ホストが埋めてくれる(終)
『シェアハウス退去してくれって言われた。
最悪。まぁ、私が滞納したのが悪いんだけどさ。』
なんてことだ。
僕が冷や汗かきながらGと格闘したあの時間を
返せ。
「で、ケースワーカーさんはなんと?」
『低額宿泊施設があるからそこを手配するって』
なんだかこの人はいつも他人事だ。
「いくらかかるの?家賃というか使用料?は」
『10万くらいみたいだよ。3万くらいしか手元に残らないってケースワーカー言ってたもん。』
-貧困ビジネス-
僕のあたまにこの言葉が秒速でよぎった。
NPOがやっているようなので
一応「福祉事業」としよう。
しかしながら使用料は悪質な飯場の寮か
ヤクザが無宿人を放り込むタコ部屋並に高い。
食事は朝、夜に冷凍弁当(レディミール)
米は食べ放題。
刑務所よりひどい。
大抵、社会的に弱い立場におかれる人々が集まり
生活をする場所は、どこかしらに
人権を軽視した処遇だと感じざるをえない部分が多々ある。
だが、彼女にとっては再スタートと休養する場としては最良の環境かもしれない。
ディズニーランドが近いらしい。
旅立つ前日。
彼女はいつにも増して寂しそうだった。
強がるそぶりや言動はあるが
弱い自分を守るための盾だと言うことを
僕は知っている。
『まだやり直せるかな?私。終わってない?』
「経験から学んでれば同じ失敗しないんじゃないのか。まぁ、ゆっくり立ち上がればいいさ。」
冷たい風に吹かれた落ち葉が
からからと音を立てながら
アスファルトを滑っていった。
目でそれを追いながら
僕は夕方の依頼者の元へと向かった。