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最初の反応 | ジョン・ホップフィールド、2024年ノーベル物理学賞 | 電話インタビュー
3,077 文字
はい、もしもし。ジョン・ホップフィールドさんですか?
はいはい。
あ、こんにちは。アダム・スミスと申します。ノーベル賞のウェブサイトから電話させていただいております。メアリーさんがこの時間を設定してくださったんですが、よろしいでしょうか?
はい、ええですよ。スピーカーフォンですか? こちらの音声はどうですか?
完璧です。ありがとうございます。まず、ノーベル賞受賞おめでとうございます。
ありがとうございます。
メアリーさんから聞いたんですが、今日はハンプシャーにいらっしゃるそうですね。
そうですわ。ノーベル賞の知らせを聞くには、ええ場所やと思います。ちょっと隠れた感じで、言うたらプライベートな感じですからね。人口1000人未満の小さな町ですわ。こんな忙しい日には、ちょっとした静けさがありがたいですわ。セルボーンの町には、たぶん他に物理学者はおらへんと思いますわ。ニュースはゆっくりと広まっていくんでしょうけど、通りで行進があるようなことはありまへんわ。
実際、ノーベル賞受賞の知らせはどのように聞かれたんですか?
妻と外出してコーヒーを飲んでから戻ってきたんです。そしたら、コンピューターにメールがめっちゃ来てて。全然予想してへんかったんですわ。最初の2、3通を読んだら、ノーベル賞があったに違いないって分かりました。ほんまにびっくりしましたわ。
最初の反応は、「ノーベル賞の発表があったんやな」って感じでした。というのも、ノーベル賞のことは書いてあったんですけど、私のことには触れてへんかったんです。だから最初は、誰か他の人のノーベル賞について私に送られたメールやと思ってました。3通目くらいまで読んでやっと、「あ、これ私のことやん」って気づきました。最初の方のメールはちょっとしたヒントみたいなもんで、4通目くらいまで読まんと実感わかんかったですわ。
そのティーザーみたいなメールの話、面白いですね。この賞は機械学習と人工ニューラルネットワークを可能にしたことに対して贈られたものですが、この研究を始められた当初の目的は、ツールを作ることではなく、脳の配線から心がどのように生じるかを理解することだったと理解していますが、それで合っていますか?
そうですわ。私の動機は、脳がどう働いているかを見て、思考や意識、そういったものを理解するには、脳の働きについてもっと知る必要があるって思ったことからでした。それが何らかの形でネットワークの集団的な現象に関係していると思って、脳の機能に対する興味から、どうやってハードウェアやソフトウェア、あるいは「ウェットウェア」とでも呼ぶべきものが、そういったものを生み出すのかという疑問に少しずつ取り組んでいきました。
私の知識と理解の重心は、物理学寄りのものから神経生物学寄りのものへとゆっくりと移っていきました。そして、どこかの時点で、AIネットワーク、ニューラルネットワーク、そして物理学の間のつながりが生まれたんです。
長年にわたって、物理学のレンズを通して生物学のさまざまな問題を見てこられましたが、物理学者としてのあなたにとって、良い問題とはどのようなものですか?
ええ物理学の問題というのは、よく定義された系があって、個々の小さな部分よりも、全体としてどのように機能するかについて、何かしら理解できるものでなあかんのです。「心がどのように働くのか理解したい」という大きな問題に深く入り込むんじゃなくて、下から積み上げていかなあかんのです。
例えば、天気のことを考えるとき、窒素分子の相互作用にまで戻るんじゃなくて、「嵐とは何か」を理解しようとしますよね。適切なレベルの質問をせなあかんのです。でも、どのレベルの質問が適切かは、すぐには分からへん。いくつかのことに取り組んでみて、うまくいかへんこともあります。
そうですね。フランシス・クリックやドン・グレイザーのように、物理学者が脳や意識に注目するという長い歴史がありますが、それは全て、質問のレベルを適切に設定することが重要なんですよね。
そうですわ。例えば、ドン・グレイザーが書いたものを読むと、物理学的な想像力は素晴らしいんですけど、生物学的にはそれほどでもないんです。物理学から出発して、こういったことに到達せなあかんという共通認識はありました。でも、生物学についても十分知っておかんと、全体として意味をなさへんのです。
そして、コミュニティが発展するような形で提示せなあかんのです。当時はそれに気づいてへんかったんですけど、私がやったことの重要な点の一つは、物理学出身の人や生物学出身の人が、ただ一つの小さな問題だけじゃなく、全体として理解を得ようと協力して取り組めるようにしたことでした。
そうですね。コミュニティを触媒し、ホップフィールド・ネットワークは人々が取り組んで発展させることができる大きな進歩でしたね。もう一つお聞きしたいのですが、あなたの共同受賞者のジェフリー・ヒントン氏は、機械学習とその可能性に対する懸念を声高に語っていますが、あなたもその懸念を共有されていますか?
はい、彼の懸念は共有しています。物事が非常に強力に見えるのに、なぜそうなのかを理解できていない時は常に心配になります。つまり、それらをどう制御するか、あるいは制御が問題なのかどうか、その可能性が何なのかを理解できていないってことです。
数学を深く掘り下げれば動作するという説明では満足できません。私は、微視的な物理学がどのようにして大きなシステムの興味深い性質を生み出すのかについて、もっと理解したいと思っています。
このノーベル賞が何かメッセージを発信することを期待されていますか?いわば人工知能に対する初めての賞ですからね。
そうですね、このノーベル賞は、心のような深い問題の理解が、ニュートン物理学のような単純な方法では得られないという事実を部分的に認識していると思います。構造と性質の関係、そして構造、動力学、性質の関係をもっと理解する必要があります。それは物理学の一部、化学の一部、生物学の一部が一緒になって、理解し、新しい研究分野を作り出すことなんです。
ありがとうございます。上手くまとめていただきました。最後に、セルボーンでこのニュースを聞かれているということですが、セルボーンはギルバート・ホワイトの「セルボーンの自然誌」の舞台ですよね。
おお、ギルバート・ホワイトのことをご存じなんですね。さすがです。
セルボーンにはこんなに古くから自然科学との深いつながりがあるのに、今回ノーベル賞の発表がここで行われるというのは素晴らしいですね。
ほんまにそうですね。ギルバート・ホワイトは優れた観察者でした。
お話しできて本当に楽しかったです。ありがとうございました。そして、改めて今日のニュースについておめでとうございます。
ありがとうございます。まだ少しショックを受けている状態での私へのインタビュー、簡単じゃなかったと思います。
理解できます。とても興味深いお話でした。落ち着いた頃に、もっと長いお話ができるのを楽しみにしています。ありがとうございました。
ありがとうございました。失礼します。
さようなら。
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