
4カ月で技術士筆記試験(衛生工学)を通過した話(第9回/全12回)
氷河期世代。なんの取り柄もないので手に職をつけようと重機オペレーターになった男が数年後、なぜか技術士二次試験の筆記試験を通過したノウハウを公開します。再現論文の販売、論文添削も受けつけています。
公式がつかう単語と自社のみで通じる方言
~テクニック編~
1.公式の単語を使わなければならない
技術士二次試験で解答論文を書く以上、試験官に伝わる文章で書かなければなりません。これは試験の最重要ルールであり、合格したひとはみんな守っていることです。おそらくあなたも納得してくれると思います。
さて、このルールをさらに細かく分析した場合、あなたがいま使っている単語は公式に認められた言葉でしょうか?
専門が「廃棄物・資源循環」以外のひとにはピンとこないかもしれませんが、以下にわが社だけでつかう言葉と、環境省がつかう言葉とを列記します。
方言:福岡方式 公式:準好気性構造
方言:ガス抜き施設 公式:竪型保有水等集排水設備
方言:浸出水 公式:浸出液
方言:遮水シート 公式:遮水工、遮水層
方言:埋立地 公式:最終処分場
方言:バックホウ 公式:パワーショベル、エクスカベーター
もちろん方言といっても様々です。ひろく業界でつかわれている言葉もあれば、あなたの会社だけでしかつかわれないものもあります。試験では前者は問題ありませんが、後者は致命傷になりかねません。
2.わが社の常識、世間の非常識
その言葉はあなたが間違っておぼえた言葉なのか、
あなたの会社でだけでつかっている言葉なのか、
あなたが属する地方だけつかっている言葉なのか、
これを自覚するのは困難で、ひじょうに厄介です。
大学の先生や研究者がつかっているからといって安心はできません。あなたが懇意にする教授だけが好んでつかう言葉で、対立する学派ではつかわないかもしれません。すくなくても採点官は東京、すくなくとも関東圏の技術士でしょうから関東で伝わらない言葉をつかうわけにはいきません。
きわめて個人的なことを書くと、実はわが社は業界では進んだ企業です。そのためほかの会社がやらない高度な技術も持ち、独自の研究をしています。それがゆえに日本中でどの会社もやっていない技術を先鋭化させてしまっている部分があります。日本でわが社だけがやっていることを解答論文に書いて、加点されるでしょうか? おそらくダメです。それどころか落第への片道切符になりかねません。
3.悩みに悩んだ私は自分の業務について書くことをやめた
私は専門分野について大学で正式に習ったわけではありません。そのため方言と公式の違いを自覚できませんでした。さらによくないことに、技術士試験にも独学で挑んでいる私には、相談できる相手がいませんでした。どれだけ気をつけても、なにかの拍子で方言がでるかもしれません。
そして私がだした結論は、専門分野である最終処分場について書くことを諦めることでした。普段は処分場で働いているのに、論文試験では畑違いの中間処理やリサイクルについて書くことにしたのです。これらに関する知識は最近になって試験対策のために技術ノートにまとめたものですから、単語も知識も公式に認められたものです。わが社だけのこだわりや方言がはいる心配はありません。
ただしそれでは技術士会が求める「技術分野に関する深い知識とその応用能力」を解答論文に盛りこむことはできなくなります。でもそれでいいんです。(第2回)で触れた通り、深い内容を書くにはそもそも1800文字では足りないのですから。
このとき私は独学ゆえの視野狭窄に陥っていたのかもしれません。それは否定できません。今振り返ってもどちらが正しかったのかわかりません。しかし私は無事にA判定をもらうことができました。結局はどっちでもよかったのです。