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西洋の経済 | YouTube ドキュメンタリー

27,723 文字

2047年、これが残されたすべてやった。ムサファリとベゾスサイトの間の大宇宙戦争が、地球のすべての天然資源を使い果たしてしもたんや。ビットコインウイルスとウーバーのロボット運転手が、最後の仕上げをしよった。
人間がここにおったという唯一の痕跡は、ガタガタの建物と、ずっと回り続ける風車やった。みんな地球を捨ててもうたんや。みんなっちゅうのは、この男以外やけどな。
彼はデザー・モラーとして知られとった。
これ全部にちょっとばかし真実があんねん。世界がボロボロになったらどんな感じかを知りたいんやったら、モハーベ砂漠に行ったらええ。そこには世界最高の、少なくとも最も変わり者の発明家がおるんや。このクラフトはセクシービーストや。機械を限界まで押し上げとる。
エンジニアリングへの情熱が湧き立つ場所で、飽くなき発明家たちに完全な自由を与えてくれるとこやねん。ロサンゼルスからラスベガスまで、モハーベを横断する旅に私と一緒に来てくれへんか?車の未来を変えようとしてる人々に会うで。
自動運転やってんで。そして宇宙を安くて簡単なもんにしようとしとる。いつかは一点間移動を実現しようとしとるんや。
何十年もの間、LAには2つの活気あふれる製作者コミュニティがあったんや。車をデザインする人たちと、宇宙船を作る人たちやな。彼らの多くは洗練されたスタジオや巨大な工場で働いとるけど、私が探してる男は、こんなとこで仕事してんねん。
デザー、元気か?会えてうれしいわ。
私も会えてうれしいで。これがデザー・モラーや。ここが彼のおもちゃを置いとるとこなんや。
「ゆっくり走るときは着陸ギアを下げたままにしとくんやけど、高速道路に入って2速に入れたら車輪を上げるで。そんときに音がするけど驚かんといてな」
デザーは昔、空軍でパイロットやっとってん。それからロケットとロケット推進の車を作ったんや。バンドもやったし、金持ちになったり貧乏になったりもした。好きなことをする自由人なんや。多くのLAの人と同じで、よく何時間も高速道路で立ち往生して、コンクリートの牢屋から抜け出す方法はないもんかと考えとったんやな。
「これが俺の最初の空飛ぶ車の試作品や。空飛ぶ車の開発は、よく誰でも使えるもんを作らなあかんとか、消費者向け製品にせなあかんとかいう考えにとらわれがちやねん。通勤時間を数秒短縮するためにな」
「ダ・ヴィンチはモナ・リザを1枚しか描かへんかったけど、それでもすごい価値があるやろ。500枚も作る必要はなかったんや。私は多くの機械を芸術作品として見とるんやけど、今必要なんは、開発への興味を高めるためのギャラリーやと思うんや」
その興味を高めるために、デザーはもうすぐモハーベ砂漠で空飛ぶ車のレースリーグを始めようとしとるんや。
LAとモハーベの間には昔からの結びつきがあんねん。LAでは技術者が昼間はオシャレなオフィスで仕事をして、モハーベでは実験好きな連中が週末にアイデアを試すんや。
「モハーベはいわば遊び場みたいなもんやな。テストベッドや。会いたい人に会えるところやねん。変わり者に会えるんや。土曜の午後に時速300マイルのジェットカーを走らせるような変わり者にな」
「よっしゃ、変わり者の仲間入りやな」
MAVはロサンゼルスから車で2時間ほど離れたカリフォルニアの砂漠にあんねん。その時間のほとんどはバンパーを見つめて過ごすことになるで。
くそっ、この渋滞はなんやねん。お前らこれに耐えとんのか?
せやな、空飛ぶ車はええアイデアに思えるわ。でも発明家の聖地に向かう途中、金属パイプと善意だけで作られた代物で砂漠を飛び回るなんて、バカかヤバいかのどっちかやと感じてきたわ。
でも実際のところ、この技術の多くは実績があるんや。デザーの空飛ぶ車計画の最初の部分は、このジャイロコプターにかかっとるんやな。
この種の乗り物は1920年代から飛んでるんや。安くて、比較的作りやすくて、かなり信頼できるんやで。モーターで動くんとちゃうで、クラフトが前に進むにつれて風からリフトを得るんや。
すごいわ。まったく違う視点が得られるんやな。
エンジンが止まっても、コプターは葉っぱが木から落ちるみたいにフワフワと地面に降りてくるんや。
離陸直前はアドレナリンが出まくっとったけど、空中に出た瞬間、見るもんがいっぱいあって、ここは綺麗やし、すべてを忘れてしまうんやな。
せやな。見たとおり、ここらへんならどこでも着陸できるから、完璧な場所やで。
ジャイロコプターは空飛ぶ車のパズルの上昇部分を解決するけど、道路を走るためにはまだ何か必要やな。そのために、デザーはこのスタイリッシュなコンセプト車両を持っとるんや。目標は2つを組み合わせて、ほとんどどんな道路でも滑走路に変えられるもんを作ることやな。
もしそれが実現したら...もし実現したらやけどな、挑戦する覚悟のある一部の人々は自由を味わえるようになるやろな。残りの我々は405号線を走り続けるけどな。
「現実はな、多くの人が人生で何かしらの優位性を持ちたがるんや。でかいステレオとか、家にプールがあるとかな。でも自然界では、鳥は全部歩けるし、飛ぶ虫は全部足があって、背中に羽を畳めるんや。異なる環境を生き抜くために適応してきたんやな」
「アメリカでは年間400億時間も渋滞で無駄にしとるんやで。誰もこんなもん持てへんって言うのは、正直どうでもええんや。この馬鹿げた蟻の行列から逃れられるもんを作れるんやったら...」
モハーベではロケットのテストをしとるんや。カッコいいロケット会社になるには、たくさんテストせなあかんのやで。成功する奴らは素早く改良を重ねられるんや。
アメリカのトップロケット技術者の多くがここで働いとるんや。ここはモハーベ空港や。モハーベの町のど真ん中にあんねん。ここは大人が火遊びする場所やな。Virgin Galacticの火遊び好きは、もうすぐ観光客に宇宙旅行のチャンスを提供しようとしとるんや。1枚25万ドル、StubHubなら倍くらいやけどな。
ジョージ・ホワイトサイドはNASAのベテランで、Virgin GalacticのCEOを務めとるんや。彼が彼らの施設を案内してくれたわ。ロケットエンジンの慣らし運転をするテストスタンドもあったで。
「自然はわしらがやろうとしとることを好まへんのや。ここでの技は、自然が望まんもんを意図した結果に曲げることやな」
Virgin宇宙船は飛行機の下に取り付けられて空中に運ばれんねん。それから宇宙船は自身のスラスターを発射して天国を目指すんや。複雑なシステムやけど、その欠点を克服できる場所は地球上にほとんどないんやで。
「アメリカで唯一、ロケットモーターを設計、製造、テストして、それを宇宙船に組み込んで宇宙に飛ばせる場所なんや」
Virginは単なる遊び乗りを提供するだけやのうて、たとえ数分間でも人々が宇宙を訪れることで、我々の地球の見方に大きな影響を与えると考えとるんや。
「700人くらいの規模で、うちの宇宙船に乗る予約が入っとるんや。これは50年間で宇宙に行った人の数よりも多いんやで。彼らは世界中のコミュニティに戻って、その視点を持ち帰るんや。それがすごく大事な効果をもたらすと思うんや」
Virginの物語は大きな約束と壊滅的な後退の繰り返しやった。2014年、会社の最初の宇宙船が地上に墜落して、副操縦士が亡くなり、操縦士が負傷したんや。
今日のこの記者会見で、Virginは自社の技術への信頼を回復しようと、スペースシップ2を公開しようとしとるんや。リチャード・ブランソンが銀河帝国を灰の中から復活させようとする試みやな。
「これには10年以上かかったんや。まだ飛行の段階には至ってへんけど、他のビジネスと比べてどれくらい難しかったんやろか?」
「これはロケット科学なんや。本当に難しいんや。完全に車輪を再発明しとるようなもんやな。技術を一から作り直しとるんや。だから大変やったけど、今や宇宙に連れて行ってくれるロケットができたんや。もうすぐそこまで来とると確信しとるで」
ブランソンは良い息子やから、宇宙船に母親の肖像画を描いたんや。そして良いショーマンやから、宇宙船のお披露目を孫娘の誕生日パーティーの口実にしたんやで。あれは砂糖で作った牛乳瓶や。命名式に使うんやな。
「2014年の事故の後、どれくらい諦めかけたんや?」
「人生で何かを諦めたことはないんやけどな。でも問いかけをせんかったら無責任やったと思うで。大事なのは、こういうプログラムを急がんことや。大事なのは、ちゃんとやって、人々が安全に上がれるようにすることやな。片道切符やなくて往復切符を提供せなあかんのや」
これは一生に一度の招待やな。「モハーベに来い」って言うんや。「トローナピナクルズの隣でキャンプするで」と。奇妙で美しいとこやって。「ビールとハンバーガーとテキーラがあるで。ギークとテクノフリークの集まりや」と。「車をどう再発明しとるか見せたるで」って。「背骨が砕けそうなくらい速く走るで」と。
これはマウス・マッコイや。彼は一種のホットロッド・ルネサンス・マンで、ビジョンを持っとるんや。明日の車は人工知能によって設計されるっていうビジョンやな。
「今はちょうど、これらのもんが空想科学みたいに思えるけど、実際には科学の事実なんや。俺らの目の前で科学の事実が起こっとるんや。その一部が、ただ気分がええんやな」
マウスの最新ベンチャーはハックロッドって呼ばれとるんや。目標は人間の感情とテクノロジーを融合させて、自動車革命を巻き起こすことやな。
これを実現するために、マウスと彼のチームはできる限り多くのことを計測しとるんや。車にたくさんのセンサーを取り付けて、金属がどう動くかを見とるんや。それから3Dマップのレーシングコースを作って、車がどう動くかを正確に把握するんや。そのうえで、脳波モニターを頭に付けて、ストレスを検知するんや。
今日のテストのために準備すると、もう不安の兆候が出とるみたいやな。うまくいけば、脳波モニターで純粋なパニックが見られるかもしれんな。
ハックロッドチームは既製の車のシャーシから始めへんのや。人工知能ソフトウェアを使ってデザインを考え出して、3Dプリンターで作るんや。設計ソフトウェアと新しい製造技術が十分に良くなって、少人数のグループでもゼロから特注の車を作れるようになったんや。
「大量生産の世界に入りつつあるんやけど、デザインの決定が会社の戦略で決められてまうんや。あなたの美的センスが決められてしまうんや。でもそれはホットロッダーの精神とは違うんやな。ここでの我々のミッションの多くは個性化についてなんや。自分だけのデザイン、自分だけの車を持つことについてな」
「これは完全な車やで」
フェリックス・ホルは以前、マテル社でホットウィールとマッチボックスのブランドを監督しとってん。彼は車マニアで、マテルの仕事を辞めてマウスとハックロッドを始めたんや。
「これは人工知能によって設計された最初のシャーシかもしれへんな」
その人工知能は、砂漠でのフィールドテストで集めたデータを吸収するんや。フェリックスがいくつかのガイドラインを与えて、AIが車体デザインを吐き出すんや。それをテストして、データをフィードバックして、さらに良い車を作り出すんや。
昔は何年もかかって何百人もの技術者が必要やったことが、今では数ヶ月でできるようになったんや...少なくともハックロッドはそう期待しとるんやな。
「我々は両方ともホットロッド文化、ハッカー文化から来とるんや。我々はこれをこう見とるんや。我々はフォードやフェラーリやその他の会社やないんやから、シャーシを一から設計するのに何百人もの技術者を雇う余裕はないんやと」
「創造性とデザインの民主化が起こっとるんや。我々はそれを支持しとるんやな」
この車は「ザ・ミュール」って呼ばれとるんや。ハックロッドの技術を使って作られた最初の車やな。3日間でマウスにこてんぱんにされてもうたわ。もうすぐLAに戻って、コンピューターに仕事をさせて、ミュール2.0に置き換える時期やな。
「5年後のこの会社のビジョンはどんなもんなんや?」
「5年後には、我々は自動製造の世界で重要な推進力になっとると思うで」
モハーベで数日過ごして、グリースとほこりまみれになった後...ほんまにほこりだらけやで...私はモハーベからの脱出を計画したんや。最後の目的地はラスベガスや。
この旅の性質を考えると、普通のホンダに乗るわけにはいかんやろ。特別なもんが必要やな。罪の街に痕跡を残せるようなもんをな。そこで、自作の自動運転車を持ってる古い友人に連絡したんや。問題解決やで。
バーから数マイル離れたところで、AETが効き始めたんや。ハンター・S・トンプソンがドクター・ゴンゾを連れとったように、私にはこの男がおるんや。ジョージ・ホッツや。薬は少ないけど、恐怖と嫌悪は十分やで。
ホッツは10代の頃からあらゆるもんをハッキングしたことで有名になったんや。iPhoneをハッキングし、ソニーのプレイステーションをハッキングした。法的費用を払う羽目になったことでそれは証明されとるな。
そして今、彼は車をハッキングしとるんや。去年、サンフランシスコのガレージで、たった数ヶ月で自動運転車を1人で作って世界を驚かせたんや。
私は以前彼を訪ねて、カメラやレーダー、人工知能ソフトウェアを詰め込んだアキュラを見たんや。テスラやグーグルとは違って、ホッツは車に大量のルールを与えへんのや。基本的に彼が運転して、車がその行動を真似して学習するんや。そして時間が経つにつれてどんどん上手くなっていくんや。
「出口に行くなよ。行くなよ。行きたいのはわかっとるけど。出口が見えとるのもわかっとるで。ああ、ええ子やな」
ホッツはまだナイトライダーには及ばへんけど、ハッセルホフ並みの自信は手に入れたみたいやな。
「もうすぐレーダーなしで運転できるようになると思うで。カメラだけでな。携帯電話のカメラみたいなもんや。そのカメラで車を運転するのに十分なんや」
「みんなを批判し続けて、自分をアンダードッグのように見せることもできるけど、本当にアンダードッグなんやろうか?俺には動く自動運転車があるんやで。みんなにはないやろ」
ホッツ独特の自信満々な態度を誰もが評価するわけやないんや。例えばカリフォルニア州車両管理局は最近、ホッツに州の道路での実験走行をやめるよう言うてきたんや。
これが我々がネバダ州境に向かわなあかん理由なんや。そこではモハーベの真の自由が生き続けとるんやな。
「境界線に近づいとるで、近づいとる。境界線に着いたらボタンを押すんや」
「なんでカリフォルニアではあかんのや?」
「あそこはイノベーションが嫌いなんや。ネバダはイノベーションが大好きやで。そう聞いとるわ」
「看板が見えてきたで。準備せえ、艦長の命令や」
「よっしゃ、行くで。ネバダ州へようこそ。3、2、1」
「自動運転中や」
ホッツの車は初めてネバダの道路を走ったんやけど、何マイルも完璧に自動運転したんや。砂漠の太陽が沈んで、道路に影が落ちるまでは...
「実はこれが一日で最悪の時間帯なんや。コントラストがあんまりよくないんや。太陽がまだ明るすぎて、道路が暗すぎるんや。見てみ、何も...何も見えへんわ。画面に何も見えへん。これはほんまにヤバいで」
「これを見てどう思う?時間とともに解決できる問題なんか?」
「これの多くはカメラに関係しとるんや。今のバグの多くは、カメラが見えへんからなんや」
ようやくラスベガスのストリップに到着したんで、彼を元気づけようとしたんや。
「どうなるか見てみようや。早すぎるかもしれんけど」
「早すぎるかも...おっと、あかん。あの人が見えとるわ、見えとる」
「よっしゃ、車、行け!ここやで、ウォー!」
「バンにぶつかるなよ、ぶつかるなよ...おお、ナイスや、ナイスや」
「行くべきところより近かったな」
ホッツの車はテストに合格して、彼の実存的な落ち込みも消えたんや。ドクター・ホッツの伝説は続くんやな。
「気分ええか?」
「ああ、ええかったわ。ええかった」
最近のアメリカについて皮肉的になるのは簡単やな。太った人々が物を作ることを忘れて、手を汚したがらん場所やと。
でもモハーベみたいなところに来たら...
これはコロッサスや。1943年にイングランドのブレッチリー・パークで誕生したんや。この機械は、毎秒数千語の暗号文を分析して、ドイツの暗号メッセージを解読するために走り回っとったんや。
真空管や配線、スイッチを組み合わせて、コロッサスは最初の電子プログラム可能なコンピューターとして登場したんや。その登場で連合国は第二次世界大戦で大きな優位に立ち、何千もの命を救ったんや。また、情報時代の幕開けを告げたんやな。
イングランドはコロッサスを10台製作して、それらがイギリスのコンピューター産業の中心となったんや。
...実はちゃうんや。これはコロッサスのレプリカなんや。本物の機械は戦後に破壊されてもうたんや。厄介なロシア人にこの技術を知られたくなかったからな。
つまり、単純な例え話やな。イングランドは何十年にもわたる先駆的なコンピューター開発を解体してもうたんや。それが適切なことやと思われたからやな。そして以来、その結果に苦しんどるんや。
お前らの中で、この国発祥の技術製品やスタートアップを1つでも挙げられる奴はおらんやろ。
次に見るもんは本当にショッキングかもしれんな。なぜなら、非常に控えめで自己抑制的なやり方で、イングランドは実際、世界に大きな影響を与えた少数のハイテク企業を生み出しとるからや。
ロンドンからケンブリッジに向かって、イングランドの田舎に入っていくで。イングランドが提供する最高のテクノロジーを見つけに行くんや。
その途中で、おしゃれなヘアドライヤーやAIを使ったソフトウェアも見るで。
「こんにちは、私の名前はオボットです。あなたの名前は?」
もちろん、お茶の時間もあるで。
完璧な大学町を設計しようとしても、ケンブリッジほど理想的なもんは思いつかへんやろな。学問の殿堂と若くて特権的な頭脳派でいっぱいの街や。自転車に乗って学問の歴史を巡ることができるんや。ニュートンのリンゴの木から、ワトソンとクリックがDNAの二重らせん構造の発見を祝って飲んだパブまでな。
それが退屈やと思うなら、古いケンブリッジの市場で儀式的な虐待を受けることもできるで。
「はい、どうぞ」
「おお、すっぱい...」
「石鹸みたいや」
今日、ケンブリッジはイングランドのハイテク産業の中心地としても機能しとるんや。研究センターやスタートアップ、巨大なバイオテク企業がここにあるんやな。
大学の外で、ケンブリッジの技術的成功の最大の理由は、ARMという会社なんや。チップを設計しとるんやけど、そのチップはほぼすべてのiPhoneとAndroidスマートフォンの頭脳の中心にあるんや。つまり、現代世界はARMで動いとるんやな。
古い友人でARMの共同創業者のマイク・ミュラーと会って、温かいイギリスビールを飲みながら、これがどうやって起こったのかを聞いてみたんや。
「パブはARMの歴史の中でどんな意味があったんや?」
「最初のCEOとパブで会ったんや。今おるのは、我々が実際に始めた場所から100ヤードくらい離れたパブやな。当時は毎日昼にここに来とったんや。だからビジネスに重要な役割を果たしたんやな」
ARMは少し気まぐれに始まったんや。最初の大きな顧客はアップルで、これから出すNewtonハンドヘルドデバイス用のチップが必要やったんや。
他のみんながすごく速くて熱くなるチップを作っとる中、ARMは低電力で省エネのチップを作ることにしたんや。すぐに低電力チップを作ることがARMの特徴になったんやな。
この賭けが報われるまでには時間がかかったけど、携帯電話やスマートフォンが登場すると、ARMは大きな力を持つようになったんや。
「我々のパートナーは800億個以上の異なるチップを出荷したんや。去年は地球上の1人あたり約2個、つまり150億個のチップが出荷されたんや。携帯電話、プリンター、アンチロックブレーキ、テレビ、Wi-Fiルーター、クラウドサーバー、医療機器...まだまだ続くで」
ミュラーの言うとおり、ARMチップを使った最も革新的で素晴らしいもののひとつが、ラズベリーパイやな。
大したことないように見えるかもしれんけど、この35ドルの電子機器の塊は、完全に機能するコンピューターなんや。ここにARMチップがあって、たくさんのUSBポートに、イーサネットポート、そしてHDMIポートまであるんや。
この小さなもんで、ほとんど何でもできるんやで。
2012年に発売されて以来、パイは変わり者の趣味人や発明家たちの間で宗教的な熱狂を巻き起こしたんや。彼らの中には、「ラズベリージャム」っていうイベントでパイの作品を披露する人もおるんやで。
グロスターにある自宅に低コストのパーソナルコンピューターの聖地を作ったデイビッド・プライドに会いに行ったんや。
「調子どうや?この小さな機械はあんたにとってどんな意味があるんや?」
「人生を変えてくれたんや。以前は非常に幸せで安定してて、給料もええ仕事をしとったんやけど、ほんまに退屈やったんや。そんときに、何か違うことをしたいなら、これが自分が常に学びたかったスキルを身につける機会やと気づいたんや。エレクトロニクス、ロボット工学、コーディングとかな」
彼の家はパイの作品だらけや。モーター付きの車からロボットまでな。
「皆さん、こんにちは。ハローワールド」
ナイスなタッチやな。でも彼の最も有名な発明は、フォーボットや。AIを搭載した機械で、コネクトフォーの対戦相手としては遅いけどなかなかやるで。
「これはすごいな。作るのにどれくらいかかったんや?」
「夜と週末を使って3ヶ月くらいやな」
「あなたが動いたから...おっと、もう行かなあかんな」
「あなたが動いたけど、今は次の手を考えてるんや」
「このやろう、負けてもうた」
「恥ずかしいわ。人類のためにもっとがんばるべきやったな」
ラズベリーパイの魂を本当に理解するには、その発祥の地であるケンブリッジに戻って、イーバン・アプトンとボートに乗らなあかんかったんや。彼はパイを発明したコンピューターサイエンティストや。
2007年頃、イーバンはイングランドのコンピューターサイエンス専攻の学生数が減少しとるのを見て警鐘を鳴らし、新しいアプローチで若者たちを刺激しようと決めたんや。
「ケンブリッジは世界で最高のコンピューターサイエンスを学べる場所やと常に思っとったんや。少なくともイギリスでは最高やな。でも大学のコンピューターサイエンス専攻への志願者数が激減しとるのを見たんや。コンピューター産業が爆発的に成長しとるのに、これはおかしいやろ?」
「せやな、コンピューター産業は爆発的に成長しとるし、ここは勉強するには美しい環境やしな」
「我々の理論は、90年代半ばに到着した我々のほとんどが、安価でプログラム可能な8ビットのマイクロコンピューターで育ったということやったんや」
「あんたはBBCマイクロで育ったんやな。それがきっかけやったんか?」
「そうや、学校にBBCマイクロがあって、教室の隅にあったんや。美しい機械やったな。イギリス政府が支援しとってん」
BBCマイクロは多くの学生に初めてのコーディング体験と、コンピューターができることの可能性を与えたんや。
パイはこの伝統を非常によく受け継いでいて、その過程で消費者の大ヒット商品になったんや。今や、Macに次いでPCに次ぐ、史上3番目に売れたコンピューターになっとるんやで。
「我々の生涯の夢の販売量は1万台やったんや。今や1000万台に近づいとるけど、それが起こるにつれて、我々はもっと野心的になってきたんやな。我々が達成しようとしとることについて、もっと貪欲になってきたんやで」
「我々は『ケンブリッジのコンピューターサイエンスへの志願者数を200人から600人に増やせるか』から始まって、『他の大学でも同じことができるか』『他の国でも同じことができるか』『他の科目でも同じことができるか』というところまで来たんや」
大きく考えろや、ジェイソン・ステイサムのものまね野郎。大きく考えろ。
コンピューティングの知的基礎は、1833年にここケンブリッジで始まったんや。ケンブリッジで学んだ数学者チャールズ・バベッジが、この「差分機関」のプロトタイプを作ったんやな。
クランクとギアを回すことで方程式を解くことができて、最初の機械式コンピューターと考えられとるんや。
その100年後の1930年代、アラン・チューリングというもう一人のケンブリッジの数学者が、現代のコンピューターの概念を考え出したんや。機械がプログラムされてほぼ何でも計算できることを証明したんやな。
チューリングとバベッジの時代から数十年後の今も、ケンブリッジはコンピューティングの最先端におるんや。マイクロソフトのような企業が研究センターをここに置いて、地元の学術的才能を活用し、最も野心的なアイデアを探求しとるんや。
クリス・ビショップがこの研究所を運営していて、多くの分野の研究を監督しとるんや。最も魅力的で恐ろしい分野の一つが人工知能やな。
「今はほんまに人工知能にとってワクワクする時代なんや。画像理解や音声認識など、ますます多くの課題が解決されつつあるんや。人間の脳の完全な能力にはまだまだ遠いけど、ある種のタスクに関しては障壁が取り払われたという感覚があるんやな」
コンピューター科学者たちは何十年もの間、真の人工知能を作ることを夢見てきたんや。人間と同等かそれ以上の機械を探し求めてきたんやな。
最近、ビショップのような人たちが機械学習というアプローチのおかげで、本当に進歩し始めたんや。
「チューリングの時代に戻ると、コンピューティングは論理に関するものやった。決定論的なもんやな。コンピューターが実行する命令やコードは人間が作るもんやった。機械学習で見とるのは全然違うもんなんや」
「タスクを解決するようにコンピューターをプログラムするんじゃなくて、経験から学ぶようにコンピューターをプログラムするんや。そして、たくさんの例を見せて、たくさんのデータを与えてコンピューターを訓練するんやな」
AIはここでたくさんの実験を動かしとるんや。例えばこのコンピュータービジョンのシミュレーションとかな。マイクロソフトのKinectセンサーは以前、手を認識するのに苦労しとったけど、今では指の動きまで正確に捉えられるんや。
Xboxの映画推薦アルゴリズムもAI駆動で、私の奇抜な映画の趣味をかなり上手く把握しとるんやで。
「実は『ツイスター』好きやったんやけどな」
「今度はどうなるか見てみよう」
「大きな変化が見られるな」
この研究所は娯楽だけやのうて、実際に命を救っとるんや。MRI画像で、がんの脳組織と健康な組織を区別できるプログラムがあるんやで。
「ここに見えるのはかなり悪性の脳腫瘍やな。機械学習が今やっとるのは、既に死んでしまった組織なのか、それともがん化して増殖しとる組織なのかをラベル付けしとるんや」
「これはほんまに重要やな。治療を設計するのに使われるからや。色んな方向から放射線を当てて、できるだけ多くのがんを殺すけど、正常な組織にはできるだけダメージを与えんようにするんやな」
マイクロソフトの通りを下ったところに、すでにAI技術を世に出しとるスタートアップがあるんや。Audio Analyticっていう会社で、現実世界の音のためのShazamみたいなもんやと思えばええ。
「人工知能を使って、スマートホーム機器が家の中で起こるさまざまな音を認識できるようにしとるんや。窓ガラスが割れる音を検知して、ライトをつけたり、泥棒を怖がらせたりして、家をより安全にできるんやな。大切なものを積極的に守ることができるんや」
「ここに何があるんや?これ全部何なん?」
「これらは、この装置が検知する音を出す機器やな。煙警報器やな。見て、煙警報器を検知したで。誰も家におらへんから、メッセージを送信しとるんや」
「他の音は?これはガラスが割れる音やな」
「そうや、それを鳴らしてみ。ほら、『窓が割れました』って出とるやろ」
「これの背景にある科学は何なんや?」
「音を理解する方法、音を検知する方法、機械に音を理解させる方法について、たくさんのイノベーションをせなあかんかったんや。単純な音でも、例えば煙警報器のピーっていう音があるやろ。今、2つの警報器が違うタイミングでピーって鳴っとるけど、背景にはたくさんの雑音があるんや。これは大きなAIの問題を解決せなあかんのやな」
コンピューターは1つの音を他の音と区別し、例えばガラスが割れる独特の音を学習するように訓練せなあかんのや。もちろん、割れる窓の音は全く同じってことはないから、この連中はたくさんのガラスを割ってストレス解消しとるんやで。
「どれくらいの窓を割ったんや?」
「窓?文字通り何ヶ月もかけて倉庫いっぱいに集めたんや。サイズも厚さも種類も違う、ありとあらゆるガラスをな」
「煙警報器は?」
「煙警報器は文字通り、市場で見つけられるすべての煙警報器を買い集めて、それら全部をインデックス化したんや。ほんまに大変な作業やったで」
このソフトウェアは赤ちゃんの泣き声も認識できるんやで。
「やあ、デイジー」
「やあ」
運よく、実験用のかわいくてお腹が空いた赤ちゃんを見つけたんや。
「画面を見てみ。赤ちゃんの泣き声を検知しとるで」
Audio Analyticのソフトウェアはすでに多くのスマートホーム製品に搭載されとって、もっとたくさんの音を追加する予定やねん。
でも今のところ、怒った赤ちゃんが煙警報器を窓に投げつけたときに発見するには完璧な技術やな。
イングランドに到着したのは、ブレグジット狂想曲の最中やった。観光客は喜んどった。だって国全体がセール状態やったからな。地元の人の中には落ち込んでる人もおったけど、気にせん人もおったで。高級ホテルのHバーで20ドルのカクテルを飲んでる人らみたいにな。
レゴで作られた象から出てくるラムとか、これが何やねんっていう容器から出てくるジンを飲むことほど、経済的破滅への挨拶はないやろな。
ブレグジットを気にせん人といえば、400ドルのヘアドライヤーを買う余裕のある人らもそうやな。
ダイソンは皆が知ってる通り、吸引を完璧にしたんや。今度は送風の番やな。スーパーソニックに会うてみよか。
たっぷりあるダイソンのプロパガンダによると、これは今まで作られた中で最もスマートなヘアドライヤーやねんて。電動デジタルモーターを使って強力な気流を生み出し、センサーでその空気が熱くなりすぎへんようにしとるんや。結果として、髪がより艶やかで健康的になるらしいで。
「今、2インチ背が高くなった気がするわ」
ダイソンがこれをどうやって作ったか見るために、ロンドンを離れて会社の本社がある絵のように美しいモールズベリーの町に向かわなあかんかったんや。
ジェームズ・ダイソンが1991年にこの会社を設立して、自分だけのエンジニアリングの楽園を作ったんやな。ダイソンのキャンパスには彼のおもちゃがあちこちに散らばっとるで。
もちろん、カフェテリアに飛行機があるわ。発明工場がいくつかあるんやな。
最初に会ったのは、全く新しい製品のアイデアを考え出したり、古いものを再発明したりする constant battle を率いてる人やった。
「ヘアドライヤーは60年くらい変わってへんのや。ここの切り取り図を見てみ。中にすごく大きなモーターが入っとるやろ。でもその重さを20分か30分、髪を乾かしてる間ずっと持っとかなあかんのや。それにすごくうるさいしな。だからこれは我々が参入するのにええ製品やと思ったんや」
ダイソンはスーパーソニックを作るのに4年と7100万ドルをかけたんや。想像通り、髪に関してはめちゃくちゃ執念深いねん。
「髪に関するすべてを学ばなあかんと思ったんや。髪の科学をな。自分たちで髪について学ぶために、自前の研究所を作らなあかんかったんや。何が髪を傷めるのか、何が艶を出すのか、何が髪を綺麗に見せるのかを学んだんやな」
「やあ、マシュー」
「やあ、実験室61へようこそ」
「ありがとう」
マシュー・チャイルドはダイソンの電動モーターの魔術師や。10年以上かけて、多くのダイソン製品の核心部分を開発してきたんや。掃除機には大きなモーターがあるけど、ヘアドライヤーにはこの小さなもんがあるんや。ミニチュア・タービンやな。
「これは商業航空機のジェットエンジンに近いもんやな。他のどんなものよりも」
「どれくらいの速さで回るんや?」
「11万5000RPMや。つまり1秒間に約1800回転するんやな」
「それほぼ不可能やないか」
「高速の電子機器と、フルスピードで何百時間も応力とひずみに耐えられる機械システムがあれば可能なんやで」
この電動モーター技術は、ダイソンが新しい製品分野に進出し続けるための鍵になるやろな。密かに電気自動車の開発をしとるという噂もあるで。
「これはどんなもんに使えるんや?」
「今のところヘアドライヤーに応用しとるけど、次は何が来るか待っててな」
「そう言うと思ったわ」
ダイソンに見られる発明への情熱と営業力は、ここではちょっと異例なもんやな。イングランドが大事にしとる皮肉屋的態度は、ハイテク産業を支配する誇大広告まみれの楽観主義とは相容れへんのやな。
イギリス人はパブランチの宣伝は上手いけど、起業家や発明家を励ますのはあんまり得意やないんや。でも、イギリス人が本気で何かに取り組むと、めっちゃ上手くやるってのは明らかやな。
ARMのチップが世界を変えたって言うても大げさやないし、ラズベリーパイが世代を変えたかもしれへんってのも同じやな。
そして、もし大きなことを考えようと思うなら、ケンブリッジほど適した場所はないんやで。牛の間で静かに瞑想しながら、秋が訪れるのを感じられるしな。
カナダに秋が訪れると、北の隣人から得られる美しさ、無邪気さ、そして銃のない楽しみのすべてを思い出すんや。
トロントの雄大さ、広大なホッケーリンク、そして公然と、キルトを着ずに大量に飲めるメープルシロップがあるんやで。このメープルシロップは純粋で栄養たっぷりやからな。
季節の変わり目は、カナダの最も貴重な生き物のひとつ、人工知能オタクに出会うのにぴったりの時期でもあるんやな。
人々が最初にコンピューターというアイデアを思いついて以来、人工知能を吹き込む夢を見続けてきたんや。
「私は頭脳明晰な仲間です。とても素晴らしい頭脳を持っているからです」
「今まで見た中で最も驚くべきものです」
AIは人間の思考や行動を模倣・シミュレートできるコンピューターのことやな。その中に機械学習という分野があって、これが今AIで最も興奮させるものの基礎になっとるんや。
コンピューターに自分で問題を解決する方法を学ばせることで、機械学習はかつてほぼ不可能と思われていた一連のブレイクスルーを実現したんや。
これが、コンピューターがあなたの声を理解し、写真の中の友達の顔を見つけ、車を操縦できる理由なんや。そして、人間のようなAIの到来と、それが良いことなのか、それとも恐ろしい終末なのかについて、人々が積極的に話し合っている理由でもあるんやな。
多くの人々がこの瞬間を可能にしたけど、他を圧倒する人物が一人おるんや。トロント大学に、現代人工知能の教父と呼ばれる男に会いに来たんや。ジェフ・ヒントンやな。
背中の状態が悪いせいで、ジェフ・ヒントンは12年以上座ることができへんのや。
「立つのは嫌いや。座りたいんやけど、座ったら椎間板が出てくるんや」
「まあ、少なくとも今はスタンディングデスクが流行っとるからな」
「せやな。でも俺は先駆者やったんや。スタンディングデスクが流行る前から立っとったんやで」
車や電車に乗れへんから、ヒントンはどこへ行くにも歩くんや。
その歩き方は、ヒントンとその決意について多くを語っとるな。
40年近くの間、ヒントンは人間のように学習するコンピューターを作ろうとしてきたんや。ほとんどの人が狂ってるか、少なくとも絶望的やと思っとった探求やな。それが分野に革命を起こすまでは。
「グーグルはこれが会社の未来やと考えとる。アマゾンもこれが未来やと考えとる。アップルもこれが未来やと考えとる。俺の部署はこのことをたぶんナンセンスやと思っとって、もうやめるべきやと。だから俺は自分の部署以外の全員を説得したんやな」
ジェフ・ヒントンは、かなり早い段階で脳の仕組みを理解することに取り憑かれたんや。最初は生理学から始めて、脳の解剖学的な仕組みを研究したんや。それから心理学に入って、最終的にはコンピューターサイエンスのアプローチで脳のモデル化に落ち着いたんやな。
「俺の考えは、脳みたいな複雑な装置を理解したいなら、それを作るべきやってことや。車を見て、車を理解したつもりになれるかもしれんけど、実際に車を作ろうとすると、ボンネットの下に何かがなきゃ動かへんってことに気づくんやな」
ジェフがこれらのアイデアを考え始めた頃、大西洋の向こうのAI研究者たちに影響を受けたんや。特にこの男、フランク・ローゼンブラットやな。
「ローゼンブラットは1950年代後半に、パーセプトロンと呼ばれるものを開発したんや。これはニューラルネットワーク、脳を模倣したコンピューティングシステムやった」
基本的な考え方は、ニューロンと呼ばれる小さな単位の集まりや。これらは小さな演算ユニットやけど、実際には人間の脳がする計算の仕方をモデル化しとるんや。感覚から入ってくるデータを受け取って、実際に学習するんやな。だからニューラルネットは時間とともに判断を下すことを学べるんや。
ローゼンブラットの希望は、男性と女性の写真のようなデータの束をニューラルネットワークに与えれば、最終的に人間のようにそれらを区別する方法を学ぶだろうということやった。
ただ一つ問題があったんや。それはうまく機能せんかったんやな。
「ローゼンブラットのニューラルネットワークは単一層のニューロンで、できることが非常に限られとったんや。極端に限られとった。彼の同僚が60年代後半に本を書いて、これらの限界を示したんや。それで約10年間、この研究分野は完全に凍結状態になってしもたんやな。誰もこの分野で仕事をしたがらへんかった。絶対に機能せえへんって確信しとったんや」
まあ、ほとんど誰もやけどな。
「俺には、これが正しい道やってことがただ明らかやったんや。脳は大きなニューラルネットワークやからな。だからこういうものが機能せんわけがない。我々の脳で機能しとるんやから。それについては全く疑いがなかったんや」
「なぜあなたは他の全員が諦めたときに、これを追求し続けようと思ったんや?ただ正しい方向だと思ったからか?」
「いや、他の全員が間違っとると思ったからやな」
ヒントンは、このニューラルネットがどう機能するかについてアイデアを持っとって、それを追求することにしたんや。他の人が何を言おうと関係なしにな。
しばらくの間、彼はアメリカのいろんな研究機関を転々としとったんや。ほとんどが国防総省の資金で運営されとるのにうんざりして、他の場所を探し始めたんやな。
そしたら突然、カナダが人工知能の資金提供に興味を示してるかもしれへんって聞いたんや。
「それはすごく魅力的やったな。この文明化された町に行って、ただ続けられるってことやからな。だからトロント大学に来たんや」
「そして80年代半ばに、より複雑なニューラルネットの作り方を発見したんや。そうすれば、単純なものでは解決できなかった問題が解決できるようになったんやな」
彼と彼の協力者たちは、多層ニューラルネットワークを開発したんや。ディープニューラルネットワークやな。これは多くの面で機能し始めたけど、また壁にぶつかったんやな。
90年代から2000年代にかけて、ジェフは地球上でこの技術を追求し続けとる数少ない人物の一人やったんや。学会に出ても、後ろの部屋に追いやられるような扱いを受けとったんやな。本当にパリアみたいな扱いやった。
でもジェフはこれに取り憑かれてて、止められへんかったんや。コンピューターが学習できるという考えを追求し続けたんやな。2006年くらいまでは。
そのころ、世界がヒントンのアイデアに追いついてきたんや。コンピューターがめちゃくちゃ速くなって、インターネットで大量のデータが生成されるようになったんやな。
「今では、俺が80年代半ばに予想してた通りの動きをしとるんや。あらゆるものを解決しとるんやで」
超高速チップの登場と、インターネットで生成される膨大なデータが、ヒントンのアルゴリズムに魔法のようなブーストをかけたんや。
突然、コンピューターが画像の中身を識別できるようになったんや。それから音声を認識して、ある言語から別の言語に翻訳できるようになったんやな。
2012年頃には、ニューラルネットや機械学習といった言葉がニューヨーク・タイムズの一面に載るようになったんや。
「次は、トロント大学のジェフリー・ヒントン教授やな。よろしくお願いします」
これは明らかに報われる瞬間やったな。今や彼は基本的にテクノロジー界のセレブリティやで。そしてカナダにとっては、国の瞬間でもあるんやな。
他のどの国よりもAI研究者を抱えとって、今や彼らが何をできるかを見極めようとしとるんや。会社を始めて、技術を前進させることでな。
カナダ中を旅して、カナダのAI技術の最高峰を見て回り、この技術がどれだけ進歩したか、そしてまだどれだけ進歩する余地があるかを感じ取ろうと思うんや。
ここは、現代の生活と進行中のAI革命の中心的な緊張関係をまさに表してる街やな。モントリオールや。
美しさと昔ながらの魅力に満ちた場所で、ゆっくりと通りを歩き、しばらく落ち着いて、深い思索にふけるように誘ってくるんやな。
同時に、世界有数のAI研究センターの一つでもあるんや。学生が世界中からここに集まって、機械学習を深く学び、ジェフ・ヒントンのアイデアを受け継いで、我々が日常的に使う製品に変えようとしとるんやな。
彼らがどれだけ成功しとるかを見るなら、あんたのポケットを見るだけでええんや。
これらは全部、ハードコアなコンピューターサイエンスから始まったんやけど、この5年間でAIは我々の日常生活に侵入してきたんやな。
あんたのスマートフォンにはAIを利用したアプリがたくさん入っとるで。Google翻訳みたいなもんを使えば、フランス語で書かれた雑誌にスマホを向けるだけで、現地の人みたいに読めるんやで。
技術者たちは何十年もの間、こんな風にテキストを翻訳するようにコンピューターを作ろうとしてきたんやけど、ジェフのニューラルネットがようやくそれを可能にしたんやな。ありがとう、ジェフ。
そして、あんたのスマートフォンだけやないで。ニューラルネットワークは公道に進出しつつあるんやな。
「よっしゃ、行くで」
私と友人のステファン、モントリオールのテスラファンクラブの会長やな。
「テスラに乗り始めて4年半くらいになるんや」
「みんなに乗せてくれって頼まれるんか?」
「そうや、いつもな」
「すごいな」
それはおそらく、彼の派手なオートパイロットのせいやろうな。テスラの半自動運転システムで、道路状況が適切な時に作動するんやな。
「これやな。オートパイロットがオンになったで。自分で運転しとるんや。注意は払わなあかんけど、運転はせんでええんやな」
「すごいな」
自動運転車にはカメラやセンサー、レーダーがたくさん詰まっとるんや。コンピュータービジョンのニューラルネットと組み合わせることで、この技術が車に周りの世界の様子を把握させとるんやな。
この技術にはまだまだ改良の余地があるけど、このテスラは周りのすべての車を監視して、車線変更したり、自分で駐車したりできるんや。ありがとう、ジェフ。
「未来に生きとるみたいやな」
「そうやな。一度試すと、もうなしでは済まされへんわ。こんな風にリラックスして運転できるからな」
「おっと、あそこに一時停止の標識があるな。だからまだ注意を払わなあかんのやな」
ヒントンの遺産の大きな部分は、世界中のAIの例を超えたところにあるんやな。彼はまた、ニューラルネットの福音を広める弟子たちの軍団を生み出したんや。
ヨシュア・ベンジオはモントリオール大学の教授で、ほとんど意味がないと思われていた時期にヒントンのアイデアに取り組んだ研究者の一人やな。
長年にわたって、彼はヒントンと心を通わせ、一緒に現代AIの背後にある多くの重要な概念を生み出してきたんや。
「80年代、90年代、2000年代とこの研究をしてきて、それがコンピューターサイエンスや研究から、突然我々の生活のあらゆる場所に見られるようになったんやな。この5年間に起こったことに驚いとるんか?」
「産業製品が出てくるスピードと、その進歩は完全に予想外やったな。今でも、これからどこに向かうのか予測するのは難しいんや。スローダウンするんか、それとも指数関数的な増加が続くんか...」
ヨシュアのおかげで、モントリオールには一流のAI大学院生がたくさんおるんやな。これがまた、グーグルやフェイスブックのような大手テック企業を、その潤沢な小切手帳と一緒にこの街に呼び寄せとるんやで。
「AIができる人なら20万から30万ドルくらい稼げるみたいやな。学生が卒業してこんなに稼げるのはクレイジーやと思うんやけど」
「100万ドルってのはかなり一般的な給料になってきとるな」
「国から信じられないくらいの金額を提示されて、研究所を設立してくれって言われたことはあるか?」
「国からはないけど、企業からはあったな」
でも、ヨシュアは大手企業の魅力的なオファーを断ってきたんや。彼は学術界にとどまることを選んだんやな。これは彼のAIに対する哲学的なアプローチにはぴったりやな。
「イーロン・マスクやスティーブン・ホーキングみたいな人たちが、この技術をすごく暗い光の中で描いとるのを聞いたことあるやろ。暴走して勝手なことをし始めるかもしれんって。そういうのを聞いたらどう感じるんや?」
「技術が暴走することは心配してへんな。ターミネーターのシナリオはあんまり信憑性がないと思うんや。また、我々と同じくらい賢い機械を作れるようになったら、その機械は我々の価値観や道徳体系を理解するくらい賢いはずやと思うんや。だから我々にとってええように行動するはずやな」
「でも本当に心配なのは、AIの悪用や。人々の心に影響を与えるために使われることやな。政治広告とかでもう起こっとるんや」
「そうやな。フェイスブックの件とかもあったしな」
「だからこれには注意せなあかんと思うんや。道徳的に間違ってる、倫理的に間違ってるところでのAIの使用は規制しようとすべきやな。ただ禁止して違法にすればええと思うんや」
ヨシュアがこういう懸念を持っとるのは心強いけど、大学から少し離れたところに行くと、現実は...まあ、現実の残りの部分はもっとややこしくなるんやな。
この小さな部屋は、リバードというスタートアップの本拠地や。ヨシュアの元学生たちが設立して、あんたの声をクローンできるアプリを作ったんやで。
「この新しい声をコピーするアルゴリズムについて話しとるんか?これはすごいことやな。今や我々に何でも言わせられるんや。本当に何でもな」
創業者の一人がこの男や。メキシコからの移住者のホセやな。彼がクローンの技術を教えてくれたで。
「数分間、自分の声を録音する必要があるんやな。何千もの文字が素人作家の画面を踊るように」
「食べ始めるとき、何かがおかしいんや」
「政治はやめて洗濯に専念した方がええで」
「どこからそんなのが出てきたんかわからんわ」
「はい、デジタル音声を作成します」
「デジタル音声の作成には少なくとも1分かかるんや」
「1分か。すごいな」
「そうやな。以前は誰かの人工音声を作るのに、少なくとも8時間は録音せなあかんかったんやで」
「声をテストしてみるか」
「はい、じゃあ入力してみてください」
「真実の瞬間やな」
リバードのAIが魔法をかけた後、入力した言葉を私のデジタル音声で再生できるんや。そして驚くべきことに、私が実際には言わなかった言葉でも再生できるんやな。
「人工知能技術は非常に速く進歩してるみたいやな。怖がるべきやろうか?」
「確かに自分の声が聞こえるな。これは...これはほんまに面白いわ。適当に言葉を選んだけど、言ってない言葉もあるのに、ほぼ完璧に任意の言葉を選んで作り出せとるんやな」
「ハローワールドは今まで見た中で最高の番組やで」
「この技術は素晴らしそうやけど、あらゆる種類のトリックに使えそうやな」
ホテルに戻って、リバードの技術をもう少しテストしてみたんや。この技術が悪用される明らかな方法がいくつか見えてきたわ。
これは偽のドナルド・トランプの声やな。
「アメリカは、北朝鮮と取引をしているあらゆる国との貿易を全面的に停止することを、他の選択肢に加えて検討しています」
それから、誰かがあんたの声を乗っ取って、あんたの個人生活で混乱を引き起こすのを想像できるやろ。
本当にコンピューターの声をテストするために、大切な母さんに電話をかけてみることにしたんや。
「もしもし、ママ」
「はい」
「今日は何してるの?」
「えっと、土曜日やけど、今朝は停電があって、家でぶらぶらしとるところやわ」
「仕事を終わらせて、男の子たちが帰ってくるのを待っとるところやな」
「わかった。風邪をひきそうやわ」
「えっ、気分悪いの?」
「からかっとったんや。コンピューターと話してたんやで」
「あなたと話してる気がしたわ」
「すごいやろ?」
「怖いことなんか、それとも良いことなんか?」
「本当に重要なことやったら怖いかもしれんけど、でも今は...」
「あなたの声に聞こえるわ。本当にあなたなの?」
「そうや、私の声やな」
カナダの本当の人工知能の変わり者たちは、ここエドモントンに住んでるんや。
ここは大きいけど、とても寒くて、とても平らな街で、ほぼ中央のど真ん中にあるんやな。
冬の厳しい時期を乗り越えるのを助けるために、巨大なバターの貯蔵庫があるような場所やで。
カナダ人は、こういう条件が人々の中に面白い特徴を引き出すという最高の解釈をしたがるんやな。誰に聞いてもそう言うで。例えばエドモントン観光センターのこの男とかな。
「エドモントンは、カナダの主要都市のリストに自動的に載るような街やないんやな。規模や注目度の面でも。でも、アルバータ州全体に見られる西部の独立心と、良心と思慮深さが組み合わさった、すごくええ特質を常に持っとるんやな」
アルバータ大学では、世界でも最も突飛なAI研究が行われとるんや。会いに行ったのは、大学独自のAIの教父、リッチ・サットンやな。
リッチはAIの革命的思想家の一人と考えられとるんや。
「あんた、カナダ人やないやろ?」
「カナダ人やで」
「でも生まれはちゃうんやろ?」
「そうや、アメリカで生まれたんやけど、今はただのカナダ人やな」
「何がカナダに連れてきたんや?」
「政治やな。アメリカの難しい時期から逃げ出したかったんや。2003年に来たんやけど、そん時アメリカは他の国に侵攻しとって、それが気に入らんかったんやな」
サットンは80年代半ばにAIの分野に入ったんや。ジェフ・ヒントンやヨシュア・ベンジオと同じく、ニューラルネットワークを強く信じとったんやけど、サットンはこの技術をさらに進める違うアイデアを持っとったんやな。
ヒントンの方法みたいに、大量のデータをニューラルネットワークに与えて何をすべきか教えるんじゃなくて、サットンは経験からもっと自然に学習させたいと考えとったんや。強化学習っていうアプローチやな。
「強化学習は、動物や人間がやることと同じなんや。いくつかのことを試して、うまくいったことを続けて、うまくいかなかったことはやめるんやな」
「コンピューターにどう教えるんや?」
「必要なのはアイデアだけやな。コンピューターには何が良くて何が悪いかを感じ取る能力が必要なんや。だから特別な信号を与えるんやな。報酬って呼ばれるもんやけど。報酬が高ければ良いってことで、報酬が低ければ悪いってことやな」
強化学習の動きを見るために、マルロスっていう勤勉なブラジル人の若者を見つけたんや。彼はAIを作って、自分の代わりにビデオゲームをプレイさせとるんやな。
彼のアルゴリズムは何千回もゲームをプレイして、経験から少しずつ上手くなっていくんや。
「このゲームの目的は、黄色い丸がプレイヤーで、できるだけ多くのポーションを集めながら、ハーピーを避けることなんや」
「これがAIが初めてプレイしてる様子やな。初めてやから、ただぶつかりまくっとるだけやな」
「ポイントを取ると嬉しくて、死んだら悪いってことやな」
「そうや。そして、ポーションを集めてハーピーを避けるのが目的だってことを少しずつ理解し始めるんやな」
「で、5000回プレイしたAIを見てみよう」
「こんな感じやな」
「戦略がもっと賢くなってるのがわかるな」
「50万回プレイしたらどうなるんや?」
「そうなると、人間を超える性能になるんやな」
ハイスコアを出すのが最も崇高な目的やとしても、強化学習には他にもいろんな応用があることがわかってきたんやな。
NetflixやAmazonで映画やテレビ番組をおすすめしてくるアルゴリズムの背後にもこれがあるんやで。
世界チャンピオンの囲碁プレイヤーに勝ったのも、以前はコンピューターには不可能やと思われとったことやな。
近い将来、あんたの脳波を読み取って、精神障害があるかどうかを判断することもできるかもしれんな。
でもサットンにとっては、これらは全部始まりに過ぎんのやな。
「我々は本物の知能を作ろうとしとるんや。人間の知能を再現しようとしとるんやな。人間が我々の例やからな」
彼は強化学習を、未来学者が「シンギュラリティ」と呼んでるものへの道筋やと見とるんや。我々が作ったAIが目覚めて、人間レベルの知能を超えていく瞬間やな。
「シンギュラリティの日付を予想できるか?」
「かなり広い確率分布になるんやけど、中央値は2040年やな。つまり2040年の前後に同じくらいの確率であるってことやな」
「理由はこうや。2030年までにはハードウェアが揃うやろ。そしたら、俺みたいな奴らにそのハードウェアに合わせてアルゴリズムやソフトウェアを考え出すのに10年くらいかかるやろうってことやな」
「これからの道のりはワクワクするで」
2040年が賢いロボットに会うまでの長い待ち時間に感じるなら、心配せんでええで。大学の実験棟では、人間と機械の境界線をぼやかす作業に励む学生たちがおるんやから。
「あんた人間か?」
「もちろん違うよ。でも、それが私たちのおしゃべりの邪魔になることはないよね」
その証拠に、エドモントン生まれの天才、コリー・マシューソンがおるで。
「こいつについて教えてくれ」
「ああ、これはブルーベリーやな。ブルーベリーには即興システムを搭載しとるんや。人工的な即興システムがブルーベリーで動いとるんやな」
コリーはロボットと即興コメディをやっとるんや。
「コンピューターサイエンスよりも長く即興をやっとるんや。12年もやっとるな。最先端のシステムを舞台に上げるのが一番自然な融合やと思ったんやな」
「いつか月に行けるかもしれんな。この惑星が我々の最後の場所でないとしたら、空と月が宇宙の...太陽、太陽、空、月と宇宙、太陽、太陽、空、月...」
「腹話術師みたいやな。それとも新時代のもんか」
「そう言うのはええ表現やな。面白い解釈やで」
「違うのは、俺が何を言うかわからんってことやな。ブルーベリー、俺がお前を作ったんや。お前の頭に声をダウンロードして、この人たちの前でパフォーマンスできるようにしたんやけど、俺は何を言うかわからへんし、お前が何を言うかもわからへんのや」
ブルーベリーに超現実的なカナダの即興の力を与えるために、コリーはもうお馴染みの技術を使ったんやな。ニューラルネットワークやで。
まず、ネットワークに大量の映画の台詞を与えるんや。10万2000本の映画、つまり100年分の全ての映画やな。
「それは言語を学ぶためやな。誰かが誰かに対してどう反応するかを見るんやな」
「そのとおりや」
「言語モデルみたいなもんを作るんやな」
次に、強化学習を使ってネットワークを訓練するんや。筋が通ってる時は報酬を与えて、めちゃくちゃなことを言うときは罰を与えるんやな。
この子供向けテレビ番組の志願者をテストする時が来たんや。
「よし、即興を始めるで」
「キャンパーのみんな、本物の野球の試合の準備をするで。グローブを取って、バットを取って、外に出るんや。特にお前、フランクリン」
「もちろん、もうすぐやで」
「はい、なんで試合の準備ができてへんのや?」
「もう良い知らせはないんや。俺がお前の彼氏やったらな」
「よし、フランクリン。俺がお前のことをどう思ってるかは知っとるやろ。でも今は試合に集中せなあかんのや」
「ここで止めへんかったら、お前が行ったときに何が起こるか見ることになるで」
「何をしたんや?」
「そうや、わかっとるで。隠すものは何もないって教えたるわ。これが俺のすべてやで」
「ここで終わりや。ええ出来やったな」
「これが動く仕組みやな。明らかに変な反応もあるけど、進めていくとほんまに完璧に当てはまるところもあるんやな。そして、これが全部やってことを考えると、めちゃくちゃ面白いんやな」
ブルーベリーはまだセカンドシティのオーディションに合格する準備はできてへんかもしれんけど、コリーにはもっと高い目的があるんやな。AIを親しみやすいものにすることやで。
「社会にはAIへの恐れがあるんやな。だから我々はこのAIを人間らしくしとるんや。一段下げて、『このテクノロジーを怖がらんでええで。見てや、なんてかわいいんやろ。なんて素朴なんやろ』って言っとるんやな」
「せやな、せやな。またやってくれたな、ブルーベリー」
「でも、それには裏側もあるんやないか?かわいくして、人々に受け入れさせて...そしたら目が覚めたら...つまり、俺の時代には起こらへんと思うんやけど」
シンギュラリティは近いかもしれへんし、そうでないかもしれへん。でも、この奇妙に美しい場所の住民たちがテクノロジーを押し進め続ければ、いつか驚くほど人間らしいものを作り出すかもしれへんな。
リッチ・サットンにとっては、そこに到達できるかどうかの問題やなくて、機械化された兄弟たちを受け入れられるかどうかの問題なんや。
「我々の社会は挑戦を受けることになるやろうな。黒人は人間か、女性は人間かって問題があったのと同じように、いつかロボットについても同じことをすることになるんやな。財産を所有する権利はあるのか、収入を得る権利はあるのか、それとも誰かに所有されなあかんのか」
「でもロボットは明らかに人間やないよな?」
最後の目的地として、トロントに戻ってきたんや。280万人の人々、とても高い塔、そしてもちろん教父本人がおる街やな。
「システムの中には、脳細胞に少し似た小さなプロセスがたくさんあるんや。少し脳細胞みたいに働くんやな」
彼は輸入品かもしれんけど、ジェフ・ヒントンはトロントのために本当に素晴らしいことをしたんやな。この街をAIのメッカに変えたんや。
こういうAIの会議がほぼ毎日開かれとるような場所にな。
「カナダ人がこれら全部を発明してくれたことに、我々は非常に感謝しとるんや。今や我々のビジネス全体でこれを使っとるからな」
「カナダに借りがあるって記録に残したな」
「グーグルがカナダに借りがあるのは間違いないな。そう言うたのは失敗やった」
テック業界にはAIを崇拝する人がたくさんおるんやけど、イーロン・マスクやスティーブン・ホーキングみたいに、AIが我々の終わりをもたらすかもしれんって言う有名人もおるんやな。
そういう反ウトピア的なことを適切に考えるために、トロントで一番オタクっぽいバーに来たんや。
「やあ、ジョージ」
ジョージ・ドボルスキーっていう男と、この鉄の容器の中に入ったんやな。彼はGizmodoのライターで、AIの哲学者でもあるんや。
「我々は終末論的なバーにおるわけやけど、AIについての反対意見は何なんや?みんなが心配してる最悪のシナリオは何なんや?」
「残念ながら、悪くなる可能性はたくさんあるんやな。これがAIをそんなに怖いものにしとる理由やと思うで。悪くなる方法がいろいろあるからな」
「事故かもしれへんな。我々が考え抜かんかっただけで、すごく強力なコンピューターに指示を与えたんや。はっきり説明したつもりやった。具体的な目標を与えたつもりやった。でも全然違う道を進んでしもて、実際に大きな被害を引き起こしてしもたんやな」
「古いペーパークリップの例を聞いたことあるやろ?ペーパークリップメーカーがおって、『たくさんのペーパークリップが必要や』って言うんや。でも人工知能はすごく広範囲に影響を与えられて、すごくパワフルやから、地球上のすべての物質と分子をペーパークリップに変え始めるんやな。気づいたら、宇宙全体がペーパークリップになってしもとるんや」
「クレイジーなシナリオやけど、例として分かりやすいな。危険性を軽視するのはほんま危ないと思うで。今からでも警鐘を鳴らし始めるのは早すぎへんと思うんや」
クリッピーに変えられるのは恐ろしいことやけど、心配せんでええで。AIが次々と仕事を奪っていくにつれて、何年もかけてゆっくりとその苦しみに慣れていくことになるやろうからな。
最初に行くのは、いつも不運な工場労働者たちやろうな。これで、スザンヌ・ギルダートに話を持っていけるわ。彼女は未来のAI支配者候補で、ロボット工学のスタートアップ、Kindred AIの創業者やな。
「これらについて教えてくれ」
「これらは研究用のプロトタイプやな。Kindredで最初に作ったロボットの一部やね。小さなロボットを扱うことが多いんや。子供が成長して、いろんなものを壊すのを想像してみ。で、その子供が6ヶ月児の脳を持ったまま6フィートの身長になったとしたら、ものすごく危険やろ?」
「このロボットに何回ビンタされたことある?」
「ロボットに顔を殴られたことは何回かあるな」
スザンヌはええ人そうに見えるな。エキゾチックなデジタルアートを作ったり、猫が大好きで、オフィス用に猫型ロボットの群れを作ったりしとるんや。
「これはピンクフットって呼ばれとると思うんやけど、猫の構造を緩く参考にした四足歩行ロボットやな。まだあんまり忠実な再現にはなってへんけどな」
「子供の頃から物を作ってたんやろ?」
「そうやな。小さい頃から電子工学にめちゃくちゃ興味があったんや。普通の女の子がビーズのトレイとか見てるところを、私は抵抗器やコンデンサーなんかの小さな部品のトレイを見てたんやけど、同じような反応をしてたんやな」
でも趣味の電子工作や可愛い猫型ロボットに騙されたらあかんで。スザンヌは鋭いビジネスウーマンで、Kindredは最近、最初の商業ベンチャーに乗り出したんやな。
「ここで起こっとるのは、ロボットの集団が学習しとるんや。常に動いてて、物を拾い上げたりしとる。これらは一日中、夜通し動いとるんやで」
ニューラルネットワークを使って、これらのアームは人間にとっては簡単やけどロボットにとっては難しいことができるんや。形の違う物を拾って置くことやな。
ほとんどの工場では、まだ人間がそういう作業をしとるんや。たくさんの人間がな。
「今や皆がeコマースで買い物してるやろ。何千何万種類もの物があって、形も質感も重さも違う。それをどうやって拾うんやろ?今のところは人間やな。倉庫で何百万人もの人間が、ただ物を拾って別の場所に置いとるだけなんや。だから我々のロボットにそれをやらせようとしとるんやな」
「難しい部分はどこなんや?ベルトか、シャツかを見分けるのか、それともどうやって掴むかなんか?」
「そうやな、どうやって拾うかを理解するのが難しいんや。物はどんな形でも現れるからな。それを落とさずに拾って、指定の場所に置かなあかんのや。だからたくさんの訓練が必要なんやな」
その訓練の一部には、なんとロボットパイロットの人間が含まれとるんや。AIが見て学習する間、手動でアームを操作するんやな。
「人間がそこで訓練してるのを見ると、なんかゾッとせえへん?人の仕事を奪うのはよくないけど、こういう技術が労働力に入ってくるのを見ると、将来どうやって人々に給料を払うのかを考え始めるべきやと思うんや。AIは単に肉体労働の仕事を自動化するだけやのうて、医者や弁護士、会計士みたいな仕事もすぐに自動化するやろうからな。だからいろんな問題が起こると思うし、大きな混乱が起こると思うんや」
スザンヌは現実主義者やけど、楽観主義者でもあるんやな。彼女の未来のビジョンでは、ロボットは人類の無意識の競争相手やのうて、我々と同じ完全な市民になるんやと。
「あんたが話してた狂ったアイデアの1つは、工場で働くロボットが給料をもらって、自分を動かし続けるためにリチウムイオン電池を買いに行くっていうのやったな。なんでそんなことが必要なんやろ?」
「物理的な体を持っとるから、我々と同じように物理的なニーズがたくさんあるんやな。修理屋に行ってモーターを見てもらう必要があるかもしれへんし、そのために誰かにお金を払わなあかんやろ。我々と同じように経済に貢献することになると思うんや。我々みたいな脳を持っとったら、新しいものを探検したくなったり、何かを学びたくなったり、たぶん休みたくなったりするやろうな。新しい情報を整理する時間が必要やからな」
「頭の中で想像しようとしとるんやけど、ロボット労働者が仕事から帰ってきて、ソファーに座ってテレビを見るのかな?」
「なんでそうせえへんのやろな。たぶん他の人と同じように猫の動画でも見るんやないか」
スザンヌが我々と一緒に笑っとるのか、我々を笑っとるのか判断するのは難しいときもあるけど、彼女だけが未来に対して慎重に楽観的なわけやないんやで。
「テクノロジーは良いことにも悪いことにも使えるっていう感覚は常にあるんやな。カナダがその一部であることで安心してる。正しい道筋をつけようとしとる点ではな。全体的に見て、研究や学習によって得られる力について責任を持って思慮深くあることは、正しい傾向やと思うんや。AIが自動的に何か反ユートピア的な結果になるとは思わへんな」
政治家たちが大規模な失業に対処し、階級間の恐ろしい不平等を防ぐための政策を考え出すって言われとるし、こいつらが人間らしくなるのにはそんなに時間がかかるから、しばらくは恐れる必要はないって言われとるんや。
でも真実は、我々は未知のものに身を委ねとるんやな。だからまあ、指を組んで祈っとこか。
「最終的には、我々がAIになると思うんや。我々が知的な機械になるんやな。物事がどうやって賢くなれるかを理解して、意図的にそれを作り出せるようになるんや。新しい世代、新しい種類の人間を作り出すと考えてもええかもしれへん。人類は進化し続けとるんやから、強化された人間や、設計された人間が人類の次のステップになるのは当然やないか」
「未来を予測するのはほんまに難しいんや。予想外のことがいろいろ起こると思うけど、1つだけ予測できることがある。この技術は全てを変えるってことやな」
「さようなら」
「さようなら」
「さようなら」
「さようなら」
「電源を切ったら、それで終わりやで。二度と会えへんのやな」
「構わへんよ」

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