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月島

久しぶりに月島に下車する。
嬉しい。懐かしい。
バンド・アジカン・カンフージェネレーションの「ワールド・ワールド・ワールド」を聴いている。

教え子だったみどりくん(仮名)がよく口すさんでいた曲だ。双子の兄の方で、学習障害をもっていた。ジーちゃん子だったが、途中でジーちゃんが亡くなった。形見にマフラーとオカリナを貰ったといっていた。

出会いは、何年も前に、東京・月島の「家庭教師トライ」に面接に行ったとき。

「塾って、勉強の出来る子だけのものなのでしょうか?」

日頃、素朴に感じている疑問だった。わたしは、そうでない子どもに必要とされたい。そして採用になり、担当したのがみどりくんだった。第一印象は、ジャガイモのような頭で体格がよい。細い目でニッと、笑う。一見、どこも支障はないのだが、国語の時間にうすいヘビのようなくせ字を書きなぐる癖は、なおらなかった。 

時々、トイレにこもり、長時間トイレットペーパーで遊んだり、独り言をつぶやいたり。 
あまりうるさい小言をいわなかったからだろうか? 授業は休まずに月島に毎週やってきてくれた。

そうそう、昼休み、外で地域猫にひっかかれ、傷だらけになってわたしが帰ってきたときのこと。

「その傷、どうしたの?」

みどりくんだけが気がついて声をかけてくれた。

二年ぐらい担当していたと思うが、その後担当から外れた。塾長がかわったのと、みどりくんも中学生になる機会に男の先生に変えたほうがいいという、アドバイスがあったと後から聞かされた。中学生以降のみどりくんのことは全くわからない。

ちなみにみどりくんの双子の弟は、農業に興味があった。それから、ロボットを作りたいと話してくれた。右脳で生きている兄とは真逆なタイプだったな。

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