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投票は民主主義の基本

JDの「すべての人の社会」2020年12月号のコラム「視点」にこんなことを書きました。

友人のスウェーデン在住のサリネンれい子さんには、最近の動向を教えていただきました。感謝(^_-)

写真は、1998年当時のもの

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視点 投票は民主主義の基本

 薗部英夫(NPO法人日本障害者協議会副代表)

「あなたって選挙好きよね」と「BS世界のニュース」を見ていたらカミサンが言う。この100年で最高といわれる投票率(約66%)のアメリカ大統領選挙は、投票日から5日が過ぎても6500万という郵便投票の開票が続いた。

”Facebook友だち”の宮子あずささんは、11月2日の東京新聞「本音のコラム」でつぎのような問題を投げかけた。

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「今回の選挙はコロナ感染を避けるため、郵便投票が広く行われている」「これらの票は、感染を重く見る民主党支持者の票が多いと報じられている。加えて共和党が強い地域では、民主党支持者が多い若年層、マイノリティーが投票しにくい制度になっているとの指摘もある。具体的には投票所が減らされる、運転免許証がないと選挙人登録ができないなど。いずれも貧しい人にはハードルが高い」「郵便投票にはこうした人の投票が多数含まれているため、共和党には都合が悪い。だから無効票を増やそうと躍起」。

この指摘のように、トランプは郵便投票は「不正が多い」とネガティブ・キャンペーンし、開票を打ち切るよう叫んでいた。

「多くの人の支持を得るより、対立候補の票を減らすことに注力するなら、それはもはや民主的な政治ではないでしょう」と宮子さん。

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そんなアメリカの大統領選を見ながら、わたしは、現地視察をしたことのあるスウェーデンの総選挙を思い出していた。

1998年9月、ストックホルムの新興住宅地にある投票所は、学校で、バリアフリーだった。お年寄りだけでなく、若い人も、子ども連れも続々とやって来る。まるで、地域のお祭りかバザーの雰囲気だ。投票所の雰囲気の明るさにまず驚いた。

街中では、各政党ごとに「選挙小屋」がつくられ、市民が気軽に立ち寄って、コーヒーやクッキーなどをつまみながら政策について語り合う。投票所は、郵便局、病院、高齢者住宅、刑務所にも設けられると聞いた。

つぎに驚いたのは、投票の方法だ。国会、県議会、市議会の3つの投票用紙が各政党ごとにある。有権者は3つの投票用紙を、それぞれの選挙の封筒に入れ、その封筒を投函する。「書く」のでなくて、投票用紙を封筒に入れるだけだ。

投票用紙は各政党ごとに工夫されている。社会民主労働党ならシンボルマークの「紅いバラ」やシンボルカラーが活用され、一目でどの政党かがわかる。

さらなる驚きは、障害のある人たちの投票だ。郵送による郵便投票が多いのではと予想したが、多いのは「代理投票」だと言う。自宅に郵送される投票用紙を、封筒に入れ、サインして封印し、信頼できる人やヘルパーに託す方法だ。

「代理投票が難しい場合は、選挙係の人が自宅にやって来て投票できる”巡回投票”もできます。国の統計によれば、障害のある人もない人もともに投票率は80%をこえています」「ですが、知的障害がある人たちの投票率が低いことは話題になっています。難しい部分も多いです」と最近の様子を現地の友人がメールで教えてくれた。

スウェーデンは比例代表制なので、一人一人の投票は各議会の議席数に反映される。さまざまな投票の方法によって、より多くの人たちの意思を反映させる。そうした選挙システムと当たり前の政治教育などにより、18歳からどの世代でも投票率は8割をこえている(前回総選挙は87%)。

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民主主義は、より多くの人びとの意見をあつめ、すべての人を排除することなく、話し合いの中からすすむべき道をみんなで見出していくことだ。

今、世界中で、平和が、人権が、民主主義がとても危うい時代の中で、アメリカの民主主義が問われている。もちろん、わたしたちの民主主義も。

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