「このノーベル賞は、タンパク質構造の全く新しい世界を切り開きました。」2024年ノーベル化学賞
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ヤン・オーリスト教授、ノーベル化学賞委員会のメンバーはんです。今年の賞のことについて教えてもらえへんやろか。
そうですなぁ。今年の賞はタンパク質の構造に関するもんです。タンパク質言うたら、アミノ酸からできた巨大な分子でして、特定の順番でアミノ酸が鎖のようにつながってるんです。その鎖が自分で折りたたまれて、見事な3D構造になるんですわ。
せやから問題は、コンピューターを使ってこの構造がどないなってるか見つけられるかってことなんです。今年の受賞者はんらは、まさにそれをやってのけたんですわ。
ほな、受賞者はんらは具体的にどんなことでノーベル賞もろたんですか?
デイビッド・ベイカーはんは、新しいタンパク質をデザインしたことで賞をもらいはりました。3次元でタンパク質の構造を描いて、そんでコンピュータープログラムを使って、どんなアミノ酸の並びやったらその構造になるかを見つけ出したんです。
そんで、そのタンパク質を実際に作ったんですわ。その中には、今まで見たこともないような、自然界に存在しへんかったようなもんもあったんです。
ほんでそれをどないして使うんですか?
ウイルスの阻害剤を作ったり、オピオイドを検知する小さなセンサーを作ったり、新しいタイプのナノ粒子や新素材を作ったりできるんです。可能性は本当に無限やと思いますわ。
あんたの講演で「目を見張るような」言うてはったけど、どういう意味でそないに感じはったんですか?
ほんまにびっくりするくらいの数のデザインを作って発表してはるんです。種類の多さもすごいもんで。この技術を使えば、ほとんどどんなタイプのタンパク質でも作れるようになったみたいですわ。
他にも2人の受賞者はんがおられたんと違いますか?
そうです。他の2人は、アミノ酸の並びから3次元構造を予測することで賞をもらいはりました。1つの並びに対して、理論的に可能な構造の数は天文学的なもんなんです。
せやけど彼らは、この問題を解決するために巧みなニューラルネットワークのアプローチを使いはったんです。プログラムにアミノ酸の並びを入れたら、構造を出してくれるんですわ。
一方でベイカーはんのは逆で、構造をデザインしたら、それに合うアミノ酸の並びをプログラムが出してくれて、それを実際に作れるってわけです。
これ、日常生活でどないして使えるんでしょうか?将来的にも。
もう、ありとあらゆることに使えるんですわ。例えば、アルファフォールドのチームは、2億個ものタンパク質構造のデータベースを作りはりました。これを使えば、今まで知らんかったような新しいもんを探し出せるんです。
具体例を挙げるとしたら、新しい反応を触媒する酵素を探すのに使えたりします。デザインの方でも、ワクチンを設計したり、ウイルスの阻害剤を作ったりと、いろんな応用があるんです。
これって人工知能とも関係あるんですよね?
そうですな。少なくともタンパク質構造予測の方は、ニューラルネットワークを使ってます。ベイカーはんの成果の方は、もっと早い時期に開発された古典的なシミュレーションプログラムを基にしてるんですけどね。
今年の受賞者はんらについて、何か特別に言いたいことはありますか?
ゲームに興味あるんやったら、デミス・ハサビスはんとその同僚はんらが、もう10年以上前に世界チャンピオンを打ち負かすことができる囲碁のコンピュータープログラムを作ったんです。当時は不可能やと思われてたことですわ。それに、その時点で最強のチェスプログラムも作りはりました。
チェスからタンパク質へ、言うわけですな。
受賞の連絡があった時、あんたもその場におったんですか?様子とか教えてもらえへんやろか。
みんな嬉しそうで、ちょっと驚いてはったみたいですわ。
あんた自身は、今年の化学賞のどこに一番わくわくしはりますか?
そうですなぁ。一番興奮するのは、この賞が完全に新しいタンパク質構造の世界を切り開いたことやと思います。まず、存在はしてるけど見たことのなかった構造がわかるようになった。
それに加えて、自然界には存在せえへんけど、いろんな素晴らしいことができるタンパク質をデザインできるようになったことですわ。
ヤン・オーリスト教授、ノーベル化学賞委員会のメンバーはん、ありがとうございました。
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