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時折最高:044 Sparks - Tryouts For The Human Race (1979)

Sparksは偏愛しているバンドのひとつなので、一曲を選ぶというのは極めて困難なのですが、この時折最高シリーズでは「ある時には最高だと感じた」ならオッケーな緩い基準ですので、本日はこの曲です。

おそらくポップミュージック界広しといえども、まあ題材になったことはないだろう内容の曲です。

”tryouts”とは野球の入団試験だったり、芸能オーディションだったりの
選抜試験です。では”human race”になるためのオーディションとは?

そうです。
この曲の歌詞は精子のお話なのです。

One of us might make it through
The rest will disappear like dew

だれか一人が成し遂げるやも
残りは露がごとく消え去る

Tryouts for the human race, from Burlington to Bonn
Ah, we are a quarter billion strong
Tryouts for the human race, from twilight time 'til dawn
We just want to be someone

人類選抜オーディション バーリントンからボンまで
ああ、我ら二億五千万の軍勢
人類選抜オーディション 黄昏から夜明けまで
我らは人間になりたいだけ

この巫山戯ているような深淵なような歌詞がディスコビートに乗せて歌われます。歌声は特に思い入れを感じられない、ある意味非人間的な響き。

We're the future and the past
We're the only way you're gonna last
We're just pawns in a funny game
Tiny actors in the oldest play
It's an angry sea we face
Just to get the chance to join the race

我らは未来にして過去
我らが汝らの唯一の存続方法
我らはおかしな競技でただの歩兵だ
最古の劇のちっぽけな役者
我らが向き合うは荒れ狂う海
ただレース参加の機会を手にするために

1979年のアルバム「No.1 in Heaven」はGiorgio Moroderをプロデューサーに迎え、ディスコ要素を取り入れたアルバムです。ですがそこはSparks、ディスコっぽいのにディスコじゃない音楽を生み出しました。

まずはドラムスがしっかり生演奏で、カッチリしたリズムをキープしながらも細かいキメが散りばめられた、実にカッコよく心地よいサウンドを聴かせてくれます。

コーラスはどこかクールで無機質な印象。
そしてメインボーカルもどこか突き放した雰囲気。
シンセの低音部がドナ・サマーなどを思わせる、ジョルジオ・モルダー風なのかな?、という位です。

「Kimono My House」あたりのエキセントリックなパワーポップを先に聴いていると、このシンセ+ディスコビートは同じバンドとは思えないでしょう。けれどこのバンドは「同じ内容のアルバムは作らない」ことを目指していますから。以降もアルバムごとに異なる試みを続け、少しずつ内容は関連しながらも常に異なる内容の新作をリリースし続けています。

そういう意味では、どのアルバムにも「今日はこのアルバムの気分」「今日の自分にはこれが最高」という曲が含まれていると言えます。

よって本日はこの曲の気分、体調だった、ということです。

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