小学生編
保育園での挑戦は失敗だった。
私はその失敗を取り返すべく、小学校では市場調査をすることにした。
「ねえ、光GENJIの中で誰が好き??」
光GENJIを好きでいればみんなと仲良くなれる、と信じ込んでいたので当たり前のように光GENJIの話をした。
するとまさかのクラスで1番目立つ女の子がSMAPが好きだと言うではないか。
オーマイガー。
そうか。
もう光GENJIではないのか。
当時の本当の私は、家族の影響でフリッパーズ・ギターが好きだった。
でも小沢が〜とか、小山田が〜とか話せる小2は周りにいなかったので、私はSMAPオタに偽装することにした。
本当は森くんが可愛いな、と思ったけれど大沢くんで失敗しているので、自分の担当は言わないことにした。
愛ラブSMAP!を必死に見て感想を言い合い、歌番組もかかさない。
でもどうしても熱量が足りない。
このままだとみんなとおんなじにはなれない、と焦った私はもっとSMAPを好きになりたくて次のステップに踏み出した。
雑誌の文通コーナーに「SMAPの話できる人大大大募集♡恋の話もしちゃったり?!たくさんお待ちしてまあす♡」とまさかの実名住所付きでぶっこんだ。
たくさん届く手紙の中から、顔写真を入れてくれた女の子2人に返事を書いた。
思い出しても震えが止まらない個人情報のバーゲンセール。
他の皆さんには泣き顔のうさぎの絵を書いてハガキを送った。吹き出しには「ごめんなさい」って書いた。
他のステップもあった。
父が経営していた会社と飲食店に有線があったので、隙あらばSMAPをリクエストしていた。
1度の電話で2曲までリクエスト出来たので、1曲はSMAP、1曲は従業員さんにリクエストを聞いて回った。
どう考えても仕事の邪魔をする社長の娘。
大変申し訳なかった。
文通は順調だった。何年か続いた。
Mステの衣装の話で毎回盛り上がった。
学校は行ったり行かなかったりだったこともあって、気が付けば、自分の好きなタイミングで好きを語れる文通がラクで楽しすぎて、交友関係はそちらがメインになりつつあった。
そしてSMAP好きなんて言っていたクラスメイトはいつしか木曜日の怪談に夢中になっていた。
私は高橋直樹くんがかわいいなって思ったけれど、みんなが滝沢くんにファンレターを書くというので一緒にレターセットを買いに行って私も滝沢くんにファンレターを書いた。
順調にみんなとおんなじに向かっていた。
そう言えばフリッパーズ・ギターはあっという間に解散し、ソロになってからの小沢健二は私の王子様で、世界の何よりも好きだった。
あれ程の人気者なので、十分みんなとおんなじじゃないかと思うかもしれないが、田舎の小学生なのでクラスに子猫ちゃんなどいなかった。
rockin’onとJAPANをどちらも毎月購入しては、ラジオを聴いて好きな音楽に出会うことが喜びだった。でもみんなと仲良くしたいから頑張ってジャニーズを追いまくる。あれだけいるのだからいつか本当に好きなアイドルに出会えるに違いない、と希望を抱いていざ次の春へ。
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