日本製鉄:なぜバイデンは150億ドルの日本による米国製鉄所買収を阻止したのか? | DWニュース
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バイデン米大統領は、日本製鉄によるUSスチールの150億ドルの買収を阻止しました。バイデン大統領は、アメリカの産業を保護し、重要な国家資産が外国の支配下に入ることを防ぐために必要だと述べました。バイデン大統領と次期大統領のドナルド・トランプの両者は、米国の雇用を守るためにこの買収に反対しています。日本製鉄はこの決定に対して米国の裁判所で異議を申し立てる方針です。ホワイトハウスは、これは日本に対する軽視ではなく、米国内での鉄鋼生産を維持することを目的としていると述べています。
この件について、ハドソン研究所の日本部門副所長で米日関係を専門とするウィリアム・チュー氏にお話を伺います。チュー様、本日はお時間をいただきありがとうございます。バイデン大統領による今回の決定の背景には何があるとお考えでしょうか?
私は、バイデン大統領のこの決定は実はあまり意味をなさないと考えています。しかし、彼の動機は主に、史上最も組合寄りの大統領としての政治的遺産を残したいという自身の願望に突き動かされているのだと思います。残念ながら、USW(全米鉄鋼労働組合)の組合員の声ではなく、組合幹部の意見だけを聞くことで、実際には11,000人の鉄鋼労働者が職を失い、ペンシルベニア西部とインディアナの地域社会が打撃を受けることになるのです。
なぜ、この決定によって雇用が失われることになるのでしょうか?
USスチールはすでに、インディアナとペンシルベニア西部のこれらの施設が老朽化しており、新規投資や設備更新の余力がないと述べています。一方、日本製鉄は、これらの施設に約30億ドルの投資を約束し、最先端の製鋼技術を導入して、これらの工場を長期的により競争力のあるものにすることを約束していました。そのため、この投資を阻止することは、これらの地域の将来世代の鉄鋼労働者に打撃を与えることになるのです。
外国資本による所有がアメリカの国家安全保障にリスクをもたらすというバイデン氏の主張についてはどうお考えですか?
それは完全なナンセンスです。日本は米国にとって最も重要な同盟国であり、米国における最大の海外直接投資国です。この取引を阻止することで、将来の世代にわたって競争力のある一流の鉄鋼を作る能力をアメリカから奪うことになります。中国による欧米市場へのダンピングが深刻な懸念となっている時期に、この不公正な中国からの輸入品と競争する唯一の方法は、競争力があり効果的な鉄鋼を作ることですが、その機会を奪っているのです。
チュー様、もしバイデン大統領が二期目を迎えようとしていた場合、この取引に反対する決定をしたと思われますか?
そうだと思います。政治的な考慮は彼の心の中で決して強くなかったと思います。これは純粋に組合主導のアイデアであり、バイデン氏自身の歴史的な遺産についての考えに基づいて行われたものだと思います。2024年は彼にとって政治的な失望の年となっており、これは史上最も組合寄りの大統領としての物語を掴もうとする彼の方法だと考えます。もし純粋に政治的な問題であれば、11月の選挙後に組合は全てのレバレッジを失い、日本製鉄と合意に至っていたはずです。彼らはそうしていません。これは政治的なレバレッジの問題ではなく、純粋に組合内部の論理と、バイデン大統領自身の誤った永続的な政治的遺産への願望の問題なのです。
これは日米関係にどのような影響を与えると思われますか?
構造的に見て、太平洋地域における不確実な戦略的状況を考えると、防衛問題と経済問題の両面で緊密な協力は続くと思うので、日米関係は良好な基盤の上にあると考えています。日本政府自身は非常に不満を持っているでしょうが、今彼らが注力すべきは、次期トランプ政権と効果的に協力する方法を見つけることだと認識しており、そこにエネルギーを注いでいると思います。しかし、この取引の阻止は、長年にわたってアメリカの労働者、消費者、そして同盟関係を支持してきた日本企業の間に不必要な不安を生み出しています。私たちが共有する優先事項について緊密に協力する、より効果的な方法を見つける必要がある時期に、この不必要なストレスを生み出してしまったと思います。
ハドソン研究所のウィリアム・チュー様、本日は貴重なお時間とご見解をありがとうございました。
ありがとうございました。