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Wake Up and Liveに関するあれこれ


ふたつの曲順

この曲からいよいよ7枚目のスタジオ録音アルバムSurvivalに入ります。

と言うわけで、まず最初に曲順について少し説明しておきます。

1979年10月に発売されたこの傑作アルバム、知らない人が多いと思いますが、実は曲順が違うバージョンがふたつ存在します。

ジャマイカ、USA、カナダ、オーストラリア、ブラジル、イスラエル、南アフリカなどではオリジナルLPが次の曲順でリリースされました。

[Side A]
1 Wake Up and Live
2 Africa Unite
3 One Drop
4 Ride Natty Ride
5 Ambush in the Night
[Side B]
1 So Much Trouble in the World
2 Zimbabwe
3 Top Rankin’
4 Babylon System
5 Survival

https://www.discogs.com/ja/master/79366-Bob-Marley-The-Wailers-Survival

一方、ヨーロッパ諸国、ニュージーランド、そして日本で発売されたオリジナルLPは以下の曲順でした。

[Side A]
1 So Much Trouble in the World
2 Zimbabwe
3 Top Rankin’
4 Babylon System
5 Survival
[Side B]
1 Africa Unite
2 One Drop
3 Ride Natty Ride
4 Ambush in the Night
5 Wake Up and Live

https://www.discogs.com/ja/master/79366-Bob-Marley-The-Wailers-Survival

A面とB面を差し替えてWake Up and LiveをA面の一曲目からB面のラストに移動させています。

その後1986年にCDとしてアルバムが再リリースされた時、すべての国/地域でSo Much Trouble in the Worldで始まる後者の形に曲順が統一されています。

そのためだと思いますが、現在YouTubeで視聴可能なSurvivalのフルアルバム動画はすべて後者の曲順となっています。

でも前者の曲順こそアルバムコンセプト合致しているのは明らかです。一曲目で「目を覚まさない」とラストナンバーまでリスナーは「眠っている」ことになってしまい、すごく不自然です。

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アップテンポでキャッチーなSo Much Trouble in the Worldをアルバムの最初にもってくる曲順からはボブの制作意図とは無関係な商業的匂いも感じられます。

以上の理由からこのプロジェクトでは今では「ほぼ幻」となってしまった前者の曲順で翻訳していきます。

完成したウエイラーズ

アルバムSurvivalに関しては、もうひとつ重要なポイントがあります。

(イメージ画像)

このアルバムを録音するタイミングで旧メンバーが再合流、彼らの参加によってウエイラーズはついにバンドとして「完成」しています。

戻ってきたのはギターのアル・アンダーソン(Al Anderson)、キーボードのアール・ワイヤ・リンド(Earl Wire Lindo)、バッキングボーカルのジュディ・モワット(Judy Mowatt)です。

左から: Judy Mowatt, Al Anderson, Wire Lindo

アルはPeter Toshのバックバンド、ワイヤはアメリカでの音楽活動、ジュディは出産のための活動休止から復帰しました。

アルについては「Lively Up Yourselfに関するあれこれ」、ワイヤについては「Put It Onに関するあれこれ」、ジュディについては「Rock It Babyに関するあれこれ」でそれぞれ紹介しています。あわせてそちらもお読みください。

ちなみに戻ってきたこの3人はコンサートツアーにも参加、ボブの最後のステージとなった1980年9月23日のピッツバーグ公演まで行動を共にしています。

Bob at his last concert in Pittsburgh

アルバムSurvivalのレコーディングからピッツバーグでのラストコンサートまで「ファミリー」としてボブを支えたウエイラーズ最強のファイナル・メンバーは次の10名です。

アストン・ファミリーマン・バレット(ベース)
カールトン・カーリー・バレット(ドラムス)
アルヴィン・シーコ・パターソン(パーカッション)
アル・アンダーソン(ギター)
ジュニア・マーヴィン(ギター)
アール・ワイヤ・リンド(キーボード)
タイロン・ダウニー(キーボード)
リタ・マーリー(バッキングボーカル/アイスリーズ)
マーシャ・グリフィス(バッキングボーカル/アイスリーズ)
ジュディ・モワット(バッキングボーカル/アイスリーズ)

上段一番左から時計回りに: Tyrone Downie, Junior Marvin, Wire Lindo, Seeco Patterson, Family Man Barrett, Al Anderson, Bob, Carlie Barrett 


左から: Judy Mowatt, Rita Marley, Marcia Griffiths

ホーンセクションも一新

さらにこのアルバムからサポートミュージシャンも変わっています。

どういう理由からなのか分かりませんが、準メンバー的存在だったDavid Madden(トランペット)、Glen DaCosta(サックス)、Joe McCormack(トロンボーン)が離脱、当時キングストンで活躍していた様々なスタジオミュージシャンがホーンセクションを担当しています。

Dean Fraser

のちにレゲエの管楽器奏者と言えばこの人と言われるビッグな存在になったディーン・フレイザー(Dean Fraser)もそのひとりです。

Dean Fraser

Wake Up and Liveでは目が覚めるような強烈なサックスソロを披露。演奏のテンションをぐいぐいと上げていってくれてます。

ウエイラーズでは前例がない長さのソロを任されたFraserは当時まだ20歳を過ぎたばかりの新進気鋭ミュージシャン。才能ある若手にチャンスを与えるポリシーを実行していたボブらしい大抜擢です。

Wake Up and Liveという楽曲についても少しだけ解説しときます。

共作者サンギー

この曲はボブと親しかったソングライター兼プロデューサーのアンソニー・サンギー・デイヴィス(Anthony Sangie Davis)との共作です。

Anthony Sangie Davis

このインタビューによると、ボブと同じラスタ信仰集団Twelve Tribes of Israelのメンバーで売れないミュージシャンだったサンギーは、ボブがロンドンからキングストンに戻ってきた頃(1978年4月)、仕事にあぶれて生活に困っていました。

サンギーが運転免許を取ったばっかりだと知ったボブはすぐに彼に会いに行ってその場でウエイラーズ専用のマイクロバス運転手として採用したそうです。

このバスの運転手でした

当時キングストンでは道という道が工事中でいたる所に道路標識が掲げられていました。

それを見てサンギーが思いついたのがこの曲の最初の部分(Life is one big road with lots of signs/ So when you riding through the ruts/ Don’t you complicate your mind)です。

「俺が歌うから歌詞の続きを書いてくれ」とボブに言われたサンギーはマイクロバス運転中に目にした胃薬の広告看板からWake Up and Liveという宣伝文句を借りて曲名にしたそうです。

この胃薬の広告だったそうです

ちなみにボブとサンギーのコラボレーションはこの曲だけではありません。

共同作品はほかにも

ボブの名で発表されずに終わったせいでほとんど知られていませんが、ふたりで次の3曲を作っています(Jingling Keysのみサンギーがボーカルを担当)。

以上、今回のあれこれはアルバムSurvivalの曲順、ウエイラーズの完成形、炸裂しまくるサックスソロ、共作者サンギーに関してでした。それじゃまた~

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