、細胞が主にどこで反応するかをプロットできるんや。
最後の動画が本当に最後の動画やけど、そうすると何が起こるかを示しとるんや。
次のスライド。
ラットの動きは同じやけど、違う方法でプロットすると、実際に起こっとることが見えてくるんや。ラットがどこにいるかが、この表現の中でこの活動の塊がどこにあるかで示されとるんや。
もし思考とは何かって聞かれたら、この場合、ラットが空間を彷徨っとって、適切な表現の中で活動の塊がそのラットを追いかけとるみたいなもんや。
じゃあ、ラットが動かずに動くことを考えとるってのはどういう意味やろか?
ラットがこの軌跡に沿って動くことを考えとるけど、実際には動いてへんとしたら、この表現の中で、ラットが実際に動いた時と同じように塊が動くことを期待するやろ。
もしその塊をそんな風に動かせたら、もし塊の動きをラットの動きから切り離せたら、思考を可能にするのに必要なものを手に入れ始めとることになるんや。
思考を可能にするには、脳の活動が進行できて、感覚入力に縛られへん状況を作らなあかんのや。
ラットはかなり感覚に縛られとるし、ラットがどこまで考えられるかについての実験はまだ決定的やないけど、海馬から始めれば、ラットがどうやって考えるかのモデル化に向けて進歩し始められるのが分かるやろ。
そして、ラットからそんなに遠くない人間がどうやって考えるかについても同じや。
この最後の部分は、脳や人生で起こっとることについて、わたしたちが自分に語る「ちょうどいい物語」を思い出させるためのものや。
てんかんに対する別の面白い外科的介入があるんやけど、これはもっと成功したんや。
脳には2つの半球があるってみんな知っとるやろ。一般的な話やけど、左半球はより分析的な半球で、左半球には典型的に言語がある。右半球は芸術的な半球って呼ばれる。
これらは両方とも誇張やけど、ある程度の真実はあるんや。
2つの半球の間の主なつながりは脳梁や。2つの半球を結ぶ大きな神経束やな。
ここでも、てんかんを制御するために、脳梁を切断する実験が行われたんや。2つの半球の間の主なつながりを切断したんや。
幸いなことに、これらの患者にはほとんど知的や行動の欠損が見られへんかった。手術はてんかんの治療に成功したんや。
でも、ちょっとした面白い変わった点があるんや。
視野の左半分(ここで赤で示されとる)は、目を通って入って、脳の右半球に送られるんや。視野の右半分(青で示されとる)は、両方の目に入って、脳の左半球に送られるんや。
だから、右半球と左半球が利用できる情報は実際には違うんや。
普通はもちろん脳梁があるから、右半球は左半球が何をしとるかをかなりよく知っとるんやけど、脳梁を切断したらどうなるやろか?
視野の左側、右半球を刺激してこっちの半球は刺激せえへん赤い領域に何かを見せたとするやろ。脳梁を切断したから、2つの半球の間に直接のつながりがないんや。
典型的な例として、こんな絵を患者に見せるとしよう。視野の左側に提示するんや。
ほとんどの人はこの絵を見て、「七年目の浮気」のマリリン・モンローを思い出して笑うやろ。
脳梁を切断された患者にこの絵を見せても、患者は笑うんや。
患者に「なんで笑うたん?」って聞いたら、「昨日ニューヨーカーで面白い話を読んだんや」って言うて、その面白い話を説明するんや。
言語を司る半球、左半球は、患者が笑う理由を直接知らへんのや。だから患者は、自分が笑う理由を説明するために物語を作り上げるんや。まさに「ちょうどいい物語」やな。
記憶の存在、時間の感覚、思考、人間の言語、意識...これらの特性は全て、膨大な数の相互作用する神経細胞の活動によって暗黙のうちに引き起こされる出来事の、集団的で高レベルな記述なんや。
竜巻は、膨大な数の相互作用する分子の動きの高レベルな記述や。
わたしたちは、分子から竜巻が現れる仕組みを理解するのと同じように、脳から心が現れる仕組みを理解したいんや。
人間の脳がどう機能するかの理論的・数学的理解を生み出すには、もう1世紀かかるかもしれへん。現在の実験的事実は明らかに不十分や。
その間、自分の心が働く様子を自分で観察してみてな。「ちょうどいい物語」を作るのは簡単やし、中には科学的に面白い洞察を含むものもあるかもしれへんで。
ありがとう。

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