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#講義録・指圧基礎実技 2024.6.19 〜伏臥位施術のポイント指導と学生からもらった宿題の話〜

毎週水曜日は朝8時前に熱海駅にいます。
昨夜の雨のおかげで空気は澄んでいて、青空が心地よく感じられます。

早朝の熱海駅前

駅前のマックでコーヒーを飲んだあと、歩いて数分のところにある鍼灸マッサージの専門学校に向かいます。
このnoteを書くきっかけとなっている指圧実技の授業を行うためです。


実技を少人数で行うメリット

学校のカリキュラムによるのですが、私が担当する1年生の指圧実技はクラスを2つに分けて隔週で行われています。一度に教えるのは約20人。
よい点としては、一人ひとりを比較的丁寧に指導することができること。実技の授業で少人数教育を行えることは、とてもありがたいと感じます。

知識や情報を重視する座学であれば、大勢を相手にする一斉教育もいいでしょう。
しかし、実技の基礎を身につけるには個人指導が最適だと考えています。理由は【体格、体形も体の使い方も一人ひとり違うから】です。
1人ずつ姿勢や手の使い方を確認して(こうするとよりよいのでは)というポイントを伝えていきます。

背中(肩甲間部)の指圧

一方で、隔週の授業だと2週間前のことを思い出すのに時間がかかります。
「この前の授業では…」という言葉を皮切りに、基礎となる姿勢のこと、手指の使い方のことを伝えていく流れになります。

できれば次の授業までの2週間のうちに、家族など身近な人に施術をして練習していてほしいと思います。
1年目ではその差は小さいけれど、2年生の6月頃になると練習を続けたことによる技量の差が感じられるし、見ていても習熟度はある程度わかります。

伏臥位で行う指圧点と指導するポイント

マッサージや指圧を受けに行くと、多くの店ではまずうつ伏せ(伏臥位)にさせられます。腰や肩をしっかり施術するためです。

伏臥位の指圧点

伏臥位の施術はおおまかに背中(体幹)と足(下肢)に分けられます。
さらに細分化すれば、

①後頭部、後頚部
②肩上部、肩甲間部(肩甲骨の内側)
③肩甲下部~腰部(いわゆる腰、背中)
④臀部(骨盤周囲)
⑤大腿部(ハムストリングス)
⑥下腿部(ふくらはぎ)
⑦足底
…に分けられます

浪越指圧基本実技

とくにニーズの多い部位は②の肩まわりと③の腰です。
肩こり、腰痛で悩む人が多いのは言い換えれば、ヒトの体は肩と腰に負担がかかりやすい構造をしていることを意味しています。

人体に直線はない

1年生の授業は【肩と腰をどうやって押すのか】というところから始まります。
最も肝心なのは、押している際に皮膚面をズラさないこと。
これは【垂直圧】という言葉で表現できます。

鍼灸学校で指圧を教えるようになって気付いたのですが、
「まっすぐ鍼を刺すように」という表現で伝えると、学生はイメージが湧きやすいようです。
鍼を刺していて途中でグニャリと曲がってしまっては危険。
形には見えないが、体表に加える圧もおなじことになります。

垂直圧=まっすぐ押す
一見、簡単なように見えるが、そうでもありません。
その理由として、定規でまっすぐに引いたような直線は体表にはないからです。試しに30cmのモノサシを体に当ててみるといいでしょう。きっとどこかに隙間ができるはずです。

その曲面をどうやって支えて、押圧するのか。
言葉でいうのは簡単だけど、やってみるとそれぞれの部位によって微妙な違いがあると思っています。
それを繰り返し練習してみて、垂直圧の手応えを感じられるようになることが取り組んでほしいテーマです。

ふしぎな不思議な指圧点

教える立場でいうのも申し訳ないのですが、うつ伏せの指圧で(よくわからない場所)というのがあります。
ひとつが浪越圧点、もう一つが踵骨隆起部です。

浪越圧点はどこにある?

浪越圧点は、浪越式指圧を体系化した故浪越徳治郎氏の名前を冠した指圧点です。そう書くと、さぞ効果が期待できる有り難い場所なのだろう…と思ってしまいます。
たしかに教科書には指圧による効果がいくつか記されているのですが、如何せんその場所がわかりづらいし、教えづらいこと極まりないです。

解剖学的には上殿神経?中殿筋?
指圧点を決める指標はあるものの、やっぱりわかりづらいです。一人ひとり筋肉のつき方が違うのもあります。これは数をこなして手応えを感じられるようになるしかないと思います。

踵の骨を押すことの意味

踵骨隆起部は踵骨の後面、アキレス腱の付着部に相当します。
ここを押すことになる。写真ではかすかに見える黄色いシールのところ。
押し方は難しくないのだが、何をしているのか疑問が残ります。

足部の指圧点

一見すると、アキレス腱を伸ばしているように見えます。
それならもっと別の方法で手っ取り早くアキレス腱を伸ばしたらいいんじゃないか…と思います。私見ですが、親指で押している(指圧している)ように見せたくて、そのような操作をしているんじゃないかと理解しています。

かたや、踵骨の両側という指圧点があります。
写真では緑色のシールのところです。ここには下腿から足底へ向かう筋肉が腱となって走行しています。足首の動きに関わるところなので、きちんと押せるようになってほしい部位です。

学生からもらった宿題

授業のあとで、学生から宿題をもらいました。
指圧で押したあと、相手の体を押し返してその反動で戻っている…と言うのです。
受け手を垂直圧で押しているから、減圧して自分の体重を戻すときはそこ(指圧点)を押し返して戻ればいい…という動きになっていたようです。

質問をした彼は、授業中のデモを受けたときに「あれ?」と気がついた様子です。先生は反動をつけて戻ってないことに。
反動をつけてしまう指圧(減圧)は苦しくてイヤな感じがする、それがないと言うのです。
私自身も体験して知っていましたが、改めて意識して指導してこなかったことに気付かされました。

緑の◯は減圧する前に反動で刺激が入っている

徒手療法のように形のないものは、受けて初めて気づくことがあります。
そういう意味では、受けることも身をもって知る学びとなります。
さて、どうやって減圧すればいいか、反動をつけないやり方を習得するには…。次回の授業までに伝え方を工夫してみます。

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かんだひろし@たまねぎ
physical, mental, spiritual and social well-beingに生きるお手伝いをしています。2020.3に独立開業しました。家族を大切にし、一人ひとりが生き生きと人生を楽しめる社会が訪れるといいなと思いながら綴っています。