時折最高:018 Rolnd Kirk ~ I Say A Little Prayer (from "Supershow" 1969)
Roland Kirkは盲目のマルチリード奏者である。2歳の時に医療事故で失明した。1955年から亡くなる1977年まで音楽活動を続けた。
Saxを独自に改良したストリッチ、マンツェロと名付けたホーンを含め、3本同時に演奏する他、ノーズフルート、ホイッスル、ゴング、電子楽器などを併せて使った。フルート演奏と声を出すのを混合する奏法は、ジェスロ・タルのイアン・アンダーソンも取り入れていた。
一人で複数の管楽器を鳴らし、他にもさまざまな楽器を併用したことから「一人オーケストラ」との異名もある。
盲目故か、彼の演奏する姿が一般にはかなり奇矯に映るだろうことにはあまり配慮しなかったのかも知れない。見た目で色物扱いされることが多かったそうだが、日夜あらゆる音楽を聴き、研究し続ける、真摯な音楽家だったと彼を知る人々は語っている。
管楽器を吹きながら鼻から息を吸う循環奏法の名人でもあり、途切れ無しに延々とメロディーを奏で続けることが出来た。公式録音では、20分に渡って循環奏法で吹き続ける、"Saxphone Concerto"が残されているが、実際はもっとずっと長く演奏し続けることが出来たという。
こうした情報を何も知らなくとも、1969年のフィルムに残された演奏シーンは圧倒的だ。音楽への愛情、生命の謳歌がひたすらに伝わってくる熱い演奏である。曲はディオンヌ・ワーウィックやアリーサ・フランクリンの歌唱でも有名な”I Say A Little Prayer(小さな願い)”。バート・バカラックの作曲である。ローランド・カークによる演奏は、彼女らの名唱を越える、何かしら途轍もない肯定的パワーに満ちあふれているように私には感じられる。
ところでこのSupershow("The Last Great Jam of the 60's!")というライブ、レッド・ツェッペリンやコロシアムも収録されており、バディ・ガイ、MJQ、エリック・クラプトンとなんとも判断に悩む不思議な参加者となっている。ここにRoland Kirkも参加しており、おかげでこの貴重な映像が残った。
日本でもLaser Discにて発売されていた映像である。
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