Exodusに関するあれこれ
ファンク、レゲエ、ディスコを掛け合わせたダンスフロア仕様のこの壮大なナンバーExodusは、合衆国の黒人ラジオ局で広くオンエアされたボブの記念すべき最初のシングル曲です。
銃撃事件で身の危険を感じキングストンを離れロンドンに移ったボブが新天地で最初に録音したナンバーだと言われています。同名アルバムExodusの要と言える曲です。
エジプトからの脱出
何度も何度も繰り返されるExodusという耳慣れない言葉は旧約聖書の出エジプト記(Book of Exodus)を指します。
出エジプト記は、ユダヤの民が隣国エジプトでの苦難から脱出するストーリーです。
バビロンからの帰還
同時にこれは前曲The Heathenで描かれたソロモン神殿を守る戦いに敗れ捕虜としてエルサレムからバビロンに連れて行かれたユダヤ人たちの帰還の物語でもあります。
シオニストの大移住
さらにホロコーストの悪夢から解放されたユダヤ人シオニストたちによる第二次世界大戦後のヨーロッパから新国家建設のためのパレスチナへの集団移住もExodusです。
アルバムExodusのレコーディングを密着取材した音楽ジャーナリストVivien Goldmanによると、シオニストの大移動を題材にしたハリウッド映画「栄光からの脱出(Exodus)のテーマ曲がExodusのキーボードのパートに目立たない形で組み込まれているそうです(さりげなさ過ぎてよくわかりませんが・・・)。
ちなみにこのドラマチックな映画音楽、Skatalitesも自分たちのスタイルで演奏してます。
ほかにも意味が
加えてExodusはボブ自身のジャマイカからイギリスへの脱出であり、世界中のアフリカ系の人たちによる父祖の地アフリカへの帰還であり、ラスタによるエチオピアへの集団移住のことでもあります。
夢をかなえて約束の地エチオピアに「帰還」したラスタが作ったコミュニティShashamaneに関するドキュメンタリーはこちら↓
知られてませんが、Shashamaneについて歌ったこんなレゲエナンバーもあります。
一方、合衆国のアフリカンアメリカンにとっては、1879年の大移住(Great Exodus of 1879)として知られる南北戦争後の深南部(Deep South)から中西部への大移動とイメージ的に重なる曲です。
抑圧からの解放
このように聴く人によって様々な意味を持つ曲ですが、一番大事なのは世界中のすべての抑圧された人へに向けたボブからの励ましのメッセージだということです。
ボブは苦難の中にいる人たちに本来自分がいるべき場所=愛と希望がある場所への移動を開始するんだと促しています。
暗闇から光へ
暗闇の向こうに光を見たなら出発するんだ、道は神が創ってくれる、そう歌ってます。
神は抑圧を終わらせ、囚われた者を開放してくれるんだとも言っています。
自分の生き方を変えるために必要なパワーを与えてくれるポジティブな歌詞です。
Exodusの思い出
少しだけ自分の話を書きます。
訳者<ないんまいる>はこの曲に背中を押され、大学を出て入社した当時一流と呼ばれた大企業でのbullshit workを辞めて新天地を目指しました。
上司に命じられるまま彼が手書きした文書をひたすらコピー機で複写して海外支社にファックスで送信するという学生アルバイトのような単調な作業をやらされ毎晩遅くまで残業する虚しい日々でした。
Are you satified with the life you’re living?というボブの声が毎晩心の中で大音量で響いてました。
もちろん答えは120%NO!でした。
希望を見つけるにはExodusしかない状況でした。自分の気持ちとボブの歌詞が激しく共振して日々そう感じていたので勇気を出して脱出を実行してみたわけです。
人生を変える曲
Exodusはリスナーの人生を変える力がある曲です。
勇気とか決意とか、そういうものは自分には一切必要ないと思っている人は聴かなくてもいいと思います。
これはSong of Freedomです。精神的にハードな状況下で身動きできなくなっている人にぜひ聴いてもらいたいボブからの応援歌です。
以上、今回のあれこれはExodusという言葉が持つ重層的な意味、そしてこの曲の比類なき強烈なインパクトについてでした~。
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