福丸小糸は実質、白ご飯【小糸×??】
こんにちは。
岡山ディヴィジョンです。
突然ですが、一つ質問をさせてください。
難しい問いだと思います。十人に訊けば十通りの回答が、百人に訊けば百通りの回答が返ってくるでしょう。あるいは簡単に答えられるはずがないと憤りを滲ませる人の姿すら、私にはありありと想像できます。
そうなのです。
私たちは小糸に対して、多くの想いを抱えすぎている。一言で語り尽くせない想いが貴方にあるのなら、私は貴方の想いを綴った文章が読みたい。めいめいに、そして声高に、小糸への想いを叫ぶ時が来ているはずだ!
さて……「私たちにとっての福丸小糸」が十人十色であるのなら、「283プロのアイドルにとっての福丸小糸」もまた、アイドルの数だけバリエーションがあるはずだ、とは思わないでしょうか。
そう。「小糸×???」には無限の可能性が眠っているのです。
本稿ではそんな、小糸という縦の糸と、283プロの面々という横の糸との混じり合いが、どのような可能性を秘めているのか、どのような化学反応を見せてくれるのだろうかということを、徹底的に考察していきます。
それではいきましょ~~~!
Ⅰ.小糸×ノクチル
(1)浅倉透(とおこい)
小糸にとって浅倉透という人物は、有り体な言葉をあえて使うのなら「カリスマ」ということになると思います。
小糸のWINGシナリオでは、「自分は幼なじみ三人の背中を追い掛けている」という認識を持っているらしいと示されていますし(福丸小糸WING編「背中みっつ」等)、イベント『天塵』においては、物事を始動させてしまう力を持った透への憧れを、ごく素直に滲ませる様子が印象的でした。
幼なじみであり、同じユニットのメンバーとして肩を並べる立場でありながら、小糸の中には幼なじみ三人への憧憬や尊敬の念が強く根付いています。小糸のソロ曲「わたしの主人公はわたしだから!」の歌詞にも、そうした彼女のマインドがよく現れていますね。
シナリオ『天檻』でも、プロの世界でバリバリ活躍し、学校を休むことも増えていた透に対し「自分とは違って」すごいという認識を有していることが、その言葉の端々に窺えました。
対する「透から見た小糸」についてですが……シナリオ『天塵』の中で、小糸に乱暴な言葉を投げかけたスタッフに対する彼女なりの反抗を示したシーンが、真っ先に思い出されます。
透が何を思ってこのような行為に及んだのかは、彼女の口から語られることはありません。しかし、生放送中に童謡を熱唱するという暴挙それ自体は、番組スタッフの「幼なじみの友情見せてよ」という発言を逆手にとったものであったことから、透は小糸に対し、確かな友情の存在を確信しているらしいということだけは分かります。
ノクチルにとって最初のイベントシナリオである『天塵』から、彼女らの関係は常に微妙な変化を見せ続けてきましたが、越境シナリオ『線たちの12月』では透の先輩らしい振る舞いが印象に残りましたね。
お世辞にも人付き合いが得意ではない小糸に、その殻を破ってほしいという意図からプロデューサーが提案した地域イベント(夜回り)への参加。そして、接点のなかった凛世との交流……咲耶の言葉を借りるまでもなく、ずいぶんと「担任の先生的な計らい」です。
確かに極度の引っ込み思案な彼女には必要なステップだったかもしれませんが、いきなりそれに適応できるなら内向的な性格には育っていませんよね。参加を承諾した小糸ではありましたが、凛世との交流には四苦八苦していました。
そんな彼女に対し、透は画像のように声をかけます。
イベントへの参加を辞退するというもう一つの選択肢を示し、小糸の意思を確認する場面。透らしく、さらっと、それとなく問いかけていますが、とても年長者らしい振る舞いであると分かります。
他にも、小糸が返答に窮していたところに助け船を出すような、しかしそれでいてわざとらしさを感じさせない振る舞いを透が見せていたことも、彼女なりの(あるいは彼女らしい)気遣いの在り方だったのかもしれません。その真髄は、シナリオのラストにも現れていたでしょうか。
凛世から小糸について訊ねられたときの透も印象的でしたね。幼なじみで長い時間を共有してきたはずの透が、しかし凛世に対しては「小糸のことはあまり知らないよ」という旨の発言をします。一見すると薄情な発言のようにも見えますが、「とおこいは死んだのだ」と嘆くのはちょっとストップ!『線たちの12月』という物語が「認知」というキーワードに貫かれていることを考えると、その意味はぐっと深まります。
「小糸に嫌われているのではないか」という歪んだ認知(バイアスとも言えるでしょうか?)を抱えた凛世に対し、本当は見えているところしか分からないはずだと透が相対化します。この言葉が背中を押すようなかっこうとなり、凛世と小糸は飴を交換するに至りました。
透がどのような意味を込めてこんなことを言ったのかは、勿論全てを察することは出来ませんが、シナリオ中なんらかの意思をもって振る舞っていた彼女の心情を考えるに、「小糸のことなんてさほど知らない(興味はない)」ということが言いたかったわけではないというのは明白だと思います。
思考の補助線として、「なんで?」と呟いた小糸の姿が凛世には見えていない一方、透には見えていたという図式があるでしょう。
「浅倉透×福丸小糸(とおこい)」で思い出されるのは、サポートSR【みずになりかけ】でしょうか。このコミュ、意外と(と言っては失礼ですが)味わい深い内容になっているので良ければ見返してみてください。
コミュの内容を極端にざっくり総括すると、「予感」をテーマに穏やかな日常の一コマを切り抜いたお話だったと認識しています。
イラストを見て貰えば分かりやすいですが、真っ青なコンクリートは凍った水(アイス)と重なります。夏を迎えつつある透は、波乗りのようにコンクリートへと漕ぎだして怪我をすることになりますが(正確には怪我をしたわけではないですけど)、これは彼女らがまだ夏の入り口にいたからでしょう。けれど、アイスが溶けてみずになっていくように、夏になればコンクリートだったはずの地面は水に変わって、透たちは海へと漕ぎ出していくことができる。そんな「予感」に満ちた夏が、すぐそばまで来ている……!
さて、そんな"素敵な予感を帯びる夏”を、透はどうしようとしたか?
小糸と……幼なじみと……友達と……そして、ノクチルと共有しようとしているんですよね。め~~~っちゃええやん。オススメです。
(2)樋口円香(まどこい)
小糸の努力を高く評価し、シニカルな口調の端々にも幼なじみへの愛着を覗かせる樋口円香ですが、小糸庇護ムーブや小糸かわいがりムーブがそろそろ気持ち悪い域に突入しつつあるのもまた、円香の特筆すべきポイントだと思います。
最新(2024/04/23時点)イベントシナリオ『いきどまりの自由』のサポートSSR【たすものについて】でも、以下の通りちょっと気持ちの悪い発言が円香から飛び出して、話題になっていました。
ちょっとキモいムーブを見せる円香というのはなにもここ最近に限った話ではありませんが、これは一種の臨界点といった印象です。
イベント『天塵』では、先の透の節でも触れた「小糸に辛くあたる番組スタッフ」に対して、ノクチルの中でも真っ先に、かつはっきりと怒りを表明していたのが他ならぬ円香でしたね。やはり透同様、小糸への親愛や愛着の度合いは強いことが窺えます。
他にも、透や雛菜に比べてはっきりと小糸の努力を認めようとする言動も目立ちました。小糸の頑張りを横で見ていたからこそ、「その努力は報われるべきだ」という想いが強まっていたのでしょう。円香らしい潔癖さ、あるいは円香らしい正しさだと思います。彼女のこうした想いはGRAD編に詳しいので、ご参照ください。
小糸への思いの強さが伝わってくるようですね。
このシーンがとても味わい深いのは、続く小糸の返答があるからなんですよね。円香の想像を超えて、小糸の「筋金入り」が露わになるその場面は、小糸がどんな思いと共に十六年間を歩んできたのかを想像させます。
彼女がどんな思いで勉強に打ち込み、ダンスの練習をして、歌詞を読み込んできたのか……ということを。
ここに、透や円香が小糸を守るような立ち回りを見せていることと、言動の裏にほのかに感じられるリスペクトの理由を見る気がします。
小糸って、確かに自身で思っているような凡庸な女の子ではあるのかもしれないんですけど、ナチュラルにネジが外れた強靱(狂人)なところもあって……初期のノクチルには顕著だったと思いますが、小糸も例に漏れずいびつさを抱えた人間だったんですよね。
小糸と絡む円香はなんというか……ちょっと言動がイタい(少女漫画の)イケメンみたいな感じがあります。
『天塵』のサポートSSR【遊漁】の一幕ですが、このシーンの円香には拭い去りがたい気持ち悪さを感じてしまいます。長々とやりとりを交わした末に、円香らしい淡々とした声音でこのセリフを言うもんだから、凄まじく狙ってる感が出ていて良いんですよね。
「ペナキス円香(※)」という不名誉極まりないあだ名に親しまれるサポートSR【閑話】でも、円香の小糸イジりが堪能できます。モノローグで「小糸はちゃんとしてるね」とこぼしながら小糸の口に物を詰め込む彼女は、果たして小糸の身体からこわばりを取り去りたかったのか、それとも単に面白がっていただけなのか。
※「ペナルティキスいくよ、小糸」と円香が言っていそうな絵面だったために定着したあだ名です。
小糸には甘いイメージのある円香ですが、おそらく小糸を甘やかすことは彼女を侮ることだという認識を持っているのでしょう、意識的に突き放したような言動をとることもあります。例えばこんなシーン。
このシーンの円香が塩対応なのは致し方ない面もあって、なにせ小糸が「一緒に登下校したい」というただそれだけの話を大仰に切り出してきちんと約束しようとするという、円香からすれば「好きにしたら」以外の何ものでもないお願いだったからです。とはいえ、小糸が寂しそうな表情をするとすぐに揺らいでしまうのが円香の可愛いところ。続くやりとりでは「(桜が綺麗なのは)小糸がそう言うんだから、そうなんだろうね」と微笑みをこぼしています。可愛い奴め。
同じように【パーティーのやくそく】では、「そんなに張り切ってお菓子準備しなくてもいいんじゃない?」と、せっせとお菓子作りに励む小糸に水を差すような発言をしつつも、去り際には「味見する時のイケメンムーブ」を見せてくれます。
小糸、恋に落ちた顔してる?
そんな円香が空回りする、とても可愛いコミュがサポートSR【Feb.】です。円香から貰ったくまのストラップをなくしてしまったことを気にしていた小糸に対し、同じものをプレゼントしようとして間違えて大きなぬいぐるみを注文してしまった上、そのぬいぐるみも別のキャラクターだった……という、なんともほっこりするコミュです。
万事そつなくこなしてしまうハイスペックガールの円香には珍しくミス続きな姿がとても愛らしいわけですが、サプライズプレゼントの企みが何もかも間違えてしまっていたことに気づく場面の滑稽さと、にこにことしてクマのプレゼントを受け取る小糸の姿には、クール系彼氏とほわほわ系彼女が、互いに異なる領域でイニシアチブを握りあっているみたいな良さがあってたまりませんね。どことなくBLの領域っぽくもあります。
ここのやりとり、めっちゃカップルっぽくないすか?
「小糸ちゃん、彼氏(彼女)さん冷たいけど、大丈夫なの…?と周りから心配されながらも、なんだかんだ長続きするタイプのカップル」感あるやりとりはとても愛らしいですが、ふたりのいちゃいちゃっぷりはここにとどまりません。283プロによる公式Twitter企画(283をひろげよう)にて、樋口円香がこんなツイートをしています。
マウンティングすな~~~!!!💢💢💢💢💢💢
(3)市川雛菜(ひなこい)
福丸小糸と市川雛菜。幼なじみ四人の中でも年少組であり、共に高校1年生でもある二人は、しかしとても対照的な印象を与えます。
例えば【283プロのヒナ】福丸小糸のコミュには、寝坊してしまい、大慌てで学校に向かおうとする小糸と、遅刻前提で平然としている雛菜という対照的な様子の二人が描かれていました。同級生に説教を飛ばすほどの生真面目な小糸も可愛らしいですが、高校生で一限をブッチしようとする雛菜は中々ぎょっとしますね。肝が据わりすぎている。
多くの人が想像する「ひなこい」という組み合わせの魅力が、この短いやりとりに詰まっていると言って過言ではないでしょう。
そんな二人の関係が堪能できる名作コミュといえば【しかえし優等生】ですね?どうしてもPカードより語られづらいサポートカード、その中でも話題に上りづらいSRでありながら、多くのプレイヤーによって定期的に語られる【しかえし優等生】というカードは、それだけ二人の魅力が詰まっているということだと思います。
【spare☆☆☆☆time】というコミュについても同じことを書くつもりですが、「ひなこい」が詰まったこれらコミュにおいて特筆すべきは、小糸が持つ独特の「倫理観」だと思っています。そして、そこに乗っかる雛菜という図式がとても可愛らしいんですよね。
【しかえし優等生】というコミュは、雛菜は不真面目に違いないと侮った言動をとる教師に対して、当の雛菜は全く気に掛けていないにも拘わらず無関係であるはずの小糸が憤慨するところからはじまります。この時点でかなり愉快かつ面白いですが、教師への復讐として「勉強すること」を小糸は提案するのでした。
自分に自信がない様子を覗かせる小糸ですが、一方で彼女は、自分の中に根付いた規範への確信を揺るがせることはほとんどありません。小糸にとって正義や理想、善きことは確固たるものであり、雛菜が言うところの「意外と頑固な性格」とは、彼女が持つそうした烈しさに由来しているのだと思います。ある意味長女らしい側面とでも言えるでしょうか。
そんな小糸の性格を指して私は「悲観的な理想主義者」と(勝手に)表現しています。「緋田美琴(みこいと)」の節にてもう一度書くと思いますが、強固な理想を内面化したことによって自分そのものに対する認知が歪んでしまっているところは、小糸と美琴でとても似ていると思うんですよね。
さて、端から見ていると明らかに面白い言動を展開する小糸に対して、雛菜は全力で乗っかりにいきます。
雛菜のことをリスペクトしていると口に出して憚らない小糸ですが、こういう特有の倫理観とそれを実行に移す強靱さに対して雛菜が好ましい感情を抱いているであろうことは、この表情に託されていますね。良い関係だなァ!!!!!!!
斯様に、"ひなこい(こいひな)の聖典”とも呼ぶべき【しかえし優等生】という名作がありながら、それを凌駕しうる名作が2024年3月21日に爆誕してしまいました。サポートSSR【spare☆☆☆☆time】です。
こっっっっれマジで好きなコミュなんですよ。
小糸の独特な倫理観が楽しめるシーンとしては、「英語で雛菜の良いところをたくさん答えよ」という遊び(いちゃいちゃ)を二人が繰り広げる場面があります。
ここの小糸ちゃんの何が良いって、「雛菜は可愛い」「雛菜のネイルは素敵だ」といった彼女が伝えようとしているメッセージはすでに日本語で雛菜本人に伝わっているにも拘わらず、「英語で伝える」というゲームのルールにこだわってスマホで調べ始めるという本末転倒を当たり前として受け入れているところなんです(早口)。
プロデューサー曰く「小糸はアイドルに向いている」わけですが、彼女が持つ規範意識は、ステージ上から感謝を述べるだけでその気持ちは伝わるかもしれないけど、それでも歌やダンスを練習するアイドルという存在の回りくどさを、まさに体現しているのかも知れませんね(早口)。
そこに乗っかってる雛菜も可愛くて好きなんだ。
はてさて、そんな小糸に対する雛菜からの矢印が垣間見えるのが、続く3コミュ目です。
みんなで体育館に集まって運動することを提案しようとして、結局遠慮してしまう小糸。一歩踏み込めない臆病なところは相変わらずといった様子ですが、注目すべきはこの後のシーンです。授業を終え、冷え切った廊下に出た雛菜は、口ごもっていた小糸のことをふと思い出した後教室に引き返して、スカートの下にジャージを着ました。
これ、この、あの、このシーンなんですけど……マジで良くないですか?
明確な約束をしていたわけではありませんが、小糸が言っていたようにみんなで体育館に集まって運動をすることになるかもしれないという予感を、雛菜は抱いていたわけです。だからこそ、寒さを解決する手段としてジャージを選んだし、その後体育館に立ち寄った。スカートの下にジャージという芋くさい格好を、ファッションやお化粧に強いこだわりを持っている雛菜が自ら選んでいるという点にも、BIG LOVEを見ずにはいられません。
ありがとう…………ひなこいに、光あれ。
Ⅱ.小糸×283プロ
(1)園田智代子(ちょこいと)
THE IDOLM@STER SHINY COLORS 6thLIVE TOUR Come and Unite! Fantastic Fireworks Day2にて、「オタクに都合の良すぎるセトリ」こと、園田智代子と福丸小糸による「SOS」の歌唱が披露されました。
都合が良すぎるのでは――――?
この二人の取り合わせが"良い"とされているのは、ホーム会話の小糸のテンションに依るところが大きいです。
基本的に極端な引っ込み思案、というかほとんどコミュニケーションが成立しないことの多い福丸小糸さんですが、人の懐に入り込んでいくプロフェッショナル・園田智代子を前には、上の画像の通り打ち解けた様子を見せています。基本的に供給は以上ですが根強いファンもいて、MOIW2023(アイマス5ブランド合同ライブ)でもちょこいとによる虹色lettersの歌唱が披露されるなど、アンオフィシャルながらその存在は確かに認知されつつありました。
そしてそれが遂に、まるでオタクを悦ばせるが如く、ちょこいとによる「SOS」の歌唱――――。
やはり都合が良すぎる。妙だな……。
とはいえ、やっぱりコミュニケーションの鬼・園田智代子氏をもってすれば、小糸の牙城を突き崩すことも可能でしょう。彼女は283プロ屈指の社会性を有する人物ですからね。
(2)杜野凛世 & 白瀬咲耶
別項に別けると同じ事の繰り返しになりそうなので本項にてまとめますが、イベントシナリオ『線たちの12月』にて共演した杜野凛世と白瀬咲耶の二人は、小糸との大きな可能性を秘めた人物たちです。
持ち前の引っ込み思案っぷりで283プロとの交流もままならない小糸ではありますが、シナリオ『線たちの12月』を経て凛世や咲耶とは少し打ち解けた様子が見られます。
是非本編を読んでいただきたいところですが、特に印象的だったのはイベントサポート【冬の隙間】の一幕です。
認知の困難さと、コミュニケーションという行為に通底する優しさ(祈り)に心を打たれるイベントシナリオにあって、この三名の絆が少しでも深まっているのならこんなに嬉しいことはありません。
いつか彼女らが、同じ鍋をつつける日がくることを願うばかりです。
(3)緋田美琴(みこいと)
すでに述べたとおり、強固な理想を内面化し、努力することを当たり前のように思っている"強い人"でありながら、自己を省みるという感覚が極端に欠如した狂人の面も併せ持つ小糸と美琴は、表層的な言動にこそ共通点を見いだしづらいものの283屈指の似た者同士であると言えます。
そんな二人が、283の愛情モンスター・月岡恋鐘と対決するコミュ(【MADE】緋田美琴)が描かれていることは、単なる偶然ではないでしょう。
月岡恋鐘というアイドルは、無限にも等しい愛情を自己にも、そして他者にも惜しげなく注ぐ"あいの怪物”みたいな人です(但し、このせかいにかいぶつはいないものとする)。
イベント『アイムベリーベリーソーリー』やそのサポートカード【ビコーズ・ラブ】、月岡恋鐘LandingPointシナリオなど、その実例には枚挙に暇がありません。
『ストーリー・ストーリー』等でも詳しく描かれていますが、月岡恋鐘にとって料理を振る舞うというのは、自らを含む誰かに愛情を注ぐこととよく似た行為であり、そしてそのどちらもが彼女にとっては当然の振る舞いでもあります。
そんな彼女が、自らを顧みるという感覚をほとんど持ち合わせていなかった二人の少女にご飯を振る舞うというのは、深読み大好きな私としては象徴的な出来事のように思えてなりません。
「みこいと」が283プロの中でも似た者同士の二人であるとはすでに述べましたが、小糸と美琴、二人のLandingPointシナリオの大まかな流れを思い出して頂ければ、その印象は強まると思います。
小糸のLandingPointでは、ステージに立つ姿を見せても親には心配されているままで、当初から目指している「沢山の人の居場所をつくれるようなアイドル」にはまだまだなれていないのかもしれない……それでも、等身大の自分のままに成長していくことを認められた小糸の姿が、しっかりと描かれていました。
彼女はLPシナリオを通じて「地に足がついた」と語ります。まさにランディングポイント。
また、「自然体の自分をみせる」という課題と向き合い、理想像としての自分ではなく、"いつもの緋田美琴"を見ていてほしいとステージで口にするに至った美琴のLandingPointシナリオもまた、己が等身大を受け入れるまでのお話だったと表現できるでしょう。にちかLPとの明らかな対照が中々に味わい深かったりもします。
二人とも、ありのままの自分を受容するまでの長い長い成長途上にあったわけです。そんな二人が、自己愛を体現する最強の愛情モンスター月岡恋鐘と対峙し、共に「受け取れきれないほどの愛(料理)」を食べようとするこのお話は、コミカルなお話の奥に、真摯なメッセージが隠されているような気がしてしまいます。
※ちなみにこの【MADE】にて、美琴と対峙するもう一人の人物が「桑山千雪」……"アイドルの桑山千雪"と"ありのままの桑山千雪"に、真っ正面から向き合ってきた人物であったことも、強い補助線となるように思われます。
(4)月岡恋鐘(こがいと)
え、さっき恋鐘について喋ってなかった?
【MADE】での絡みも勿論良いんですが、小糸と恋鐘の組み合わせが楽しめるコミュとして忘れてはいけないのが、イベントシナリオ『ロード・トゥ・ハッピーホリデー!』です。
283プロに加入したばかりの羽那・はるきが立つステージの裏で、実は他のアイドル達が右往左往していて……?というコメディタッチなシナリオで、肩の力を抜いて楽しめるタイプのお話だと思います。短くて深遠なテーマもないので、初心者にもオススメですね!
さて、そんな『ロード・トゥ・ハッピーホリデー!』ですが、小糸と恋鐘の二人で事務所に戻って、衣装を探す……という展開が中盤に用意されています。持ち前の明るさで小糸を引っ張る恋鐘と、冷静な判断で衣装を見つけ出す小糸。まるで、とびきり明るい探偵助手と、たちどころに謎を解き明かす名探偵の名コンビを見ているような気持ちになりました!!
【おみくじ結びますか】というPカードで283プロの倉庫をひっくり返した経験があった小糸が、「もしかしたらあそこにも衣装があるかも?」と発想したのかもしれない、なんてことを考えただけでぐっときてしまいますよね。
ちなみに、以下のツイートはガチの妄言です。アイリーン・アドラーはさすがに千雪だろうと思ったのですが、あさひホームズとの相性がすこぶる悪そうなのでそこは再考の余地がありますね。
あと、これは心からのお願いなのですが、名探偵・月岡恋鐘×助手・福丸小糸の二次創作、誰か書いてください。一応自分でもプロットを作ったんですが、人が作ったものの方が読みたいだろ!!!!
(5)天井社長
さすがにこれは紹介しないとね。
天井努氏(283プロ社長)は容姿こそ描写されていませんが、CV.津田健次郎さんの声や言い回しが渋すぎるところ、断片的に提示されてきた人間くささ、そして何よりチャーミングなところが知られるにつれ、狂ったファンを獲得してきました。
さて、そんな天井社長の可愛さが、小糸のpSR【福はうち】にて小糸の口からばらされます。
283プロで節分の豆まきを企画したものの、スケジュールの都合からか参加してくれる人がおらず、事務所に立ち寄った小糸が主で豆まきをすることに……というお話なのですが、豆まきに来た小糸を見て、すれ違った社長はこんなことをこぼしています。
小糸とばったり出くわしたときに、「なるほど、小糸なら豆まきに適任だ。私の分までやっておいてくれ」と言い残して去って行く中年男性、可愛すぎやしないですかね。これ本当にほっこりする。
加えて言うなら、「豆まき(節分)」というイベントはとても家庭的な印象を受けます。家でやる行事なわけです。それを、コミュニティの内と外ということにとても敏感な小糸が、283の事務所でやるというところに、努の想いが一つの成就を見たような感慨がありますね。
天井努社長が作ったその場所は、確かに誰かの居場所に――まるで「家」のような場所に――なっているのだと思うと、なるほど、誰かの居場所をつくりたいとアイドルとして走り始めた福丸小糸と、283の事務所を「家」のようにしたいとどこかで願っていた天井社長の間には、強い共通点があると言えるのかもしれません。
あなた達が作った場所はもうすでに、誰かの居場所になっているよ。
(6)EXTRA
ちょこいとと同じく、シャニマス6th横浜公演にて話題にあがる機会が増えた組み合わせが、「斑鳩ルカ(ルカいと)」でしょう。
DJ小糸の暴れっぷりは語り草ですが、中でも斑鳩ルカによる「ラビリンスレジスタンス」ソロ歌唱はヤバすぎる。小糸の発案なのか否かはコミュに描かれていないので不明ですが、小糸がDJするブロックのトップバッターという兼ね合いもあり、二人の間にやりとりは、少なからずあったでしょう。
ルカはどんな気持ちで小糸を見ていたんだ……?
ちなみにこの二人、ホーム会話もかなり良いので見てみてください。
個人的に注目しているのは、「幽谷霧子(きりいと)」ですね。供給はほぼ皆無ですが、ギミー先生の四コマにこんな回がありました。
はい。この四コマを見て、みなさん思い出しますよね?
そう。【奏・奏・綺・羅】のことを!!!
他者の存在を容易には認められない。そんな苦しさの中にあったにちかに対し、霧子は「ゆっくりでいいから」と声をかけるのでした。二人の間に流れる沈黙は、霧子にとってはもう立派な一つのコミュニケーションだったのです。
イベント『アジェンダ283』にも描かれていましたが、強い外部性を感じてしまう誰かのことを、易々とは受け入れることが出来ない。そんな気持ちをシャニマスは否定しません。ただ、そんな気持ちを持っている中でも少しずつ、互いに歩み寄ることが出来たら、繋がることが出来たら、それはとても素敵なことです。そうした、消極的な接続の肯定を【奏・奏・綺・羅】においては霧子が担ったわけですが、このギミー先生の四コマもまた、同様の構図を見て取ることが出来ます。
公式の供給こそありませんが、「きりいと」――あると思います。
Ⅲ.小糸×ネームレスキャラクター
(1)家族
コミュに登場したことのある小糸ファミリーとしては、母親と妹の二人がいます。
すでに触れたとおり、小糸にはお姉さん属性があるので、年上の幼なじみに対してさえ世話焼きな性格を発揮しているわけですが、実際に妹とのやりとりを見ていると「なるほどね~~」とニコニコすることが出来てとても良いですね。
初対面の成人男性であるプロデューサーに対してもずけずけくる感じを見るに、小糸妹は姉と比べるとコミュニケーション巧者なのかもしれません。とはいえ、小糸もWING編時点でプロデューサーとはある程度打ち解けていたので(幼なじみの知り合いという補正がかかっていたのだとは思うのですが)、そもそもプロデューサーがちっちゃい女の子になめられやすい属性を持っている、という可能性もありますね。
小糸母の存在は、それこそWING編から常にほのめかされています。
小糸が親に対して自分の意見を言い出せない姿は度々描かれていて、小糸の自室の狭さも相まってヤバイ親なんじゃないか、という説もまことしやかにささやかれていましたが、断片的な情報から読み取れるのはそうではなさそうだ、ということです。
おそらく小糸母は小糸と似た性格で、不器用なんだと思います。
ノクチルソロライブを見終えた後の小糸母は、不安そうな表情こそ変えませんでしたが、プロデューサーに「これからもよろしくお願いします」と伝えています。小糸の母が、他ならぬ「次」を――「これから」を――想定していることから、アイドル活動が小糸にとって良い影響を与えていると、親御さんの目線からも思うことが出来たのではないでしょうか。
他にも、【セピア色の孤独】ではアイドル活動をはじめることに対して、こんなセリフで不安を示しています。
不器用だからこそ、時にはすれ違ってしまう想い。でも、互いが互いを想い合っている以上、いつかその気持ちは伝わると思います。そうでなければ人はペンを持ちませんし、それに……そうした過程を踏んでいくことも、反抗期と同じようなある種の成長痛、あるいは青春なのかもしれません。
(2)信重役の役者
トワイライツコレクション【あなた様へ紡ぐ】で小糸は、時代劇に出演することになりました。主要登場人物の妹という役どころ。役作りに悩んでいた小糸に声をかけたのが、兄である信重を演じる、ベテランの役者さんでした。
彼の言動は快活かつ明瞭。小糸から接しやすいように砕けて振る舞う姿もそうですし、少ないやりとりの中で小糸に対するアドバイスの核心を言葉にしているところも、キャリアを重ねたベテランの役者さんなんだろうなと感じさせます。どこか教育的な気配を感じるその言動は、小糸がその後実際に重ねることになりますが、シャニPに通ずるところがありますね。
小糸にとって演技という仕事のフィールドは、ほとんど未知だったはずです。そんな未知への第一歩を踏み出す大切な仕事に、信重役の役者が大切な役回りを演じてくれていたことは火を見るより明らかですし、彼のおかげで、小糸は次の仕事を、今回よりもステップアップして臨むことができるでしょう。
また、彼との出会いはプロデューサーと自分の関係性を再考するきっかけにもなりました。
小糸にとって重要なきっかけを与えてくれた人物である「信重役の役者」に、スキル・ステップアップした小糸が再会するコミュは、ぜひ読んでみたいですね。
(3)中学生モデル & アイドル(共演者)
pSSR【おみくじ結びますか】に登場した中学生モデル。彼女は小糸に対して、こんな言葉を投げかけました。
辛辣な言葉ですが、こんなことを言ったのには理由があります。この中学生モデルは元々子役だったのですが、年齢に対して成長が早く、背が伸びすぎたので子役の道を諦めざるを得なかったんですね。「背が高くて良いね」という小糸の言葉は、確かに幼く見られることをコンプレックスに思っている小糸からすればごく自然な褒め言葉でしたが、中学生モデルの彼女にとっては無神経に他ならなかったわけです。
怒りを滲ませた中学生モデルですが、別に性格がねじ曲がっているとかそういうわけではなくて、むしろその逆なんですよね。TrueEndにて、彼女がインタビューに対しこのように答えていたことが明かされます。
たくさんの困難があることも、大きな目標を達成することがどれだけ難しいのかも、きっと彼女は中学生ながらに理解していて、それでも目の前の小さな目標をこなしていくことでいつか達成できるのだと語ります。それがどれだけ立派で、すごくて、格好いいのかはもはや語るまでもありません。だって、よく似た考え方をしているアイドルのことを、私たちは知っていますからね。
居場所がないと感じている人にとっての居場所になりたい。
WING編で抱いた小糸の願いは、「実はみんな、それぞれに想いを抱えているんだ」というこの経験を通じて、「それならみんなにとってのアイドル(居場所)になりたい」というものに変わりました。
しかるにこの「中学生モデル」という人物は小糸にとって、成長の大きな機縁となったのです。
もっかい登場してほしい~~~~~!!!!
さて、そんな「中学生モデル」と対照的な人物もコミュの中に登場しています。マイソングスコレクション【雲のかなたまで】の「アイドル」です。一般名詞としてのアイドルと混同するので、「アイドル(共演者)」と表記したいと思います。
この【雲のかなたまで】というコミュは、短いながらも【おみくじ結びますか】と対照になるよう構成されています。小糸はある番組に出演した際、アイドル(共演者)と共演することになるわけですが、そのアイドル(共演者)には悩みがありました。
これは【おみくじ結びますか】において、長身で大人びて見える中学生モデルに対して「私と違っていいな」と羨んでいた小糸の姿が、綺麗に重なりますね。思春期を経験したほとんどの人が、こうした隣の芝が青く見えてしまう感情に共感できると思います。私たちがそうであり、小糸もそうであったように、このアイドル(共演者)もまたそうだったわけですね。
しかし、このアイドル(共演者)も小糸と同じように、自らの想いや周りの人と向き合うことで成長することが出来ました。
この子も、自らの未熟さとそれを乗り越えられるだけの真っ直ぐさを持った魅力的な人物なんですよ。
また、アイドル(共演者)との共演を機に、小糸はプロデューサーと自分が二人三脚で進んできたことを再確認することが出来ました。小糸がステージに立っているときも、番組に出ているときも、彼女らは共に戦う仲間。GRAD編のときにも確認したことですが、それを改めて実感する機会になったという意味ではやはり、この経験も小糸には大きかったはずです。
小糸に積極的に声をかけている様子を見るに、かなり社交性の高い人物であることが窺えます。「私ばっかり、なんで」という青さを覗かせながらも、自らその気持ちと向き合って成長できるだけの真っ直ぐさを持ったアイドル(共演者)という人物は、愛依のような気持ちの良い人物なんじゃないかと思わせてくれますし、もっと小糸とのやりとりを見ていたくなりますね!
もっかい登場してほしいよ~~~~!!!!
同じ芸能界に身を置いている、おそらくは同年代の二人――中学生モデルとアイドル(共演者)――は、小糸の成長にも重要な役割を担っていました。絶えず変化し、成長を続けてきた今の福丸小糸ちゃんが、何かの番組で再び彼女らと共演する姿が、私は見たい…………!!!!
結びに。或いは解けるように
いかがでしたか?
小糸という縦の糸と、シャイニーカラーズが内包する沢山の横の糸。
それらが交わったとき、どんな輝きを見せてくれるのか。それはまだまだ未知の領域です。ただ、一つだけ分かっていることは、相性が悪いはずがない!ということ。
福丸小糸はなんにでもあう。実質白ご飯なんですよね。
おつかれさまでした~。