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ハマかぶれ日記262〜ハンターズムーンに願いを

 風邪をひいたようだ。熱はない。一昨日来、体が温まると咳が出て眠りづらい程度のまだ初期の症状で、葛根湯を飲んでいたら少し回復の気配がきざしてきた。
 そんな中でも、昨夜は東京ドームでセ・リーグのCSファイナルステージ第1戦を楽しんだ。言わずもがな、ファーストステージを勝ち上がったわが横浜ベイスターズとリーグ優勝の巨人との試合。下馬評では巨人が圧倒的に有利とされたが、ハマかぶれの風邪をおしての応援に気を使ってくれたのか、見事に2対0で押し切った。時にゲホゲホしながら飲んだビールが一際おいしかった。
 勝因は、先発の左腕・ケイの好投に尽きる。今年、米大リーグのアスレチックスから移籍してきた。150キロを超える速球にカットボール、チェンジアップと多彩な変化球を持っているのにコントロールがいまいちで、しばしば四球を出しては審判を逆恨みし、カリカリして自滅する。投げてみなければ分からない不安定な投球で、今シーズンは結局、6勝9敗と負け星先行で終えた。防御率も3・42とあまり良くない。
 かたや巨人の先発・戸郷は今シーズンも12勝8敗と3年連続の二桁勝利を挙げ、防御率も1・95と安定している。先に点を取られたら、まず10中8、9負けとハラハラしながらケイの投球を見守っていた。
 ところが、いつもの切れやすいケイはどこに行ったのか、昨夜は別人のケイがいた。6回投げて何と被安打1。懸念された与四球は4と少なくはないものの、要所要所をうまく締めて得点を与えなかった。何より特記すべきは気長だったこと。際どいコースをボールと判定されるケースは何度かあったのに、「オーNO!」「ファックユー!」といった、何度もテレビ越しに耳にした汚い叫び声はついぞ聞こえなかった。バックネット裏の前の方のいい席を確保できたので顔色が変わればたぶん分かるはずだが、ペリー来航の時に描かれた浮世絵のような赤鬼への変貌も見られない。ピンチにも冷静に辛抱強く投げ続けていた。
 そうしているうちに4回表、3番の佐野が、彼の打球としてはこれまでに見たことのない、大谷選手を思わせるもの凄い速さと距離で右中間スタンドに放り込んで先制。7回表には、代打の筒香が過去の強打者のプライドを封じ込めた流し打ちのチームバッティングで左前に適時打を放って追加点を挙げた。それを、ケイから山﨑、坂本、堀岡、伊勢と小刻みな継投で守り切った。
 最近、エースの東とクローザーの森原を相次いで故障で欠いた。いわば首と尾のない、制御の難しい胴体部分だけでのたうつ具合の投手陣にして、現状では最良の成果だろう。
 うち一人だけ、三浦監督がマウンドへ行き、怒りをぶつけた様子に見えたのは、山﨑だ。満身創痍の投手陣を豊富なキャリアで引っ張っていくべき存在なのに、ケイの後を受けてマウンドを任された7回裏、2安打を許して一打、同点、逆転のピンチを招く。2死を取ってからモタモタする姿に業を煮やした三浦監督はボールを取り上げ、左腕の坂本のリリーフを告げた。「何をやっているんだ」。山﨑への叱声が聞こえてきそうだった。坂本が討ち取った中山の打球は、いい当たりがショートの正面をついて助かった。もしあれが抜けていたら、山﨑の選手生命そのものに傷がつきかねない一幕だった。
 ファイナルステージはリーグ優勝者に不戦1勝のアドバンテージが与えられているから、昨夜の勝利で1勝1敗のタイ。勝負はこれからだ。今夜の先発はベイスターズが大貫、巨人は今シーズン、リーグ最多勝の菅野。リリーフも含め投手陣には大きな差があり、引き続きベイスターズには分の悪い戦いが続くが、勝負は時の運であり、何が後押ししてくれるかわからない。
 今夜は十五夜、晴れていれば、今年最大の満月、フルムーンにお目にかかれるという。10月のフルムーンは別名、ハンターズムーンとも。ベイスターズ陣営に大漁の大旗がひるがえるよう、目一杯、願掛けしてテレビにかじりつくつもりだ。まずはその前に、葛根湯・・。
 

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