So Jah Sehに関するあれこれ
ラジオやバーやクラブなんかではめったにかかりませんが、So Jah Sehはボブの音楽人生において最重要と言ってもいいナンバーです。
「Jahの言葉」と題されている通り、神のメッセージを伝える伝道師的な活動の開始を間接的に伝える「決意表明」みたいな曲です。
最初に聴いた時、「ものすごいもの」と出会ってしまったな〜とすぐ直感しました。
キリスト教のこともラスタファリのこともほとんど知りませんでしたが、誰にでもわかる力強い救済のメッセージにハートを鷲掴みにされてしまい、何度も何度も繰り返し聴いた記憶があります。
預言者
生前ボブは多くのリスナーやマスメディアから「預言者」と呼ばれていました。
「預言者」というのは、将来起きることを予想をする「予言者」とはまったく違います。
ユダヤ・キリスト教の伝統における「預言者」=神の言葉をわれわれ人間に伝える特別な任務が与えられた選ばれた人のことです。
そんな人のことを英語ではprophetsと呼びます。
ジャマイカの外ではラスタファリの思想や生き方が知られていなかった1970年代半ば、ボブは自分が果たすべき役割に目覚め、単なるポピュラーミュージックのアーティストではなく音楽を通して神の言葉を伝える「預言者」として活動し始めました。
「ラスタ・メッセンジャー」ボブの誕生です。
Prophetとかrasta messengerと呼ばれたボブ、ほかにもたくさんニックネームを持っていました。
タフゴング
最もよく知られているのはTuff Gongです。
この別名は本人も相当気に入っていたらしく、彼が作ったレーベルやスタジオの名前にもなっています。
辞書を引くとtuffは「素晴らしい」、gongは「銅鑼(どら)」です。
「ケンカに強いヤツ」というゲットー生まれのストリート用語だという説もあります。
そうなのかもしれません。
でも単純に「銅鑼みたいによく通る大きな声の男」って解釈でもいいじゃないかな~と思います。
今回検索してみるまで知りませんでしたが、ボブのことをSkipperと呼ぶ人もいたそうです。
「船長」とか「機長」という意味です。
Wailersというファミリーにとって彼はまさしくそんな存在だったので、納得のニックネームですね。
差別体験
父親が白人で肌の色があまり濃くなかったため、少年時代のボブは周囲のアフリカ系ジャマイカンのガキ連中からwhite boyと呼ばれてイジメられて、疎外感を味わっていたそうです。
ボブは自分はアフリカ人の子孫だという強い自覚と誇りを持ち、曲を通じて同じ出自の同胞たちにそれを恥じたり否定したりせずに大切にしろ、自分の揺るぎないアイデンティにしろと語りかけていましたが、決して白人やほかの人種、民族グループの人たちを敵扱いしたり、見下したりはしない人でした。
人はすべて同じであること、差別は絶対にいけないことを経験を通じてよく知っていたんだと思います。
これはボブを理解する上で重要なポイントです。
ラスタの中には極端な黒人至上主義者でヨーロッパ系の人たちを逆差別するような人もいるからです。
ネスタ
ボブのことをNestaと呼ぶ人もいます。
最初に母セデラがつけたファーストネームです。
生まれた時はNesta Robert Marleyという名前でした。
Nestaじゃ女の子みたいだという親戚からの指摘を受けてセデラはファーストネームとミドルネームを入れ替えたそうです。
熱心なファンならほぼ全員知っていると思いますが、以降ボブのフルネームはRobert Nesta Marleyでした。
ラスタネーム
ボブはラスタ仲間からはJosephとも呼ばれていました。
「仲間」というのはボブが1974年に参加したTwelve Tribes of Israel(イスラエルの12部族)というラスタ系新興宗教のメンバーのことです。
この信仰集団のメンバーは全員、旧約聖書に記されたイスラエルの12部族と同じ名がつけられた12のtribes(部族)のどれかに所属します。
所属する部族は自分が生まれた月に振り当てられた部族です。
ボブの場合、2月生まれだったのでヨセフ族に入り、そのため仲間からはジョゼフ(ヨセフの英語式の読み方)と呼ばれていました。
黒いディラン
1970年代に欧米で知られるようになった当時、ボブはメディアからはBlack Bob Dylan(黒いボブ・ディラン)とも呼ばれていました。
分かる人にはすぐ分かるぐらい歌詞のレベルが高かった証拠です。
でも訳者<ないんまいるず>はボブはディランより数段上だと思っています。
ディランのオーディエンスは完全に欧米に偏っているからです。
アフリカのゲットー、アジアの貧しい地域、欧米都市部のスラム街、こういった場所ではディランの曲はまったく流れていません。
一方、ボブの愛と希望のメッセージは欧米だけでなくアジア、アフリカ、中南米と世界中に広がり、今も多くの人のこころの中で生き続けています。
旅した異国の地でラジオから、ジュークボックスから、店先から、乗り合いバスからガンガン流れてくるボブの歌に出会った人も多いはずです。
言語、民族、貧富といったボーダーを越えて愛されているボブこそがノーベル賞に値するんじゃないかなと個人的には感じます。
ビッグスターになったボブにつけられた最後のニックネームはKing of Reggaeでした。
これはもう説明の必要がないですよね。
以上、今回はボブのニックネームについてのあれこれでした。それじゃまた~