時折最高:016 Slapp Happy - Moon Lovers (1998)
バンドの歴史については次節に譲り、この「Moon Lovers」という曲のことだけをまず見てみたい。
歌詞は抽象的で、意味が分かるような分からないような・・・。
断片的だが何故か印象は強烈なフレーズ。
耳に残る「Rescue、rescure us」の歌声。
乱暴なような絶妙なようなうねるギターサウンド。
散りばめられた断片的なイメージ。
月、雪、静寂、夜、天使、星々、夜明け、優しさ、恐れ、石、氷結・・・
理解できないが妙に気に掛かる。
流し聴きすればポップソング。
ギターの音色に注目するとロック?
歌詞に注目すると象徴派?
一緒くたにすると、唯一無二の情景。
Slapp Happyについて
Slapp Happyは1972年にドイツで結成されたポップバンドです。
メンバーは前衛音楽家のイギリス人アンソニー・ムーア(keyboard)、彼の友人でアメリカ人のピーター・ブレグヴァド(guitar)、そして後のムーア夫人となるダグマー・クラウゼ(vocal)の3人でした。
アンソニー・ムーアは既にポリドールと契約して、前衛音楽のアルバムを2枚発表していました。けれど3枚目の音源が出来た時、レコード会社から発売を拒否されます。もっと売れるものを、と。
ちなみに当時拒否された音源というのも1998年にCD化されました。
タイトル通り、木の棒をばらまいたりまとめたりという音を編集した、リズミックですが抽象的な音楽(笑)。1972年にこの音源を渡されたポリドールの人の気持ちになってみましょう(笑)。以下抜粋音源です。
さて、レコード会社からコマーシャルなものを求められたアンソニー・ムーアは、ポップソングなんて簡単だ!、と友人とガールフレンドを誘ってアルバムを制作。それが1972年に発表された「Sort Of」でした。
20分で書き上げたという「Just A Conversation」ですが・・・。
親しみやすいメロディの・・・ヘンな曲ですよね?(笑)
ちなみにこのアルバムでバックバンドを務めたのは、ドイツのファウストというバンドのメンバーでした。
1st「Sort Of」はあまり売れませんでした。バンドはポップソング作りはなかなか難しい面もあると認め、もう少し洗練された2nd「Casablanca Moon」を制作しますが、ポリドールに発売を拒否されます。
彼らはドイツからイギリスに渡り、Virginレーベルとの契約に漕ぎ着けます。けれど未発表2ndの音源は「ラジオで放送するにはお粗末」と言われて再レコーディングすることに・・・。そして出来上がったのが、今でも大傑作とされている「Slapp Happy」(1974)というアルバムでした。
ちなみに、未発売に終わったドイツ録音の2ndアルバムは、1980年に初めてレコード化されました。
その後Hnery Cowと共同作業に入って2枚のアルバムに参加します。
ボーカルのダグマーはその後もHenry CowのメンバーとArt Bearsを結成したり、ソロで活動したりと、Slapp Happyとしての活動はなくなってしまいました。
アンソニーもピーターも、それぞれ10枚以上のソロアルバムを出すなど、メンバーはそれぞれに活動を続けていました。
その後も、たまに3人で制作に携わることはあったのですが、1998年、なんと24年振りのニューアルバムが出ました。
その2年後にはなんと初来日! ライブアルバムも残しています。
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