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サム・アルトマンとジョン・エルカンによるイタリアン・テックウィーク2024

13,438 文字

おおきに、みなさん来てくれてありがとうございます。サム、ようこそ。
サム: ありがとうございます。こんなセットアップ見たことないわ。回るんやね、すごいな。
ジョン: サム、来てくれてありがとう。みなさんもお越しいただきありがとうございます。
サム: ほんまに来られてうれしいわ。この24時間、なかなか波乱やったけど、OpenAIではそういうのにも慣れてるんやけどね。
ジョン: ほんまやな。
サム: そうやな。うちのCTOやったミラと研究部門のトップやったボブが会社を離れることになってん。二人には感謝してもしきれへんくらいや。実は二人とも、僕よりも長くOpenAIでフルタイムで働いてくれてたんや。僕はまだY Combinatorの仕事もしてたからね。
二人はOpenAIのために本当によう頑張ってくれた。僕は優秀な人材を育てて、そういう人たちが引退したり新しいことをしたいって言うたときに、それを応援するのが大好きなんや。シリコンバレーのエコシステムの重要な部分やと思うわ。
二人には本当に感謝してるし、新しい世代のリーダーたちを育てるのも楽しみなんや。ボブの後任のマーク・チェンは素晴らしい人材や。組織をフラット化して、他の技術リーダーたちともっと密接に仕事ができるのを楽しみにしてるわ。
最近は他のことで忙しくて、技術面にあんまり関われてへんかったから、これからはもっと関わっていけるのが嬉しいわ。こういう人事の変更を経て、OpenAIはもっと強くなっていくと思うんや。
ジョン: あんたもいろんな変化を経験してきたよな。いつもあんたの対応の仕方に感心してるわ。何かアドバイスあるか?
サム: そうやな、この24時間があんたにも分かりやすかったんやろうな。組織が進化して変化していくのを見てると、まるで生きてるみたいやと思うわ。
結局のところ、優秀な人材と一緒に仕事ができるかどうかが重要なんや。僕はそういう機会に恵まれてきたし、あんたもそうやろ。この会場にも、以前一緒に働いてた人たちがいて、今は他の会社で働いてたり、自分の会社を立ち上げたりしてる。そういう人たちが素晴らしいものを作り上げていくのを見るのは、すごく心強いもんやわ。
OpenAIで一番ありがたいと思ってるのは、こんな重要な技術に取り組めることやし、人々の生活を大きく変えるかもしれんものに関われることやわ。今まで経験したことないくらい急成長してる会社を作れるのも楽しいし。
でも一番ありがたいのは、こんな素晴らしい人たちと一緒に仕事ができることなんや。OpenAIの人材の密度は、想像以上のもんやったわ。
ジョン: あんたの会社は、あらゆる面で急成長してるよな。数十億ドル規模の会社になったんやろ?
サム: そうやな。ここにおる人たちにも共感してもらえると思うけど、会社がものすごい速さで大きくなるのを経験するのは、誰も準備できへんことやと思うわ。
Y Combinatorにおったときに、ブライアン・チェスキーたちがそういう経験をしていくのを見てきたし、他の人たちも見てきた。でも自分が経験するとなると、誰かに教えてもらえるようなもんやないんや。自分で経験せなあかんことなんや。
狂ったようにハードやし、エネルギーも使うけど、同時にすごく素晴らしいことでもあるんや。感謝の気持ちでいっぱいやわ。本当に楽しい冒険やった。まだまだ始まったばかりやと思うわ。
ジョン: そうやな。こういう変化の時期にあるとき、自分の核心がどこにあるのか、何に集中したいのかをしっかり把握することが大切やと思うんや。
サム: ほんまそのとおりや。この1年は、まるで10年分くらいの経験をしたような感じやわ。でも同時に、これほど学びの多い時期もなかったし、使命感と確信を持てた時期もなかったんや。
ジョン: そうやな。組織のリーダーとして、方向性をしっかり保つことが大切やと思うわ。1747年にここトリノで重要な戦いがあってん。4000人ほどの兵が40万人のフランス軍に勝ったんや。彼らは「ブアン」って呼ばれたんや。「動くな」って意味やねん。
そういう時こそ、自分の信念から動かんことが大切なんや。進むべき方向を見失わんことや。結果として、あんたたちが作り出したのは、すごい製品やったんやないか。どんどん使われるようになって、機会も増えてきた。
アメリカで2週間前に試した音声機能も、使いやすさを格段に向上させるやろうな。ヨーロッパでもすぐに使えるようになるといいんやけど。
サム: 音声モードには本当にわくわくしてるわ。最初のチャットGPTを使ったときと同じくらい魔法みたいな感じがするんや。
コンピューターと話すのが、こんなに自然で簡単で心地よいものやとは思わへんかった。使う頻度も増えたし、得られる価値も大きくなった。でも、使い方も変わってきたんや。
言葉にして話すことと、テキストで書くこととは、ちょっと違うもんがあるってことに気づいたんや。今は、より幅広い会話ができるようになった気がするわ。
ヨーロッパでも早く使えるようにしたいと思ってる。もちろん、追加の規制対応もせなあかんけど、できるだけ早くやりたいと思ってるわ。みんなにも気に入ってもらえると思うわ。
他にもいろんな新製品を出してるし、これからも出していくつもりや。特に言及しておきたいのは、2週間前に出したO1っていう新しいモデルや。これは推論能力に重点を置いたモデルなんや。
人々がこのモデルで何を発見していくのか、見るのがすごく楽しみなんや。OpenAIの面白いところは、一生懸命頑張って新しいモデルを作って、自分たちでも誇りに思えるものができたと思っても、「さて、これで十分なんやろうか? みんなに気に入ってもらえるんやろうか? 人々の問題を解決できるんやろうか?」ってどきどきしながら世に出すところなんや。
そして、ツールを世に出して待つんや。最初のうちは「おお、すごいな。こんなことができるんや」って反応が来る。でも、もっと待つんや。そしたら、「こんなことができた!」っていうスクリーンショットが届いたり、「これを使ってこんなものを作ったよ」っていう報告が来たりするんや。
O1を出す前は、推論能力が大きな breakthrough になると思ってた。プログラミングや科学的発見の助けになるんやないかって。それは僕が一番わくわくしてる分野の一つやねんけど。
でも実際に見てみると、人々が互いに学び合って、これをどう使うかを発見していくのを見るのが本当に楽しいんや。以前の世代のモデルではできへんかった複雑なタスクを、人々が本当に使いこなしているのを見るのは感動的や。
製品に組み込んで、モデルの「思考」が見えるようにしたり、その過程が分かるようにしたのも良かったと思うわ。これはすごくやりがいのあることやったな。
それから、検索GPTっていうのもアルファ版で出したんやけど、これをチャットGPTに組み込んで、リアルタイムの情報をより使いやすくする予定や。
でも何より嬉しいのは、企業や個人がこれらのツールを使って何をしているかを見ることなんや。今日もここでランチを食べながら、うちのツールを使ってる起業家たちと話したし、昨日はフェラーリで彼らがどんなふうに使ってるかを見てきた。
もう好奇心の段階は過ぎて、人々が本当にAIを使って互いに価値を生み出し合ってる段階に来てるんや。我々はできる限り最高の製品を作ろうとしてる。最高のAPIや最高の消費者向けツールを。でも、実際に価値を生み出すのは他の人たちなんや。それを見るのは本当に素晴らしいことやわ。
ジョン: 驚くべきスピードでこれらのツールが使えるようになってきたな。僕自身の経験でも、子供たちとの会話が変わってきたんや。息子の一人もここにおるけど、彼は今もチャットGPTを使って、我々が使う言葉の本当の意味や、言葉同士のつながりを探ってる。おかげで会話の質が上がってきたんや。
昨日、フェラーリでも話したけど、技術がエンジニアリングの一部の領域だけやなく、明日の体験をどう形作っていくかにも使われてるのを見たな。特に音声が、僕が体験したくらい良くなれば、車の中での使い方を完全に変えられるんやないか。
サム: そうやな。いつかは、車に乗り込んで話しかけるだけ、っていう全く新しいインターフェースになるかもしれへんな。それ、めっちゃわくわくするわ。多分そんなに時間かからへんと思う。昨日の会話でも出たけど、今すぐにでもできるかもしれへんしな。
音声モードの話や、フェラーリの人たちが大量のデータや文書を処理するのにうちのツールを使ってるって話は予想してたんやけど、一番刺激的やったのは、デザイナーたちがDALL-Eみたいなツールをどう使ってるかって話やったな。
そういうツールや、これから出てくるSoraみたいな動画生成AI、いつか出てくる3Dモデリングのツールを使って、クリエイティブなプロセスをどう強化していくかっていうのにすごくわくわくしてたんや。
いろんな業界のデザイナーたちから、そういうツールを使って今までよりもっと広く、もっと良く考えられるようになったって話を聞くのは、本当にわくわくするわ。科学的発見の次に僕が一番興奮する分野かもしれへんな。
ジョン: そうやな。昨日の夕食で、デザイン部門の責任者と話したよな。科学者やエンジニアとの会話の方が自然に思えるかもしれんけど、デザイナーが今あるツールを見て、今まで思いもしなかったことができるようになるって考えてるのを聞くのは、めっちゃ面白かったわ。
これはイタリアの強みでもあるんやけど、技術と美学を組み合わせる能力があるんや。だからデザイナーたちも、技術やエンジニアリングが自分たちの仕事にどう適合するか、本当に興味を持ってるんや。昨日、あんたもそれを感じたんやないかな。
サム: フェラーリを訪問できたのは、僕にとってすごく特別な経験やったわ。あそこは象徴的な会社で、ファンや世界中の人々とのブランドとのつながりが、他にはあまり見られへんくらい強いんや。
でも、それ以上に印象的やったのは、あの会社とあの仕事のやり方が、イタリア以外では考えられへんってことやった。エンジニアリングとデザインと情熱と自動車の歴史が、あんなふうに組み合わさってるのを見るのは本当にすごかった。
フェラーリで働いてる人たちの仕事ぶりを誰かに説明しようとしても、実際に見るまでは分からへんと思うわ。あらゆる細部にこだわり、全体的な体験のことを考え、素晴らしい技術と素晴らしいデザインが隣り合わせになってるのを見るのは、本当に特別な経験やったな。
ジョン: そうやな。工場の現場で、あんたが質問してたのも印象的やったわ。あんたは普段、物理的なものを作る世界よりも、もっとデジタルな世界に関わってるけど、工場の現場がどうなってるか、新しい技術をどう使ってエンジンを作ってるかを見て、人間がどうやって仕事をより良くしていってるかが、本当に目に見える形で分かったと思うわ。
エンジンを作るのに車体よりも時間がかかるって聞いて、あんたびっくりしてたよな。僕にとっても、技術の進化と人間の仕事の仕方が実際にどう良くなってるかを、リアルに見せてもらえる良い機会やったわ。
サム: そうやな。工場見学のハイライトの一つは、エンジンの組み立てについて話してくれた人との会話やったな。フェラーリがなぜこのやり方を選んでるのか、一人の人間がエンジンを組み立てることの意味、それがなぜ良いのか、エンジンの見た目や音、そしてもちろん性能にどれだけこだわってるか、エンツォ・フェラーリがエンジンを車の魂やと言ったことなんかを聞いて。
そのすぐ次に「ところでチャットGPTにこんなバグがあるんやけど、CRAで使うのに困ってるから早く直してほしい」って言われたのは面白かったな。
ジョン: 我々は長年の付き合いやな。2013年か2014年くらいに、ミッション・パイオニア・ビルディングでAIを作るって話をしてた頃を覚えてるか? あの頃はまだOpenAIも存在してへんかったな。
当時、僕にとって重要やったのは、イタリアでもシリコンバレーで起こってるようなイノベーションを刺激できへんかってことやった。あんたのY Combinatorでの貴重な経験を参考にして、幸いなことに我々も真似して、ベントっていうプログラムを立ち上げられた。今では、イタリアで最大の初期段階の投資家になってるんや。
今日、このイタリアン・テックウィークに参加できて本当に嬉しいわ。あの頃の会話から、いろんなものが発展してきたんやな。
あんたといつも話してて面白いのは、あんたの興味の幅広さなんや。でも最近は、OpenAIでのことが忙しくて、他の興味を押さえ込んでるような感じがするんやけど、どう思う?
サム: そうやな。僕は今の人生やキャリアのどの段階でも、それを楽しむようにしてるんや。
Y Combinatorを運営してた頃が一番良かったのは、あらゆるものに触れられることやったな。成功するスタートアップのエコシステムの重要な要素の一つは、人々がいろんなことに取り組んで、それが衝突したり知識が移転したりすることやと思うんや。
そういう経験から、世界で何が起こってるかについて、すごく役立つ視点を得られたと思うわ。チップからエネルギー、AIのアルゴリズムの進歩、インターネット企業の作り方まで、新しい技術がどう組み合わさっていくかを見ることができた。
そういう幅広い背景や世界の見方がなかったら、OpenAIを立ち上げるのはずっと難しかったと思うわ。でも同時に、幅広い探索をしてから、全エネルギーを注ぎたいものを一つ見つけるのも楽しいもんやと思うんや。
今の状況も大好きやで。世の中にはいろんな素晴らしいことが起こってる。投資家として多くのプロジェクトに少しずつ関わるのも楽しかったし、今は一つのことに大きく関われるのも楽しいわ。
確かに他のことは恋しいけどな。特に、これから10年か20年の間で一番わくわくする二つのトレンドは、豊富な知能と豊富なエネルギーやと思ってる。この二つが同時期に解き放たれることで得られる繁栄は、本当にすごいもんになると思うわ。
世界の成長、生活の質の向上、より良い持続可能性、より良い教育、より良いヘルスケア、あらゆるものがより良くなる。我々はみんな、もっと良いツールや体験、製品を互いに作れるようになる。
この二つの分野が僕の関心の中心になったけど、他のことが好きやないわけやない。ただ、本気で取り組もうと思ったら、他のことはできんようになるんや。
ジョン: そうやな。僕自身も、いつも刺激的なことにたくさん触れたいって思ってるけど、同時に、自分の責任がある中核的な部分に時間を使わなあかんのも分かってる。
でも、多様なものに触れることで、自分の仕事がより良くなるとも思うんや。自分の会社がやってることが、もっと広い文脈の一部やって理解することや、未来がどっちに向かってるかを知ることも大切やと思う。
エネルギーの問題は、必ずしも理解されてへんかもしれんけど、もし大規模で安価な脱炭素エネルギーが手に入らんかったら、特にAIを含めて、我々がやりたいことの多くが制限されてしまうんやないかな。
サム: そのとおりや。AIのおかげで素晴らしいアイデアが生まれても、それを現実世界で実現しようと思ったら、エネルギーが必要なんや。
僕は、人々はもっと多くのもの、もっと良いものを欲しがると信じてる。良いものを増やすことに焦点を当てるべきやと思うわ。悪いものを減らすのも大切やけど、それだけでは長期的な戦略にはならへん。
人々は世界がより良くなることを望んでる。エネルギーは、物事を動かし、実現するのに不可欠なんや。みんなが家でエアコンを切って、VRゴーグルをつけて座ってるだけの世界なんて、めっちゃ憂鬱やと思うわ。
僕は、世界が劇的に良くなることを望んでる。どうやってそれを続けていけるか、考えなあかん。「脱成長」とか言われてる考え方は、最近見た中で一番アホで危険なもんやと思うわ。
その代わりに、massive but sustainable growth(大規模だけど持続可能な成長)を目指すべきや。それを実現する唯一の方法が技術なんや。
豊富で安価なエネルギーが手に入り、高品質なAIが誰でも使えるようになれば、本当に物事が良くなっていく。技術は人類の歴史の大半を通じて、実際にそれを実現してきた。
でも今、「全部止めて、ベッドに寝そべって、あんまり動かんようにしよう」って言う人たちがおる。僕は世界がより良くなり続けるのを見たいんや。
ジョン: エネルギーの話で言えば、核融合と核分裂についてよく議論してきたけど、これが現実のものになるタイムラインについて、あんたはどう見てる? この部屋にもエンジニアがたくさんおるし、トリノにもこの問題に取り組んでる工学部がある。
サム: そうやな。ここ数年のうちに、次世代の核分裂と核融合の驚くべきデモを見ることになると思うわ。規制プロセスを乗り越えて、システムのバグを取り除いて、特に重要なのは、それらを非常に安価にするのには時間がかかると思う。でも、これは我々の未来の大きな部分やと信じてるわ。
2050年までには、世界中でカーボンをあんまり燃やさんようになってることを願ってる。これは大きな約束やけどな。
ジョン: もしそれが実現して、2050年までに脱炭素化された無料のエネルギーが手に入って、AIの進化も加わったら、我々の世界は前例のない成長軌道に乗ることになるんやな。
サム: はっきり言うとな、我々は既にそういう軌道に乗ってると思うんや。2年前と比べて、今の生活がどんなもんかを考えてみ。我々にできることが増えた。今では日常的に人を殺してたようなちょっとした感染症が、ほとんど問題にならんようになった。
昔の人が心配してたようなことを、今はあんまり考えへんようになってるんや。我々は既にかなりの驚異の時代に生きてると思うわ。
でも、それも人間の本質の一部やと思うんや。人間はいつも「もっと」を求める。「より良いもの」を求める。「次の10年、20年はどうなるんやろう」って考える。
僕は、これからの20年で、過去200年よりもさらに大きな進歩を遂げて、より良い世界を作れることを願ってる。でも、これは基本的に新しいことやないんや。技術は実際にこれを実現し続けてきたんや。
ジョン: そうやな。我々が観察してきたのは、この進歩を止めるような他の要因もあるってことや。資本主義と、それがもたらした自由のおかげで、多くの発展が可能になった。でも同時に、格差も生み出してきた。
我々はよく、ビジネスにとって良いことが人々にとっても良いこと、そういう alignment(方向性の一致)をどう作り出すかについて話してきた。我々は深くそう信じてるし、それを実現するためのメカニズムはいくつかあると思う。
我々の会社の中では、常に従業員のより広い層が、会社がやってることや会社の価値に alignしてもらえるような方法を探ってきた。みんなが発展に参加すればするほど、みんながその一部になりたいと思うからね。
消費者の視点から見ると、より多くのものがより安く生産されるようになるけど、それが最善の形で再分配されるとは限らん。あんたもこのテーマについてよく考えてきたし、我々もよく議論してきた。今のあんたの考えはどうや?
サム: 誰が言ったか忘れたけど、こんな言葉があるんや。「資本主義は、世界が今まで見た中で最悪の経済システムや。他の全てのシステムを除けばな」。
我々には資本主義を改善し続ける義務があると思う。でも、その良い部分を軽視したり、資本主義がもたらした奇跡を当たり前やと思ってはあかん。
もちろん、改善が必要やし、重大な問題もある。あんたが触れた点が一番重要やと思うわ。少なくともアメリカでは、驚くべき割合の人々が資本主義に参加できてへん。株を持ってへんし、この長期的な上昇トレンドに乗れてへんのや。
他にも変えるべきことはたくさんあるけどな。
子供の頃、産業革命について勉強したとき、「この発明が一番重要やった」とか「あの発明が重要やった」とか、そんなテクノロジーオタクな子供らしい見方をしてた。
でも大人になって、もう一度本を読んでみたら、覚えてる話は全部同じやのに、視点が変わってたんや。ある意味で、株式会社制度が産業革命の中で最も重要な発明やったんちゃうかって。
多くの人々の努力を調整する能力、何かを発明して市場に出すのに必要な資本、そういうものが、家族中心の小さなビジネスから、この建物や、あのテレビや、このマイクや、みんなが作ってる素晴らしいものを生み出すような発明へと我々を導いたんや。これは本当に重要な変化やった。
だから、技術の歴史を語るときは、それを可能にした構造や制度についても語らなあかんと思う。両方が同じくらい重要で、両方が起こる必要があるんや。
だから、システムを進化させよう。あんたも言ったように、僕も長い間それに情熱を注いできた。いろんな実験をしてきたし、まだまだできることはたくさんある。OpenAIの構造にも革新を起こしたし、ユニバーサルベーシックインカムの研究にも資金を提供してきた。
でも、この魔法のようなエンジンを失わんようにしよう。技術は実際に、人類の歴史のほとんどの期間を通じて、これを実現してきたんや。
一方で、「全部止めて、ベッドに寝そべって、あんまり動かんようにしよう」って言う人たちもおる。僕は世界がより良くなり続けるのを見たいんや。
ジョン: そうやな。ビジネスリーダーとしての我々の責任を考えると、「より悪くならんようにする」んやなくて、「本当に良くする」、さらには「卓越させる」ことに重点を置くべきやと思う。
昨日、あんたはそういうことを目指してる会社の例を見たよな。
サム: 僕の視点は極端に偏ってるかもしれへんから、許してほしいんやけど。「より良くする」ことに重点を置くのは本当に重要やと思う。
人間の本性として、「より悪くならんようにする」ことに注目しがちや。すぐに直せる増分的な改善に目が行きがちなんや。でも、人類の進歩と能力を次のレベルに引き上げるような大きな夢を見ることも大切やと思う。
OpenAIは最初の製品を出すまでに4年半かかった。正直、最初の製品のGPT-3を覚えてる人がおったら申し訳ないけど、あんまり良くなかったんや。
それから時間をかけてGPT-3.5を出して、チャットGPTを立ち上げて、GPT-4を出した。O1のプレビューもまだ深刻な欠陥があるし、正式版のO1も、今の時点では良く感じるかもしれんけど、数年後に振り返ったら、まだ恥ずかしいと感じるやろうな。
こういうことには時間がかかるんや。難しいスタートアップをやるのも時間がかかる。核エネルギーのスタートアップなら10年はかかるやろう。
でも、「はい、難しいです。時間もかかります。」って言う確信と献身を持つのが重要やと思う。他の人がより簡単なアイデアでより早く成功するのを見るのは、ちょっと意気消沈するし気が散るかもしれへん。
でも、本当に大きなブレイクスルーを目指すこと、リスクは高いけど報酬も大きくて、時間とエネルギーを大量に使う必要があることに挑戦することが、世界をより良くする重要な部分やと思うんや。
深い技術的進歩に投資すること、それが即座の勝利にはならんかもしれんけど、それこそが人類のツールチェーンに新しいツールを加える方法やと信じてる。
ジョン: ありがとう。ちなみに、これはヨーロッパが強い役割を果たせる分野やと思うわ。ここには信じられんほどの才能と、さまざまな産業の歴史がある。この旅行や他の機会で、こういう難しいことに挑戦してる人たちにたくさん会ってきた。
スタートアップのエコシステムにはまだリソースが足りんかもしれんけど、その精神はここにあるんや。
これは、我々がここトリノでやろうとしてることや、ベントというイニシアチブとも関係がある。素晴らしい創業者たちに、あんたが言ったようなことをする機会を与えようとしてるんや。
我々のベンチャービルディング活動も、ここOGRで物理的に行われてる。今日みたいに意見交換する機会もある。
でも、僕が個人的に重要やと思うのは、これが3世紀にわたる家族の起業家精神の継続やってことや。この街で自動車産業が始まって、1899年にフィアットが設立されたときから、我々は何度も更新と変化の波を経験してきた。
特にイタリアのような国にとって大切なのは、我々は歴史だけの国やない、文化だけの国やないってことや。ベニスで起こった信じられんようなことを、チャットGPTが教えてくれたみたいやけど、そういうことだけの国やないんや。
あんたの目から見て、どうやったら pride(誇り)を感じるだけやなくて、それを前に進む力にできるやろうか? 既に起こったことに安心したり、不安になったりするんやなくて、逆に「まだまだやることがたくさんある」って感じられるようにするには?
昨日の夜、AIについてどう思うか聞いたとき、あんたは「まだ知らんことがこれから出てくる、それが一番わくわくする」って答えたよな。
サム: そうやな。まず、あんたがそう言ってくれてありがとう。こんな豊かな歴史がある場所では、過去を振り返って誇りに思いたくなる誘惑があると思う。
でも、あんたや、この部屋にいる知ってる人たちを見てると、「次にやることこそが我々の価値を決める。前に進み続けよう」っていう強い意志を感じるんや。これはすごく特別なことやと思う。
今はそれをやるのに本当に特別な時期やと思う。AIみたいな技術革命は、そうそう起こらへん。多分数十年に一度くらいのことや。こういう時期こそ、新しい創造的なエネルギーが最も可能になる。新しい産業や素晴らしい新しい会社が生まれるんや。
キャリアの中で、こんな瞬間に出会えるのは数回くらいかもしれへん。僕はいつもスタートアップのエネルギーが大好きなんやけど、今こそ本当に全力を出すべき時やと思う。
ある意味で地球が揺れてるような状態で、誰が何で成功できるかっていう普通のルールが一時停止してる。スタートアップは、より速く動いて、より速く改善できるから、こんなに動きの激しい時期には信じられんほどの優位性があるんや。
ヨーロッパ、特にイタリアがこれを受け入れてくれたら嬉しいな。簡単やないのは分かってる。経済の変化も、規制の変化も、社会の変化も必要かもしれへん。
シリコンバレーにはうまくいってる要素がたくさんあるけど、こういう変化が何も起こらんかったとしても、人々には信じられんほどの能力があるから、それでも素晴らしいことをやってのける能力があると思うんやけど、どう思う?
ジョン: そうやな。人間の本性として、どんな状況でも素晴らしいことをするもんや。でも、成功の度合いは環境次第やと思う。
でも、これは良い兆候や。10年前にはこんなことは起こらへんかった。こういう変化こそが、あんたの人生で最も重要なことの一つやった初期のY Combinatorのスタートアップスクールみたいなコミュニティを形成するのに必要なんや。
あんたにとって、こういう部屋に入って、スピーカーの話を聞くことよりも、他の人たちに会うことの方が重要やった。そこで生まれた20年近く前のつながりが、今でも頻繁にテキストをやり取りする仲になってる。直接一緒に仕事をすることもある。
コミュニティを作ることで、個々のスタートアップが単独でできることよりもずっと多くのことができる。だから、こういうイベントはめっちゃ重要やと思う。
サム: そうやな。重要なのは、言い訳をせんことやと思う。「なんでこうなったんやろう」って考える理由は常にあるけど、規制や政策を変えるのを待ってられへん。
僕らがこの会場の人たちにも伝えたいのは、できるところから押し進めていってほしいってことや。良い結果は必ず生まれるはずや。
この瞬間の特別さを強調しすぎることはないと思う。今こそ全力を出すべき時や。これは本当の技術革命の始まりやと思う。
これからの数年で、世界中で素晴らしい企業が立ち上がる。その多くがここで生まれることを願ってる。
僕のキャリアは、ちょっと変わった順番を歩んできた。普通はシリコンバレーやと、まず会社を経営して、スタートアップをやって、それから投資家になって、最後に引退後の趣味みたいな感じでパッションプロジェクトをやるもんなんやけどな。
技術的には最初に会社を経営したけど、あんまりうまくいかへんかった。痛い教訓をたくさん学んだ。でも、失敗から間違ったことを学んでしまうこともあるんやと思う。
それから投資家になって、それはそれなりにうまくいった。そのまま続けるつもりやったんやけど、AIの研究所を運営するっていうパッションプロジェクトを始めて、結局大きな会社を経営することになった。
今の状況にはめっちゃ感謝してるし、すごく嬉しいんやけど、今テック投資家になれるなら、これ以上にワクワクする時期はないやろうなって思うことがある。これからたくさんの素晴らしいものが生まれるからな。
だから、「できることをやる」んやなくて、できる限り野心的に挑戦してほしい。これは狂ってるくらいレアな機会やから、次の巨大テック企業を作るんや、って気持ちで。
ジョン: 最後に一つ聞きたいんやけど、野心と妄想の違いについて、あんたはどう考えてる?
サム: まず思い浮かんだのは、具体性と非具体性の違い、あるいは明確な計画と曖昧な計画の違いやな。
非常に難しくて未知のことに挑戦しようとしてるなら、うまくいくかどうか分からへんかもしれへん。でも、「これこれの理由でこれが信じられる」「こういうテストをしたい」「こういうデータポイントを得たい」「これでより確信が持てるかどうかが分かる」「次のステップはこれで、その次はこれ」みたいに、一歩一歩前に進んでいくような計画があるなら、それは野心やと思う。うまくいくかどうかに関係なく。
逆に、「素晴らしい未来が来て、こんなことが起こる」って言うてるだけで、「明日は何をするの?」「次は何をするの?」「この仮説を検証したり反証したりするために、何を学ぶ必要があるの?」って聞かれたときに、ごにょごにょ言うてるだけで明確な答えがないなら、それは妄想の領域やと思う。そういうのは避けた方がええな。
ジョン: そうやな。僕自身の経験からも、一歩一歩前に進んでいく価値をしみじみ感じるわ。小さな一歩を踏み出して、素早く学んで、間違いを犯しても小さな一歩やから修正できる。そうやって進路を修正しながら進んでいくのが、僕が見てきた中で一番確実な成功への道筋やと思う。
さて、時間がちょっと押してきたな。会場からの質問を受け付けたいと思う。まず、僕から一つ聞かせてもらうわ。
AIがこれから数年で多くの伝統的な産業に影響を与えたり、破壊的な変化をもたらしたりすることは既に始まってる。企業はどうやって今から新しい戦略を採用して、数年後に遅れを取らんようにできるやろうか?
サム: まず何より大切なのは、気づくことやと思う。気づけば気づくほど、適応する準備ができる。
組織として一番大切なのは、これらの新しい技術、特にAIが可能にすることの多くを、今は知らんかもしれへんけど、それでええっていう余地を残しておくことやと思う。
今は分からんけど、これから発明したり創造したりできることに対して、オープンでいることが大切やと思う。
ジョン: ありがとう。人材については、どう考えてる? 企業が集めるべき特定のチームや才能はあるやろうか?
サム: 才能はどこにでもあると思う。本当に大切なのは、可能性を制限せんことやと思う。
ジョン: なるほど、ありがとう。
さて、会場にはたくさんの起業家がおるな。サム、彼らの多くはアプリケーション層で何かを作ってる。あんたが一番わくわくしてることは何や? 今、彼らはどんな大きな問題に取り組むべきやと思う?
サム: 僕はいつもその質問を起業家に投げ返すんや。Y Combinatorで一番驚いたのは、最高の起業家たちが他の誰も思いつかんようなアイデアを持ってることやった。
「何を作るべきですか?」って人に聞いてしまうと、あんた自身の直感が失われてしまう。素晴らしいものを作ってる人はたくさんおるけど、あんたからのアイデアが必要なんや。
正直、スタートアップに偏り過ぎてるかもしれへんけど、僕はスタートアップが世界にとって重要な要素やと本当に信じてる。何度も何度も見てきたのは、我々が今まで聞いたことのないような大胆で野心的だけど具体的なアイデアを持った創業者や。そこに魔法が起こるんや。
そんなアイデアを持ってるなら、僕みたいな人にアドバイスを求めんでもええと思う。
ジョン: ありがとう。本当にありがとう。

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