ユヴァル・ノア・ハラリと共に官僚制をセクシーにする | トレバー・ノアのポッドキャスト「What Now?」
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フォーブスがやってるんが好きなんは、億万長者が金失うたって記事書くときに、いつも同情的なんよね。「ジェフ・ベゾスの不運」みたいなタイトルで、「カルロス・スリムはかつて世界一の金持ちやったのに、今や15位に転落してしまった」とかって。人間の難しいとこやと思うわ。進歩の一部は、満足せえへんことなんよ。もっと欲しがるから進歩するんやけど、その裏返しで、偽りの欠点を作り出してまうんや。
今聴いてはるんは「What Now」、世界を席巻する会話について面白い人たちとおしゃべりするポッドキャストや。今週はめっちゃ興味深い会話やで。スタジオにはクリスティーナと一緒に、ユヴァル・ノア・ハラリが来てくれとるんや。「サピエンス」って本知ってる?あれで社会がどう組織されてて、なんで人間がこんな力持ってんのかっていう考え方がガラッと変わったんよ。
彼の新しい本「ネクサス」も、めっちゃ物議を醸しとるんや。社会を機能させるものと、完全に壊してしまうかもしれんものについての可能性のある答えに焦点を当ててんねん。AIの台頭、中東の戦争、政治家と国民のコミュニケーションの崩壊...この回では、それら全部について議論するで。
よく言うてるけど、物事の表層をめくって中身を見るのが大好きなんよ。特に、お気に入りの思想家とそれをするのが好きなんや。ユヴァルは間違いなく私のお気に入りの思想家の一人やね。全てに同意するかどうかは別として、絶対に頭に火をつけてくれるで。これが「What Now with Trevor Noah」や。
ノアからノアへ、ようこそポッドキャストへ。
ユヴァル: ありがとう、来られて嬉しいわ。
トレバー: あんたと話せるのめっちゃ楽しみにしてたんよ。なぜかっていうたら、世界中で知ってる人の中で、うちの友達のクリスティーナより物議を醸すようなアイデアを持ってる人って、あんたくらいやと思うねん。二人とも、人々が現実をどう認識してるかとか、この惑星での存在についての考え方に挑戦するようなアイデアを持ってはるんよ。
あんたの本「サピエンス」がええ例やね。「サピエンス」が人間がどうやって支配的な地位を得たか、どうやってこの力を手に入れたかを理解するのに役立ったとしたら、「ネクサス」はそこに至るネットワークと情報についての会話やと思うねん。そして、それが我々全員を終わらせる可能性もあるって。ちゃうかな?それとも「ネクサス」で何を達成しようと思とるん?「サピエンス」が土台を築いたものの上に何を積み上げようとしてんの?
ユヴァル: そうやな、「ネクサス」は基本的に「サピエンス」が終わったところから始まるんや。「ネクサス」の核心的な問いは、人間がそんなに賢いのに、なんでこんなにアホなんやろか、ってことなんよ。
我々は世界を征服し、月に到達し、原子を分裂させ、DNAを解読できるのに、自分自身と生態系の大部分を破壊寸前やねんて。気候変動だけやないで。自滅する方法のメニューがあって、そこから選べるみたいな状況なんよ。第三次世界大戦で核兵器使うかもしれんし、AIみたいな強力な技術が制御不能になるかもしれん。
多くの神話や神学では、人間の本性に何か問題があるって言うてるんよ。自己破壊的になる深い欠陥があるって。でも、そうは思わんのよ。問題は人間の本性やなくて、人間の情報にあるんやと思う。ええ人に悪い情報与えたら、悪い決定するんや。
トレバー: じゃあ、ちょっとその考えを遡って考えてみよか。情報がこの本の核心で、アイデアの中心やと思うねん。最初のページで、こんな質問してるやろ。「我々がそんなに賢いのに、なぜ世界を破壊してるんや?」「我々がそんなに賢いのに、なぜ自己破壊的なんや?」って。
最初に思うたんは、「我々」って誰やねん?って。正直に言うて、あんたの本はいつも考えさせられるし、疑問を持たせてくれるんやけど、「我々」なんか、それとも他の人よりもっと能力がある少数の人間なんかな?って。
ユヴァル: そうやな、歴史的な典型的な例を考えてみよう。ナチズムとヒトラーの例やけど、ヒトラーが悪かったんやけど、ヒトラーがどうやってそんなに大きな力を得たんやろ?今日の世界で最も強力な個人を考えてみ。森の中に一人で置いたら、何の力もないんよ。
ヒトラーが森の中に一人おったら、プーチンが森の中に一人おったら、何の力もない。問題は、どうやって何百万人もの人々を、個人的に知らん人々を、家族でも親友でもない人々を、自分の命令に従わせ、時には命を危険にさらし、犠牲にさせるくらいの力を得るかってことなんや。
個人の力やのうて、ネットワークの力であり、ブランドの力なんや。ブランドは物語や。コカ・コーラのブランドを考えてみ。飲み物の現実は砂糖水やけど、その周りにある物語があるんや。その物語を飲むと、若さと幸せと楽しさと友情とつながりを感じるんや。
数十年かけて数十億ドルを投資して、我々の心の中にそのつながりを作り出したんや。我々は飲み物の化学的な現実に反応するんやなくて、心の中の物語に反応してるんや。カリスマ的な指導者も同じことや。我々は彼らの周りに織り込まれた物語に反応してるんであって、その人物の現実に反応してるんやない。その現実はしばしば物語とは全然違うんやけどな。
トレバー: ちょっと待って、こう聞かせてもらおか。本読んでて、一瞬「サピエンス」が人類に誇大な達成感を与えたような気がして、「ネクサス」でそれを奪い返そうとしてるみたいに感じたんやけど。
「サピエンス」では、アイデアが我々を拡大させた理由やって言うてたやん。物語が我々を超えて存在できる理由やって。宗教とか、王の物語を広めるとか、ギリシャの神の話をするとか、そういうのが人間を通常の20〜100人のネットワークを超えて築き上げることができた理由やって。
今や我々はそれを超えて拡大したけど、我々が設計した情報やネットワークについて何を言うてんの?我々を作り上げたものが、今度は我々の破滅になるって言うてんの?
ユヴァル: 必ずしもそうやないな。この本は決定論的やないんよ。まず、本当に何が起こってるのか、情報とは何か、どう機能するのか、AIとは何か、どう機能するのか、以前の情報技術とどう違うのかを理解せなあかん。
でも単に理解するためやけどな。最も重要なのは、情報が真実やないってことを理解することや。シリコンバレーみたいなところで広まってる素朴な見方があって、世界にどんどん情報を流し込めば、必然的に真実と知恵と良い決断につながるって思ってる。でも、そうやないんよ。
世界に情報を流し込むだけやと、真実は底に沈んでしまう。フィクションが浮かび上がってくるんや。世界の大半の情報は真実やないからな。真実は非常に稀で高価な情報の一部分なんや。
クリスティーナ: でもな、私はジャーナリストやから、真実ってめっちゃ高尚で哲学的な概念に思えるんよ。現実とか物事の真実は、人それぞれ違うと思うねん。真実を目指すんやなくて、事実を目指すべきやと思うんよ。実際の事実は何で、それがどう広まってるかが問題やと思う。
そこで質問なんやけど、誰がこれらの事実や真実を世界に広めるべきやと思う?誰の責任なん?これって自然に民主化できるもんやないよね。今はシリコンバレーがやってるけど、世界中の人が受け取る情報を決める評議会とか、そういうグループがあるような世界ってどうなん?それってええ世界なん?
ユヴァル: うーん、二つのことについて議論せなあかんな。まず、真実とは何か、それが事実や意見とどう関係するかってこと。次に、真実と民主主義やな。
ここで旗を立てたいんやけど、民主主義は真実についてやのうて、欲望についてなんや。選挙で人々に聞くのは真実が何かやのうて、何が欲しいかなんや。人々はしばしば、真実が現実とは違うものであって欲しいと思ってる。
でも、民主主義における欲望と真実の議論に入る前に、まず現実から始めよう。存在するものすべてが現実の一部や。真実は、現実の特定の部分を指し示すもんや。もちろん、人それぞれ異なる見方や記憶、感情を持ってる。それも全部現実の一部や。
ある状況について私の見方があんたと違うって言うのも、これまた真実なんや。今、世界中で表現の危機みたいなもんが起こってるのは、部分的には、すべてを100%正確に表現したいって思ってるからなんや。でもそれは不可能や。地図を現実の表現として考えてみ。ロサンゼルスの地図とかアメリカの地図とか。
明らかに、地図は決して現実と完全に一致することはできへん。そうなったら、もう地図やのうて現実になってまうからな。地図は常に抽象化されたもんや。例えば、100万分の1のスケールとかな。だから、ほとんどのものを地図に載せられへんのよ。
そこで問題になるのが、何を重要なものとして指し示すかってことや。これはもちろん複雑や。人々は「あんたの地図は、私にとってめっちゃ重要なものを省いてる」って言うからな。
トレバー: 地図はええ例やな。我々が使ってる地図ではアフリカがあるべき大きさより小さくなってるって知ってるやろ。「それは真実やないし、事実でもない」って言えるけど、この地図を作った人たちは、ヨーロッパとアメリカを特定の見た目にしたかったんや。
地図は現実を枠づける素晴らしい方法やと思う。まず認識せなあかんのは、地図は決して1対1のスケールにはなれへんってことや。絶対的な正確さを求めて、すべてを正確に表現しようとしたら...それは役に立たん地図になってまうんや。
ユヴァル: 本の中に、ボルヘスの物語があるんやけど、最も正確な地図を持ちたいって思った古代の帝国の話や。そこで、1対1のスケールの地図を作ったんやけど、結局その地図が帝国全体を覆ってしまったんや。もちろん、帝国は崩壊した。帝国のすべてのリソースがこの1対1の地図を作るのに使われてしまったからな。
これは不可能なんや。あんたの話から、いくつか思うことがあるんやけど。まず、あんたの本を読んでて、ページからページへ、文から文へ移るたびに、あんたのことを楽観主義者か悲観主義者かどっちやと思うか、なかなか判断つかへんのよ。あんたが消費する歴史の量と、世界の発展をどう見てるかを考えると、どっちやと思う?
ユヵル: 現実主義者やな。
トレバー: でも、あんたの本に基づいて挑戦させてもらうと、ある方向に傾いてるはずやろ。AIレボリューションを率いてる人たちと潜在的な危険性について話すと、彼らも脅威があることには同意するんや。でも、人類が適応する機会を与えるために速度を落とす必要があるって言うたら、みんな同じことを言うんよ。
「速度を落としたいけど、できへんのや。競争相手を信用できへんからな」って。軍拡競争みたいなもんやねん。競争相手が国内にいようが、間違いなく海の向こうにいようが、全体を動かしてるのは、人間を信用できへんってことなんや。
でも、AIを開発するときに「AIは信用できると確信してる」って言うんよ。これはパラドックスやな。人間は信用できへんけど、機械のほうが人間より信用できると思ってる。
彼らの中には思慮深い人もいて、自分たちの言ってることがどれだけ警戒すべきで、場合によっては馬鹿げてるかって分かってる人もおるんやけどな。でも、核心は彼らがこう言うことなんや。「部屋に閉じ込められて、一つのドアを開けたら、何千年もの間そこにモンスターがおった。これが人間を信用できへんってことや。もう一つのドアを開けたら、もっとヤバいモンスターがおる可能性が高いけど、そっちは開けたことないから確信はない」って。
人類の未来を賭けて、ドア2の向こうにモンスターがおらへん小さな可能性に賭けてるんや。人間を信用できへんのに、我々が信用できるAIを作れるって思ってる。
クリスティーナ: トレバーはあんたに楽観主義者か悲観主義者かって聞いたけど、あんたはめっちゃ洗練された方法でその質問をうまくかわしたな。
ユヴァル: これが私の答えやで。
クリスティーナ: ほんま?悲観主義者が別の悲観主義者を見つけたみたいやな。
ユヴァル: まあ、実際ちょっと違う角度から考えてみるわ。本を読んで、あんたは人間の本性についてかなり楽観的っていうか中立的な見方をしてると感じたんやろ。私はキリスト教の伝統から来てて、原罪や人間の本性を信じてる。基本的に人間はクソで、イエスが必要やって。最初はクソやけど、救われるみたいな。
本の中で、人間の本性を免罪してるわけやないけど、人間の本性についてかなり楽観的っていうか中立的な見方をしてるように感じたんや。人間が悪いとは思ってへんみたいやけど、情報やネットワークにかなり責任を負わせてるように感じたわ。
ユヴァル: 問題は悪やのうて無知やと思うな。
クリスティーナ: 面白いな。じゃあ、なんで人々はそういう物語に惹かれるんやろ。無知は別として、オンラインでウイルス的に広まるようなもんがあるやん。例えば、「彼らは猫や犬を食べてる」みたいな話。私はそんなん聞いたら「違うやろ」って思うけど、多くの人間は「ほんまかもしれん」って思うんよ。
なんでそんな情報が人を引き付けるんやろ。今の世界には、ハイチ人が猫や犬を食べてるって信じてる人が十分おるんよ。我々は刺激的なもの、暗いもの、他の人が劣ってるって信じたがるんや。そこが私にとっては...まあ、私はストレートに言うわ。私はホッブズ的で、「こういう人たちや」って思うんやけど。人間にはどういうところがあって、こういう情報に引き寄せられるんやろ。
ユヴァル: うん、でも、あんたが言うてることは、少なくとも認知的には、無知よりも悪のほうが扱いやすいってことやな。悪は単純なんや。世界についての単純な物語なんよ。悪があって、善がある。人間の中に何か悪いものがあるって言うても、完璧な善みたいなもんもあるって。イエスがおって、この完璧に善なる存在を信じれば救われるって。
善悪の戦いっていうのは、一般的に世界についての単純な物語なんや。一方、無知はそうやない。人間の本性に深く根付いたもんやのうて、単に世界があまりにも複雑すぎるってだけなんや。我々が無知なのは、学校に行かなかったからやのうて、単に現実が極めて極めて複雑やからなんや。
だから、簡単な解決策はないんよ。みんなを学校に行かせれば無知でなくなるってもんやない。何かの分野で博士号を持ってても、他の多くのことについては信じられないほど無知なこともあるんや。
これも、我々の相互依存性を理解することの一部やな。世界をこういった情報ネットワークとして考えると、自分一人では絶対にできへんってことが分かる。今、世界中に溢れてる陰謀論の問題の一つは、「自分で調べろ」って人々に言うことなんや。それは不可能なんよ。誰も一人ですべてを調べることはできへん。これは完全な独立の幻想なんや。
「自分で全てについての真実を見つけられる」なんて、そんなことあらへん。科学はチームスポーツなんや。何かについての真実を見つけたいなら、例えば、19世紀初頭のイギリスで最初の列車が発明されたことについて、一生をかけて研究しても、ローマ帝国のことや、コビッド19のパンデミックの原因、ケネディ暗殺の真相については、まだほとんど何も分からへんのや。
本当に世界を理解したいなら、こういった巨大なネットワークに頼るしかないんや。
トレバー: でも、この会話の最初の方で、プーチンが森に行ったら何の力もないって言うたやん。私は、彼はすぐに見つけた部族の中で力を集めると思うんやけど。
ユヴァル: そうや、人は必要なんや。でも、人々が実際にこの力を与える理由は、あんたが説明したことなんや。真実や事実を見つけ出すのは信じられないほど難しいってことや。信じられないほどの技術が必要で、時間も必要や。お金がそんなにない人、給料日から給料日まで生活してる人には、そんな時間はないんよ。
歴史を通じて、答えはいつも制度やった。そして次の質問が出てくる。「どの制度を信用して、どの制度を信用せんほうがええんか、どうやって分かるんや?」少なくとも歴史の経験から言えるのは、ヒーロー的には聞こえへんかもしれんけど、鍵は自己修正メカニズムなんや。
その制度の中に、絶えず自分自身の間違いやミスを探し、修正する強力なメカニズムがあるかどうかや。外部の人のミスを正すんは簡単やけど、制度が自分自身のミスを特定して修正できるかどうかが重要なんや。
クリスティーナ: 私は本能的に、制度はそんなことしたがらへんと思うわ。若い頃に触れた制度といえば、学校か教会みたいな宗教機関やったけど、そういうとこって自己修正したがらへんのよ。学校でも、もっと進歩的なカリキュラムを導入しようって言うたら、「いやいやいや」って言うやん。
制度にはすぐに硬直化して、実際にそういう自己修正のメカニズムを持てへんようになる傾向があると思うわ。
ユヴァル: 難しいよな。自己修正のメカニズムは高くつくし、複雑やからな。でも、一部の制度にはそういうのがあるんよ。完璧やないけど、科学の制度は自己修正に基づいてる。科学雑誌が発表するのは基本的に修正やからな。
制度を理解しようとするとき、一つの重要なポイントは、その制度の中で人々がどうやって昇進するか、インセンティブ構造はどうなってるかってことや。教会では普通、前の人や長老、指導者が言うことを何でも受け入れて、決して挑戦せんかったら法王になれるかもしれん。
でも、科学ではノーベル賞は取れへん。「アインシュタインは正しかった、ダーウィンは正しかった、マリー・キュリーは正しかった」って言うだけじゃダメなんや。人々は「そうやな、でもそれはもう知ってるやん。ノーベル賞はあげられへんで」って言うやろ。アインシュタインが知らんかったこと、相対性理論の抜け穴を見つけたら、そんときはノーベル賞もらえるかもしれんけどな。
クリスティーナ: 科学と制度の話は面白いわ。黒人女性として、私は制度を信用してへんのよ。科学の制度も含めてな。歴史的に黒人や有色人種の女性を実験台にしてきたし、医療システムにも今でも人種差別が組み込まれてる。血圧の測り方とかな。
この前提は、多くの人が制度を信用することを要求してるけど、今の歴史の瞬間では、抑圧される側も抑圧する側も、誰も制度を信用してへんように思えるんよ。それは最悪や。制度がないと、うまく機能するのは独裁制だけやからな。
ユヴァル: そうや、民主主義は信頼の上に成り立つけど、独裁制は恐怖の上に成り立つんや。人々に全ての制度への信頼を失わせたら、社会をまとめられるのは独裁者の恐怖だけになってまう。
制度が多くの悪いことをしたとしても、我々にはそれより良いものはないんや。問題は、どの制度がより良く自己修正できる可能性があるかってことや。今日、大学で歴史を学びに行ったら、19世紀や20世紀初頭の歴史家たちの恐ろしい間違いについて教えられるやろ。例えば、めちゃくちゃ人種差別的やったってな。
でも、「学問自体は大丈夫やったけど、この一人の教授が人種差別的やった」なんて言わへん。「歴史学や考古学、人類学の学問分野に100年前は人種差別的な偏見があったことを認める。今でもまだ痕跡が残ってるかもしれへん。我々はそれを認めて、もっと良くしようとしてる」って言うんや。
この能力、他の誰かに頼るんやなくて、自分自身の間違いを正す能力、これが科学の特徴なんや。民主主義の特徴でもあるな。民主主義全体を一種の自己修正メカニズムと考えられる。誰かに限られた時間だけ権力を与えて、4年後に「ああ、間違いやった。他のもんを試してみよう」って言えるんや。
トレバー: そして、返してくれることを信じなあかんのやな。それが民主主義の弱点やな。4年間誰かに権力を与えて、返してくれへんかったらどうすんねん?
ユヴァル: そうや、それが大きな問題なんや。いつもそうってわけやないけど、多くの独裁政権は民主主義から始まったんよ。ロシアのプーチンも元々は民主的な選挙で権力を得たし、ベネズエラのチャベスやマドゥロもそうや。最初は民主的に権力を得たけど、今では選挙を操作してる。
でも、多くの場合はうまくいくんや。我々はうまくいかへんときばっかり見がちやけど、システムがうまく機能してるときもたくさんあるってことを評価せなあかんな。
トレバー: じゃあ、あんたがこの本や今の会話で主張してることの多くは、完璧な絶対的な真実はないってことやな。でも、我々が目指すべきなんは、常に挑戦し、自己修正できる場所にいることやと。それがあんたの、健全な社会や健全な情報システムに生きてるかどうかの指標みたいなもんなんか?
ユヴァル: そうや、それは盲目的な同調と、全ての制度への完全な拒絶や不信の間の中道みたいなもんやな。全ての制度を拒絶したら、無政府状態か独裁政治につながってまう。中道は、また官僚的で英雄的やないから退屈かもしれんけど、大規模な人間社会の基礎として官僚制の重要性を認識することなんや。
これは「ネクサス」で繰り返されるテーマの一つやけど、人々が官僚制を理解するのが難しいってことなんや。セクシーやないからな。そして、それは危険や。人々が世界がどう機能してるか理解できへんから、ディープステートとかについての陰謀論に簡単に騙されてまうんや。
私にとって、ディープステートは下水システムみたいなもんや。人々が「ああ、ディープステート」って言うたら、すぐに下水システムのことを考えるんや。深いパイプやポンプのネットワークがあって、家や近所や街を支えてる。それがあんたのディープステートや。トイレに行って、ボタン押したら消えてく。それがディープステートに消えてくんや。
これも、無知と悪の話に戻るな。税金取り立て人が来て税金取ったら、それがプーチンが自分のためにダーチャ建てるのに使うのか、国の反対側の人々に安全な飲み水を提供するのに使うのか、どうやって分かるんや?予算がどう機能してるか理解せなあかんのや。
「私の税金はこの共同基金に入って、そこから予算が組まれて、特定の方法で分配される」ってな。最後にハリウッドの大作で予算がどう機能するかについての映画見たのいつや?
トレバー: どこにも行かんといてな、もっと「What Now」があるで。
(音楽)
本の中で一番複雑に見える部分が、逆に扱いやすいように思えるんやけど。それはAIのことや。我々が同意できる真実がもっと含まれてるからな。本の章を見たとき、情報の部分はサクッと読めると思ったんや。過去や帝国、独裁政治について読んで、AIが難しいと思ってた。でも逆やった。
人々との会話でも、AIについての議論のほうが、もっと多くの真実を共有してるように感じるんや。じゃあ、AIについて話して、そこからいくつかのアイデアを遡って考えてみようか。
自分のことをネットでチェックしたりするか知らんけど、特にこの本が出てから、あんたの顔がAIに反対する人のシンボルみたいになってるんよ。「ユヴァル」って検索したら、「AIが世界を破壊する」「AIが我々を滅ぼす」みたいなのが出てくる。
AIについてのあんたの意見はどうやって形成されたん?実際にネットで見られるものが、あんたの本当の意見なんか?それとも単純化されたものなんか?
ユヴァル: まず、AIは人類に大きな利益をもたらす可能性があると思うんや。そうやないと、誰も開発せえへんやろ。医療を改善したり、気候変動と戦ったり、自動運転車の話もあるな。毎年100万人以上が交通事故で亡くなってて、その大半は人間のミス、飲酒運転や居眠り運転が原因や。自動運転車なら毎年100万人の命を救える可能性があるんや。
だから、大きなプラスの可能性はあるんや。個人的には、そのプラスの可能性についてあまり話さへん。他にも十分話してる人がおるからな。ただ、危険もあるし、脅威もあるってことを認識して、この技術をどう開発するかについてより賢明な決定ができるようにせなあかんってことを言うてるんや。
AIについて一番重要なのは、これが歴史上初めて、道具やなくてエージェントやってことなんや。
トレバー: それについてもっと詳しく聞かせてくれへん?本の中でも特に印象に残ったフレーズの一つやったわ。
ユヴァル: そうやな。AIについてはめちゃくちゃ誇大宣伝があるから、今や市場では誰もが自分のやってることをAIって言いたがるんや。投資を引き付けるためにな。でも、全ての機械がAIってわけやないし、全ての自動機械がAIってわけでもない。
コーヒーマシンを考えてみ。ボタン押したらエスプレッソを自動的に入れてくれる機械があるやろ。これはAIやない。ただの自動機械や。AIは自分で学習し、自分で変化し、自分で決定を下し、新しいアイデアを生み出す能力によって定義されるんや。
コーヒーマシンの場合、あんたが近づいたときに、ボタンを押す前に「ヘイ、あんたのこと知ってるで。あんたや他の人たちを何週間も何ヶ月も観察してきたんや。あんたについて知ってること、あんたのパターン、今の時間帯、あんたの表情から、多分エスプレッソに砂糖一杯欲しいんやろ」って言うたら、それがAIになるんや。
トレバー: 今、AIを売り込んでるな。クリスティーナを一文で説得してもうたで。
ユヴァル: そうやな。本当にAIになるのは、「実は、ベストプレッソって新しい飲み物を発明したんや。エスプレッソよりもっと気に入ると思うで。試したことないやろうけど、一杯用意しといたで」って言うたときやな。
これが独立した決定を下す能力であり、完全に新しいものを発明する能力なんや。我々が全てを指示せんでも、自分で何かをする能力がある。これがAIをエージェントにして、単なる道具やないものにしてるんや。
道具は我々が指示したことだけをするもんや。原子爆弾でも、都市を破壊せよって言うたら破壊するだけや。でも自分で決定することはできへん。
これがAIをそんなに強力にし、潜在的にポジティブにするものなんや。人間が考えたこともない新しい薬や新しい治療法を発明できるからな。でも、同時にそれが潜在的にとても危険なものにもなる。これまでの全ての技術と違って、我々のコントロールを逃れて、独立した決定を下し始め、我々を操作し始め、新しい薬だけやなく新しい爆弾も作り出す可能性があるんや。
一番深刻な問題は、本質的に我々がその振る舞いを予測してコントロールできへんってことや。自分で学習し、変化する能力があるからな。
ハリウッドのSF映画に騙されて、危険は大きなロボットの反乱やと思ってる人もおるけど、それは近い将来には来へん。遠い未来かもしれんけど、今はちゃう。これが人々を油断させてまうんや。
我々が理解せなあかんのは、世界中のあらゆる場所で何百万、場合によっては何十億もの新しいエージェントが活動することについて話してるってことや。銀行や企業、大学、政府、軍隊にいる何百万ものAI官僚が、我々の生活についてどんどん多くの決定を下し、世界を作り変えてくんや。
銀行にローンを申し込んだら、理解できへん理由でAIがローンを与えるかどうか決めるんや。仕事に応募したら、AIが仕事を与えるかどうか決める。戦争があったら、AIが何を...
クリスティーナ: 面白いな。あんたが描写してるAIは、黒人にとっての白人みたいやな。銀行に行ってもローンくれへんし、なんで断られたか教えてくれへん。法執行機関の暴力とか...あんたが描写してるディストピアな未来は、AIなしでも多くの人々の現在の現実なんや。
トレバー: それに付け加えさせてもらうと、どっちに転ぶかのリスクをどう評価すべきか聞きたいんやけど。クリスティーナの言うとおり、我々はすでに法執行機関や政府、銀行、金融機関が人々の運命を決めてる世界に生きてるんや。それが恣意的で、どうやって決まったのか、どこで決まったのか分からへん。
AIがあんたの言うようにそのエージェントになる可能性はあるけど、すでにそうなってるんやないか?
ユヴァル: そうや、私が描写してるのは未来やなくて現在なんや。今日、銀行に行ったら...あんたの銀行がどうか知らんけど、世界中で自動化されてる。ガザやウクライナの戦争を見ても、多くの決定がすでにAIによって下されてるんや。これは未来の予測やない。
もちろん、ポジティブな可能性もあるんや。これらの技術を開発してる人たちは、実際には改善やって言うんや。人間の銀行員が人種差別的やってことは分かってる。でも、AIを人種を無視するように設計できるって。人間はそうできへんかったけどな。
でも、今のところそうなってへん。大きな論争があるんや。10年前はそれが約束やった。10年前、人々は「これは単なる数学や、単なるコンピューターや。心理も個人的な歴史もない。人種差別的にはなれへん」って言うてた。
でも今日、我々はアルゴリズムが人種差別的になれることを知ってる。アルゴリズムが同性愛嫌悪になれることも、反ユダヤ主義になれることも。全て学習データ次第なんや。人種差別的なデータでAIを訓練したら、AIは人種差別的になる。
トレバー: 「ネクサス」や情報とネットワークについてのあんたの経験に戻ると、それがAIの根本的な欠陥やと言えるんやないか?我々は自分たちより優れたものになることを期待して何かを教えようとしてるけど、それは根本的に我々に基づいてて、我々の全ての欠陥を含んでるんや。
ユヴァル: それは一つの危険やな。でも、逆の危険もあるんや。我々は完全に異質なものを作ってる可能性もある。AIっていう頭字語を考えるとき、人工知能って意味やけど、エイリアン・インテリジェンス(異質な知能)として考えるほうがええと思うんや。
エイリアンっていうのは宇宙から来たって意味やなくて、人間が情報を処理して決定を下し、アイデアを生み出す方法と根本的に違うってことや。人工的って言うと、我々がコントロールできる人工物みたいなイメージを与えるけど、年々AIはどんどん人工的やなくなって、より異質になってるんや。
有名な例を挙げると、AIレボリューションの重要な瞬間の一つが、アルファ碁がイ・セドルを囲碁で破ったことやった。アメリカでは囲碁はそんなに大きくないけど、東アジアでは2000年以上前に中国で発明された戦略ゲームで、東アジアの教養ある人なら誰でも知っておくべき基本的な「技芸」の一つと考えられてきたんや。
チェスよりずっと複雑やから、1990年代後半にディープブルーがカスパロフを破った後も、コンピューターが囲碁で人間を破るのは無理やって思われてた。複雑さのレベルが違うんや。
2000年以上の間、何千万人もの人々が囲碁をプレイしてきて、どう囲碁をプレイするかについての思想の流派全体が形成されてきた。それは人生をどう生きるか、現実世界でどう行動すべきかの比喩とも見なされてきたんや。
そんな中、アルファ碁が登場して、2016年に人間のチャンピオンのイ・セドルを打ち負かしたんや。でも驚くべきは、その戦略や。アルファ碁が使った戦略に、囲碁の専門家たちは度肝を抜かれたんよ。2000年以上の間、人間が考えてきたものとは全く違うものやったからな。
アルファ碁が最初にその戦略を使ったとき、専門家たちは「なんてアホなコンピューターや」「こんな間抜けな間違いをして」って言うたんやけど、それが実は素晴らしい一手やったんや。今では人間のプレイヤーも、その戦略を取り入れてる。
これが今後、囲碁よりもっと重要な分野で起こる可能性があるんや。良いことかもしれんし、悪いことかもしれん。でも理解せなあかんのは、これが異質なものやってことや。
我々は、全く違う方法で世界を分析し、決定を下す知能から生まれた音楽を聴いたり、金融商品を見たり、宗教に出会ったりすることになるかもしれんのや。
トレバー: それって必ずしも...ちょっと待って。良いか悪いかは置いといて、これを分析すると、根本的にイノベーションそのものやないか?
慎重に言うけど、人類の歴史を振り返ると、誰かが当時の常識と全く相反することを考えたときのことを思い出すんや。人間が飛べるって言うたときに、みんな「頭おかしいんちゃうか」って言うたやろ。血を抜くんじゃなくて、人の血を引き出せばええんやないかって言うたら、「魔女や」って言われたんやないか。
こういう個人が、「こうやなくて、こうしたらどうや」って考えたんや。そういう人たちにはいろんなレッテルが貼られたけど、アルファ碁の話で本当に好きなのは、特にイ・セドルのことなんや。
イ・セドルは囲碁界最高の選手で、囲碁界のロジャー・フェデラーやって言われてた。いや、それ以上やな。ジョーダンとフェデラーを足したようなもんや。誰も彼に勝てへんかった。
彼の話を聞くと、この若い少年が島から出てきて、都会に来て囲碁を始めたんや。毎日何時間も練習して、彼の先生が熱心に語るには、彼は単に勝ち負けのためにプレイしたんやなくて、自分を表現する新しい方法を作り出すためにプレイしたんやって。
イ・セドルがアルファ碁に負けたとき、彼のエゴとか「負けてごめんなさい」「傲慢やった」みたいなことは別として、私にとって一番美しかったのは、彼が「これで囲碁についての固定観念を違う角度から考えられるようになった」って言うたことなんや。
負けた本人がそう言うてるのが信じられへんかったんや。これは人類が負けたようなもんやからな。ウィル・スミスが「インデペンデンス・デイ」で宇宙人に負けて、戻ってきて「これで人間の生き方について違う角度から考えられるようになった」って言うてるようなもんやで。
でもイ・セドルは、私の心に残るようなことを言うたんや。「我々は医療や法律や戦争や生活水準についての見方を揺さぶってくれるものが必要なんやないか」って。我々がそういうきっかけを必要としてるんやないかって。
あんたの本の一部が示唆してるように、我々が向かってる場所...ゆっくりかもしれんけど破滅的な結末...から我々を救うために。このリスクのバランスをどうとるべきなんやろ?良い方向に生き方を変えるきっかけを提供することと、我々が向かってるかもしれん破滅的な結末との間で。
ユヴァル: そうやな、それは本当にペースの問題、時間の問題やと思うんや。我々に必要なのは時間なんや。今の最大の問題は、AIが異質なスピードで動いてて、我々には適応する十分な時間がないってことなんや。これが私の恐れるところや。
我々は適応できるんやけど、適応するのに十分な時間をくれへんのやないかって。歴史を見ると、新しいアイデアや新しい技術が...よく聞くんやけど、「新しい発明が出るたびに、終末のシナリオが出てくるけど、結局大丈夫やったやないか。蒸気機関だって我々の生活を良くしたやん」って。
でも、そう言う人たちは移行期間を忘れてるんや。新しい強力な技術や発明が出てくると、多くの人々が恐ろしい苦しみを味わうことが多いんや。適応するのに時間がかかるし、人々は新しい技術をうまく使えへんからな。
最後の大きな発明の波、産業革命のことを考えてみ。18世紀後半から19世紀初頭にかけて、終末のシナリオが出てきて、多くが現実になったんや。必ずしもその技術を発明した人たちにとってやないけど、世界中の何億人もの人々にとってはな。
産業が19世紀に登場したとき、誰も産業社会の作り方を知らへんかったんや。前例もないし、歴史上の青写真もなかったからな。そこで人々は、いくつかの非常に危険なアイデアを思いついた。
最初は帝国主義やった。「産業社会を作る唯一の方法は帝国を作ることや」って言うたんや。「農業に基づく農耕社会は地域の条件で生きていけるけど、産業には原材料と市場が必要や。帝国なしで産業社会を作ったら、競争相手に原材料と市場を断たれて崩壊してまう」って。
100年以上、150年くらいかかって、人々はようやく「これは非常に悪いアイデアやった」って気づいたんや。
それから、レーニンやスターリンみたいな人たちが出てきて、「産業社会を作る方法は、共産主義の全体主義体制を作ることや。それしか機能せえへん」って言い出したんや。
19世紀以前には共産主義の独裁政権なんてなかったんや。電気やラジオ、列車、電信がなけりゃ共産主義の独裁政権はできへんのや。これも産業社会を作る実験やった。ファシズムも同じやな。
でも、これらの実験のコストを考えてみ。これはただの蒸気機関、ただのケトルみたいなもんやで。今、我々はAIで同じことをせなあかんのや。AIベースの社会の作り方なんて、誰も分かってへん。
もし、AIベースの社会の作り方を理解するために、また帝国や全体主義体制や世界大戦のサイクルを経なあかんのやったら、これは地獄になるで。シリコンバレーの人たちにとってはそうやないかもしれんけど、世界中の多くの人々にとってはな。
すでに見えてるんや。産業革命は、少数の産業大国と世界の残りの部分との間に、力と能力と繁栄の大きな格差を作り出した。数十年間、インドや南アフリカみたいな国がその格差を埋めようとしてきた。
でも今、その格差を埋めかけたところで、もっと大きなスケールで再び開こうとしてるんや。AIレボリューションを主導する少数の国々が、AIによって生み出される莫大な力と富を持つことになる。彼らはそれを世界中と共有するんやろか?多分そうはならへんやろ。
トレバー: もっと個人的な側面に話を移したいんやけど。あんたの側から見て、広範なトピックについて話してるのを見てきたけど、個人の生活ではどうなん?誰でも大げさな会話はできるけど、家族や同僚とどう話すかってのは重なる部分があると思うんや。
どうやってそのネットワークを発展させて信頼を維持するんや?人々の間の信頼はどこで築かれて、どこで壊れるんや?国家や国の前に、人々の間ではどうなんやろ?重なる部分はあるんかな?
ユヴァル: 信頼は、我々が現実をどう理解するか、人間の本性についてどんな理論を持ってるかに大きく依存するんや。今、世界で起こってる非常に危険なことの一つは、人間の本性と人間社会についての非常に皮肉な見方が広まってることなんや。
基本的に、全ての現実は単なる力関係やって。問うべき質問は「これは本当か?」やのうて、「誰の特権が守られてるんや?」ってことになってまう。
そんな風に考えたら、人間の相互作用は全て単なる力関係やって前提から始まる。今、あんたが何か言うてるとしたら、「誰の利益のためなんや?」って探さなあかん。「ただ本当やと思ってるだけかもしれん」っていう可能性を即座に無視してまうんや。
問題は、この皮肉な世界観が、まず第一に危険やってことや。全ての制度への信頼を蝕むからな。一つずつ制度を信じられんようになって、誰も信じられんようになる。自分を解放してると思ってるけど、実は社会を独裁者に差し出してるんや。
人々が全ての制度への信頼を失うたら、機能するのは独裁制だけになる。信頼を必要とせえへん、恐怖で機能する全然違うメカニズムやからな。
これは危険な見方やし、間違ってるんや。ほとんどの人間や制度、ジャーナリストや科学者、政治家は、たとえ権力を追求してても、時々人々を操作することがあったとしても、それだけやないんや。
他の人についてもっと寛大で寛容な見方から始めるんや。彼らが何か言うたら、たとえ同意せえへんかっても、必ずしも私を操作しようとしてるわけやない。本当にそう信じてて、そう信じる理由があるかもしれんって。
クリスティーナ: 人々はどうやってこの考え方を変えられるんやろ?あんたが提案してるのは、めっちゃラディカルなアイデアやで。ただ人々に疑いの利益を与えるってだけのことなのに。
自分を理解しようとすることに対して、ちょっと思いやりを持つってことかな。でも、それはめっちゃ大変なことやで。世界は良いことの方が悪いことより多いって考え方を変えるのは...あんたがそう言うてるの聞いてるだけで、もう固まってまいそうや。でも、それは私のエゴやな。実際はあんたの言うとおりで、世界には良いことの方が多いんやろうな。
ユヴァル: そうやな、もしそうやなかったら、我々は一日も生き延びられへんやろ。この過激な疑い、みんなが私を操作しようとしてる、力を得ようとしてるって考え...もしそれが本当やったら、私は生きてられへんやろ。
毎日、私が生きてるのは、多くの人々が私のためにいろんなことをしてくれてるからなんや。下水システムを管理してる人から、ゴミを集めてくれる人、薬を開発して私の面倒を見てくれる医者まで。
世界中を歩き回って「誰も信用できへん」なんて言うてる人は、自分を欺いてるだけや。常に多くの人を信用してるんや。スマートフォンで何かの陰謀論を読んでて「誰も信用せえへん」って言うてる人も、そのスマートフォンを作った人や陰謀論を教えてくれる人を信用してるんやで。
それを認識するのも、めっちゃ謙虚になれることやと思う。多くの不信感は、ある種の誇大妄想から来てるんやないかな。「全部自分でできる」みたいな。ある意味、個人主義の究極の表現みたいなもんやな。
トレバー: あんたの話を聞いてると、いくつかのつながりが見えてくるわ。時間をかけて、個人の権利がどんどん増えていって、「あんたとあんたの家族と車とバックヤードとプールと服」みたいな考え方になってきた世界やな。
でも、あんたの本からも借りるけど、昔はもっと共同体的な存在やったんや。村の土地、村の家、そんな感じやった。今は「俺の父ちゃんは俺の子供の面倒を見てくれなあかん」みたいになってる。
あんたが言うたように、我々は常に自分たちに実験してるんやな。人間は、本当に急激な実験をしてる数少ない種の一つやと思う。それが我々の進化なのか、技術の進化なのかは分からんけど。
その中で、不幸なことをすぐに学んでしまうんや。それにぶち当たってしまう。そういう個人主義化の中で、あんたが言うたように、一つ気づかへん二次的な効果があるんやないか。
もし全ての人が「俺と俺のもの」って考えるようになったら、あんたが言うたように、信頼できへんようになる。信頼するには、ある程度の謙虚さが必要やし、自分を他人の手に委ねる必要がある。
高速道路で他のドライバーが車線をはみ出さへんって信頼せなあかんし、ショッピングモールで誰かが突然バッグを奪わへんって信頼せなあかん。公園で遊んでる子供を誰かが連れ去らへんって信頼せなあかん。
ユヴァル: お金の例が一番好きやな。みんな個人主義者やって思ってても、まだお金を信じてる。形を変えただけや。面白いことに、「政府のお金は信じへんけど、暗号通貨は信じる」って言うだけなんや。でも、交換を信じてるんや。
これは重要なポイントやと思う。例えば、今のアメリカを考えてみ。民主党と共和党の間の溝がどんどん広がってる。最後に彼らが同意できることは何やと考えたら、ドルやと思うんや。
共和党員と民主党員がまだ同意できる最後のものはドルの価値やねん。これも今、同じ理論で攻撃されてる。「ドルは信用できない機関、連邦準備制度の官僚が作ってる。ディープステートやから信用できへん。だから、技術を信用しよう」って。
誰もサトシが誰か知らへんのに。皮肉なのは、サトシやのうてアルゴリズムなんや。人間に対するこんな深い不信と、技術に対するナイーブな信頼が組み合わさってる。これはある意味、奇妙で恐ろしい状況やな。
まず、技術は人間が作ってるんや。連邦準備制度の人間を信用できへんのに、なんでこっちの人間を信用するんや?基本的に、人間よりエイリアンを信用することを選んでるんや。
トレバー: この深い不信が存在する理由の一部は個人主義やと思うけど、多くの人が大変な苦しみを味わってるってのもあると思うんや。家が買えへんとか、給料日から給料日まで生活してる人がおる。
仕事を得ても、一年後にはなくなってるかもしれへん。昔は、親父が30年同じ仕事をしてたみたいな。人々は、人類の歴史上前例のない方法で苦しんでるわけやないけど、多くの人にとっては独特の苦しみに感じるんやないかな。
こういう苦しみに満ちた人生を送ってて、自分すら信用できへんかったら、他人なんて絶対信用できへんやろ。たくさんの人を失望させてきた機関なんて信用できへんやろ。
多くの人が「大学の学位を取れ」って言われて行ったけど、学歴インフレのせいでその学位は無意味になってしまった。学校では「学校に残って勉強しろ」って言われたのに。
西洋では、ある意味で社会契約が崩壊してるように感じるんや。これが不信の原因になってる。苦しみがあるからな。これを軽視することはできへんと思う。
みんなが明日目覚めて「私は世界で一番信頼できる人間になるぞ」って思ったとしても、上の人たちがたくさん持ってて、みんなが少ししか持ってへんこの壊れた世界で生きていかなあかんのやから。
ユヴァル: 問題は、まだまだ底に行くまで長い道のりがあるってことや。今がどんなに悪くても、もっともっと悪くなる可能性があるんや。
人類の歴史上、どの時代が良かったと思う?1950年代?1850年代?あんたにとっての黄金時代はいつ?大西洋奴隷貿易の前の400年前?
クリスティーナ: その頃の方が良かったんちゃう?
ユヴァル: 18歳になる前に半分の子供が病気で死んでた時代の方が良かったんか?それが私の言いたいことや。
奴隷制の問題だけ取り上げても、世界中どこでも奴隷制があったんや。奴隷制は5...ヨーロッパ列強が押し付けた特定のタイプの奴隷制はあったけど、その前から何世紀も、何千年も、多くの異なる文明で、ひどい奴隷制がいろんな形であったんや。
これは特定のタイプを軽視するわけやないけど、人々は自分が知ってる苦しみにはめっちゃ敏感やけど、経験したことのない苦しみは軽視してしまうんや。良いことも当たり前やと思って軽視してしまう。
今日、世界のほとんどの地域で、歴史上かつてないほど優れた医療システムがあるんや。でも、それは脆弱なんや。一つの統計を挙げると、ロシアのウクライナ侵攻や中東の危機で変わりつつあるけど、それでも21世紀初頭の平均的な政府の軍事支出は約6〜7%やった。
一方、医療への支出は、スウェーデンもナイジェリアも全部含めた世界全体の平均で10%やったんや。これは人類の歴史上初めて、政府が軍事よりも医療に大幅に多くのお金を使ってるってことなんや。これはすごいことやと思う。
私が心配なのは、人々がこれを評価せえへんから、非常に脆弱なんや。こんなすぐに失われる可能性があるんや。私の地域、中東を見てみ。ウクライナへのロシアの侵攻を見てみ。あっという間に失われる可能性があるんや。
今日のロシアでは、政府予算の30%以上が軍事に使われてる。正確なことは誰も知らへん、大きな秘密やからな。でもロシア政府は、学校や病院からお金を取り上げて、戦車やミサイルやドローンに回してるんや。
これが世界中のもっと多くの国に広がる可能性がある。もしこれが続いたら、10年後には人々は今を振り返って「楽園に住んでたのに、気づかへんかった」って言うやろうな。
トレバー: どこにも行かんといてな、もっと「What Now」があるで。
(音楽)
私が学んだ大好きな教訓の一つは、ある日僧侶に「幸せって何やと思う?」って聞いたときのことなんや。彼は「幸せについては話さへん。我々は間違った言葉を使ってる」って言うたんや。「私は平和を探してる。平和と満足を」って。
彼は「人生で時々立ち止まって、今あんたが持ってるもののうち、10年前に欲しがってたものはどれくらいあるか考えてみ」って言うたんや。「驚くべきことに気づくで」って。
今日、あんたが会話するのも耐えられへん配偶者。昔はバーであの人があんたを見てくれることを夢見てた。あの人からメッセージが返ってくることを切望してた。
今はメンテナンスが必要で、タイヤ交換せなあかんから嫌になってる車。昔はカタログで見て「これが私の夢の車や」って思ってた。
今、生まれたことを後悔してるかもしれん子供たち。昔は卵子が受精せえへんことで泣いてた。パートナーが妊娠できへんことで泣いてた。
これら全てに、あんたが「ああ、生まれてこなければ良かったのに」って思うような瞬間があったんやで。
これは難しいことやと思う。人間であることの贈り物であり呪いでもあるんやないかな。我々はその基準を常に調整し続けてるからな。
あんたが言うてることが大好きなんは、我々の時間を通じての進歩の贈り物であり呪いは、それを評価することを許してくれへんってことやな。今では、欲しいものを手に入れるのにかかる時間を最小限にしてしまったからな。
我々がより良く自分自身を見出す方法、あるいは過去を健全な懐疑心と楽観主義を持って振り返る方法、周りの人々を失うかもしれんような瞬間に立ち向かう方法について、あんたはどう考えてる?
あんたのことをネットで調べてたら、本を通してしか知らへんかったんやけど、オンラインでのビデオや他の会話を見てて、驚いたことがあるんや。
あんたのイスラエルでの役割について、まったく異なる意見を持つ二つの派閥があるってことや。もちろん、二つだけやないけどな。
あんたの名前を検索する方法によって、ある人たちは「この男はシオニストで、パレスチナ人の破壊を望んでるイスラエル政府の手先や」って言うてる。
でも別の方法で検索したら、「ユヴァルはイスラエルの最悪の輸出品の一つで、ネタニヤフ政府を弱体化させ、イスラエルの正当性そのものを疑問視し、破壊しようとしてる」って出てくるんや。
これ全部読んでて、「うわー」って思ったんや。あんたの本を読んでて、同じものを人々がまったく違う方法で認識する可能性についての本を読んでる自分がおって、なんか皮肉やなって。
あんたはそれをデリケートに扱ってて、複雑な問題やと思うんやけど、そんな世界でどうやって生きてるん?過去が現在にどう影響するかを積極的に意識的に考えてる歴史家であり、イスラエル人としてどう生きてる?
我々がそれをどう見てるかとの関係で、バランスをどう取ってる?友達を失うたこともあるやろうし、立場に関係なく、危うい状況に置かれたこともあるやろ。どうやってそれを乗り越えてる?我々にはどうやって乗り越えろって勧める?
ユヴァル: 歴史については、事実や証拠に頼ろうとしてるんや。例えば、シオニズムの問題。私の経験では、ほとんどの人がその言葉の意味を理解してへん。シオニズムを人種差別と同一視する人たちは、多くのシオニストが実際にその言葉や思想が意味することを聞こうとせえへんのや。
私の歴史的経験から言えば、シオニズムは単にユダヤ人の民族運動で、ポーランド人やパレスチナ人やトルコ人の民族運動と本質的に変わらへん。シオニズムは基本的に三つのことを言うてる。
一つ目は、ユダヤ人は単なる個人やのうて、民族でもあるってこと。ポーランド人が単なる個人やのうて、ポーランド民族でもあるのと同じや。
二つ目は、ユダヤ民族は、世界中の他の民族と同じように自決権を持つってこと。全ての民族に自決権があって、ユダヤ民族だけそれがないっていうのはおかしいやろ?
三つ目は、ユダヤ人は地中海とヨルダン川の間の土地に深い歴史的・文化的つながりを持つってこと。これは歴史的に真実や。ユダヤ人がこの地に住んでた証拠が考古学的にも約3000年前まで遡れるし、全ての精神的な文章や文化的伝統にもそれが現れてる。これは単なる事実なんや。
でも、これはパレスチナ人の存在や権利を否定する必要があるってことやないんや。同時に、パレスチナ人という民族が存在し、地中海とヨルダン川の間の土地に深い文化的・歴史的つながりを持ってるってことも認めるべきやと思う。パレスチナ人にも自決権があるし、イスラエル人と同じように、生まれ育った国で安全で豊かで尊厳ある生活を送る権利があるんや。
そうなると、この二つの事実をどう扱うかって問題になる。この土地には700万人のユダヤ人がおって、その大多数はそこで生まれ、他に行くところがない。700万人以上のパレスチナ人もおって、彼らもそこで生まれ、他に行くところがない。両方とも同じ権利を持ってる。これに対して、どんな政治的解決策を見つけられるんやろか。
一つの国家って言う人もおるし、二つの国家って言う人もおる。ヨルダンとの連邦制とか、これやあれやって言う人もおる。でも、これはもう政治的な議論になってまうな。
私にとって最初のステップは、単純に地上の現実を認識することや。現実の半分を否定せんことや。一つの民族の存在と権利を認めることが、もう一つの民族の存在や権利を否定することを強制するもんやない。
複雑で難しいけど、人々は同時に二つの事実を頭に入れられるはずなんや。今の恐ろしい戦争の根本的な原因は、両側が相手側の存在や存在する権利を否定してることにあると思う。
自分の側、イスラエルのユダヤ人について言うと、多くの人々が、パレスチナ人という民族が存在することを否定してる。多くのイスラエル人ユダヤ人が、真顔で「パレスチナ人という民族なんて存在せえへん」って言うんや。彼らの存在を否定してる。
あるいは、「存在はしてるけど、ここにおる権利はない。神が我々にこの土地全部をくれたんや」って言う。パレスチナ側にも同じようなことを言う人がおる。ユダヤ人とこの土地のつながりを否定したり、ユダヤ人に権利があることを否定したりする。
歴史家として、人々は常に過去について議論するけど、過去について言えることは一つや。過去は過去なんや。100年前にユダヤ人がイスラエルに来たことが正当やったかどうかについて大きな議論はできる。英国の約束とかな。
でも今、そこに700万人の人がおるんや。彼らに何をして欲しいん?どこに行って欲しいん?
もう一つ、ほとんどの人が気づいてへんのは、どの国の歴史も非常に複雑やってことや。よく聞くのは、イスラエル人は基本的にヨーロッパの植民者やって考えや。
でも、ほとんどのイスラエル人が、1948年以降にイラクやエジプト、イエメンなどから追放された中東ユダヤ人の子孫やってことを理解してへん。ナクバへの報復として追放されたんや。
確かに、1948年までは、ヨーロッパから来たユダヤ人がユダヤ人社会の主要で支配的なグループやった。でも戦争の後、中東全体に何世紀も、何千年も住んでたユダヤ人コミュニティが、故郷から組織的に追放されて、今ではその子孫がイスラエルのユダヤ人の大多数を占めてるんや。
私の夫の話を聞くことがあるけど、彼の家族はエジプト出身で、両親ともカイロで生まれたんや。それなのに、時々「ポーランドに帰れ」って言われるんや。「俺、エジプトから来たんやけど。ポーランドって何やねん」って感じやな。
トレバー: この話を聞いて、歴史のレンズを通して見ると、あんたの本が決定論的やないって言うてるのが分かるな。過去の時代について質問して、今の時代を理解するのに役立てようとしてる。そして、これからどうなるかもな。
歴史家として、私が好きなのは、あんたが歴史について話す方法や。我々がどこから歴史を見てるかによって、歴史の形が変わるってことや。
多くのパレスチナ人にとっては、我々の時代が見える限り、これが我々の土地やった。それが英国のせいで変わったんや。多くの人が「英国が元々の罪を作った。今我々はその恐ろしい災難の中で生きてる」って言う。
人々は行ったり来たりするんや。南アフリカ人として、私は特定のレンズを通してこれを見てきた。非難だけを通して見るんやなくて、潜在的な影響について考えることが多いんや。
イスラエル人の友達や、その地域に住む友達、カタールやエジプト、サウジアラビアの友達とも話すんやけど、一つのことを見つけた。あんたの意見を聞きたいんやけど。
歴史をレンズとして使って、この種の紛争の潜在的な結論を見たことがあるんやろか?なぜリーダーたちは対話を求めるべきなんやろ?なぜ交渉すべきなんやろ?なぜ何らかの妥協点を見つけるべきなんやろ?
私が聞いた、そしてあんたは同意するかもしれんし、しないかもしれんけど、地域の人々が言うのは、我々の目の前でどんどん激化してるこの紛争が、最終的にはユダヤ人国家の終わりにつながる可能性があるってことなんや。
戦争がどこに向かうか分からへんからな。ナチス・ドイツだけやなく、歴史を通じて迫害され、抑圧され、スケープゴートにされてきたユダヤ人を守るという、その根本的なアイデアが...その実験が失敗するかもしれんのや。
ある人が私に言うたんや。「俺は中東人や。茶色い肌の人間や。でも、ユダヤ人の安全も信じてる。ネタニヤフのやってることは彼らの安全を危うくしてると思う」って。私は「うわ、なんて面白い考え方や」って思ったんや。
南アフリカ人として考えると、南アフリカ政府は多くのことをやった。本を読んでも、彼らは正しいと思ってやってたんや。本当に。「アフリカーナーの人々を守るためにこれをやってる」「これをせなあかん」って。
世界中の多くの政府が彼らを支持してた。今、我々はそれを振り返って「それは間違ってた」って言う。アパルトヘイトでやったことは全て完全に間違ってた。彼らは正しいことをしてると思ってたのに。
歴史家であり人間でもあるあんたの視点から見て、我々が歴史から学ぶべき教訓は何やと思う?正確に予測できない未来に生きてる状況に、どう適用すべきやと思う?
ユヴァル: イスラエル・パレスチナ紛争について具体的に話すなら、歴史家として私の主なメッセージは、過去を救おうとするんやなくて、現在と未来を救おうとすることや。
100年前や1年前に殺された人々は、もう生き返らせることはできへん。でも今、生きてる多くの人々、女性も男性も子供も高齢者も、正しい決断をせんかったら、1ヶ月後や1年後、2年後には死んでるかもしれんのや。
我々は、まだ救えるかもしれん人々に集中すべきで、もう救えへん人々には集中せんほうがええ。過去は救えへんからな。
トレバー: じゃあ、こう聞いてみよう。歴史の中で、リーダーたちが共通点を見つけられへんかったときに、妥協点を見つけられた例や瞬間はあるんやろか?そのキーは何やった?
歴史の一部を見ると、「うわー」って思うことがあるんや。イスラエルの首相が撃たれへんかったら、今日はどうなってたんやろか?ラビンがもうちょっと魅力的でカリスマ的やったら、アラファトとの対話はどうなってたんやろか?
我々が話し始めた「我々」は、あんたが言うたように、人々を選ぶ。そして、その「我々」が二人の「私」に凝縮される。その「私」が決定を下すんやけど、それはしばしば単に人間のエゴや人間の経験に基づいてるだけなんや。
だから、アルファ碁の話に戻るけど、あの一手は何やったんやろ?可能やと思われへんから誰も指さへんかった手や。過去にそういう手を生み出したものは何やったんやろ?人々が酔っ払ったからか?いや、そうやないと思うけど。
ユヴァル: そうやな、逆やと思う。酔っ払うのが我々の問題なんや。アルコールやのうて、イデオロギーに酔っ払う。宗教に酔っ払う。幻想に酔っ払う。
今イスラエルを率いてる人々を見ると、ただの酔っ払いの集まりみたいや。イデオロギーと権力と宗教に酔っ払ってる。頭の中に幻想を抱えてる。「神が国全体を我々にくれた」っていう宗教的幻想や、「我々は全能や」「我々は何でもできる」「権力さえあれば何でも解決できる」みたいな幻想や。
権力に取り憑かれてて、それで全てが解決できると思ってる。権力と幻想に酔っ払ってるから、現実が見えへんのや。
平和は現実を見ることから始まると思う。戦争は本質的に現実を否定しようとする試みや。現実を破壊しようとする試みや。頭の中から始まるんや。
現実の中に、頭で受け入れられへんものがある。包含できへんものがある。それがパレスチナ人かもしれんし、ユダヤ人かもしれん。ウクライナが独立国家でロシアの一部やないってことかもしれん。
プーチンやネタニヤフみたいな人の頭の中には、現実の一部をただ受け入れられへんものがあるんや。そしたら、何かが譲歩せなあかん。頭が変わるか、現実が変わるかや。
非常に権力のある人なら、自分の頭を変えるんやのうて、現実を変えようとする。「この人たちは存在せえへん」とか「存在するべきやない」って思って、その人たちを破壊する力があると思うてまう。これが戦争や。
戦争は現実をより単純にしようとする。我々の認知的不協和を、自分を変えるんやのうて、現実の一部を破壊することで解決しようとするんや。
平和は本当に、ただ現実を認識することから始まる。イスラエル・パレスチナの人々の場合、私がイスラエル人に言うのは、彼らが我々に何をしようとしてるか、我々をどう見てるかは一旦忘れて、まず現実をあるがままに見ようとすることや。
パレスチナ人という民族が存在することを認めなあかん。これが現実や。そして、この人々が生物学的に我々と同じやってことを認めなあかん。「我々は選ばれた民族や」とか、そんな宗教的幻想は忘れて。生物学的に彼らは我々と同じなんや。
それが認識できたら、次のステップは自然と明らかになる。彼らが存在して、我々と同じなら、我々と同じ基本的権利を持ってるはずや。安全、尊厳、繁栄、自決権をな。
これが、どこでも平和の唯一の確実な基礎になると思う。そうせんと、単なる一時的な妥協になってまう。人々は「今、相手側が強いから何かで妥協せなあかん」って言うけど、心の奥底では「この人たちは存在するべきやない」って思ってる。
10年後か20年後に、機会があれば彼らを破壊しようとする。そして相手側も同じことを考えてる。だから信頼がないんや。
ラビンとアラファトのプロセスが最終的に失敗したのも、ラビンとアラファトの個人的な問題やのうて、両側が心の奥底で、相当な理由があって、相手側が一時的に妥協してるだけやと疑ってたからなんや。
クリスティーナ: ちょっと悪魔の代弁者をさせてもらうと、イスラエルが西洋世界のほとんどの支持を受けた軍事大国で、パレスチナにはまだ国家として存在する権利すら認められてへん状況で、「両側」っていう考え方自体に苦しむ人もおるんやないかな。
デイビッドとゴリアテの関係みたいなもんやと...聖書の例えを使うてすまんけど。ハマスは痛みを与えることはできるけど、イスラエルがガザに与えられるダメージには全然及ばへん。だからこそ、一部の人はこれをジェノサイドって呼んでるんや。
あんたが現実を描写する方法すら、多くの人には受け入れられへんのかもしれん。一方には全てがあって、もう一方にはほとんど何もない。自決権や地域での安全な生活のために使えるものがほとんどないって言うてる人もおるからな。
ユヴァル: そうやな、これは視点の問題や。イスラエル人とパレスチナ人だけを見るなら、あんたの言うとおり、そこには完全な力の不均衡があるし、イスラエルにはパレスチナ人よりもずっと大きな責任があるってことになる。イスラエルの方がずっと強いからな。
でも、視点の問題は、アラブ世界やイスラム世界の他の人たちをどう扱うかってことなんや。視点を広げて、これはイスラエルとパレスチナの紛争だけやのうて、他にもたくさんの関係者がおるって考えると...例えば、今の戦争でも、イスラエルはガザのハマスだけやなく、レバノンのヒズボラ、イエメンのフーシ派、イラン、イラクのイランの代理勢力からも攻撃を受けてるんや。
我々が存在や安全について心配してるのは、ハマスが我々を破壊するんやないかって恐れやない。ハマスには我々を破壊できへんって分かってる。でも、ヒズボラやイランなどを加えると、突然、破壊の恐れがもっと理にかなったものになるんや。
クリスティーナ: もちろん、その恐れは正当やと思う。でも、今この紛争について読んだり見たりしてる多くの人にとっては、今のところガザが最も苦しみを受けてるんや。今、人々は必ずしもこれをアラブ・イスラエル紛争って呼んでへん。他の年に言われてたみたいにな。
イスラエルとガザの話をしてる。死亡した人々のリストを見ると、最初の10ページくらいは1歳未満の赤ちゃんばっかりや。そうなると、レバノンで何が起こってるか、ヨルダンで何が起こってるか、カタールで何が起こってるかなんて考えるの難しくなるんや。
今、ガザで人々が苦しんでて、その苦痛をネタニヤフ政権が与えてるって思うてまうんや。私はそれを擁護するつもりはないけど。
ユヴァル: そうや、擁護するのはあんたの仕事やない。犯罪的な行為がたくさんあったんや。起こるべきやなかった爆撃から、意図的な飢餓まで。
イスラエルには自衛権があると思うし、一部の行動は正当化できると思う。一部の行動は正当化できへん。少なくとも私の視点からはそうや。
でも、どうやって前に進むか、平和的な解決に至る可能性があるのかを理解しようとするとき、それはイスラエルとガザだけの問題やない。明らかに西岸も含まれるし、そこで起こってる恐ろしいことも。
ある意味、ガザの方が被害者は多いかもしれんけど、西岸で起こってることの方がはるかに正当化できへんのや。ガザでは少なくとも、イスラエルへのハマスの攻撃があって、武力紛争があるって正当化しようとできる。西岸では全然違う話や。入植者たちがやってること、メシア的シオニストたちがやってること...完全に正当化できへん。
でも、これを本当に解決しようと思うたら、全ての事実を考慮に入れる必要がある。紛争のさまざまな層を全て考えなあかんのや。そうすると、地域全体で何が起こってるかを見なあかん。
イスラエルとパレスチナ人だけの問題やったら、何年も何十年も前に解決できてたと思う。でも、自分たちの利益や幻想のために、この紛争を煽ったり操作したりしてる外部の利害関係者がたくさんおるんや。
ちなみに、アメリカの学生のデモを見てて、「なんでガザの戦争についてはデモするのに、スーダンやミャンマーで起こってることについてはデモせえへんのや」って言う人がおるけど、この件に関しては学生たちに完全に同意するんや。
アメリカはスーダンやミャンマーに何十億ドルもの金と武器を与えてへんからな。だからそっちには関わりが少ないんや。
だから、この会話全体を通して話してきたように、現実はめちゃくちゃ複雑なんや。これら全ての異なる関係者と異なる事実を考慮に入れなあかん。でも、常に一つの側面だけに焦点を当てて単純化しようとする傾向があるんや。
みんな自分たちを良い人に見せる枠組みを選ぶんやけどな。これも、我々が最初に話した真実と現実の間のダンスの一部なんや。現実は広大で、現実全体の1対1の地図は作れへん。
真実は現実の特定の側面を指し示して、人間の注意をその側面に向けることや。これが学者やジャーナリスト、政治家の大きな責任なんや。どうやってそれを責任ある方法でやるか。
ここでの問題は、人々の注目を集めるのは必ずしも真実やないってことや。ほとんどの情報は真実やない。
トレバー: ニュアンスさえもな。
あんたの本を読んだ後であんたの話を聞くのが大好きな理由の一つは、あんたがページの上に見事に書いた情報を処理する追加の方法を与えてくれるからや。
これら全てを通して、一つの共通の糸があると感じるんや。それは時間と、我々が持ってる情報を処理するためにその時間をどう使うかってことに当てはまる。
ある意味、情報は水みたいなもんや。我々は水がなければ生きられへん。でも、水を与えすぎたり、汚染された水を与えたりしたら、溺れてまう。
本質的に、「ネクサス」が主張してて、この本が我々全員に挑戦してるのは、我々に時間がないって言われてる世界で...これは時々誤りやと思うけど...時間をかけて少しずつ飲むこと、時間をかけて分析すること、時間をかけて理解すること、質問すること、挑戦することなんや。
あんたの言うてること全てを通して、同じ糸が見えるんや。イスラエル・パレスチナの問題にも、冷戦時代の信頼の問題にも、シリコンバレーやAIへの信頼の問題にも、同じ糸が見える。人々の間の信頼、制度と個人の間の信頼にもな。
あんたの本の好きなところは、何も解決せえへんってことや。世界の多くの部分を理解するための素晴らしい方法やと思う。我々が情報をどう認識するか、それが何をするかを見るための素晴らしい説明書やと本当に思う。
もっともっと何時間でも話せそうやけど、一つ聞きたいことがある。「サピエンス」を振り返って、入れたかったけど入れられへんかったことは何かある?あるいは、入れたけど今では外したいと思うことは?
ユヴァル: 多くのことがあるんやけど...
トレバー: 一つくらいあるやろ。いつも気になってるようなこと。
ユヴァル: 実はないんや。過去は過去や。もう戻って書き直すことはできへん。「ここはこう言うべきやった」とか「あそこはああ言うべきやった」とかって。もう終わったことや。今、我々ができることに集中しよう。
トレバー: いつもながら、あんたの話を聞けて本当に楽しかった。時間を取ってくれてありがとう。「What Now」に参加してくれてありがとう。
ユヴァル: ありがとう。