おにぎり
三連休の初日、やらなければならない家事のあれやこれやを先延ばしにしてぐずぐずと過ごす。
なんの脈絡もなく『かもめ食堂』が観たくなり、アマプラで検索したら、ちゃんと入っていた。
公開は2005年。20年近く経っているのか!と驚きもするが、そんなものかなとも思う。その証拠に細かいストーリーは殆ど忘れていた。ただ、当時、この先人生に行き詰まったらフィンランドに行けばいいんだな!と心が軽くなったことは覚えている。
この映画でおにぎりを載せたことがきっかけで、アラビアのアベックが和洋問わずに使える食器として注目されるようになったのは知られるところで、例に漏れず私も長年愛用している。
でも、ふと考えると、最後に自分の手でおにぎりを握ったのはいつのことなのだろう。いつの間にか、おにぎりは作るものではなく、買うものになってしまった。
子供の頃は週末に家族で出掛けるのか常で、そんな時はよくおにぎりを持って出た。朝、炊き上がったご飯を大皿に広げて冷まし、母と私でせっせと握る。我が家での一番人気は、細かく刻んだ紫蘇の混ぜご飯を握ったもので、「紫蘇おにぎりはまみちゃんに任せるのが一番ね。塩加減がちょうど良いから」とおだてられてその気になり、じゃんじゃん握り続けるのだった。
出来上がったおにぎりを箱に詰めて車に持ち込み公園へ繰り出す。飽きもせずに弟とボールを投げ合い、自転車でぐるぐる走り回る。自販機で買ったリンゴジュースとおにぎりと云う、今思えば珍妙な組み合わせのお昼ごはん。
この頃、そんな子供の頃の家族のワンシーンをふと思い出すことがある。そして、そのたびに胸がちくりと痛む。若かった父と母、今現在の老いた自分たちのことなど想像していなかったであろう父と母。彼らが紡いできた人生を私は台無しにしているのではないか。思い出が楽しいものであればあるほど痛みは増し、思い出すのが怖くなる。